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STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)公式サイトへ
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  • 発売日:2009/10/15
  • 価格:通常版:7140円,限定版:9240円(共に税込)
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印刷2010/07/17 00:00

インタビュー

「Steins;Gate」の開発元5pb.の志倉氏らが考えるコンテンツ戦略――“原作”たり得る表現メディアとしてのノベルゲーム

メディアミックス戦略の起点としてのノベルゲーム


4Gamer:
 しきりに“原作”という部分を強調されていますが,一方で,近年急速に拡大したライトノベル市場についてはどう思われますか? ゲームと比較してみても,作家一人で作れる作品としてのありようや,一冊500円程度から入っていける間口の広さなど,“原作”を生み出す仕組みとしてはかなり理に適っているように感じますが。 

安藝氏:
 あれはあれでとてもクレバーなやり方だと思います。とくに角川さんの展開されているメディアミックス戦略は,コンテンツの展開という意味では,もう理想形の一つといっても良いのではないでしょうか。

中西氏:
 あそこまでいろいろな武器(媒体/展開力)を持ってるグループって他にありませんから。間違いなく最強ですよね。

安藝氏:
 うん,最強(笑)。

志倉氏:
 ライトノベルは,いろいろな意味で結構意識していて,例えば,先ほど言った章区切りの構成にしても,いわゆる“ライトノベル感覚”を出したいという側面があります。
 とくに今,ゲーム機以外にもいろいろな端末があって,そこに対してゲームをどう浸透させていこうかっていう課題がありますよね。アドベンチャーゲームのスタイルって,結局はただボタンを押すだけなんで,これは携帯端末とかインタフェースが貧弱なものに本来はとてもマッチしているんです。

4Gamer:
 それこそ,携帯電話のカーソルキーと決定ボタンだけでも済むような。

志倉氏:
 アクションゲームを携帯に移植すると,いろいろとグレードを落としたり,場合によってはゲームそのものを違う形にしないといけないですが,アドベンチャーゲームならゲーム性を崩すことなく転用できる。売り方だって,1章ごとに300円で売るだとか,携帯コミックみたいな手法だってあり得るわけで。
 さらに音楽や声優さんといった要素を盛り込めたりする面も含めて,アドベンチャーゲーム(ノベルゲーム)には,ライトノベルとはまた違う良さがある。今の時代は,むしろマッチしているとさえ言えると思いますよ。

4Gamer:
 なるほど。

STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)

志倉氏:
 あと,僕は海外ドラマが大好きなんですけど,作品を作るにあたっては,実は海外ドラマを参考にしているんです。とくに最近の海外ドラマって,1話ごとの終わり際に必ず「先が気になる仕掛け」が用意されているじゃないですか。最近では日本のドラマでも見かけますけど,海外のドラマでは,作品の構造としてそれが徹底されている。

4Gamer:
 おかげでDVDを借りて見始めると,結局最初から最後まで1日で見ちゃったりするんですよね(笑)。

志倉氏:
 そうです(笑)。これはアドベンチャーゲームでも効果的なはずで,章の終わりに必ず気になる何かがあって,どうしても次章へ進みたいと思わせるようなモチベーション設計という意味で,とても参考になります。
 またビジネスモデルという面では,それこそ近年のハリウッド映画の興行モデルが崩壊しつつある一方で,ドラマで1〜2クール乗り切ったプロデューサーが映画を作る権利を得るという流れが顕著になってきました。

中西氏:
 企画書だったり監督の知名度だけで何十億,何百億円って規模のプロジェクトはもう動かせないんでしょうね。

4Gamer:
 ビジネスモデル云々でいうと,ゲーム業界でも「ビジネススタイルの乏しさ」が問題視されていた時期があったじゃないですか。
 例えば映画だと,映画館で上映して,ビデオ(レンタル含む)を売って,放送局へ放映権を売って,みたいに収益のポイントがいくつかあるのに対して,ゲームはパッケージを売る以外にはありませんよね,みたいな話です。
 今は,オンラインゲームなりダウンロード販売なりという環境が整ってきて,アイテム課金とか月額課金とかいろいろなスタイルがでてきました。さっきお話に出た1話ごとに売るとかも含めて,ビジネスの選択肢は凄く広がりましたよね。

STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)
志倉氏:
 逆に広がりすぎているとも感じていますけどね。これは今回の資本提携の話にも繋がるんですけど,今の時代って,どこでどうやってお金を儲けるのかっていう部分がとても複雑になっていますよね。
 そうした状況の中で,ゲームビジネスというものが「パッケージを売って絶対にそこで儲けを出さないといけない商売なのか」というと,当然そんなこともないと思うんです。
 雑誌と単行本の例(雑誌の発行は赤字で,単行本で利益を出す)や,アニメと関連商品の例などを見ても,何かを無料ないし安い値段で提供して,それとは違うところで利益を求めるというのは,ある種の常套手段なわけですよ。

4Gamer:
 そもそもゲームのプラットフォームビジネスだってそうですよね。ゲーム機本体ではなく,ソフトウェアのライセンス料で利益を得るという。

志倉氏:
 僕が原作というものにこだわるのは,そうした新しいゲームビジネスの展開を意識しての話なんです。ゲームという媒体を起点としながらも,ゲームそれ自体による売り上げだけではなくて,より幅広い枠組みで利益を出す仕組みを作りたい。そのためには原作としての最初の濃さ/奥行きが必要で,それにはアドベンチャーゲームというスタイルがマッチしているという。僕がやりたいのはそれだけなんです。
 その意味では,今回の資本提携では「いろいろな武器を得たな」と感じていますよ。ニコニコ動画であったりラジオであったり,あるいはフィギュアであったりという,多チャンネルでの展開がとてもやりやすいですから。

中西氏:
 そもそもバンダイさんがアニメをずっとやってきたのだって,最初は自社の玩具を売るためのプロモーションとしてだったんですよね。それが結果的に「買いたい」っていう人がたくさんいるのが分かって,ビデオやDVDを売るようになっていった。

安藝氏:
 今はそれが逆転して,DVDを売って制作費を回収するという形に置き換わっていますよね。


中西氏:
 だけど,今はもうそのやり方では,投資したお金を回収できていないケースが大半なわけですよ。僕というか,AG-ONEが今回のプロジェクトに参加させて頂いているのは,繰り返しになりますけど,「今のテレビアニメのビジネスモデル以外でも,大成功できる方法ってきっとあるよね」という問題意識からです。
 一方では,適切なビジネスサイズというものがあるとも思っていて,100万本売らなきゃいけないような,切った張ったの世界だけではなくて,1万本を売るプロジェクトが100個あるみたいな。そういう方向も大事なんじゃないかなと。

安藝氏:
 ビジネスとしてのジャストサイズというかね。今の時代にあった。それが現代では,実はノベルゲームなんじゃないかっていうところなんですよね。

4Gamer:
 その意味でいうと,皆さんが手がけられているビジネスっていうのは,ある程度は「ネットで完結するような」ものをイメージされているんでしょうか?
 例えば,ネット上でどんなに騒がれていても,「初音ミク」とかが50万本売れたりはしていないわけですよね。ネットとリアル社会の間にはまだ“壁”がある。ネットのリーチ力には,限界があるのも確かだと思うんです。

安藝氏:
 ちょっとネットから離れたコミュニティになると,初音ミクでさえ途端に「知らない」ですからね。

中西氏:
 現時点でいうと,ネット媒体だけでは絶対にリーチできない層があるのは確かです。そして,そこを雑誌やテレビなど他の媒体で押さえながら,認知率7割みたいなレベルを目指すのが映画とかの世界。その意味で言うなら,僕らが目指す方向性は少し違うと思います。
 ただ,ネット媒体のリーチ力がこの先もっと上がっていくのは間違いないですし,何をもって一般というかは難しいところですけど,一般の人に向けた展開をまったく意図してないかというと,そういうわけではありません。



5pb.の今後の展開。気になる「小島監督とのプロジェクト」って?


4Gamer:
 いろいろと興味深いお話が続きますが,そろそろまとめの方を……。

志倉氏:
 はい。

4Gamer:
 5pb.の今後のプロジェクトについて,現時点で何か発表できることはありますか?

志倉氏:
 僕自身が直接関わるプロジェクトという意味では,想定科学シリーズの第三弾と,コナミの小島監督とのプロジェクト,この二つがまず全力投球すべき案件になると考えています。
 その二つに関しては,これまで5pb.単体では決して出来なかったこと,取れなかったリスクを分散させることで,より攻撃的なプロジェクトにしたいなと。

4Gamer:
 Twitterでも発言されていた「小島監督とのプロジェクト」ってどういったものになるんですか?

志倉氏:
 いや,一緒にアドベンチャーゲーム作りましょうって話なんですけどね。

4Gamer:
 え,小島監督がアドベンチャーゲームを作るんですか?

志倉氏:
 ええ。小島監督がアドベンチャーゲームを作りたいとおっしゃって。まだ,これから「一緒に山に籠ってプロットを練りましょう」って段階で,細かいところは全然決まっていないんですけどね。

4Gamer:
 小島監督が作られるとなると,やはりSF物になるのでしょうか。

志倉氏:
 えっと,それは僕の口からは言えないので,ぜひ小島監督から直接聞いてください(笑)。

4Gamer:
 うーん,気になります(笑)。

STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート) STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)

志倉氏:
 僕自身,アドベンチャーゲームが大好きなんで,とにかく「アドベンチャーがやりたい」んです。だから本音を言うと,別にギャルゲーとかにこだわっているわけでもなくて,むしろ美少女や萌え男子がいなくても成り立つ,昔のようなアドベンチャーブームがもう一回来てもいいんじゃないかという思いさえあるんです。

4Gamer:
 それは,原作たり得る表現手法として,ですか。

志倉氏:
 5pb.の作品のすべてを僕が作り出すわけではないですけど,5pb.発のコンテンツ(原作)を,今回の座組で得た武器を使ってどう展開/発展させるか,それを考えるのが今回の僕の役割だと思います。ドワンゴさんはネットやモバイルの分野で強い媒体を持っていらっしゃるし,安藝さんにお願いして,立体物を良いタイミングで出すこともできるでしょう。

安藝氏:
 アニメで言う制作委員会が常時組まれているような感じですよね。

志倉氏:
 今は,ユーザーさんが広告を信じない時代だと思うんです。昔は,広告の出来だけでゲームの売れ行きが左右されていた時代もありましたが,今は,もうそのやり方は通用しません。

4Gamer:
 そこに対しての活路は何かありますか?

志倉氏:
 一つは,コミュニティというものに対してどうアプローチするか,という視点です。例えばSteins;Gateでは,イラストレーターを選定する段階で,この作品では「どういった層に対してボールを投げるのか」ということを考えました。
 もちろん,よりマスへ売りたいという気持ちがないわけではありませんが,Steins;Gateに関しては,コンテンツを盛り上げてくれるコミュニティをどう作るか,そういうコミュニティを作ってくれる熱量を持ったユーザーさん達にどう届けるのか,そういう部分を最重要視したんです。

4Gamer:
 Steins;Gateは,作品として見ても素晴らしいタイトルだと思いますが,個人的には「売るためのアプローチ」がいろいろ盛り込んであるところにとても驚きました。イラストレーターにhuke氏を起用した点にしても,「狙いすましてるな」と。他にも,口コミを誘発させたりコミュニティを醸造するにあたって注意した部分はあったんですか?

STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート) STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)

志倉氏:
 うーん,そうですね。Steins;Gateで意識した点で言うなら,「投げた伏線を完全には回収しない」というあたりはかなり意図的にやりましたね。

安藝氏:
 いわゆるエヴァンゲリオン方式?

志倉氏:
 プレイヤーさんの間で考える余地,議論させる余地を残しておくんです。そうすることで,コミュニティが盛り上がるという側面がある。
 ただ,100を投げて50しか回収しないとかだと,プレイヤーさん側も「訳が分からない」となってしまうので,100投げたら90くらい回収して,10の部分に関しては「いろんな解釈ができるように」しておくんですよ。そこは,プロットの段階からちゃんと考えて作った部分です。

4Gamer:
 なるほど。

STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)
志倉氏:
 とくにSteins;Gateでは,プレイヤーさんからいただくハガキやメールの中に,僕自身が「そこをそう解釈したのか!」というものが結構あったんです。作ってる時はそこまで考えてなかったんですが,後で考えてみると,「確かにそういう解釈もできるな」とか「あの時の紅莉栖はそう考えたかも」みたいに思えるところがあって。そういう感想を頂く度に「してやったり」と思いましたね。

4Gamer:
 やっぱり,かなり狙いすましているんですね。4Gamerの読者レビューでトップを独走するのも伊達ではない……。

志倉氏:
 もちろん,すべて計算通りというわけではありませんけどね(苦笑)。Steins;Gateは,僕自身もびっくりするくらいの高評価を頂いたので,次回作へのプレッシャーが……。いや,もちろん頑張りますけど!

4Gamer:
 分かりました。次回作も期待しています。
 本日はありがとうございました。

志倉氏は仕事やプライベートでPCを複数台使っているそうだが,それぞれに「野望フォルダ」なるものが存在するらしい。その中には,いずれ達成したい野望が,さまざまなフォーマットのファイルで収められているのだそうだ。そして今回の事業提携も,実はその野望フォルダの中の一つが実現した形なのだという。今後,志倉氏はどんな野望を実現していくのだろう

 さて,志倉氏をはじめコンテンツ業界で活躍する経営者達にいろいろな話を聞くことができた,大変有意義なインタビューとなった。ゲーム機の性能が劇的に向上し,高品質な3D映像を駆使した作品が溢れる一方で,なぜ5pb.という会社はノベルゲームというジャンルにこだわり,また着目するのか。今回の取材でそうした疑問に対する一定の答えを見いだせたのは,大きな収穫であった。
 これはインタビュー中でも触れたことだが,「CLANNAD」や「Fate/stay night」,そして「ひぐらしのなく頃に」など,近年のコンテンツ業界においてヒットしたブランドの中には,ノベルゲーム出身の作品が少なくない。それが「なぜRPGなどではなくて,ノベルゲームでなければならなかった」のか。その点に関しては,一考の価値があるように思える。
 とくにノベルゲームをして,小説や漫画に変わる“原作製造システム”を目指すという視点は,なるほど言われてみれば,非常に納得がいく話である。実際,この手の戦略はTYPEMOONやビジュアルアーツ(Key),アクアプラスなどといったメーカーが長年実践してきたことであり,すでに一つの手法として確立されているというのは,今さら指摘するまでもないだろう。

 とはいえ,今回の取材で印象的だったのは,彼らが「そこからさらに進んだ何か」を目指している,というところかもしれない。まずゲームの人気があり,それにあやかってアニメ化やグッズ展開がなされるのではなく,ゲームという媒体をより大きなプロジェクトの中の駒の一つ(最初の起点)としてどう使うか。彼らが目指すビジネスというのは,そうした従来型のゲームビジネスの枠組みには縛られない方向なのだろう。
 「原作たり得る表現メディア」として,彼らがノベルゲームというものをどう昇華させ,小説や漫画,あるいはアニメなどといった手法と差別化させていくのか。志倉氏の新作小島監督とのプロジェクト共々,今後の展開に大いに期待したい。

「Steins;Gate(シュタインズ・ゲート)」公式サイト

これは“神ゲー”かも。「ゲームで泣くとか(笑)」という人にこそお勧めしたい「Steins;Gate(シュタインズ・ゲート)」レビュー

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