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同時接続者数が2万人以上というMMORPG,「EVE Online」の日本語化にまつわるメールインタビュー
2007/05/16 09:59
 世界に広がりつつあるSF MMORPG「EVE Online」は,以前お伝えしたとおり,2007年8月をメドに日本語に正式対応する。ただ,何度か報じた割には4Gamer編集部でも――開発元が遠方ということもあり――日本語版(?)の全貌がイマイチつかめていないのが実情だ。すでに英語版で遊んでいるプレイヤー,またこれから始めようという人は,やきもきしているのではないだろうか。

 そんなわけで今回は,開発元であるCCP Gamesに直接,日本語版に関する疑問をぶつけてみた。メールインタビューの一問一答形式のため,回答に対してさらに掘り下げて聞くというようなことはできていないが,要点は押さえられているはず。これまでの情報と合わせて読んでみよう。

すべてゲーム内の映像で構成されている,EVE Onlineのプロモーションムービー。この世界が,もうすぐ日本語版で遊べるようになるわけだ。なお,オリジナルサイズのムービーは,EVE Onlineの公式サイトまたは4Gamer(44.6MB[46,803,077 バイト])からダウンロードできる。このグラフィックスを堪能したい人はチェックしよう



■SF世界で暮らす“大人”のMMORPG「EVE Online」

SFファンなら間違いなく一目惚れするであろうグラフィックス。「これが日本語で遊べたら……」と願っていたプレイヤー候補は相当いるのではないだろうか
 インタビュー部分に入る前に,簡単にEVE Onlineを紹介しておこう。

 前述のとおりEVE Onlineは,アイスランドのCCP Gamesが開発/運営中のSF MMORPGである(具体的な生い立ちは「こちら」のGDC記事に詳しい)。

 地球から遠く離れた惑星系で孤立した人類は,開拓と戦争を繰り広げながら広範囲にわたって勢力争いを続けた。やがて人類の子孫は,強大な複数の帝国に分かれ,微妙な均衡を保ちながら文明を築いていく――,というのが,本作のストーリーライン。プレイヤーはそんな銀河の片隅の一市民となり,生き残るため,また富と権力のために宇宙生活を続けていく。

 さてそんなEVE Onlineの特徴は,広大な銀河,惑星,さらに空間を往来するスペースシップや建造物を,見事なグラフィックスで再現している点,そしてその社会が有機的に機能している点だろう。

 とくに後者は大きな魅力だ。「AIを極力使わない」というコンセプトのもとでデザインされた世界では,政治/経済のすべてのパワーバランスをプレイヤーの行動が左右する。例えば見知らぬ小惑星帯で採掘した鉱石も,艦船の弾薬も,値段の相場は全プレイヤーの経済活動次第になる。よって,――お金を稼ぐことが本作の当面の目標になるわけだが――今いる場所から一歩も動かずに相場を眺めて資産を運用し続け,財産を築くことも不可能ではない。

 もちろん現実世界と同様に,生きた物流/経済の中で,長者になるのはとても難しい。しかし,わずかな確率でもそういった可能性があるのが,EVE Onlineならではの特徴といえる。この“フェアであると同時にシビアな世界”が,“歯応えのあるゲーム”を求める人達の心を掴んで離さない理由と,言い切って差し支えないだろう。

 少々前置が長くなったが,ここからはメールインタビューをお届けしよう。


資源の相場や星系マップといった一見ややこしいパネルも,本作にとってはウリの一つ。ここは素直に“難しいゲームをやりたい人向け”と言っておきたい


■日本語を使って世界中のゲーマーと同じ世界で暮らせるようになるEVE Online

4Gamer:
 日本のゲーマーに向けて,まずはCCP Gamesについての説明をお願いします。

CCP Games:
 私達CCPは,アイスランドにあるゲーム会社で,アイスランドにおけるMMOのパイオニアといえる存在です。
 CCPは,スケールの大きなオンラインゲームを開発し続けること,そしてゲームプレイ,グラフィックス,インタフェースなどにおいて,常に業界の最先端に位置することを目標として活動しています。AI主導のゲームデザインを再考し,極力限られた部分だけにAIを使い,プレイヤーが主体となれるゲーム作りを目指しています。

4Gamer:
 EVE Onlineの日本語版――と呼んでよいのかどうかはさておき――について,具体的な展開方法を教えてください。日本の運営会社が取り扱うのでしょうか?

CCP Games:
 日本語版といっても,特別に“日本専用クライアント”を作るわけではありません。今あるクライアントプログラムに日本語を組み込む形になります。したがって,現在活動しているプレイヤーはクライアントを再ダウンロードする必要なく,パッチをダウンロードすれば,日本語を使えるようになります。
 運営はCCPが行いますが,日本では窓口となるパブリッシャを設ける予定です。また,パッケージ販売なども別途検討しています。



すでに日本語化済みのチュートリアル。完全に英語だった頃に比べてなんと理解しやすくなったことか。現役プレイヤーでも,一度は目を通しておきたい
4Gamer:
 仮に日本での運営会社が用意できなかった場合,サポートや決済,クライアントの配布方法などはどうなりますか?

CCP Games:
 サポートは日本語で対応できるよう,現在調整中です。決済方法は現行のクレジットカード(JCB,VISA,Master,AMERICAN EXPRESS),「PayByCash」※1(イーバンク銀行振込,郵便振替,郵便為替,現金書留),さらに「EVE Time Code」※2を日本国内で発売する予定です。クライアントはどこでダウンロードしても同じですが,日本国内にもダウンロードできる場所を設けようと考えています。

4Gamer:
 日本語化についての作業状況を教えてください。

CCP Games:
 現在はユーザーインタフェースの翻訳までが完了していますが,翻訳の質を高めるために,現行のクライアントにはまだ実装していません。現在日本語になっている部分は,導入ムービーとチュートリアル部分のみです。

※1 PayByCash クレジットカードを持っていない,または利用したくない場合に,日本円によるクレジットカード以外の決済オプションを提供するサービス。日本ではSakura Financialが運用している(公式サイト)。

※2 EVE Time Code コードを購入することでプレイ権を得られる,「WebMoney」や「NET CASH」などに似たシステム。このコードはゲーム内通貨で取り引きされることも多い

4Gamer:
 ゲーム内のすべてが日本語化されるのでしょうか? 英語の残る部分などがあれば教えてください。

CCP Games:
 すべてが日本語になるわけではありません。日本語を使用しないプレイヤーとの交流に支障をきたさないように,また,マーケットで不利にならないように,アイテム名や地名などは英語のままにします。

4Gamer:
 日本語専用サーバーを用意しますか?

CCP Games:
 いいえ,日本語専用サーバーを作る予定はありません。現実世界と同様に,違う言語を話す人々が混在して共存するというのが面白さの一つだと考えています。

4Gamer:
 現状のサーバー構成がどうなっているのか,サービスを展開している国ごとに教えてください。

CCP Games:
 現在公開されているサーバーは,Tranquility(TQ),Singularity(Sisi),Serenityの三つがあります。
 Tranquilityでは全世界のプレイヤーが活動しています。EVE Onlineは国ごとにサービスを展開しているわけではありませんので(中国を除く),日本のプレイヤーもTQでプレイすることになるでしょう。TQは常時2〜3万人がログインしている非常に大きな世界です。ちなみにSingularityはテストサーバーで,Serenityは中国にある独立サーバーです。

4Gamer:
 現在日本時間の午後8時〜9時に設定されているダウンタイムは調整されますか?

CCP Games:
 今のところ時間を変更する予定はありません。現在と同様,グリニッジ標準時の午前11時から正午(日本時間で午後8時〜9時)がメンテナンス時間となります。

4Gamer:
 現在EVE Onlineには六つの拡張パックが存在しますが,日本語はどのバージョンまで実装される予定ですか?

CCP Games:
 EVE Onlineは,これまでに「Second Genesis」「Castor」「Exodus」「Cold War」「Red Moon Rising」「Revelations」と拡張してきました。日本語は,現在あるクライアントに組み込まれますので,最新版のRevelationsになる予定です。そして今後も拡張を続けていきますが,常に日本語に対応していきます。
 また,サーバーが世界で一つなので,すべての人が同じバージョンでプレイしています。

4Gamer:
 ほかの国のプレイヤーと同じサーバーで遊ぶとなると,拡張パックでの日本語対応はどのように行われるのでしょうか?

CCP Games:
 日本のプレイヤー用に特別のクライアントを作るわけではないので,拡張パックは通常のパッチ扱いで配布されます。日本語の部分はサーバーからテキストデータを送って対応します。

4Gamer:
 日本では,SFをテーマにしたゲームの人気はそれほど高くありません。そういった中で,EVE Onlineは日本でどう受け入れられると思いますか? また,EVE Onlineは日本のどういった層に訴求すると考えていますか?

CCP Games:
 EVE Onlineは万人向けのゲームではないと思いますが,日本ではSF,とくにスペースオペラの好きな人,またミリタリー関係の好きな人に受け入れられると考えています。また単純作業がなく,時間と共にキャラクターの育つスキル制なので,ゲームに少ししか時間を取れない人にも向いているでしょう。

4Gamer:
 CCP Gamesは,日本のオンラインゲーム市場にどのような印象を持っていますか?

CCP Games:
 ほかの国と比べて,とても変わっていると思います。ゲーム業界の規模に対してオンラインゲームの割合が少ないようですが,これからさらにオンラインゲームの需要が増すと考えています。また,タイトルに関していえば,EVE Onlineのような独特なゲームが期待されているのではないでしょうか。

4Gamer:
 “日本語版”の正式サービス開始日というものがあるとすれば,それはいつ頃ですか?

CCP Games:
 「Revelations 2」の大規模なパッチを今年の6〜7月に予定しており,そのあと日本語クライアントが完成する予定です。とくにサービス開始の目標となる日付は設定していませんが,その日本語クライアントの完成をもって,日本でのサービス開始としたいですね。




■DirectX 10にも対応し,中身だけでなく外見も進化し続ける

4Gamer:
 少し余談ですが,DirectX 10に対応するグラフィックスエンジン「TrinityII」を搭載した,「EVE Vista」のお話を耳にしました。「EVE Vista」は「EVE Online」のアップグレード版なのでしょうか? もしアップグレード版だとしたら,EVE Onlineの日本語版は「Trinity II」で実装されるのでしょうか?

CCP Games:
 VistaとDirectX 10の最新テクノロジーを使って,EVE Onlineの見た目だけではなく,ゲームパフォーマンスの向上も図っています。すべての船を高解像度でリモデル済みで,現在はステーションやスターゲートといったエレメントをアップデートしている最中です。ちなみにこれは,将来の拡張パックに入る予定です。もちろん日本語にも対応します。



今回特別にもらったスペースシップのリモデル後のスクリーンショット。左がリモデル後,右がリモデル前のものだ。人によっては「どっちでも……」程度の変化かもしれないが,プレイヤーならこのディテールの進化がいかにプレイのモチベーションを上げるかが分かるはずだ


4Gamer:
 EVE Onlineは,今後どのような方向で発展していくのでしょうか?

CCP Games:
 プレイヤーの分身が,船のカプセル※3の中から外の世界に出られるようになります。これは「Ambulation」※4と呼んでおり,宇宙ステーションを,“戦うため”ではなく“ほかのプレイヤーとコミュニケーションをとるため”の場として利用できるようになります。またプレイヤーは,エージェントと会ったりと,さまざまな活動ができるようになるでしょう。
 その後もEVE Onlineは,遊ぶ人がいなくなるまで拡張を続けていきます。

※3 カプセル EVE Onlineにおいて,プレイヤーキャラクターは「ポッド」と呼ばれる生化学物質を満たした卵形のカプセルに包まれている。そして神経系と直結したインタフェースを用いて船をコントロールしているという設定なのである

※4 Ambulation プレイヤーキャラクターがカプセルから出て,一般的なMMORPGのアバターのように,宇宙ステーション内を徘徊できるようになるというシステムだ

4Gamer:
 EVE OnlineのMacintosh版について,日本の多くのMacユーザーが知りたがっています。何か詳細な情報をいただけますでしょうか。

CCP Games:
 8月15日にLinux,Macintosh版をリリースする予定です。

4Gamer:
 最後に既存のプレイヤーと,新規プレイヤー候補の読者へメッセージをお願いします。

CCP Games:
 EVE Onlineは,ほかのオンラインゲームと一味違う,日々進化しているゲームです。また政治的陰謀と活発な経済活動,さらにプレイヤーを興奮させる冒険の同居する“大人のMMO”でもあります。
 この広大なEVE Onlineの世界では,“誰もが同じ道筋を辿り決まったことをする”ということはなく,“ゴールを自分達で決めて,誰もが自由に振る舞う”ことが可能です。
 ミッションの遂行,採掘,生産,貿易,サルベージ,研究,探索,企業の社長になる,PvPをする,外宇宙を支配する,などなど,EVE Onlineはあなたを中心に回る,生きているバーチャルワールドとなるでしょう。

――収録2007年5月1日

EVE Onlineに携わっているCCP Gamesのスタッフ達。左からエコノミストのDan Speed氏,シニアプロデューサーのNathan Richardsson氏,シニアゲームデザイナーのNoah C. Ward氏


 現在EVE Onlineは,14日間の無料プレイ期間が設けられていて,誰でも気軽に試せる。すでにチュートリアルは日本語化されているので,本格的な日本語化が実装される前に,ゲームの雰囲気に慣れておいてもいいだろう。「これだけ個人の嗜好が多様化しているにもかかわらず,世の中はなんで同じようなゲームばかりなんだ!」と嘆いている人などには,ぜひ試してもらいたい。ハードルは高いが,その先にさまざまな国の人々との交流,そしてそれを通じた経済活動など,刺激的な体験ができるだろう。(ライター:Gueed)

関連URL一覧
公式サイト
無料プレイ期間紹介ページ
プロモーションムービーページ


EVE Online
■開発元:CCP Games
■発売元:CCP Games
■発売日:2003/05/06
■価格:19.95ドル
→公式サイトは「こちら」
EVE Online(Macintosh)
■開発元:CCP Games
■発売元:CCP Games
■発売日:2007/08/15
■価格:N/A
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2007.05/20070516095900detail.html