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「狼と香辛料」の支倉凍砂がVRコンテンツに挑む。VR的叙述トリックも盛り込んだ「Project LUX」体験レポート&インタビュー
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印刷2016/11/12 00:00

インタビュー

「狼と香辛料」の支倉凍砂がVRコンテンツに挑む。VR的叙述トリックも盛り込んだ「Project LUX」体験レポート&インタビュー

 「狼と香辛料」「マグダラで眠れ」といった人気作品で知られる小説家の支倉凍砂氏が,自ら立ち上げた同人サークル・Spicy Tailsで「Project LUX」(プロジェクト・ルクス)と題するVRコンテンツを制作している。2016年末の発売を目指して開発が進む本作では,VRでありながら物語的な構造を持つ「マルチエンドVRアニメ」という新たな試みが行われているという。
 4Gamerでは,さっそくそのプロトタイプを体験させてもらったうえで,支倉氏に話を聞かせてもらった。

Vive

「Spicy Tails」公式サイト



VRコンテンツの常識を覆す「物語型」コンテンツ


 Project LUXの舞台は,人類の大半が電脳化した世界。エンターテイメントすら自動で生成される時代に,生身の少女「ルクス」はただ一人のアーティストとして,人々の感情に訴えかける作品を作り続けていた。あるとき,そんなルクスのもとにエージェントが訪れ,とある電脳用データの作成を依頼する。それは,のちに大きな事件を巻き起こす火種となっていく……。

電脳化が当たり前の世界で,生身で暮らす少女「ルクス」
Vive

 本作は全5話の構成でストーリーが進行していき,対応機種はHTCの「Vive」とOculus VRの「Rift」,そしてPlayStation VRが予定されている。今回はViveを使用して第1話の冒頭を体験できた。

 プレイヤーはルクスの家に訪れたエージェントの視点を借り,彼女との会話を追体験していく。会話の内容を選んだり,部屋の中を移動したりといったインタラクティブ性はないが,ヘッドマウントディスプレイを着けた首をめぐらせれば,自由に視点を動かすことができる。会話中にルクスをじっと見つめても,家の中を見回してもいいのだ。本作ではこの2人の会話を通じて,前述したような時代背景とルクスという少女の人となりが表現されていく。

Vive

Vive
 コンテンツの体裁としては,一人称視点のインタビュー映像を観賞するのと似ているが,視線は自由に動かすことができるため,“その場にいる”という感覚は非常に強い。
 ルクスの声は,「干物妹!うまるちゃん」の土間うまる役などで知られる,声優の田中あいみさんが演じており,ルクスは話をしながらあちこち動き回ったりするのだが,なんとその仕草は田中さん自身の演技をモーションキャプチャしたものだというから驚きだ。

 ルクスの仕草はとても自然で可愛らしく,その一挙一動を思わず凝視してしまうほど。ルクスがこちらに寄ってきたときなどは少し驚いてしまったし,彼女の喜怒哀楽に敏感に反応している自分に気付いたりもした。こうしたVR的臨場感と物語性は相反するようにも思えたのだが,実際に体験してみると両者の相性は良く,かなり集中してこの世界に入り込むことができ,ストーリーの先がとても気になってしまった。


 VRコンテンツには現状,フォトリアルなグラフィックスを採用し,プレイヤー自身がジェットコースターに乗ったり,お化け屋敷に行ったりするという「体験型」のものが多い。Project LUXはそうしたコンテンツとは真逆を行く,アニメチックなアートワークで表現されたルクスとエージェントの会話が織りなす「物語型」のコンテンツと言うことができるだろう。この先の展開が楽しみになってくるプレイ体験だった。

Vive

 さて,今回はそんなProject LUXについて支倉氏にあれこれ聞いてみたので,そのインタビューの模様も合わせてお届けしよう。


作家としての目線とこだわりから,新たな文脈のVRコンテンツを生み出す


4Gamer:
 いやあ,ルクスちゃん可愛いですね……。
 それはともかく,まずはProject LUXを作ろうと思った経緯を教えてください。

支倉凍砂氏
Vive
支倉凍砂氏(以下,支倉氏):
 ありがとうございます(笑)。きっかけは,2014年の夏頃に理化学研究所の藤井直敬先生が書かれた「拡張する脳」を読んだことでした。そこで思い切って先生にメールして,実際にVR――当時はSRシステム(Substitutional Reality。代替現実)と呼ばれていましたが――を体験させてもらい,自分でもVRコンテンツを作りたいと思うようになったんです。

4Gamer:
 普段からアンテナを高くしていたことが,新たな創作につながったわけですね。

支倉氏:
 「二次元の世界に入りたい」という長年の欲求を叶えたかったんです。プロジェクトが現在の形になったのは,2015年の冬でしたね。僕自身,VRやプログラムについてはまったくの素人で,まずは開発できる人を集めるところからのスタートでしたので,「オキュフェス」などのVRイベントに足を運んで,そこで参加していただけそうな方に声をかけていきました。

4Gamer:
 すごい行動力ですね。話を聞くだけで,かなり大変そうです……。

Vive
支倉氏:
 アニメ系,萌え系のモデルをコンスタントに作っていらっしゃる方が意外と少ないので,キャラクターモデルを誰にお願いするかを決めるのはとくに苦労しましたね。

4Gamer:
 物語のアイデアは前々から温めていたものなんでしょうか。

支倉氏:
 いえ。VRで何ができるかもよく分かっていなかったので,2年かけてVRでできること,できないことを把握したうえで,物語を新たに構築しています。
 例えば,主人公のエージェントが“プレイヤー自身”なのか“他人”なのか。また,神の視点から他人を眺めているのか,TPSのような別視点で自分を見ているのかでも見せ方が変わってきます。そのため,なぜ主人公とプレイヤーが同じ視点を持っているのかというところから物語を構築していきました。
 さらに物語の核心部分は,自分がVRを体験したうえで発見した“盲点”を突いた,VR的叙述トリックになっています。

4Gamer:
 おお,それはとても興味深いですね。では,制作面で苦労した点はありますか?

支倉氏:
 とにかくキャラクターを少なくして,1つの場面で物語を展開しなければならないという制限が大きかったですね。小さなチームなので,キャラクターや場面を増やすと手が足りなくなってしまうんです。セリフも,自分ではかなり短くしていたつもりなんですが,実際に声優さんに演じていただいたら,思ったより長く感じられてしまって。

4Gamer:
 本作におけるインタラクティブ性はどういう形になるのでしょうか。

Vive
支倉氏:
 ゲーム的なUIが表示されるのではなく,プレイヤーが周囲のオブジェクトに視線を合わせることで会話が進んでいきます。物語は全5話構成になっていて,1話ごとにアニメのような挿入歌が流れます。大筋のストーリーは一本ですが,プレイヤーが最後に行う決断によってエンディングが分岐するという仕組みです。

4Gamer:
 現在はVRコンテンツを作る際の“作法”を多くの開発者が模索している状況ですが,ホラーゲームなどのVR的な売れ線は意識しましたか?

支倉氏:
 工数や予算など,自分のできることを考えたうえで今回の形式に至りました。VRコンテンツとしての最適解もそうですが,そもそもどういった層がヘッドマウントディスプレイを買っているのかすら現状では手探りの状態ですから。

4Gamer:
 確かに。それに,VR界隈ではまだまだアニメ的コンテンツが少ないと感じられます。

支倉氏:
 物語的なところに興味のある人が,今はまだ参入していない感じですね。VR関係のフェスなどに行くと,ストーリー等よりもHMDそのものといったガジェットが好きな方が多く,いろいろなVRコンテンツを触ってみても,“オタク”として琴線に触れるものがないような状態です。
 僕としては,二次元世界に入るということを究極の目標に掲げつつ,ぎゅっと抱きしめたくなるような二次元の女の子の魅力を追求したいんです。

4Gamer:
 Project LUXでは世界観を作り込み,VR的な叙述トリックを導入するなど,物語性を追求しているあたりが,いかにも“作家・支倉凍砂”らしいと思いました。

Vive
支倉氏:
 キャラクターの可愛らしさは,物語を見ることでキャラクターに愛着が湧くという,いわば擬似的なコミュニケーションから生まれると思うんです。断片的な設定を散りばめてキャラクターの可愛らしさを表現するというソーシャルゲーム的手法もありますが,僕はその先を目指したい。
 VRコンテンツとしては,無数に用意されたセリフをランダムでしゃべるようなものもありなんでしょうけれど,それはあくまでキャラクターに愛着が湧いてからのことだと思います。

4Gamer:
 素人考えでは“女の子が横にいる”という状況をVRで表現するだけでも十分ではないかと思うのですが,作家としては,あくまで物語から生まれる愛着を追求したいと。

支倉氏:
 VRコンテンツだと,「女の子から話しかけられてもこちらは返答できない」という点でガッカリしてしまうこともあるんですが,Project LUXでは,こうした点を解決するために物語のギミックを構築した部分もあります。「プレイヤーが見ているのはあくまで過去の記録なので,インタラクションできないことが自然である」という状況を作り上げつつ,コミュニケーションを楽しむということですね。

4Gamer:
 なるほど。実際にプレイしてみて,そうした試みは成功しているように感じられました。

Vive
支倉氏:
 キャラクターから一方的に話しかけられ,たまにコントローラを使ってゲーム的なUIを操作すると反応がある……というのでは,やっぱり寂しい気がするんです。今でも,技術的にはルクスの髪の毛を触ったりするようなことはできると思いますが,自然な反応はとても返せない。そうした表現は完璧なAIができてからでしょうね。

4Gamer:
 お話をうかがっていると,人間の複雑さを洞察・尊重する,作家的な視点があるからこそ,インタラクティブ性の扱いに慎重になっているという印象を受けます。

支倉氏:
 そうですね。VRコンテンツで人間を表現するにあたっては,“そこに人がいる”という圧倒的な存在感に目を奪われがちですが,簡単なインタラクティブ性では“ゴースト”が感じられないんです。

4Gamer:
 士郎正宗の「攻殻機動隊」ですね(笑)。
 ところで,収録はどのようにして行われたのでしょうか。

支倉氏:
 まずセリフを仮収録し,そのあとに部屋の実寸セットを作ったうえで,ルクス役の田中さんと,エージェント役の小川輝晃さんに演じていただいたものをモーションキャプチャしました。さらにそのあとに,映像に合わせてアフレコをしていただきました。

4Gamer:
 とてもユニークな方式ですね。本人が演じることで実在感が出ていますし,動きも非常に可愛らしいです。田中さんのファンなら,これだけでも欲しくなりますよ。

Vive
支倉氏:
 ルクスの可愛らしさを表現するうえでは,動きも重要だと考えたんです。アニメに興味のない人にProject LUXを見せたときに「知り合いのオタク女子と同じ動きをしている」という指摘を受けたのが印象的でした。

4Gamer:
 田中さん本人の演技というか仕草がそれだけアニメ的だった,ということでしょうか。

支倉氏:
 たぶん,田中さんは“分かっている”方だったのだと思います。仮に,演技はうまいけれどオタク文化に素養のない劇団の方にモーションキャプチャをしてもらったら,今のような可愛らしさは表現できなかったかもしれませんね。

4Gamer:
 アニメの文脈が分かる田中さんだからこそ表現できた可愛さであるということですね。では,最後に読者へのメッセージをお願いできますか?

支倉氏:
 VR界隈で考えられる限り,一番可愛いコンテンツに近づいているはずなので,二次元世界に入りたいという人はぜひ体験していただきたいです。

4Gamer:
 そうそう,支倉凍砂と言えば大のケモ耳好きとして知られていますが,ルクスにはケモ耳がありませんね。

支倉氏:
 そのあたりについては,パッチなどで対応できればと思います(笑)。

4Gamer:
 それを聞けて安心しました(笑)。
 本日はありがとうございました。

 物語を重視したコンテンツ,VRならではの盲点を突いた叙述トリック,声優本人によるモーションキャプチャなど,新たな方法論で生み出される「Project LUX」。VRという文化の黎明期らしい,高い熱量を持ったコンテンツであると感じられた。正式公開は2016年末を予定しているとのことなので,今後のアナウンスを楽しみに待ちたい。

「Spicy Tails」公式サイト

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