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[E3 2005#108]「Rise of Legends」の制作者Brian Reynolds氏インタビュー
2005/05/21 23:57
 先日「こちら」で記事を掲載した,期待のRTS「Rise of Nations:Rise of Legends」(以下,RoL)だが,その制作者であるブライアン・レイノルズ(Brian Reynolds)氏がインタビューに応じてくれた。レイノルズ氏といえば,Civilizationの産みの親であるシド・マイヤー氏とともに数々の名作タイトルを手掛けた経歴を持ち,自らのレーベルを立ちあげてからの処女作となる「Rise of Nations」(以下,RoN)でも,世界的にも高い評価を受けた人物である。
 歴史を題材とした比較的硬派なRTS「Rise of Nations」が,続編となるRise of Legendsでは一転してファンタジーRTSへと変貌を遂げた理由は何なのか。今回のインタビューでは,そのあたりを手始めに作品に対するいろいろな質問を投げかけてみた。



4Gamer.net(以下,4Gamer):
 まず始めに,前作であるRoNは,良い意味で非常にクラシカルというか正統派な雰囲気を持った歴史RTSだったと思うのですけれど,続編となるRoLでは,なぜファンタジーな世界観をベースとすることにしたのでしょうか?

Brian Reynolds氏(以下,Reynolds氏):
 ああ,ここはいろいろな人に聞かれる質問なんだけれど(苦笑),この理由/あるいは最大の理由はすごく単純で,要は「僕自身がファンタジーベースのRTSを作りたかったから」という一点に尽きてしまうんだよね。
もちろん,「なぜファンタジーなのか?」についてはさまざまな理由があるのだけれども,端的に説明をすれば,現在の技術でゲーム的にも映像的にも最もエキサイティングなRTSを作るにはどうすればいいのか? と考えた場合,ヒストリカルなゲームというのはいろいろな制限を受けることを,非常に強く感じていたからなんだ。

4Gamer:
具体的に言うと?

Reynolds氏:
 そうだね……例えば,RoLではNovadex物理エンジンのライセンスを受けているけれど,その効果をもっともエキサイティングに見せるには? となると,現実の世界をベースにするとどうしても自由な発想ができなくなってしまう。
 これはゲームルールにしても同じで,ヒストリカルなゲームになると,どんなにデフォルメしたとしても国や民族,あるいは歴史的事実の"ニュアンス"を入れ込まないわけにはない。本当の意味で「革新的なゲームプレイ」を実現しようと考えたとき,架空の世界をベースとしたほうがむしろやりやすいことに気がついたんだ。

4Gamer:
なるほど。

Reynolds氏:
 とはいえ,オークやエルフが登場するようなファンタジーというのは,ご存じの通りやり尽くされてる感があるので,個人的にも好きなモチーフであったスチームパンク的なデザインの機械テクノロジー文化を持ち込んで,プレイヤーにとってできるだけ目新しいものであるように努めたね。
 RoLには「機械技術 対 魔法」という相反するものの対立が構図としてあって,機械技術と魔法技術が正面から対立した場合にはどういった戦いになるのか?という物語を描いているんだ。

4Gamer:
 ヴィンチ族のレオナルド・ダヴィンチをオマージュした施設/ユニットデザインも非常に素晴らしいですね。

Reynolds氏:
 ほかのファンタジーベースの作品とは違う印象を与えられたなら嬉しい限りだね。



4Gamer:
 そういえば,RoLは以前にも増して内政部分が簡素化されていますね。これはやはりマルチプレイゲームを志向してのデザインになるんでしょうか?

Reynolds氏:
 それはそのとおり。Rise of Nationsでもマルチプレイゲームはかなり重要視して作り込んでいたのだけれど,今回はそれ以上に意識している。今回のE3では展示していなかったのだけれど,今後は対戦ロビーシステム周りを作り込んでいくことになるだろうね。まだ決定事項ではないものの,ラダーシステムはもちろんのこと,マッチングシステムやクランサポートシステムなんかも用意されると思う。

4Gamer:
 となると,以前は対戦ロビーに関してはGameSpyのシステムを利用していたと思いますが,Rise of Legendsに搭載される対戦システムはまったく別物が用意されるという意味でしょうか

Reynolds氏:
 ベースとしてはGameSpyのシステムを利用することになると思うけど,その背景にあるシステム……例えばマッチメイクだとかクランシステムだとかというのは,GameSpyとはまったく違うものになるだろうね。

4Gamer:
 そういえば,ゲームのプレイ時間はどのくらいを想定されているのでしょうか? 前作よりもさらに手軽に遊べるようなタイトルだと感じられましたが。

Reynolds氏:
 良いことを聞いてくれた(笑)
 というのも,我々開発チームの間で前作であるRoNのゲームコンセプトというのは「お昼休みに世界征服」というものだったんだ。だいたい40分〜1時間でゲームに区切りが付くという感じで,実際それを実現できていたと思う。それが今回では,「休憩時間に」という言葉に置き換わっているんだ。プレイ時間でいえば,20分あるかどうかというくらいかな? プレイ時間をスリムにすることで,よりカジュアルなプレイヤーにも親しみやすいゲームスタイルになるんじゃないかと考えているんだ。

4Gamer:
 マップについてはどうなるんでしょうか? 前作と同じランダムマップになるのですか?

Reynolds氏:
 マップについては,基本的にはデザイナーが用意した固定のもので遊ぶスタイルに変更しようかと考えている。ただマップ自体は固定なのだけれど,その中に入る要素……ちょっとした資源の配置や中立施設/ポイントだとかはランダムになると思う。もちろん,不公平が生じることのないように細心の注意を払って調整はするけれど,ランダム性をまったくなくしてしまうことは考えていないね。

4Gamer:
 中立施設とは一体なんでしょうか? 
 またRoNの特徴的な"境界線システム"などがあったと思いますが,そういった要素は今作でも残されているのでしょうか?

Reynolds氏:
 まず境界線システムについてだけれども,これはもちろん今作でも重要な要素の一つとして盛り込まれている。勢力ごとの境界線は,まず前作と同じように施設や技術力によって強化されていく。たくさんの施設を作れば境界線を押し上げる力は強まるし,また境界線を広げるための施設というのも考えている。
 また中立施設に関してだけれど,これも境界線に関係する非常に戦略的な要素になる予定なんだ。というのも,各マップにはそういった中立施設/ポイントが多数配置されて,それらを占領することで自国の境界線を広げたり,ときには特定のボーナスを得たりといったことが可能になるからなんだ。中立施設/ポイントは,マップによっていろいろな"形"が用意され,例えば,砂漠マップだったらそれはオアシスだったり部族の集落であったりという具合になるわけさ。
 RoLでは,マップ上に点在する中立ポイントを,いかに多く押さえられるかが勝敗を分かつポイントでり,中立施設/ポイントはゲーム中に奪い奪われる"戦術上の目標"ということになるだろう。

4Gamer:
 では時間もなくなってきたので,最後に日本のゲームファンに一言お願いします。

Reynolds氏:
 オーケー。えーと,オホン。
 今回,日本のプレイヤーに「Rise of Nations」の次回作である「Rise of Nations:Rise of Legends」について,ここでお話できたことをとてもうれしく思います。
 Rise of Legendsは,従来のRise of Nationsの持っていた要素がふんだんに盛り込まれた作品であると同時に,新たな感覚のゲームプレイを画期的な3Dグラフィックとともに楽しめる,新世代のRTSであると確信しています。
 ぜひ楽しみにしてください!

4Gamer:
 本日はありがとうございました。



 さて,短い時間ではあったが今回ざっと話を聞いた限りだと,やはり大枠の方向性という意味では,対戦型のRTSとして高い人気を誇る「Warcraft III」のそれに,非常に近い作品になりそうな印象で,短い時間でも手軽に対戦できるタイプのゲームプレイになるのはまず間違いなさそうな雰囲気だ。
 ただ,随所にRoNの良さを残したルール設定に加え,「スーパーユニット」や「Dominances(優勢性)」などといった独自のフィーチャーも少なからず用意されているなど,単なる真似だけでは終わっていないのが,さすがというところ。しっかりと作り込まれさえすれば,非常に面白くなりそうなタイトルだけに,今後のレイノルズの舵取りに期待したいところである。(TAITAI)


マイクロソフト ライズ オブ ネイション:ライズ オブ レジェンド
■開発元:Big Huge Games
■発売元:マイクロソフト
■発売日:2006/06/16
■価格:9870円(税込)
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2005.05/20050521235737detail.html