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岩田・小島両氏に聞く「エミル・クロニクル・オンライン」<前編>
2005/06/22 18:11
【左】コンテンツ開発部マネージャーの岩田容賢氏
【右】マーケティング部第2企画グループマネージャーの小島幸博氏
 2005年4月21日,ガンホー・オンライン・エンターテイメントヘッドロックブロッコリーからなる"トリオ・ECO"によって制作発表が行われた,純国産MMORPG「エミル・クロニクル・オンライン」(以下,ECO)。プレイヤーがオフライン中に動作させられるという「マリオネットシステム」をメインフィーチャーとしつつ,トゥーンレンダリングで描かれた"萌え"路線のグラフィックスで,ライトPCゲーマーとコンシューマゲーマーをターゲットにした作品である。
 ゲーム性はもちろん,MMORPG「ラグナロクオンライン」(以下,RO)で成功を収めたガンホー,「ディプスファンタジア」シリーズの開発実績をもつヘッドロック,さらに昨今の萌えキャラクターの仕掛け人でありオフラインマーケティングに明るいブロッコリーとの組み合わせということで,ビジネス的な展開とその成功の可否でも,業界人から注目を集めている。

 というわけで,制作発表から2か月ほどが経過した6月15日,有楽町に移転したガンホーの新社屋にお邪魔して,コンテンツ開発部マネージャーの岩田容賢氏と,マーケティング部第2企画グループマネージャーの小島幸博氏に,あれこれと質問をぶつけてみた。

 制作発表会時点でもリアルタイムレンダリングによるインゲームムービーが公開されていたが,実はこのインタビューの場でも,ECOの開発版でキャラクターの動きやインタフェースといった基本的な動作を見ることができた。もちろんキャラクターメイキングから順を追ってプレイの様子は見られず,移動はGMコマンドによるワープだし,インタフェースもフィックスしていない開発版のみ。しかしコンセプトからシステムまでがことごとく謎のベールに包まれている本作だけに,気がついた点はインタビューに織り込む形で記載していくことにする。
 一度に読むと多少しんどそうな記事のボリュームなので,前編を「システム全般編」,後編を「マリオネットシステム編」として順番にお伝えしよう。6月22日公開の「こちら」と合わせて,読んでみてほしい。
(Guevarista&Gueed / Photo by kiki)



■画面から得られる情報は「ラグナロクオンライン」ライク

 まずは見せてもらった画面の情報をまとめておこう。
 既報のとおりグラフィックスは,トゥーンレンダリングを用いたアニメ調の可愛らしいデザイン。全体的に見ると丸みを帯びてはいるが,毛先や装備品の端などの尖った部分も目立ち,キャラクターの立ち姿は思ったよりもシャープだ。キャラクターにはセルフシャドウなどがキチンと描かれているため,トゥーンレンダリングにありがちな画面の安っぽさはあまり感じられない。ちなみに影は,PCのスペックに応じて,なし→丸影→投射テクスチャマッピングとクオリティを変化させられるとのことだ。
 視点は基本的にはクォータビューで,俯角を低くしても遠景や空までは見えない。逆に俯角を高くすると,最大でキャラクターのほぼ真上まで視点を移動できる。カメラの回転角度だけで視界を確保するタイプのRPGでは,ダンジョンなどの狭い空間で障害物が視界を遮るため,カメラ操作が煩雑になることが多い。カメラを真上まで移動することで,そういった問題の解消はもちろん,陣形を組んでのパーティプレイなどもストレスなく行えそうだ。

 キャラクターの移動そのほかの操作は,すべてマウス行えるよう,まとめられている。あくまで現時点での話になるが,キャラクターの移動は遅めで,これは筆者の「ヘッドロック=ディプスファンタジア」(DF)という固定観念からか,移動するときに足が地面を少し空振りするようなイメージがDFに近いと感じた(気のせいだろうけど)。実際に2Dゲームでこの遅さだとかなりストレスが溜まりそうだが,裏を返せば,これは序盤からスピードアップ系のアイテムやスキルが存在するという証拠かもしれない。

 さて気になるのは,デモンストレーションがウィンドウモードの状態で行われていた点である。聞くところによると,悪質な外部ツールやそのほかのウィンドウモードにまつわる問題をクリアできれば,ぜひ実装したいとのこと。もちろん問題も多いが,PCを複数台所有していないであろうライトゲーマーにとって,このモードの恩恵は計り知れない。あくまでもライトゲーマーへのターゲットを謳うなら,ここは死守するべきだろう。ちなみに,要求スペックは聞けなかったものの,最近のノートPCなら問題なく動作することを目指しているとのことだ。

 そのほか,各種ウィンドウについても触れておこう。
 基本的なキャラクターのステータスは,HP/MP/SPという三つのパラメータ,そしてLv/JobLvというROでお馴染みの二系統のレベルと,PAYL/CAPAという所持重量制限で表現されている(ちなみにこのウィンドウで見られた貨幣単位は"Gold"だった)。画面上部にF1〜F12に割り当てるのであろうスキルアイコン,ウィンドウボタンは,stat/item/eqip/skill/friend/mail/minimap/Endというものが並ぶ。

 面白いのはインベントリの扱いだ。
 インベントリを見ると,body/right/left/backという具合にアイテムスロットが四つに分割されている。アイテムの分類を明確にするためにスロットを分けるのは分かるが,右や左といった分類については謎だ。これについて岩田氏に聞いたところ,例えば右手に大量の荷物を持っていると,右手にはアイテムを装備できないといった要素が想定されているらしい(両手で装備する武器はどのような処理になるのだろうか)。
 装備部位は全部で12か所で,首から上は頭部と顔部,左右アクセサリという四つに分割。それほど多い数字ではないが,ジーンズや制服といった現代風の装備があるためか,足がソックスとシューズの二つに分かれている点は本作らしいといったところか。

 画面をお見せできないのが残念だが,筆者の個人的な印象では,基本インタフェースはガンホーのROにかなり近い。岩田氏によると「シンプルさを突き詰めると,自然に近づいてきた」とのことだが,おそらく多少はROからの乗り換え組なども想定されているのだろう。ただ基本パラメータが増えているため,ROに比べて若干複雑にはなりそうである。"ライトゲーマーをターゲットにしている"と謳うガンホーが,そういったシステム的なハードルをどう下げているのか,そもそも下げる気はあるのか,という部分は,インタビューを通して明らかにしていこう。




4Gamer.net:
 どうもこんにちは。小島さんにインタビューするのはこれで何回目なんだろうかと思いつつ……。

小島氏:
 そうですね。「A3」やら「TANTRA」やら。本日はシステム面を岩田が,マーケティングや運営面は私が回答します。

4Gamer.net:
 よろしくお願いします。では早速ですが,ざっくりとした今後の予定を教えていただけますか。開発と,そして全体と。

岩田氏:
 ゲーム画面を見ると分かると思いますが,インタフェースなどはすべて仮のもので,すべて作り直す予定です。今後は衣装などを詰めていこうかなと。まぁキャラクターも戦闘システムもすべて動きますので,開発進捗度は80%ぐらいですね。マリオネットシステムやほかのシステムの実装,そしてデバックと調整が残っています。

4Gamer.net:
 実はスケジュールに関してはものすごく心配していたのですが,とりあえずなんとかなりそうですね。では,現状で実装されていないものが入れば,クローズドβテストという形ですか?

小島氏:
 クローズドβテストは,今のところ夏を予定しています。お盆前後ですかね?

4Gamer.net:
 その結果を受けてオープンβテストへ移ると。クローズド/オープンβテストはそれぞれどれぐらいの期間行われる予定ですか?

岩田氏:
 クローズドβテストは1週間ぐらいですかねぇ……。動作チェックと負荷テストの2段階にしようかと思っています。

小島氏:
 オープンβテストは,3,4か月ぐらいですね。ガンホーにすれば,今回は今までと違って,完成した韓国版をローカライズするわけではありません。これまではローカライズして日本語で動くかをチェックして,そして日本に合った要素をちょっぴり入れるというのでいっぱいいっぱいでしたが,今回はみんなでこねくり回す粘土細工のように作り上げようと考えています。プレイヤーの意見や要望もどんどん取り入れて,じっくりと時間をかけてテストしたいと思っています。

4Gamer.net:
 となると,オープンβテスト中に発生する仕様変更とか,フィードバックの結果を反映する時間は十分にとっていると。

小島氏:
 そうですね。ちなみに先日もキャンペーン(記事は「こちら」)でファンからアイデアを募集したところ,ものすごい量の投稿がありまして。まだゲームは動いていないんだけど……みたいな(笑)。ありがたいですね。

4Gamer.net:
 ちなみに現時点でのファンの反応は,どれぐらいですか?

小島氏:
 キャンペーンへの応募は,2日で400件ぐらいの応募がありましたよ。

4Gamer.net:
 簡単なアンケートじゃないし,結構スゴイ数ですね。

小島氏:
 自分のアイデアがゲームに反映されるというのはやはり魅力だと思いますよ。これからもこういった試みはまだまだ増やします。

■世界観と規模について。種族と国家の関係は?

4Gamer.net:
 まずは世界観やマップといったゲームの大枠について伺います。発表されているのは,舞台となるアクロニア大陸と,そのマップ中央にある自由貿易都市アクロポリスシティー,そしてアクロポリスシティーの東西南北に位置するファーイースト,モーグ,アイアンサウス,ノーザンという四つの国家です。
 ゲームをプレイするうえでプレイのペースというか規模をイメージしたいので,これらのそれぞれの広さや相互の距離などを教えてください。

岩田氏:
 そうですね,場所によってマップのサイズの違いこそありますが,それほど広大という感じではないです。実際に端から端まで大陸を横断するのにどれぐらいの時間がかかるかは,もちろん計測したのですが,参考になるかどうか……。
 というのも,キャラクターの移動速度などはまだ調整中でなんですよ。それに画面の拡大縮小によって,速いと感じる人もいれば,遅いと感じる人もいる。マップは中央の大陸と,周辺の陸地ごとに複数存在します。マップ間の移動はシームレスではなく,ROのようにポータルを使用する感じです。

4Gamer.net:
 東西南北に位置する四つの地域はどれぐらいの規模なんでしょう。

岩田氏:
 中央の大陸に対して,島が四つあると考えてください。そしてそれぞれ国家という単位で存在しています。

4Gamer.net:
 一つ一つの国家に街や村,フィールドやダンジョンがあるということですね。移動手段は船がすでに公開されていますが,ほかに何かありませんか? 

岩田氏:
 移動方法は,走って橋を渡ったり,NPCに頼んでワープのように運んでもらう形にしようかと思っています。もちろんその対価や移動距離などは調整中です。また初期の段階では,グラフィックスが明らかに変わるような乗り物などは実装しません。

4Gamer.net:
 じゃあ高速移動はキャラクターのスキルなどで実装されるのでしょうか?

岩田氏:
 そうですね。実装するかどうかは要検討ですけど。

4Gamer.net:
 では実際にプレイヤーが冒険する場所なんですが,オーソドックスに,街の周辺にフィールドがあるという形なんでしょうか?

岩田氏:
 はい。例えばアクロポリスシティーはカルデラ湖に浮く形で存在しているので,上下左右の端から外に出ると,その先にフィールドが広がっている感じですね。北へ行くと,まずは草原,荒れ地があって,そして雪原を越えると氷の大地に辿り着くといったように景色が変化していきます。

4Gamer.net:
 なるほど。その景色と関連する質問なのですが,中心の街を囲む四つの国家には,それぞれ景色の違いやバックグラウンドの違いがありますよね。この各国家にダンジョンなどの狩り場があった場合,それは単純に対象レベルに差があると理解していいのでしょうか? それとはまた別の差別化がある?

岩田氏:
 これはむしろ今後のアップデートの話になるのですが,基本的にクローズドβテスト,オープンβテスト開始時点で,四つの国家すべては実装しない予定です。作るだけなら可能なんですが,おっしゃるとおりそれぞれに違いがないですからね。システムとして意味が必要,と。
 ただ,中央の大陸のみだと景色もあまり変わりませんし,ダンジョンなどは"氷のダンジョン"みたいなバリエーションをいくつか用意する予定です。そうやって四つの国のバランスをとりながら,例えば各ダンジョンの1階は初心用で……という具合に実装するかもしれません。そこは開発を担当しているヘッドロックさんと相談して決めている段階です。プレイヤーから要望をもらえれば,オープンβテスト中に追加したりもするでしょうね。

4Gamer.net:
 そうなると,クローズド/オープンβテストでは,中央の都市以外は実装されないのですか?

岩田氏:
 それはおそらく最後の1か月ぐらいで決めるかと(笑)。中央のアクロポリスシティーのある場所は大陸なので,都市以外の村なども複数あるんですよね。当面はそれでバリエーションを作ります。あとこれは私個人の希望なのですが,北の国だったら氷に包まれているから,首都以外に村はなくていい,とか,逆に国の力が弱まっているから首都はなくて,あちこちに村が散っているだけといった設定も面白いかなと。まぁここはまだまだ考えていきます。

4Gamer.net:
 ではすべてのプレイヤーが中央の都市からのスタートですか?

岩田氏:
 登場する3種族には一応ストーリーがありますので,キャラクターを作ってログインする場所こそ異なりますが,まず降り立ってチュートリアルを受けてもらう場所は中央の都市になるのかなぁと考えています。
 ただプレイヤーは最初に生まれた都市に根付くという傾向があるので,であれば最初から村に生まれて,キャラクターを育てつつ都市を訪れる形にしようかとか,初期の混雑と折り合いをつけて決めるつもりです。

4Gamer.net:
 あれ? とすると,国家と種族はとくに関係ないのですか?

岩田氏:
 そうですね。国家のバックグラウンドは,種族より,それぞれの国からアクロポリスシティに駐屯している騎士団というものが大きく関わってきます。四つの国のストーリーは,その騎士団を通じて徐々に明らかになっていくような作りです。




■職業ギルドの機能とパーティプレイ,PvPについて

4Gamer.net:
 ではゲームプレイにおけるキャラクターの行動様式ついて伺います。現時点では12の職業が公開されていますよね?

岩田氏:
 あ,あの12種類のエムブレムのことですか? あれ実は,見た目でいいとこ取りというか,これを出しておくと皆さんがいろいろ推測してくれるだろうなぁと考えて公開したものなんですよ(笑)。初期の段階で,あれがそのままでドンと実装されるわけではないです。

4Gamer.net:
 ああ,そうなんですか。種族が3種類にクラスが12種類なので,種族ごとに職業の分担があるんじゃないかと勝手に想像していたんですが。関係ないけど,国も四つで割り切れたりするし。

岩田氏:
 やはりそう考えますか(笑)。しかし職業は発表されたものがそのまま入るわけではないですよ。現段階では,とくに種族と職業を完全に固定しない方向で進めています。

4Gamer.net:
 では本作におけるスキルとレベル,そもそもキャラクターの成長方法はどのような感じなのでしょうか?

岩田氏:
 キャラクターはレベルをベースにして成長します。ほかには職業の経験があって,その二つによってキャラクターの成長度が測れるという形になっています。

4Gamer.net:
 (デモPCを見ながら)ああ,このレベルとジョブレベルってやつですか。

岩田氏:
 ええ,そうです。ただ,ひたすらプレイし続けているプレイヤーが有利になる形にはしたくないので,マリオネットシステムや"新たな試み"を実装することによって,面白い運営ができればいいかなと。

4Gamer.net:
 その"別のシステム"はとりあえず横に置いておくと,キャラクターのステータスを見る限りではROを連想しますね。

岩田氏:
 確かにレベルとジョブレベルという構成を見ると似ていると言えますね。ただスキルはちょっと違います。
 スキルは"上げていく"タイプではなく,修得したりマスターしたりするのに別の試練を用意しました。ジョブレベルが上がりました,スキルにポイントを割り振りました,はい使えるようになりました,というのはちょっと味気ないんじゃないかなと。

4Gamer.net:
 では,ポイントで割り振るか,使っていくと上がっていくかと聞けばどっちになります?

岩田氏:
 使っていて上がるというより,修得するのがちょっと大変かも,と思ってください。

4Gamer.net:
 うーん謎ですね。職業によって覚えられるスキルは決まりますか?

岩田氏:
 現時点では,スキルは職業に結びついていると考えてください。例えばこれもアイデアの段階ですが,種族専用のスキルや,このある種族と職業の組み合わせでしか使えないスキルを足してみようかなどと考えています。

4Gamer.net:
 種族の差異がイマイチぼやけていたので,そういうスキルシステムが実装されると分かりやすいですね。現状出ているギルドエムブレムというのは,職業別に街に建物があって,といった感じですか?

岩田氏:
 職業の代表者が中央の都市に集まっています。

4Gamer.net:
 職業ギルドにはどんな機能がありますか? クラス専用の武器が売っていたりとか,クエストを受けられたりとか。

岩田氏:
 初期の段階では,アクロポリスシティーのアップタウンという場所にギルド宮というものがありまして,各ギルドの代表者がそこにそれぞれに部屋をもっている感じです。転職の手続きや職業ごとのクエスト依頼が,その主な役割です。アクロポリスシティーの周りの4国家が実装されていくにつれて,例えば北方は魔法の大国で魔法系ギルドの何かがある……といったことも当然考えています。

4Gamer.net:
 そこで各国のカラーも出てくるわけですね。さてその職業に関連して,このゲームにおけるパーティ要素について教えてください。いったいどういった構成になるのか,また具体的に何人なのかという部分を。

岩田氏:
 もちろんパーティプレイは存在します。そのメリットは,ほかのオンラインゲームと変わりません。プレイヤーズギルドなどもいずれ実装する予定です。

4Gamer.net:
 現状想定しうる典型的なパーティの人数を教えていただけませんか?

岩田氏:
 初期の構想では3,4人ですかね。前衛/後衛/回復,前衛/後衛/回復/支援といったオーソドックスなものです。10人以上いないとキツいダンジョンなども,状況を見て実装するかもしれません。

4Gamer.net:
 10人以上……といえば,PvPなどの集団戦闘要素,またレイドのような大規模戦闘は想定されていますか?

岩田氏:
 まず通常フィールドではPvPは不可能です。いや,もちろんPvPはありますけど,初期のクローズドβテストには入りません。

4Gamer.net:
 実はそれを聞いたのは,種族間の関係を知りたかったからなんです。種族はキャラクターのバリエーションとしてだけあるのか,もしくはストーリー上どこかで交錯するのかという部分が謎なんですよ。

岩田氏:
 お話として,テキストであればのちのちの構想も含めて存在します。人間族,天使族,悪魔族が当たり前のように共存するその前の時代にあたるものと,その先の話も用意してありますが,まだゲームには反映できていません。そのストーリーを,種族間で戦うことで進めるのかとか,ワールド全体を巻き込んだものかという部分は未定です。せっかく分かれているので,面白い展開にしたいなと。

4Gamer.net:
 じゃあNPCとの関係はどうです? 種族間でファクションみたいなものがあって,この種族はこの国家では嫌われている,みたいな。

岩田氏:
 現時点ではありませんが,せっかく種族が分かれていることだし,お互いにいがみあっているみたいなことはありえるでしょうね。天使族と悪魔族,それぞれの世界も別途用意したいですし。




■生産システムと気になる"着せ替え要素"について

4Gamer.net:
 本作にアイテム生産要素や合成要素はありますか?

岩田氏:
 はい,材料から自分が作り出すいわゆる生産システムは存在します。特定の職業が行えるものと,NPCを通じて誰でもできるものがありますね。まぁクローズドβテスト段階では一部を実装する形になると思います。

4Gamer.net:
 ゲームによってはずっと生産を行っているプレイヤーを見かけますよね。要するに,生産を戦闘と同じぐらいの比重(楽しさ)で遊べますか? という質問なのですが。

岩田氏:
 初期に生産できる材料やアイテムなどはこちらで設定してあります。これらをどの段階でリリースしようかと考えているところです。ポイントは,素材の詳細を"〜の材料になるかも"みたいな表示にして,隠しておくことです。そうすることで,鉄鉱石を今のうちに鉄に生成しておいて……という具合にプレイヤーが想像して生産を行ってくれるだろうということですね。
 どこまで臭わせておいて,どこまでプレイヤーが楽しんでくれるか。そこでこちらで世界のバランスを見て,みんな鉄を集めてるみたいだし,さて剣作成を実装するか,みたいな感じにしようかと。

4Gamer.net:
 それは序盤から?

岩田氏:
 その行為に明確なメリットがあるかどうかは,言ったように先読みをしている人しか楽しめないかもしれませんね。しかし実は,やったほうがメリットがあるんですよね。金銭的なメリットというより,本作には"生産をしなければならない"といった要素が多少なりともあるんですよ。先ほどの例でいうと"鉄鉱石を鉄にしておいたほうが良い"みたいな。

4Gamer.net:
 なるほど。MMORPGでは,必要性やメリットとは別に生産を楽しむ向きがありますよね。習性(?)でやる人もいそうだし(笑)。

岩田氏:
 正直なところ,キャラクターの装備はすべてグラフィックスに反映できますし,おそらく着せ替えという部分に着目して生産を行うプレイヤーが多いでしょう。なのでこれらの人達が報われて,さらに生産と着せ替えが結びつけられるようなシステムを考えましょう,というところでしょうか。
 例えば生産をやる人がまったくいなかったとすると,みなさんが生産をやって材料を集めるまでは新しいアイテムを追加しない,といった手も考えられますね。プレイヤーの行動によって決めたいと思います。

4Gamer.net:
 う,それはネガティブな誘導ですね。

岩田氏:
 基本的には生産システムを押し付けるつもりはないんですよ。どのレイヤーにいるプレイヤーも,自分の楽しみ方に付加価値を与えるような要素にしたいです。

4Gamer.net:
 そういえば,本作のコスチューム,というか服装はすべて装備品だと聞いていますが,パラメータ的に弱い装備をこだわって着続けるのは可能なのでしょうか? 例えば同じパラメータでも色のバリエーションがあるとか。

岩田氏:
 ええ,キャラクターの能力と同じで,ゲームが進むにつれてみんなが同じ装備になるのはつまらないですね。それを回避するために,持っているアイテム自体を強化して,見た目はただのリボンなのにありえない防御力をもったものを作り出すとか,別の方法を用意するとかは,開発元と相談という形になります。その部分はヘッドロックさんでもこだわりのある部分です。
 ただ,見た目の可愛い初期の装備で最後まで行きたいという要望は分かるけど,それはゲームとして成り立つの? とか,プレイヤーが望んでいるんだからいいではないか,といった議論はあります。今開発元といろいろと話し合っているところですよ。もちろん装備は,能力派と見た目派に分かれるのが分かっていますから,似たような装備でも実はテクスチャがちょっと変わっているといった基本的なものは用意します。

4Gamer.net:
 こだわっても損をしない,というのがポイントですね。分かりました。
 では次は,気になってしようがないマリオネットについて聞いていきます。

(後編に続く)

→岩田・小島両氏に聞くECO<後編>は,「こちら」


エミル・クロニクル・オンライン
■開発元:ヘッドロック
■発売元:ガンホー・オンライン・エンターテイメント
■発売日:2005/12/09
■価格:1500円(税込)/30日間
→公式サイトは「こちら」

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2005.06/20050622181153detail.html