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「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟
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印刷2011/06/04 00:00

インタビュー

「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟

マルチプレイを“みんなに”遊んでほしい


4Gamer:
 話は戻るのですが,今作はマルチプレイを前提とした方向性になっていますが,一方で,アクションゲームのマルチプレイってやっぱり“ハードルが高い”遊び方だとは思うんですよね。その辺についてはどう考えているのでしょう?

画像集#010のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟
鍋島氏:
 そうですね。アーマード・コアって,これまではあくまで「一人で遊ぶゲーム」だったじゃないですか。対戦要素自体はずっと昔から導入されていたんですけど,基本的には「対戦ができます」以上のものではなくて,本当に好きな人が遊んでる状態でしかなかった。

4Gamer:
 そうかもしれません。

鍋島氏:
 もっと具体的に言うと,アーマード・コアの場合,オンラインでプレイしてる人って10%ぐらいしかいないんですよ。でも,僕としてはそれはもったないし,すごく楽しくて将来性のあるマルチプレイの部分を,残り90%の人にもなんとかして楽しんでほしいと思っていました。

4Gamer:
 そういう中で,マルチプレイをより沢山のプレイヤーに遊ばせることを考えたときに,注意したことや工夫したことはありますか?

鍋島氏:
 一番は,やはり「オンライン」「オフライン」というモードの垣根を無くすことを意識しました。僕らとしては,ぜひ皆さんにオンラインで遊んでほしいんですよ。その中でどんな遊び方をするかはともかくとして,オンラインという環境にとりあえず出てきてほしいんです。

4Gamer:
 でも,尻込みしちゃうというか,オンラインでゲームを遊んだことがないという人は,まだ結構多いとも思うんですよね。例えば,オンラインでプレイする前に練習してからじゃないと,みたいな感覚もありますし。

鍋島氏:
 ですよね。でも多分,そう言って練習をしていると,それで満足して終わっちゃうんですよ。ストーリーモードを最後まで遊んだら「ふぅ,次のゲームやろ」と思ってしまう。僕もそういう覚えがあります。なので,まずはそこを取っ払いたいんです。

4Gamer:
 取っ払う,といっても具体的には?

鍋島氏:
 ACVでは,ちょっと変なことをやっていて,いわゆる「タイトル画面」がないんですよ。そもそもタイトル画面で,「シングルプレイ」と「マルチプレイ」という項目があって,どっちに行く? みたいに選ばせるのって,その時点でプレイヤーさんをより分けてしまっているわけですよね。だから,僕としてはあんなのモノは無くしてしまいたいんです。
 もちろん,ACVでもタイトル画面に近いものは存在するんですけど,かなり普通のゲームとは違うイメージの画面にしようと思ってます。まだ開発中なので変わるかもしれないですけど,僕ら的には「ようこそ画面」をゲームの最初の入り口にしたいと考えているんです。

4Gamer:
 ようこそ画面?

開発機を操作し,ようこそ画面を開く鍋島氏。PCのデスクトップ画面のような映像が表示され,画面にいくつかのメッセージウインドウのようなものが開かれる
画像集#009のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟
鍋島氏:
 (テスト機でゲームの画面を映しながら)これがタイトル画面です。

4Gamer:
 え,タイトルのロゴが出たりとか,そういう画面じゃないんですか?

鍋島氏:
 そうですね。それと,この時点で既にオンラインに接続している状態です。この画面で何してるのかというと,プレイヤーが所属するチームの情報とかゲームの世界の情報とかを表示しているんですよ。電源を入れると,自動的にサーバーに接続しに行って,その処理を行なっている間に友達の動向だったり,ゲームの世界の情報が表示されるわけです。

4Gamer:
 これは,アーマード・コアの世界で情報端末を立ち上げている,みたいなイメージなんですか?

鍋島氏:
 そうですね。今はまだ入ってないんですけど,この画面が出る一番最初のところに「OSが立ち上がる」演出みたいなものを入れようかと思っています。
 このメッセージウインドウは,上半分がシステムからのお知らせで,サーバーメンテナンスの日時などが表示されます。下半分は,Twitterみたいな雰囲気の伝言板で,同じチームのメンバーがほかのメンバーに向けて,メッセージを残すことができてるといった感じですね。

4Gamer:
 なるほど。こういう“ゲームへの入り方”は面白いですね。ゲーム機の起動=端末の起動みたいになっていて,スムーズにゲームの世界へと入っていけるわけか。

鍋島氏:
 まぁロゴの表示などに関しては,いろいろな規約とかもあるので,最終的にどこまで貫徹できるかは分からないですけど,ここはぜひ実現したいですね。少なくとも従来のような,オンとオフを選ぶような方式にはしないつもりです。

4Gamer:
 まあ,ごっこ遊びの一環ですよね。こういうシステムにログインして,パイロットとしての自分になりきるというか。これは機能的には,オフィシャルで運営しているコミュニティサイトと連動していたりするんですか?

鍋島氏:
 まさに今進めているところなのですが,コミュニケーション部分に関しては,ゲームの中からだけではなくて,PCやケータイ,スマートフォンなどからもチェックしたり,書き換えたりできるようにしようと考えています。例えば,電車の中から「7時ぐらいに帰るから,一緒に出撃しよう」みたいなやり取りができるように。

4Gamer:
 それはかなり便利そうだ。

鍋島氏:
 これをやる目的は二つあって,一つは今作は「チーム」という部分を全面に押し出しているので,そこがキチンと回るようにということ。それに一口にプレイヤーといっても,みんなそれぞれで事情が違うと思うんですね。ゲームがプレイできるのは土日だけっていうサラリーマンの人もいるだろうし,一方でこのゲームの場合,「24時間365日いつでも戦っていけます」みたいな人もいる。

4Gamer:
 それはそうですね。

鍋島氏:
 僕としては,そういういろんなプレイヤー達が,同じチームの中で共存できるようにしたいんですよ。もっと言えば,直接ゲームをプレイしなくても,コミュニケーションができる機能っていうのを持たせたい。

4Gamer:
 そういうものがゲームの中でキチンと用意されるのは大事だと思います。

鍋島氏:
 あとやっぱり,最近はもう「ゲーム機の電源を入れるのが辛い」みたいなところもあるじゃないですか。とくに据え置き機の場合はそれが顕著で。

4Gamer:
 ああ……めんどくさいって感覚は正直ありますね。

鍋島氏:
 だから最近は,ケータイのゲームとかが流行ったりすると思うんですけど,我々としては,そういう手軽なゲームにも負けたくない。こういう言い方が良いのかどうか分かりませんけど,プレイヤーさんを24時間アーマード・コア漬けにしたいんですね。常にゲームのことを考えてもらって,時間があるときは本気で戦って,そうじゃないときでもケータイなりPCなりでゲームにアクセスできて,ゲームの中の情報を見たり,チームのメンバーとコミュニケーションをとったりできるようにしたい。

4Gamer:
 情報を見るというのは,具体的にどういったものが閲覧できるんですか?

鍋島氏:
 先ほどのメッセージもそうなんですが,チームの戦績とか,所属している個々のメンバーの状態とかですね。機能は徐々に拡張されるようにしていきたいと思っています。

画像集#011のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟


気になる「運営プラン」はいかに?


4Gamer:
 ところで,ACVはオンラインゲームとしての“運営プラン”みたいなものはもう決まっているんですか?

鍋島氏:
 正直なところ,そこはこれから詰めていくところですね。弊社としても経験があまりない部分なので,そこは覚悟を決めてやろうかなとは思っています。

4Gamer:
 有料サービス的なものはどうなるんでしょう?

画像集#013のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟
鍋島氏:
 有料かどうかはともかく,ダウンロードコンテンツ(以下,DLC)に関しては,なにかしらやるつもりではいます。ACVは拡張性のあるゲームにしているつもりですし,そこはいろんなことができるだろうなと。
 ただ,一方であんまりお金儲けみたいなところを押し出しちゃうとプレイヤーさんにお叱りを受けてしまうし,我々としてもそこで商売っけを出したいわけでもない。どちらかというと,ゲームがもっと面白くなる要素を追加することで,「それならお金を払ってもいいからやってみたい」と思ってもらえるような形でやりたいですね。

4Gamer:
 単純にパーツをDLCで出そうとか,そういう話はないんですか?

鍋島氏:
 もちろん考えてはいるんですけど,例えば「金持ちが勝つ」みたいなゲームになるのもどうかと思うし,ACVの本体はパッケージとして提供する作品なので,中途半端なことをすると,「追加するくらいなら,なんで最初から入れておかないの?」という不満の声が上がってしまう。だから,そこは慎重にやらないといけないなと。

4Gamer:
 そうですねぇ……。

鍋島氏:
 正直,パーツのダウンロード販売に関しては,いろいろな方から質問を受けるんですけど,少なくとも僕は,買わないと勝てないとか,買った人が絶対に有利になれるとか,そういうバランスにするつもりはまったくないですね。

4Gamer:
 まぁコンシューマゲームの場合,ユーザーマインド的にもなかなか課金しづらいというか,拒否反応のある人が多い雰囲気もありますしね。

鍋島氏:
 PCオンラインゲームやケータイゲームなんかとは,文化が違いますよね。まあでも,別に僕らはお金を儲けたくないわけじゃないんですよ。お金がないと次の作品を作れないですし。ただ,何か「良いやり方」をしたいんですよね。
 ビジネス的な言い方をしちゃうと,アーマード・コアは,忠誠心の高いユーザーをそれなりの数抱えているタイトルだと思うので,そこ(コアなファン)を疲弊させたくもないし,そこだけを向いたサービスにもしたくはない。

画像集#034のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟

4Gamer:
 なんと言うんでしょうか。一方でファンとしては,「上手に儲けてほしい」みたいな気持ちもあると思うんですよね。だってアーマード・コアが好きだし,好きなシリーズにはもっと続いてほしいと思うのが自然じゃないですか。

鍋島氏:
 僕らもいろいろ考えてはいるんですけどね。

4Gamer:
 ともあれ,ACVをどうサービスしていくかについては,まだこれからなんですね。

鍋島氏:
 そうですね。大枠の骨組みは決まっているんですけど,詳細はこれから詰めていきます。βテストもあるので,そこで感触を掴んでいこうと思っています。領地争奪戦がどう機能するのか,プレイヤーさん自身がどう動くのかは,βテストが始まってからでないと分からないところも多いですから。

4Gamer:
 そうですね。

鍋島氏:
 プレイヤーさんのプレイ時間とかにしても,ちょっと読めない部分はあるんですよね。例えば,クロムハウンズの時も,1日これぐらいプレイして,1戦これぐらい時間がかかるから,1週間で最大でもこのぐらいの数字だろう,みたいな試算はしたんですけど,あっさりと想定の3倍くらいは行ってしまいましたし。

4Gamer:
 ACVはかなり“熱のあるプレイヤー”が多くなりそうですし,そのあたりの想定は確かに難しそうです。
画像集#016のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟
 ――ともあれ,「ARMORED CORE 6」を作れるだけの利益は出してほしい,と考えているファンは少なくないと思いますし,運営や追加要素に関しても期待しています。

鍋島氏:
 まだACVも出てないのに,6とかいうのやめてください(笑)。


イメージしているのは“ロボット”ではなく“機械”


4Gamer:
 そういえばACVって,機体のデザインも今までとはイメージ違う印象ですよね。リアル路線というか,ミリタリー寄りというか。

画像集#014のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟

鍋島氏:
 分かりやすくかっこいいというか,“イケメン的なロボット”ではないですね。泥臭い,機械っぽいイメージにしています。逆に,「ARMORED CORE 4」のシリーズが割とシュっとした感じで,スタイルもよくて,単体でみたときにプロポーションがかっこいい流線型のロボットが多かったので,それと差別化したいという思惑もありました。
 今回は,ある意味,あくまでも「機械」らしさにこだわったというんでしょうか。車とかバイク,あるいは戦車や飛行機なんかが好きな人に向けて作ってるところはありますね。

4Gamer:
 ああ,実際の映像を拝見して感じましたが,確かに機体のギミックなんかはそういう雰囲気ですね。武器の持ち替えモーションもそうですが,射撃態勢に入ると同時に展開される盾や,肩がパカっと開いてミサイル出てくるギミックの見せ方なんかは,めちゃくちゃ凝っていてビックリしましたし。

鍋島氏:
 おそらく,今回はあんまり“ロボット”っていう考え方をしてないんですよ。あくまでも“機械”としての兵器と言いますか。2足歩行のロボット自体はフィクションなんですけど,仮にああいう機械が存在するとしたら,「機械としてこういう動き方をしたほうが合理的である」みたいな部分にこだわっているんですよね

4Gamer:
 機能美の追求みたいな?

鍋島氏:
 そうですね。それに加えて「そのほうがかっこいいじゃん!」みたいな方向も併せて盛り込んでいます。いろいろなギミックをバランスよく盛り込むことが,フィクションとしてのロボット/機械を魅力的に見せる一番いい方法なのかなと。こういうところがかっこいいってみんな思うよね,こういうとこが好きなんだよねっていうのを,なるべく自然な形で入れるようにはしてますね。

4Gamer:
 その「みんな思うよね」というところのツボの押さえ方は本当に見事ですよね。「分かってるなフロム!」みたいな演出が(笑)。

画像集#015のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟
鍋島氏:
 ACVのロボットデザインで意識していることは割とシンプルで,一定の方向性に基づいた上で,とにかく「ちゃんとやりたい」んですよね。例えば,今回は肩に武器をぶら下げておいて,持ち替えるアクションができるんですけど,持ち替えという要素自体は前からあったじゃないですか。でも前は,どこからともなく武器がポッと出てくるようなゲームっぽい表現をしていたんですよ。でも今回は,そういう不自然さは極力無くすようにしているんです。

4Gamer:
 ハードの性能が上がって,グラフィックスのクオリティが向上した結果,そういうゲーム的な嘘に違和感を感じることはありますね。

鍋島氏:
 「どこから出してんだよ」って普通に思いますよね。でも一方で,その「武器を取り出す」というアクションをキチンと表現できれば,そこに機能的なかっこ良さがあるはずだ,とも思うんですよ。

4Gamer:
 アーマード・コアシリーズを遊んでいて常々感じていたのは,そういうリアリティの追求みたいな部分と,ゲームとしてデフォルメする部分の落としどころはどこにあるのか,というところなんですよね。その線引きはどういう考え方でやっているんですか?

鍋島氏:
 うーん,難しいな。僕の中でもはっきり言葉にできるほど方法論がまとまっているわけではないんですけど。ロボットの場合は,ある程度「実在するモノの要素」を盛り込むことで,リアリティを出すという手法はあると思っています。例えば,さっきの肩にぶら下がっている武器の動きとかは,実は飛行機の車輪が出る動きを参考にしているんですよ。

4Gamer:
 また意外なところにモチーフが。

鍋島氏:
 機体にもよるんですが,あの車輪って多くの人のイメージでは,蓋が空いて「ウイーン」って徐々に出てくるものだと思っているかもしれないけど,実際には,蓋がパカって開くと,まずはドカンと車輪が落ちてきて,そこからゆっくり動くようなギミックなんですよね。
 ACVの肩部でも,それと似たような動きを再現しているんですけど,やっぱりリアリティがあってかっこ良く見える。

4Gamer:
 なるほど。実在するものの要素をうまく混ぜているから,ロボットの細かい動きに説得力があるのか。

鍋島氏:
 それをゲームとしてどう落とし込むかってことになると,例えばクイックに持ち替えられたほうが気持ちいいとか,使いやすいという部分が出てくるんですね。
 もちろん,機構に嘘をついて回転を早くすることもできるんですけど,そうなると,多少使いにくくても絵的なかっこ良さを優先するのか,ゲームとしての便利さ/快適さを取るのかって話になります。
 でも僕は,ここから単純にどっちかを取る判断をするのではなく,ほかの要素との兼ね合いで最終的にどうするかを考えますね。

4Gamer:
 それはどういう意味ですか?

鍋島氏:
 例えば,その「ゆっくり動く」というところを,「急には持ち替えられないというゲーム性」として盛り込めば,リアリティを保ちつつ,ゲームとして成立させられるわけですよね。そうすれば,どちらかを選ぶんじゃなくて,両方をいい感じに盛り込める。

画像集#017のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟

4Gamer:
 そういえば,例えば「アーマード・コア 4」とかでは,弾道の計算や距離による威力の減衰なんかもやってますよね(※)。ああいうのも,リアリティを出すためにやっているのだと思いますが,ああいう部分のこだわりには何か理由があるんですか? 単純にゲーム(ルール)として成立させるのであれば,あそこまでの計算は必要ないのでは? と感じたりもするのですが。

※:これらの処理はACVでも実装されている

鍋島氏:
 さっきのシミュレータ云々の話に戻るかもしれませんが,現実がそうなので,なるべくそれに近いような表現にしたいんですよね。見た目の話しとしては。
 それにアーマード・コアって,パーツがいっぱいあって,それを組み合わせて自分なりのロボットを作りましょうっていうのが,一番大本にあるコンセプトじゃないですか。だから本作に限っては,そういう複雑さが許容されるし,むしろ複雑じゃないと成り立たないゲームだと思います。

4Gamer:
 アセンブル(組み立て)を考えるのが醍醐味みたいな部分がありますからね。パーツがいっぱいあっても,実際使うのは一部だけになると意味ないですし。

鍋島氏:
 理想をいえば,例えば,何百個のパーツがあったら何百通りのパターンがちゃんとあるべきなんですよ。そのためには,パーツそれぞれに差別化される要素がないといけないので,作るとどうしても複雑になっちゃうんですけどね。ただ我々は,その複雑さが「良いことである」と解釈をしているんです。

4Gamer:
 弾道の計算なんかが加わると,よりパラメータが複雑になってパーツの選択肢が増えるみたいな発想ですか?

鍋島氏:
 そうです。この弾は遠くまでいくと威力が落ちていくから,近くじゃないと使えないよっていうデメリットがある。その代わりトレードオフ条件として,弾数が多いのか,近くで撃ったら威力が高いのか,めちゃくちゃ軽いのか,それは場合によりますけど,条件をいくつもつけてあげられる。いろんな要素が足されていくと,むしろゲーム性が上がるんですね。

4Gamer:
 より分かりやすくしよう,みたいな風潮がある中で,複雑にすればするだけ面白いゲームになるというのも,なかなか珍しい気もしますね。ある意味,そういうところがフロム・ソフトウェアさんのタイトルの魅力ではありますけど。

鍋島氏:
 いやでも,逆に僕からしたら,デフォルメされてるシンプルなゲームを作るのは大変だろうなって思いますね。
 あ,ついでにもう少しお話しすると,今回「腕パーツ」というものの位置付けを今までとは少し変えているんです。

4Gamer:
 あまりピンとこないのですが……肩パーツが肩の内部に格納されるようになったこととかも関係あります?

画像集#022のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟
鍋島氏:
 あれもそうなんですけど,これまでのシリーズでは,腕パーツにあんまり要素を持たせられなかったんですよ。装甲とか重さとかがあるくらいで。端的にいえば,「なんのためについてんだ」ってことです。

4Gamer:
 今までは「武器がくっついてるだけじゃん」みたいな話でしょうか。

鍋島氏:
 ええ,腕ごとにもっと要素を持たせないと,どの腕でも一緒とか,あるいは簡単に性能の序列が付いてしまっていたので,前々からまずいなと思っていたんです。
 そこで,フィクションなりに腕のある理由を考えるんですけど,例えば,銃を手首でコントロールしてるから,狙いをつけるときに命中率が……みたいなことを考えるんですけど,あんまり決定的な要素にならなくて。
 そこで今回は,腕のパーツによって,肩に武器を格納できるタイプ,できないタイプ。あるいは2個格納できるタイプといったように,腕パーツの持つ意味や要素を増やしているんです。これによって,カスタマイズの面白さは増していると思いますよ。

4Gamer:
 そのお話を聞いていてふと思ったのですが,「ロボットである必然性」みたいな議論って,開発チームの中で話題になったりはするんですか?

鍋島氏:
 どういう意味ですか?

4Gamer:
 いや,例えばアニメでもゲームでも良いのですが,ロボットものの作品って,「人型兵器がなぜ使われているのか」みたいな設定がありますよね。一番ポピュラーなところで言えば,「汎用的だから強い」みたいな理由付けがあるじゃないですか。

画像集#021のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟
鍋島氏:
 ああ,なるほど。まぁ汎用性云々を言っちゃうと,そんなわけあるかよっていうのが正直なところですが(笑)。

4Gamer:
 でも,その世界観を語るうえで,そういう設定が楽しい部分でもあるじゃないですか。「有視界戦闘なのはなぜ?」→「ミノフスキー粒子でレーダー兵器が使えないからだ」とか(笑)。

鍋島氏:
 うーん,そういう議論はないですね。アンタッチャブルです。しても仕方がないとまではいいませんが,フィクションである以上必ず嘘があるわけで,それをさらに嘘で取り繕うと余計に設定としての現実味がなくなるんじゃないかなと思っているので。
画像集#018のサムネイル/「アーマード・コア」の名前を外すことも考えた――鍋島プロデューサーが語る「ARMORED CORE V」へかける覚悟
 ただ,ACVでは武器の持ち替えとか,壁や敵を蹴っ飛ばしたりとか,「手足を使ったアクション」にはかなりこだわりましたね。兵器として,手がついてて足がついてるんだから,何か使う用途があるはずだっていう,ある意味逆の発想から作った使い道なんですけど。
 足のパーツの性能によって蹴る力が変わるから,ピョーンって飛べるやつもいるし,ポテってなっちゃうやつもいる。そういう形で新しいアクションを考えられないかなっていうのは,要素の一つとしてはありましたね。

4Gamer:
 もっと人型兵器という部分を意識しているのかと思っていたので,それは結構意外ですね。

鍋島氏:
 繰り返しになりますけど,ACVではとくに,ロボット云々というよりは機械という考え方なんですよ。こういう機械が存在するとすれば,どういう機能がついているのか。カメラとか車とかバイクとか,そういうものと同じ考え方をしてるつもりです。

4Gamer:
 ギミックの話に戻ってしまいますけど,機械っぽい細かなギミックというのは,どこからアイデアが出てくるものなんですか? 企画会議とか?

鍋島氏:
 一番多いのは,やっぱりパーツをデザインするグラフィックス系の人間ですよね。ミリタリーが好きな子達もいるし。あとは,デザインをモデリングしたりアニメーションを作ったりしている人間がいるんですけど,彼らが勝手に作っちゃうこともあります。

4Gamer:
 え,勝手に作っちゃうんですか。

鍋島氏:
 そのほうがいいものが出来たりするんですよね(苦笑)。ただ,ときどき暴走しちゃって,「お前何やってんだ」みたいな話にもなるんですけど。ああいうのは理屈じゃないところもあって,実際に形を作る人間だと,レゴみたいな,触っていじくってるうちに「面白いことになってきたぞ!」っていう手触り感みたいなのがあるんですよ。

4Gamer:
 ああ,私もブロックトイでロボットを作るのが好きなので,分かるかも。ここが動いたらかっこいい,とか思いつくんですよね。

鍋島氏:
 もちろん,ゲーム的な意図があるアイデアは僕なりプランナーなりから出しますけどね。ただ,ゲーム性とは直接関係のない,見た目的に面白い部分なんかは,デザイナー系の人間に結構好きにやらせちゃってます。

4Gamer:
 そのあたりも,なんだか“フロムらしい”気がしますね。

鍋島氏:
 たまにデザイナー同士でぶつかったりもするんですよ。ミリタリー好きな子からすると「そんなのはありえないですよ」みたいな構造でも,「こう動いたほうが面白いじゃん」ってアニメーションを作ってる人間が言うんですね。
 そこで僕が間に入って,「今回はお前の勝ち」とか「これは嘘だけどかっこいいからアリ」とかって判断をしています(笑)。

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