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ガンホー,ROにおける先のパッチ内容についてWebで正式公開
2005/12/05 17:01
 12月3日早朝(2日深夜)に公式サイトで発表された件について,コアなラグナロクオンライン(RO)プレイヤーならすでにご存じの人も多いだろう。公式サイトにもある程度明言してあるが,Urdrを除くゲームワールド内で発生した,ゲーム内通貨を容易な手段で大量に増やせてしまった件だ(むろん現在は修正済み)。
 内容は,NPCが販売しているアイテムを買って2手順踏むだけで,それが元値の倍以上で売れるというもの。
 このバグ技は2日間ほど使用可能(*1)だったわけだが,ある程度広がってしまったこの技が,相当な量のZeny(ROゲーム内の通貨)を生み出したことは想像に難くない。ゲーム内の経済バランスに少なからぬ影響を与えたことだろう。

 明らかにおかしいことを分かっていながら使うユーザーにも大きな問題はあるが,起こってしまったことは仕方がない。実装前の確認の甘さは否めないが,人のやることには常に“間違い”の可能性がつきまとう。ここでは,それ自体をとやかく言うつもりはない。多くのプレイヤーが常に予想外のアクションを取るMMOにはありがちな話だし,次回は,さらなる注意を払ってほしいと願うばかりだ。

 さて結果として,「調査の結果、ゲームバランス全体に深刻な影響を及ぼす内容ではなかったための皆様のゲームデータ巻き戻しの処置は行わない、という判断」(公式発表より引用)をしたとのことだが,ここにはやや疑問が残る。
 前半部分に関して「該当NPCに必要以上に接触したキャラクターは,ログから判明しないのか(それでアカウントバンまで到達できる)」「ゲーム内に流通している通貨の総量の振れ幅はどれくらいだったのか」などが詳細に聞けず,“どの程度深刻でないのかが明確でない”ことはやや残念だ。しかしそこは管理ツールなどゲームのシステムも大きく絡むだろうし,そもそも運営情報は,メーカーポリシーなども絡みつつ,なんでもかんでも公にできるという性質のものではない。
 むしろここで最大かつ根幹のものは,「このまま(違法に)持てる者」「(合法に)持たざる者」の格差を放置しておいて良いのか」という部分だ。多くのユーザーが混乱している部分も,ここではないだろうか。

 誤解を生みかねない表現なので少しフォローしておくと,私はオンラインゲーム上での“平等なサービス”はさして必要ないと考えている。たかがゲーム,されどゲーム。時間をかけて努力した者は報われるべきだと思うし,アイテム課金などでお金を多く使った人が楽しい思いをできるのも,度を超えない限りある程度は仕方のないことだ。重要なのは,すべての人が,支払っている額に応じたすべてのサービスを受ける“チャンス”がある,ということだ。

 だがしかし,今回の件は明らかにその範疇には入らない。明らかに,知っている人だけが「ゲームシステムが想定していないメリット」をバグの悪用によって得て,それがそのまま放置されているという部分が問題なのだ(*2)
 なるほどROには1Dayや5Dayチケットなどもあるし,アカウント剥奪(通称アカバン)にあまり効果はないかもしれない。しかし「巻き戻し」なら出来たのではないだろうか。

 その技を知らなかった人まで巻き添えになってレベルなどが戻されるなどのデメリットも,むろんある。しかも相当なデメリットだ。関係のない人にはまったくもって“いい迷惑”でしかないし,管理側としてもデータを見つつ悩んだであろうことは想像できる。
 私とて,巻き戻しが最良の案であると主張するつもりはさらさらない。しかしそこで生み出された不正なゲーム内通貨が後々までワールド内に与える影響とそのデメリットを考えた場合に,どちらが良い判断なのかは微妙ではないかと思っている。

 他社の話で恐縮だが,EverQuestIIでゲーム内通貨偽造技が発覚したとき,SOE(Sony Online Entertainment)は,若干の時間こそ要したものの偽造したプレイヤーのアカウントを剥奪し,偽造マネーを1日がかりですべて手動で消し去ったという(偽造マネーの移動をトラッキングして削除するツールを持っている)。
 不幸にも,このときに偽造マネーを意図せずして受け取ってしまった人も多くアカウント停止され,それはそれで問題ではあったが,「想定外の疑わしきものは徹底的に排除する」というその姿勢と,巻き戻さずに混乱を収めたことを,高く評価したい。

 確かにROの設計は,今となっては相当に古い。偽造マネーをトラッキングおよび削除できるツールなどはおそらく実装されていないだろうし(*3),クライアントとしてのセキュリティ部分も未完成なまま巨大化していることは,容易に想像できる。
 ただしかし,ガンホーのROは,いまや日本を代表するオンラインゲームの一つであることは,まぎれもない事実だ。ROでなされた決定は,今後の日本のオンラインゲーム業界に,大きな影響を与える可能性がある。だからこそ,後続のお手本となるような対応を行ってほしい。

 現在は修正されてできないようになっているし,その対応がキチンとなされたことは,素直に評価すべきポイントだと思う。不幸にも(幸いにも?)巨大なコミュニティをいくつも抱えるROは,その情報伝達スピードも速く,ひとたび情報が明るみに出るや否や急速に広がり,予想を超えた被害が広がってしまったこととは思うが。

 いまとなっては相当昔の話だが,通称“Chaosショック”のときも,ガンホーは巻き戻しを行わなかった。そして今回も,だ。行わないなら行わないで,それがキチンと熟慮した結果の決断であることがプレイヤーに伝わり,それが(大筋のところで)納得できる内容であれば問題はない。文句や苦情も出ることだろうが,数十万人がみな納得する結論など,事実上ないといってもよいだろうし。
 しかしそれなりに大きな問題なのだから,なんらかの形でもっと早く――パッチ直後くらいには――詳細およびそれに至った理由は知らせるべきだったと思う。

 ファイナルファンタジーXIなどと並ぶ,日本を代表する巨大なオンラインゲームであるRO。RAG-FESなどを見ると,よくも一つの作品でここまで人が集められるものだと素直に感心する。一つの作品だけで人を集められるのは,ROかFFXIか,といったところではないだろうか。
 その運営会社たるガンホーには,業界を牽引していく“義務”があると言っても過言ではない。いまとなっては古いテクノロジーであろうシステムで,それだけの巨大なプレイヤー数を抱えている苦労は,私には想像する術もない。だがしかし,それだけの人数が楽しんでいる世界が若干なりとも壊れたことに対して抜本的な解決を打たないことは,疑問に思う。
 なるほど,もしかしたら今回の件は発表どおり,不正な通貨は,実は大した数字ではないのかもしれないし,ゲーム内経済への影響も,限りなくゼロに近いのかもしれない。ならばそれはそれで,もっと早くキチンと発表してほしかった。当サイトに山と寄せられたメールを見てもその一端が分かるが,プレイヤーは不安に思っていたのだ。起こったことはキチンと,出せるところだけでも公表し(*4),然るべき対処を行い,ゲームを壊さないための努力を払ってほしいと思う。
 また,仮に公式発表どおり「影響がない」範囲なのだとしても,悪用したプレイヤーがいたことは事実だ。公式発表でも「ゲームバランス全体に深刻な影響を及ぼす内容ではなかったため」と述べていることからも,ある程度の影響があったことは読み取れる。
 運営サイドが想定できていなかったバグ技を「やった者勝ち」で収めてしまうのは,やや疑問だと言わざるを得ない。順当なパッチによってシステムが変化し,それによってプレイヤー間に不公平が生まれてしまうのはMMORPGに付きものだが,今回の件は,それとは違う問題だ。巻き戻しが無理ならば,なにかもう少し,良い解決方法はなかったのだろうか。
 バグだと知りつつ(常識で考えれば分かることだ)悪用するプレイヤーは,確かに悪い。しかし,彼らを罰することなく一般のプレイヤーに負の遺産を押しつけるのは,運営の姿勢として疑問が残らざるを得ない。

 MMOの運営は難しい。まだ歴史も浅いし,確固たる正解というものはどこにも存在しない。しかしガンホーは,EA Japan,コーエー,スクウェア・エニックスに並ぶ,日本を代表するオンラインゲームメーカーだ(*5)。MMOの運営経験も,もはや国内では相当長いほうではないだろうか。膨大なユーザー数を抱えて急速に大きくなってきたその姿を見て,国内のオンラインゲームメーカーの多くは,みなガンホーを目指し,並び,そして追い抜こうと努力している。
 今回のことも糧として生かし,今後の後続の“良き前例”となるように,さまざまな形で業界に貢献してほしいと願うばかりだ。(Kazuhisa)

(*1)11月29日のメンテナンスで発生→12月1日14時の緊急メンテナンスで対応。

(*2)もちろん,通常の手法でその技と同等の稼ぎを出すことも可能なのかもしれない。しかし今回は,労せずして入手できたところに問題があったのは,言うまでもない。

(*3)かつての精錬チートなどの状況を見ても,それは想像できる。

(*4)余談だが,発表中に「運営チームが本来意図していたものとは異なる形でNPCが利用され」という表記があり,今回の件を公式に設定ミスであると謳っていないのが気になる。

(*5)ユーザー数が多いとか売上が多いとかそういうベースの話ではなく,オンラインゲームに対しての取り組み(およびその歴史)の度合いという意味だ。



ラグナロクオンライン
■開発元:Gravity
■発売元:ガンホー・オンライン・エンターテイメント
■発売日:2002/12/01
■価格:プレイ料金:1500円/月(税込)
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2005.12/20051205170142detail.html