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「ラグナロクオンラインII」プロデューサー,Park Young Woo氏 インタビュー
2006/08/14 20:51
 62の国と地域でサービスされ,全世界での同時接続者数が合計70万人を超えるといわれるMMORPG「Ragnarok Online」(以下,RO。邦題 ラグナロクオンライン)。本家である韓国を含め,世界で最もサービスが成功している日本では,その後継作である「Ragnarok Online 2」(以下,RO2。邦題 ラグナロクオンラインII)に対する注目度も,かなりのものだ。
 2005年に行われた「東京ゲームショウ2005」(以下,TGS 2005)での公開時,2005年末にクローズドβテストを実施するとアナウンスされていたが,ゲームの完成度を高める目的と,Gravityの経営環境の変化などにより,実現されないまま今日に至っている。
 そんな中,「Gravity Festival 2006」では,最新ムービーが公開された。新しいオフラインイベントに華を添えるためだったのか,それとも実際に開発が順調であることをアピールする目的があったのか,詳しいところは開発関係者以外には分からないものの,RO2を待ち望んでいる人にとっては,何かしらの動きが見えるのは喜ばしいことだろう。

 「光の叙事詩」というサブタイトルを持つRO2は,Gravityの“Team Mercury”が開発にあたっており,前作が持つ長所と特徴にRO2ならではの新要素を加えることで,オリジナリティに溢れた楽しみを持つMMORPGを目指しているという。

 4Gamerでは今回,以前にもインタビューしたことがあるRO2プロデューサーのPark Young Woo氏に,約1年振りに話を聞いてみた。Team Mercuryが公開しているRO2の特徴を下記にまとめておいたので,Park氏の言葉を読む前に,頭に入れておいてほしい。(Kim Dong Wook)

●原稿用紙換算で数万枚に達する膨大なシナリオと,それをベースに組み立てられた緻密な世界観
●既存のMMORPGでは見られなかった,果敢でフレッシュな職業システム
●外見が違うだけでなく,それぞれ異なるコンセプトと個性的な成長体系を持っている3種族
●フル3Dで表現された,可愛くハイクオリティなキャラクターデザイン
●最大限強化されたコミュニティシステム
●プレイヤーごとに独自の戦闘スタイルを確立できるSpeciality System
●武器を成長させて,分身のように活用できるMeta These System
●マナーが悪いプレイを防止する,さまざまなシステム
●緻密な物語になっている多彩なクエスト
●RO原作者である,Lee Myoung Jin氏による美しいイラスト
●菅野よう子氏が作曲したBGMを,ゲームプレイ中ずっと聞くことができる




■ゲームの完成度は,現在85%

4Gamer:
 こんにちは。TGS 2005以来ですから,約11か月ぶりですね。

Park Young Woo氏:
 そうですね,お久しぶりです。

4Gamer:
 まず一番気になることから聞かせてください。βテストは,いったいいつ頃始まるのでしょうか?

Park氏:
 日程に関しては,私達開発チームとしてはよく分からない……というのが実情です。開発はしていますが, 商品を売り出すことに関しては,私達の意志とは関係なく,会社がさまざまな市場状況を見て決めることだと思います。

4Gamer:
 最近行われた,韓国の某メディアによる柳日栄会長へのインタビューによると,2006年12月にオープンβテストを行うとのことでした。これについて,Park氏のお考えは?

Park氏:
 ノーコメントです。 ただ私達は,RO2を待ってくれているファンのために,総力を挙げて開発をしています。

4Gamer:
 公開されたプレイムービーを見る限りでは,完成度も高くなっているように思えるのですが,実際のところはどうなんでしょうか?

Park氏:
 ゲームの完成度というのを,商用化の時点を基準とするのか,それともクローズドβテストの時点を基準とするのかによって変わってくると思いますが……。クローズドβテストを基準にするならば,85%程度といったところでしょうか。市場の競争はますます激しくなっているので,新しいコンテンツを追加する可能性や,ほかのタイトルの発売日との兼ね合いといった問題もあります。可能であれば,内部的にしっかりとテストを行ったうえで,日程を発表したいです。



4Gamer:
 TGS 2005以降,ゲームに大きな変更があったと聞いていますが。

Park氏:
 TGS 2005に出展したバージョンは,クライアントの要求スペックがとても高かったため,これを修正するためにUnrealエンジンで再構築を行いました。その結果,プログラムのロジックに,大幅な調整の必要が生じました。基礎となるエンジン自体が変わったため,かなりの時間がかかってしまいましたが,結果として昨年公開した姿から,完璧に新しい姿へと生まれ変わりました。
 このほか,キャラクターデザイン,ゲームシステム,操作性,そして背景オブジェクトなど,さまざまな部分に修正を加え,完成度を高めています。

4Gamer:
 TGS 2005のとき,装備が成長するシステムが非常に気になりました。

Park氏:
 当時は武器や防具など,キャラクターが装備できるアイテムすべてに成長要素を用意していたのですが,その場合,成長情報を保存するためにデータ量が肥大化してしまうということで,現在は武器だけが成長する仕様になっています。武器は,生産やクエストを通じて得ることができます。
 私達は,革新的で新しいことのみを追い求めているわけではありません。それよりも,ゲームの構成やバランスを成熟させることのほうが,プレイヤーにより大きな楽しさを感じてもらうために重要だと思います。

4Gamer:
 なるほど,分かりました。そういえば,キーボードを利用した操作ができるそうですが……。

Park氏:
 RO2では,ほぼすべての操作をキーボードだけで行えます。W/A/S/DキーとSpaceバーだけでも,例えば「World of Warcraft」をはじめとした北米産3D MMORPGのような,柔らかくて纎細なキャラクターコントロールが可能になるように開発しています。もちろん,インベントリを開くような操作も,キーボードで可能ですよ。

4Gamer:
 カンファレンスのプレゼンで,「キーボード操作では,相手を見る角度や位置によって攻撃力や命中率が変化する」と言っていましたよね。なんだか難しそうに感じたのですが……。

Park氏:
 これは,モンスターと戦うときには関係ありません。モンスターを狩るだけなら,一般的なMMORPGと同じような感じで,楽にプレイできます。PvPのときには,プレイヤーの操作によって攻撃力と命中率が変化するため,操作が上手になればそれだけ有利に戦えるでしょう。

4Gamer:
 RO同様,住民登録番号(韓国民一人一人に付与されている,“000000-1000000”というような13桁の固有の番号。後半の最初の桁の数字が1の場合は男性,2の場合は女性だ)によって,キャラクターの性別が決まるそうですね。プレイヤーの中には,異性のキャラクターで遊びたいという人もいると思います。なぜ,こういったある種の制約を設けているのでしょうか。

Park氏:
 前作に関して言えば,これがコミュニティの活性化につながったという評価を得ています。ゲーム内で出会うキャラクターの性別が,そのキャラクターを操作しているプレイヤーの性別と同じであると信頼できるのが大きかったようです。もちろん,家族の住民登録番号を利用すれば,異なる性別で遊ぶこともできますが,今回もやはり,プレイヤー達からの信頼を維持したかったということです。

4Gamer:
 そういう目的があったんですね。
 前作ではキャラクターの服装に変化がありませんでしたが,RO2ではさまざまな服装が用意されているようですね。

Park氏:
 まず,キャラクターが3Dに変更されたことで,前作に比べてサイズも大きくなりましたしね。装備品を替えれば,キャラクターの服装も変わります。ゲーム内でキャラクターが装備できるアイテムは20カテゴリ以上あります。その中で服装に変化が現れるのは,10カテゴリ以上です。
 服装を変えられるのは,帽子やメガネ,ひげ,服,手袋,履き物,マントなどがあります。このような装備品は,前作の雰囲気を最大限生かせるように力を注いでいます。また,実際に流行しているファッションを取り入れて,RO2の世界観に合わせたりもしています。



■月額課金制を念頭に置いて開発中

4Gamer:
 前作では,カードを利用してエンチャントができました。RO2にもこのシステムは継承されるのでしょうか?

Park氏:
 いや,そのシステムは継承していません。先にお話ししたように,武器が経験値を獲得して成長するシステムになっているからです。ただ,カードを使ったエンチャントシステムは,RO独特のシステムなので,将来的には追加することもあるかもしれません。

4Gamer:
 韓国プレイヤー達は,コンテンツを消費するスピードが非常に速いですよね。そのため,オンラインゲームにとって,コンテンツアップデートが重要になっています。これは,どのような形で行うのでしょうか。

Park氏:
 プレイヤー達のコンテンツ消費速度に合わせてゲームをアップデートすることは,現実的に不可能です。大規模なアップデートは3か月から6か月周期で行う予定ですが,これ以外にも楽しんでもらえるようなものを提供するつもりです。例えば,プレイヤー達がゲームに退屈しないよう,コンテンツの循環を行うような感じですね。


4Gamer:
 コンテンツの循環とは,どのような意味なんでしょうか。

Park氏:
 例えば多くのゲームの場合,一つのキャラクターは選択した職業しか成長させられませんし, その職業の最高レベルに到逹すれば,楽しさを感じることができなくなります。しかし RO2では,3種の種族の中から一つを選択したら,その種族で体験できるすべてのクラスを,一つのキャラクターで楽しめるのです。もし,戦士を育成してからほかのクラスをプレイしたくなったら,転職をして育成ができます。この場合,キャラクターレベルは継承されますが,職業レベルはまた1から新しく始まるのです。



4Gamer:
 前作のように,数多くの職業が用意されているのですか?

Park氏:
 RO2には,“Norman”“Ellr”“Dimago”という3種族が登場します。そのうち職業に就けるのはNormanだけですが,一つのキャラクターで多くの職業を経験できるため,職業という概念自体があまり大きな意味を持っていません。また,前作に登場した職業が,すべて登場するわけではありません。例えば,“アーチャー”“マジシャン”“マーチャント”は登場しません。しかし,新たに“リクルット”“エンチャント”“クラウン”が追加されました。
 一方,EllrとDimagoには特別な職業はありません。 Ellrの場合は,“魔法石”というアイテムを装着することで,ほかの職業と似た体験ができます。Dimagoは,ハック&スラッシュタイプのシンプルなMMORPGが好きな人に,最適な種族です。

4Gamer:
 魔法石は,どのようにすれば入手できるのですか?

Park氏:
 魔法石は,商店から購入したり生産したりというのではなく,クエストを通じて得られるものです。そのため,誰もがゲームをプレイしているうちに,魔法石を手に入れられます。

4Gamer:
 なるほど。
 前作では,生産職に大きなメリットがありました。RO2ではどうでしょうか?

Park氏:
 RO2には,特定の生産クラスは存在しません。基本的に,すべてのクラスがアイテムを生産できるんです。ただ,キャラクターの職業や材料によって生産できるアイテムが変わります。商店で売っていたり,モンスターがドロップしたりするアイテムを生産できてもあまり楽しくはないと思うので,生産可能なアイテムは生産でのみ入手できる形を考えています。

4Gamer:
 RO2を待ち望んでいる人が多い日本を含め,海外サービスをする場合には,その国の文化に応じたローカライズが必要のようですが,このあたりはいかがお考えでしょうか。

Park氏:
 ROの経験から学んだことですが,ローカライズをあえて行う必要がないというシステムで開発中です。というのも,サービスを行う国によってゲームを変えてしまうと,ゲームの世界観自体にぶれが生じてしまう恐れがあるからです。そのため,開発初期段階から,各国の文化に受け入れてもらえるような世界観を設定してきました。

4Gamer:
 どんな世界観になっているのか,非常に楽しみです。
 ところで,正式サービス時の課金方式は……?

Park氏:
 現在のところ,アイテム課金制は考慮していません。今後は変わるかもしれませんが,基本的には月額課金モデルに合わせて開発しています。

4Gamer:
 分かりました。
 今日はお忙しいところ,ありがとうございました。

Park氏:
 こちらこそ,ありがとうございました。


ラグナロクオンライン2 -Episode:0 巡りあう大地-
■開発元:Gravity
■発売元:ガンホー・オンライン・エンターテイメント
■発売日:2007年内
■価格:1980円/30日間(税込),5310円/90日間(税込)
→公式サイトは「こちら」

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