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[E3 2005#018]「Age of Empires III」プレイアブルデモがお披露目
2005/05/19 19:41
■超高性能グラフィックスエンジン+Havokエンジンの効果やいかに!?
 国内でもRTSとしては異例のヒットを遂げた「Age of Empires」(以下,AoE)シリーズの最新作「Age of Empires III」(以下,AoE3)が,マイクロソフトの「Game for Windows」ブースの一画に展示されていた。
 AoEといえば,全世界でシリーズ総計1600万本もの発売本数を誇り,文字どおりRTS界の礎を築いたタイトルの一つ。そのシリーズ最新作AoE3については,今年(2005年)の1月に正式発表されると同時に,RTSらしからぬあまりにもハイクオリティな映像(画像)が公開され,ゲーマー諸氏の度肝を抜いたのは記憶に新しいところだろう。

 今回展示されたのは,実際に触れるプレイアブルなバージョン。まだまだαバージョンとのことで,細かいバランスやインタフェースについてはきちんと作り込んでいないという話ではあったが,その映像の素晴らしさたるや既存の作品群とは明らかに一線を画すレベル。とくに水面に関する表現力は抜群で,水面に映り込むオブジェクトの陰影の細やかさや,一定のリズムで打ち寄せる波の表現などは,まさに圧巻の一言。海に至っては,その波に合わせて各船がゆらゆらと揺られていたりするなど,非常に芸が細かい。
 また今回は,ライセンス提供を受けているHavok物理エンジンによる演出もすでに実装され,砕け散る建物の残骸や,砲弾の炸裂によって吹き飛ぶ兵士達などが,ある種異様な細やかさで描かれていたのが印象的だった。
 例えば大砲の砲弾が隊列を組んだ兵士達に直撃した場合も,一人一人違う吹き飛び方をするのはもちろんのこと,ある者は帽子が取れ,ある者は持っていた銃を落としてしまうなど,大砲の弾の角度によってさまざまな結果が生まれるのは素直に面白い要素だろう。思えば初代AoEを初めてプレイした時も,そのユニットアニメーションの細やかさに驚いたものだが,最新作AoE3に抱いた感覚は,まさに数年前に抱いたそれに近い印象といえる。
 また生粋のゲーマーならば気になるであろう,物理エンジンが"ゲーム部分"にどう影響するか? についてだが,結論から言うと「ここはまだアイディアをまとめ切れてない状態」だとのこと。ただ,ユニットが大砲の爆風によって倒れた木の下敷きになってやられてしまったり,大砲の弾の当たる角度によってダメージや破片の飛び散り方が違ったりするなど,少なからず影響はあるという話ではあった。
 今回のお披露目では,物理エンジンをフィーチャーしたデモンストレーションが数多く用意されており,ほかにも爆発で吹っ飛ばされた兵士が崖から転げ落ちるシーンや,建物がガラガラと崩れ落ちるシーンが頻繁に見受けられた。実際にその映像を眼にするまでは「そんなにやって,無駄に重くなるだけでは」と思っていた部分も少なくないのだが,ここまで高いクオリティでやられてしまうと,素直に感心するしかない。
 気になる必要スペックについても聞いてみたが,快適に動かすには,2GHz以上のCPUに128MBのビデオメモリが載ったビデオカードは欲しいという話。さすがにそれなりにハイスペックなPCが必要となる雰囲気なので,本作に興味を持っている人は,発売時期に合わせたPCの買い換え/アップグレードを視野に入れておきたいところだろう。



■本作の時代的背景と登場する国家について
 最新作となるAoE3では,年代的には大航海時代の幕開けである15世紀から,急速な技術革新が進んだ産業革命前後(19世紀)までを舞台としており,火器を使った戦いが大きなウエイトを占める。登場する国家は,イギリス,フランス,ドイツ,ロシア,スペイン,ポルトガル,オランダ,オスマン=トルコといった,ヨーロッパを中心とした8か国で,日本を含めたアジア諸国は残念ながら今作では登場しない。
 シリーズ従来作品と同様に,各国にはそれぞれ特性が用意されており,聞けた範囲で言えば,イギリスは建築に関するボーナスが,ドイツは軍事,オランダは商業,スペインは開拓や後述するホームシティに関するボーナスがあるという話。またロシアはいわゆる「廉価なユニットの大軍で押し寄せる」ような勢力であるという。

 さて,シリーズを通してのファンにとっては今さらな話だとは思うが,軽く作品の概要を説明しておくと,本作は,人類の歴史を題材としたリアルタイムストラテジーゲーム(以下,RTS)。プレイヤーはヨーロッパを始めとする国々のいずれかを選択し,その国を発展させながら敵対する勢力の打倒を目指す。一定の資源を費やすことで"進化"というアクションを行える点が本シリーズの最大の特徴。つまりは操作する国の文明度を進化させることで,より高度なユニットや技術を使用できるようになり,相手に対して絶対的な優位を獲得できるというワケだ。戦いながらいかに相手に先んじて進化に必要な資源を集めるか(貯めるか)が,ゲームの大きなポイントとなっている。

 このようにゲームの肝ともいえる"進化"についてだが,これまでと同じ4つの"時代"を基本とするのは変わらない部分。ただ面白いのは,今回は"決定的な時代"として位置づけられるという"第5の時代"が存在するというところだろう。この"第5の時代"は基本的な4つの時代とは異なり,進化には膨大な資源が必要になるのだが,国家ごとに用意されるスーパーユニット(を生産できるようになるなど,文字通りの"戦況を一変させる"要素となりうる一種の"最終兵器"的な扱いとなるもの。聞くところによると,前作に当たる「Age of Mythology」におけるスーパーユニットであった「Titan」に近い要素だという。ただ何か特殊なスーパーユニットが用意されているわけではなく,あくまでも既存のユニットのアップグレードがさらに行えるという形。この,"決定的な時代"である「帝国の時代」の兵士ともなれば,倍する敵に対してさえ勝利してしまうほど強いのだという。個人的には「相手と自分が両方とも帝国の時代になってしまったら,結局泥沼の消耗戦になるのでは?」と思ったのだが,この点に関しては「帝国の時代のユニットは本当に強力なので,ちょっとした時間の差でも勝敗の決定的な要因になり得る」との話であった。
 ただ進化コストは,第4の時代に進化するために必要な資源の10倍前後になるのだとのこと。これまでは膠着状態での消耗戦に辟易することも多かった本シリーズだが,上記のようなシステムが用意されることによって,その膠着状態にもある種駆け引きの要素(消費を押さえて資源をため込む)が盛り込まれることになるワケだ。かなり興味深い新要素であるのは間違いない。ただ現段階では,まだ第5の時代に関する具体的な話はできないとのことなので,詳細は追って行われるであろう発表を待ちたいと思う。
 以下,発表されている各時代について軽く紹介しておこう。



〜各時代紹介〜
・発見の時代(Discovery Age)
 いわゆる町の中心やそれに類するもの一つでゲームが始まり,探索者を使って未開の土地を開拓していく時代。マップ上には小さな財宝などが配置されており,それらを発見することで食料や金などのボーナスを得られるという。また,動物に襲われて木の上に逃げている(降りられない)原住民を助けたりすると,その原住民を自国の市民として扱えるようになったりもするようだ。

・植民の時代(Colonial Age)
 国民の居住地区自体を開拓し,広めていく時代。交易もこの時代から行うことができ,本格的な経済発展が可能になる段階のようだ。

・要塞の時代(Fortress Age)
 この時代からは大砲を作ることができるようになり,領土の奪い合いが一層激しくなる。

・産業の時代(Industrial Age)
 進化の基本的な最終形。大量のユニットを養う経済力を持ち,またすべての兵種を扱える時代でもある。

・帝国の時代 (Imperial Age)
 決定的な戦闘力を発揮する"第5の時代"。帝国の時代はほかの時代とは異なり,ゲームデザイナーはこれを一種の「決定的」な(均衡を打ち破る)時代と考えているという。ただし,帝国の時代への進化コストは膨大で,前の時代の10倍前後の資源が必要になる。



■自分だけの文明を育てていける? 新機能「ホームシティ・システム」
ホームシティの項目は,スキルツリーのような形で表現されている。これらのツリーを伸ばすことによって,その効果を高めていくことができるのだ
 グラフィックの変貌ぶりも凄まじい本作だが,ゲームシステムの面における最も大きな変化(というより,追加だが)の一つが,これから紹介する「ホームシティ」システムだといえる。ホームシティ・システムとは,プレイ中に得られる特殊なポイント(一応,現在の表記は経験値ということになっている)を消費することで,資源やユニットが贈られるなどといったボーナスをその場で与えられるというもの。
 少し分かりにくいかもしれないのでもう少し詳しく説明すると,画面左下にある経験値バーが一回転フルに貯まるごとに,「ホームシティへの要請権」を一回ずつ獲得でき,それを行使することによって,いわば前作「Age of Mythology」におけるゴッドパワーの簡易版のような効果を得られるという感じである。
 世界観的な設定的としては,本作のテーマがアメリカ大陸における植民地戦争であり,要は実ゲーム中(RTSとしてプレイする部分)の町の発展=植民都市の発展という位置づけらしい。ホームシティ・システムによって得られる恩恵というのは,つまりは"首都からの援助物資/援軍"という設定になっている。
 ホームシティ・システムとは,いわばある種のブースター措置であり,それをいつどこに使うかによって,ゲーム内の戦略が大きく変化する可能性を秘めている。資源援助を集中的に要請することで進化の速度を速めてもいいし,援軍(ユニット)を要請することで序盤のラッシュを行ってもいい。また攻め込まれたときの場当たり的な対処もこのシステムによって比較的簡単に行えるようになっているらしく(つまりは,資源がなくても取り急ぎ軍隊を揃えられたりする),安易な攻撃によるゲーム終了という事態もなくなっているという。ゴッドパワーほどダイナミックではないが,地味に奥深そうなシステムであり,非常に面白い試みだといえるだろう。
 さらに興味深いのは,プレイヤーごとにこのホームシティの"テクノロジーツリーを成長させていける"という点である。つまり,プレイヤーはマルチプレイをするごとにアカウントを通して共有される"経験値"を獲得でき,その経験値を貯めることによって,自分のホームシティのレベルを上げていけるのである。ホームシティのレベルが上がると,プレイヤーは要請コマンドのいずれかをレベルアップ/新規追加していくことができ,より高度な戦術を組み立てていけるようになるわけだ。
 実ゲーム中における"ホームシティへの要請"を行うための経験値と,全ゲームにまたがってアカウントごとに蓄積される経験値と,経験値の扱いに二つの軸があるのがややこしいところなのだが,要はRPGのような感覚で,自分のアカウント(ホームシティ)を成長させていけるというわけだ。ラッシュ用のテクノロジーツリーを完成させたり,あるいは経済大国用のテクノロジーツリーを目指してみたりと,ホームシティはあらゆるプレイスタイルを具現化するためのゲームシステムだという。
 これは非常に面白い試みで,言い換えれば,昨今リプレイ機能によって戦術が固定化されがちな風潮がある中,このホームシティシステムは,プレイヤーの戦術に"個性"を持たせる試みだともいえる。なぜなら,ある戦術が有効だと知ったとしても,その戦術を真似するにはホームシティもまた同じように成長させなければならないからだ。正直,マンネリ化が激しいRTS界において,この試みの意味するところは小さくないだろう。バランス調整に関してはこれから着手するとの話だが,ぜひ面白いシステムとして仕上げてほしいものだ。
 またこのホームシティシステムの導入に合わせて,マッチングロビーであるESO(Ensemble Studios Online)も大きな進化を遂げるという。先の説明したホームシティのレベルはラダーのレベル(ランキング)とはまた違う評価軸(プレイヤーの強さを計るうえでの)になるため,その整合性を取るためのシステムが導入されるとのこと。インタフェース自体も抜本的な改革が施されるようなので,ここはぜひ期待したいところ。ESOのロビー/マッチングシステムには若干物足りなさがあるのは否めないところなので,これを気にぜひ充実を図ってほしいところである。
 ちなみにホームシティシステムに欠かせない"経験値"の獲得方法だが,単純に時間ごとに一定のポイントが蓄積されていくほか,未開の土地を開拓していくか,建物を建てるか,敵を倒すか,あるいは交易をするかでも"ボーナス経験値"を獲得することが可能。大きな/沢山の建物を建てたり,大軍を打ち破ったりすると,たくさんの経験値を獲得できる。
 またホームシティのレベルアップポイント(Diabloのスキルポイントのようなもの)は,一度振ってしまうと,やり直しは利かなくなり,もし違う"スキルセット"でゲームをプレイしたい場合は,また一からアカウント(ホームシティ)を育てていかなければならないという。ゲームの説明をしてくれたChris Lee氏によると「RPGのキャラクターと同じさ」とのこと。まぁ理屈は分かるのだが,RPGの成長過程と近いレベルの面白みがあるのか否かがポイントとなりそう。成長の作業が単なる"作業"にならないよう祈るばかりである。

 ともあれ,ホームシティが興味深いシステムであるのはまず間違いのないところ。追って詳しい情報が出てくるのを待ちたいところだ。



 最後にシングルキャンペーンについても少し触れておきたい。シングルキャンペーンは,1500年前後から南北戦争の直前までのアメリカ大陸の歴史をテーマとしており,全24のシナリオで構成される。16世紀初頭から19世紀中頃までの植民時代が題材ということで,ゲーム中には,イロコイ族やチェロキー族などの北アメリカ系のネイティブアメリカン(インディアン)に加えて,アステカ族やマヤ族などといった南米系の民族も登場するという。題材的に日本人に馴染みが深いとは言い難いが,シナリオモードのデモンストレーションを見る限りは,演出などはしっかりと作り込まれていそうな雰囲気。こちらも期待してよさそうである。
 北米版は,2005年後半の発売を予定。日本語版の発売については分からないが,開発スタッフいわく「いつもどおり,北米版が発売してから1〜2か月以内には各国語版がリリースされるだろう」とのこと。RTSの中でもとくに注目作である本作。その発売が今から楽しみである。(TAITAI)


マイクロソフト エイジ オブ エンパイア III
■開発元:Ensemble Studios
■発売元:マイクロソフト
■発売日:2006/01/27
■価格:9400円(税別)
→公式サイトは「こちら」

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