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[GDC 2010]外部制作会社といかにスムースに作業をするか。カプコン「ロストプラネット 2」における事例
しかし,そこで問題となるのが,彼らとの,いわゆる“意思疎通”をどうしていくのかという部分だ。これは,「言葉の壁」という単純な話だけではなく,ゲーム会社と他業種の会社との常識の違いや仕事の進め方の違いなど,問題の要因となる要素が多岐にわたることに起因する。
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カプコンのサウンドディレクター岸智也氏,および音響スタジオであるSoundelux DMGのPeter Zinda氏の二人が行った「Bridging the gap between developer and contractor」という講演は,そうした他社(異業種)間,他国間で作業が発生した場合に,そのコミュニケーションをどうやっていくべきか? という点にフォーカスしたもの。分かりやすい言い回しをすれば,要は「外注を上手に使うにはどうすればいいのか」という話である。
この講演は,主に「ロストプラネット」および「ロストプラネット 2」(PlayStation 3/Xbox 360)での実例をベースにして,以前のやり方で問題になった点や,それを踏まえて最新作となるロストプラネット 2の作業ではどうしていったのかなど,かなり具体的かつ実践的な内容になっていた。
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しかし岸氏は,「一部の要素をアウトソースして制作する場合は,当然,その作業を担当する外部クリエイターは,ゲームの全体像を把握していません。サウンドの制作にしても,ゲームの中でどう使うのかも分からないまま,音を作らなければならないのです」「そうした環境で,こちらが思い描く音を正確に作ってもらうには,かなり詳細な仕様書が必要になります。大きさがどのくらいで,どんな形で,どんな材質で……などを細かく書き込んでいくと,それは膨大な資料になってしまいます」と,その効率の悪さを問題視する。
また,サウンド単体で聞いたときには問題がなくても,実際にゲームに組み込んでみると違和感があることも多々あるという。そうした場合は,修正指示をメールなどで連絡し,再度納品を待たないといけない。それでもしっくり来ない場合はまた再発注……と,業務フロー全体として「単純な連絡の手間や待ち時間など,とにかく時間が掛かる」というのだ。
発注されるSoundelux DMG側も,音響に関してはプロフェッショナルだが,ゲーム制作の経験はない。要するに,ゲームにおけるサウンドの勝手が分からないことから,意思疎通がうまくいかないことが多々あったのだという。岸氏は,ロストプラネット2の開発がスタートするにあたり,「根本的にやり方を変える必要がある」と考えたそうだ。
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では,どうしたのか。
結論からいうと,ロストプラネット 2でも使用されているカプコンの総合開発環境「MTフレームワーク2.0」をSoundelux DMG側にも導入させることで,サウンドクリエイター(Soundelux DMGの)が直接サウンドをゲームに組み込めるようにしてしまったらしい。
つまり,開発中のゲームデータそのものを共有化してしまうことで,外部会社の人間にもサウンドがどう使われるのか,あるいはゲームに組み込んだ場合,どんな感じになるのかを,その場で確認できるようにしたのだという。
岸氏は,「もちろん,Soundelux DMG側にMTフレームワークの使い方を覚えてもらう必要があって大変ではありましたが,それを踏まえても,かなりの効率化が図られました」と語る。
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例えば,各種モンスターの動作音を作成するときでも,MTフレームワーク上からデータを呼び出せば,即座にモデルやモーションが確認できる。Zinda氏も,「今回の仕事では,我々もゲーム制作のサウンドについて理解を深めることができ,結果として,映画に負けないハイクオリティなサウンドを提供できました」と自信を見せる。
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最終的には,“仮音”すらない状態で発注を掛けてみたりという,やや無謀な(?)チャレンジもしてみたそうなのだが,岸氏曰く「これが驚いたことに,ほぼ一発OKなくらいにうまくいってしまった」のだという。ここまで来ると,ほとんど内部で抱えたサウンドチームと変わらない状態だろう。
岸氏は,「このやり方でうまくいってしまうと,僕ら(カプコンのサウンドチーム)の仕事がなくなってしまいます(笑)」と茶化しながら話していたが,取り組みの手応えとしてはかなりのものだった様子で,「ゲームに取り込んだ状態で納品されるので,そこでOKならば即マスターという状態。業務フローは相当スムースになりました」とのことであった。
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総合的な開発環境を持つカプコンならではのやり方で,おいそれと真似できる手法ではないと思うが,ゲームの手応えや手触りに関わる細かいやり取りや調整を,メールや電話などのコミュニケーションだけに頼らず,システムベースでも吸収するというのは,一つの賢いやり方ではあるだろう。
ちなみに意思疎通を図るという意味では,テレビ会議システムの活用や,サウンドの再生環境の統一(スピーカーによって聞こえる音が異ならないように)など,細かい部分にもかなり気を配っていたとのこと。そうした細々とした配慮も,スムースなやり取りを支えていたようだ。
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社内ツールを外部の会社にも提供するというのは,そもそも提供先の会社との信頼関係がなければ成り立たないし,ツールの習熟や契約上の問題(どこまでの業務を役割分担するのか)など,難しいところも多い。もちろん,ゲーム開発が大規模化,高コスト化するにあたって,外注をどう使うかは,ゲームメーカーにとって命題の一つである。しかし一方で,ノウハウの流出やクオリティコントロールをどうするか? など,課題が山積しているのも確かだ。
ただ,いくつかの難しい問題を孕んでいるとはいえ,業務の効率化という意味では,今後こういったやり方は,選択肢の一つになるだろう。カプコンは,海外企業とのコラボレーションに積極的なメーカーとして知られるが,こうした積極的な取り組みがあるからこそ,世界に通用するコンテンツ作りができているのかもしれない。
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