創世紀1503 〜The New World〜
Text by Seal
26th Jun. 2003
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建物一つ一つまで緻密に描かれたグラフィックスは必見。この美しい街の中で,さらに人々がリアルタイムに動き回るのだ |
「創世紀1503 〜The New World〜」は,1998年11月に発売された「創世紀1602〜CREATION OF A NEW WORLD〜」の続編にあたる作品だ。開発はドイツのSunflowes社が行っていて,前作の創世紀1602は,ゲームシステムの完成度の高さとバランスの良さに加えて,当時のマシンスペックとしては緻密に描かれたグラフィックスが特徴だった。その約5年後に,グラフィックスを一新し,さらなる面白さを加えて続編となる創世記1503が登場したというわけだ。
その新しいグラフィックスは,建物一つをとっても単に緻密に描かれているだけでなく,設置したときに周囲と違和感がないようになっているのが驚きだ。このあたりは街を広げている途中ではあまり気づかないが,ひと休みして全体を眺めたときにその違和感のなさに驚くことだろう。街中で大勢の人々がリアルタイムに忙しく動き回っているのを見ているだけでも細部まで作りこまれているのが分かるほどだ。
国内ではズーから,メッセージだけではなく,音声も完全に日本語化した完全日本語版が発売されている。メッセージのローカライズは当然にしても,街の中の一つの施設をズームアップしたときに流れる人々の雑多なざわめきまでもが日本語化されているのには,関心させられる。もちろんゲーム中に流れるムービーも日本語音声化されている。こういった配慮は,プレイヤーとして非常に嬉しい部分だ。
創世紀シリーズは,いわゆる"箱庭シミュレーション"として位置づけられる作品で,瞬時の判断と的確な操作が必要なRTS(リアルタイムシミュレーション)とは異なるジャンルに属する。自分のペースでちまちまと自分の街を築いていき,広がっていく街と街に住む人々を眺めるだけでも楽しめるという,大局的にはシムシティと同様のゲームシステムといえるものだ。このジャンルは爆発的な人気があるというわけではないが,長く楽しめることから,固定ファンの獲得と高い年齢層への確実なアピールの一つとなっている。
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軍事ユニットは,要塞で作成する。要塞が破壊されるとユニットが作成できなくなるので,街と同様に厳重に守りを固めておきたい |
キャンペーンでは,いくつかの小さな目的が表示され,順にクリアしていく感じとなる |
ある酒場で老船乗りが話した回想シーンがメインとなるオープニングムービー。この話を聞いた若者は,将来新しい土地を見つけるべく船乗りとなる |
複雑に絡み合った原材料と製品で物資の流れを堪能
今回の時代背景は,前作よりも100年ほど前の1503年,コロンブスなどが活躍していた大航海時代と呼ばれている時期。紙や学校が普及したルネッサンス全盛の時期でもあり,新たな土地を目指して開拓するには感情移入もしやすいだろう。
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岩があちらこちらに顔を覗かせている荒廃したような島では,香辛料や煙草を採取できることが多い。一つの島だけではなく,いくつかの島に移住して,自力で原材料を供給することが成功への道だ |
ゲームの目的は,未開拓の島を一から開墾/開発していき,巨大な街を建設していくというもの。プレイヤーの手で住居や道路,各種建物を自由に設置していくが,単に並べればよいというものではなく,原材料を採取し,それを加工していく"物資と経済の流れ"をしっかりと作り上げなければならない。具体的には,羊牧場でウールを採取し,それを機織小屋で布にして,布と皮の店で販売したり,木こり小屋で伐採した木材を炭焼き場で炭に加工したものと,鉱山で採取した鉄鉱石とを合わせて製鉄所で鉄にしたり……という感じだ。
これらの原材料/製品の種類は,実に100種類以上も用意されていて,一つの原材料が一つの製品のみになるという単純な流れではなく,複数の製品作成に必要だったりするなど,複雑に絡み合っている。街の規模に合わせて供給量を考慮して,微妙に増減させていく部分がたまらなく面白いのだ。
街は人口によって規模が上がっていき,設置できる施設がどんどんと増えていく。街の拡張は,市場に設定されている供給範囲を利用するというルールなので,等間隔に市場を建設していくのが効率よい。人口は住人のランクにも関係していて,最初は開拓民でスタートし,移民,市民,商人……と高くなっていく。開拓民が要求する民需品をすべて満たしていると,次の移民ランクへと上昇していくので,住民が満足しているかを常にチェックしながら,効率よく資源を採取して民需品へ加工していくことが,ゲームを進めるうえで肝要な部分となる。
創世紀1503では,自国だけですべての原材料や製品を満たすことは難しくなっている。島ごとの特徴がはっきりとつけられているので,入手困難な資源は,別の島を開拓するか,ライバルと交易をしなければならないのだ。この交易は,単に資源を得るためだけではなく,自国の余剰資源を売却して儲けるというゲーム上重要な要素の一つ。ゲーム序盤では赤字続きで資金が見る間に減っていってしまうので,早期に交易で黒字に転じることが必要というわけだ。
また,プレイヤーとライバル以外にも,アフリカ系,エスキモー(イヌイット)など8種の文明が登場する。これらの文明とは交易が行えるが,あまり大量の物資を必要としていないため,メインの交易相手とはなり得ないのだ。しかしライバルとの交易では入手しづらいものを販売している場合もある。さらに特殊な交易を行うベニスの商人が,たまにプレイヤーの島を訪れて物資の売買をしていく。もし大量に購入してもらった場合は,資金が潤沢になることだろう。
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ズームアップ視点 |
普通視点 |
俯瞰視点 |
俯瞰モードは3種類。ゲームに慣れるまでは普通(画面中央)でプレイし,慣れてきたら街全体を見渡す俯瞰視点(画面右)でプレイするのがいいだろう。ズームアップ視点(画面左)は自分の街に住む住人を眺めるのに最適 |
細かな部分での改良が加えられ遊びやすくなった
前作とはゲームルールに大きな変更はないものの,採取できる資源や大きさ,形など,島のバリエーションが豊富になるなど,プレイアビリティや面白さを向上させる改良が多く採り入れられている。マップ自体は非常に大きいので,スタート地点を変えるだけで,毎回異なるシチュエーションで楽しめるのも嬉しいところだろう。
細かな部分での変更は,島にある天然資源を調査するために偵察隊を派遣するのが,プレイ上必須要素となったり,住民ランクによる民需品が多少変更されていたり,また建材に大理石が追加されるなど。前作からのファンでも気分一新して楽しめるのはありがたいところだ。
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交易は相手の島の港で行う。何を購入し,何を販売しているかをチェックしながら,儲けていこう |
ゲームモードは,シングルシナリオ,キャンペーン,継続プレイの3種類。シングルシナリオは住民数や設定された一つの目標を目指すというもので,キャンペーンはシナリオに沿って複数用意された目標を順にクリアしていくというもの。シングルシナリオは10種用意されているのでかなり遊び応えがあるが,キャンペーンは1種しか用意されていないのが残念なところだ。ただし,キャンペーン自体は長いので,全部クリアするには結構な時間を要するだろう。
一方,継続ゲームというのは,目標が設定されておらず,自由にプレイできるモードだ。初期資源やライバルの数,島の資源量などが異なる9種が用意されている。低難度の継続ゲームでは,初心者がゲームに慣れるのにうってつけだし,逆に高難度では,かなりの上級者でも手を焼くほどとなっている。自分に最適な難度を見つけ出して,それより少し高い難度に挑戦していくというプレイスタイルがお勧めだ。なお創世紀1503には,箱庭スタイルを強く印象付けるためか,マルチプレイモードは(少なくとも今のところは)用意されていない。時間を掛けてじっくりとプレイするのがよいだろう。
外交面は前作とほぼ変わらずに,交易するための通商条約と戦争を行わない和平条約の2種類しかアプローチする手段が用意されていない。基本的にライバル国は交戦的ではないので,ほとんどの条約の申し出は受け入れられるのだ。一応は貢物の送受コマンドが用意されているものの,使う機会がないのが残念だ。
もしもライバルを力でねじ伏せようとする場合には,剣士,弓兵,マスケット銃兵などの軍事ユニットを使う。この軍事ユニットには14種が用意されていて,RTS風の戦闘画面にはなるものの,実際は単に相手の戦闘ユニットとの交戦のみとなっている。街の施設は破壊可能とはなっているが,市場が消えれば,そのエリア内の建物はすべて消滅してしまうため,細かな戦略などは一切ない。戦闘行為よりも,効率よい街の建設と,万が一の奇襲にそなえて防御に徹するのが基本となる。
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登場する文明は,8種類(+ベニス商人)。それぞれが独自のグラフィックスをもっているので,眺めているだけでも楽しめる。少量ながら交易も行えるので,文明を発見する航海に出るのも面白い |
箱庭シミュレーションというジャンルは,画面の派手さや相手を打ち破る爽快感というものはあまり持ち合わせていないが,自分の手で街を作り上げていくというほかのジャンルでは得ることが難しい楽しさを秘めている。効率のよい街づくりを見つけるまでは,難しく感じてしまい,投げ出したくなるかもしれないが,ある程度遊んでみると,じわじわと滲み出してくるような面白さが伝わってくるのだ。居住地をどこにすればよいか,住民数に対しての供給量はどの程度にすればよいかなどが分かってくると,もう箱庭ファンの仲間入りだ。
一つの行動が,即ゲームオーバーにつながるというものでもないので,じっくりと腰を据えてあーでもない,こーでもないと試行錯誤を繰り返しつつプレイして,箱庭の楽しさを堪能してみてほしい。
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戦闘は,軍事ユニット同士でRTS風に行われる。20ユニット程度同士の小規模な戦いが多いので,あまり派手さはない |
もちろん海上でも戦闘は起こる。海賊も出没するので危険な海域を通過するときには交易を行う船の護衛は必須だ |
■発売元:ズー
■問い合わせ先:TEL 0268-38-1561
■価格:9800円
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/500MHz以上(Pentium4/1.0GHz以上推奨)メモリ 128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量 930MB以上
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"ANNO 1503 - The New World" and "1503 A.D. The New World" (C) 2003 SUNFLOWERS Interactive Entertainment Software GmbH. SUNFLOWERS is a registered trademark of SUNFLOWERS Interactive Entertainment Software GmbH. All rights reserved. All other trademarks are the properties of their respective owners.
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