イベント
アマゾン ウェブ サービスの最新技術や導入事例が紹介されたイベント,「AWS Summit Tokyo 2014」のセッション「Amazon Androidアプリストアの戦略とこれから」をレポート
イベント初日に行われたセッション「Amazon Androidアプリストアの戦略とこれから」では,日本でも発売されているKindle Fireタブレットシリーズをはじめ,まだ日本に上陸していないスマートフォン「Amazon Fire Phone」やスマートテレビデバイス「Amazon Fire TV」とAmazonアプリストア連携の特徴が紹介された。
本稿では,これらAmazon製デバイスが日本ではどのように展開されるのかを,少しだがうかがい知ることができた,セッションの内容をまとめてレポートしていこう。
AWS Summit Tokyo 2014
セッションのメインテーマはAmazonのアプリストアである。新居氏が日本のアプリストアに関しての解説,Cutsinger氏が米国のアプリストアや米国で先行販売されているスマートデバイスの紹介を行うという形で進行した。
Amazonのアプリストアは,日本ではKindle Fireタブレットの発売(2012年12月)に先駆けて,2012年11月にスタートした。当初はAndroid端末向けに(Amazonの)ストアアプリを配信していたが,2013年6月にAmazonのWebサイト上にKindleストアがオープンし,アプリ購入が可能になった。
新居氏は,アプリストアは順調に規模を拡大しており,ガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」をはじめとした電子書籍(Kindle本)以外のアプリも配信するなど,2013年から2014年にかけて,販売しているアプリの数が3倍になっているとアピールする。
念のため説明しておくと,KindleシリーズのラインナップにはKindle FireシリーズとKindle Paperwhiteがあるが,ゲームアプリをプレイできるのはFireシリーズだけである。また,AmazonのWebサイトで購入できるのは電子書籍のみであり,ゲームアプリなどはkindle Fireからアクセスできるアプリストアでしかダウンロードできない。
新居氏は,アプリ開発者にとって,Amazonが展開するKindle Fireタブレット,Fire Phone,Fire TVという3つのスマートデバイスにアプリを提供できることが,Amazonアプリストアの魅力なのだとアピールした。
Fire TVは家庭用テレビに接続するセットトップボックスで,リモコン「Fire TV Remote Controller」が標準添付されている。米国で2014年4月に発表されたときは,99ドルという思い切った価格設定が話題になった製品だ(関連記事)。なお,別売のゲームパッド「Amazon Fire Game Controller」の価格は,39.99ドルとなっている。
Cutsinger氏は,Amazonで購入した映画を見たりゲームをしたりできるのがFire TVの特徴だが,「Voice Search Button」を搭載しており,音声で操作ができるのがポイントだと説明。映画やゲームのタイトルを音声で呼び出す実演を行った。Cutsinger氏曰く,音声で操作できるのでリビングで気軽に楽しめるとのこと。
またCutsinger氏は,Fire TVがクアッドコアのCPUを搭載し高いグラフィックス性能を持っていることをアピール。別売だがゲームパッドが用意されているので,PCゲームや家庭用ゲーム機のタイトルを移植することもできるとコメントしていた。
続いては,Fire Phoneのプレゼンだ。Cutsinger氏は,Fire PhoneがKindle FireタブレットやFire TVと同じようにクアッドコアのCPUを採用して高い性能を持っており,さらに「Firefly」と「Dynamic Perspective」という2つの特徴的な機能を持っていることを紹介した。
Cutsinger氏曰く,Fireflyの画像認識機能は,内蔵カメラや各種センサーを使って外界の情報を読み取り,商品,映画,音楽,商品のバーコード,メーカーサイトのURLや電話番号といった情報を表示してくれるという。これは本体に用意されている専用ボタンを押すだけで起動できる模様だ。
新居氏によれば,FireflyのAPIは開発者に提供されており,Amazon以外の開発者のアプリに役立てることができるとのこと。つまり,Amazonのセールスに結びつけるため(だけ)の機能ではない,ということなのだろう。
もう一つの「Dynamic Perspective」は,Fire Phoneの片手操作を支援する機能で,「Tilt」(本体を左右に傾ける),「Peek」(本体をゆっくり傾ける),「Swivel」(本体を振る)といった,スマートフォンの物理的な挙動をアプリの操作に取り入れられるというものだ。
発表当初は,本体四隅のカメラで使用者の頭の位置と動きを認識して,3Dっぽく奥行きのある表示を可能にする点が注目されていたが,それだけではなく,アプリの操作を広範にわたって支援する機能という感じだ。
こちらもAPIが提供されており,アプリ開発者が自分のアプリに取り入れられるとのこと。
具体的には,Unityの「アイテム課金プラグイン」に対応しており,Unityで制作されたゲームでアイテム課金型のビジネスができるようになっている点や,HTML5ベースのAPKでモバイルアプリ開発ができる点が挙げられていた。
とくにHTML5対応については,電子書籍は作れてもネイティブアプリはハードルが高いと感じていた開発者でもAmazonのアプリを作れる,と新居氏は述べ,アプリ開発の裾野が広がることに期待しているようだった。
さらに,新居氏が「このようなサービスはAmazonだけ」とアピールしていたのが,携帯電話に最適化されたWebゲーム/アプリをAmazonアプリストアで配信できるという点だ。
新居氏によれば,APKファイルが不要なうえ,プログラムコードを1行も書かずにWebアプリをAmazonアプリにできて,ゲームはもちろんブログのようなコンテンツまでアプリにできるとのこと。
コストをほぼかけずに,過去のコンテンツを現行プラットフォームで販売できるというのは,なかなか面白い取り組みといえる。
セッションのレポートは以上となる。筆者にとっては,Fire TVもFire Phoneも日本での発売が明言されていないまま進行したため,歯切れの悪さが残ったままだったのだが,日本でも“3つのスマートデバイス”が出揃い,順調にそれらが普及すれば大きな存在になっていくに違いないという印象を受けた。
Amazonのアプリストアは,Kindle Fireタブレットの閉じたサービスという印象が強く,いま一つ存在感に欠けるところがあったが,今後のAmazonの取り組みに期待したいところだ。
セッション後に展示ブースなどで取材したところ,発売に関してはっきりしたことは現時点では言えないものの,Fire TVやFire Phone向けのSDKが,すでに日本の開発者向けに公開されているという情報を得ることはできた。来場者にアプリストアをアピールするために,日本では未発売のスマートデバイスをあえて使っていたことから,おそらくは日本での発売も視野に入れてはいるのだろう(と期待したい)。
AWS Summit Tokyo 2014
- この記事のURL: