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技術を売りにしているうちは,成熟期とはいえない。CEDEC 2009で基調講演を担当する原島 博教授が業界の外側から見る「ゲーム業界」とは
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印刷2009/08/26 12:23

インタビュー

技術を売りにしているうちは,成熟期とはいえない。CEDEC 2009で基調講演を担当する原島 博教授が業界の外側から見る「ゲーム業界」とは

“地球の時代”に続くこれからは,ゲームを含めた“情報技術の時代”


画像集#009のサムネイル/技術を売りにしているうちは,成熟期とはいえない。CEDEC 2009で基調講演を担当する原島 博教授が業界の外側から見る「ゲーム業界」とは
原島氏:
 もう一つ,僕の最終講義は,物事を相対的に眺めてみようというメインテーマで行いました。文明史として世界の歴史を見ると,今まさに“地球の時代”が終わろうとしているんです。

4Gamer:
 面白そうな話になってきました。

原島氏:
 歴史的に見ると,最初は森林・草原の時代で,次がギリシャ・ローマを最後とする都市の時代でした。そのあと,ヨーロッパでは中世,アジアではオスマン・トルコやモンゴルといった大陸の時代でした。そのあとルネサンスが起きて近代になり,やがて世界中に広がる,地球の時代になっていったわけです。

4Gamer:
 まずは基本のおさらいですね。

原島氏:
 じゃあ,その地球の時代が終わると次はどうなるのか。よくシミュレーションをやるのですが,500年後の未来では,今の時代をどう表現するだろうと考えるんですね。
 必ず書かれるのは,たぶんコンピュータであり,月に人類が行ったということでしょう。その一方では,地球環境問題もあります。そのあたりが,どういう文脈で書かれるだろうか,と。恐らくは,地球環境問題が地球時代の最後に書かれるでしょうね。

4Gamer:
 それが自然な流れですね。

原島氏:
 じゃあその次に何が来るかというと,自然に考えるならば,それは宇宙の時代です。都市から大陸,大陸から地球,地球から宇宙というわけですね。1969年のアポロ11号は,地球の時代から宇宙の時代に変わる……。

4Gamer:
 トリガーだったと。

原島氏:
 ええ。地球環境問題から,宇宙に出て行って新天地を求めるという流れなわけです。しかしそうやって宇宙に新天地を求めた物語は,例えばガンダムにしろ宇宙戦艦ヤマトにしろ銀河英雄伝説にしろ,年がら年中戦争ばっかりしています(笑)。皆,悲しそうな顔をしているし,地球に戻りたがっている。宇宙に出て行って万々歳なんていう話は,ほとんど聞いたことはありません。

4Gamer:
 いわれてみると,確かにそうですね。

原島氏:
 つまり,今のところ宇宙にジパングはないんです。今,宇宙に進出しても夢がない。もしあったら,大金持ちはこぞって自家用ロケットを作って,宇宙に行ってますよ(笑)。
 そうすると,地球上にもう一度何かを作らなければならない。しかしそれは,地球環境問題の観点から,今までのように物質エネルギーを消費するようなものであってはいけない。そのうえで社会活動が可能になるような仕組みにしなければいけない。どうすればいいか。

4Gamer:
 時代を戻すという線は現実的には難しそうですし,制約が多いですね。

原島氏:
 そこで情報技術を改めて考えてみます。情報技術が進歩すれば,物質エネルギーを消費せずに活動できます。分かりやすい端的な例では,出張しなくともテレビ会議ができたりとかね。考え方によっては,情報技術の登場こそが地球の時代の終わりを予感させる人類の営みだったかもしれない。
 人類は1969年に宇宙に進出したけれども,それは先の見えないものであった。そこで神は人類に情報技術を与えたのかもしれない,というわけです。

4Gamer:
 ここ50年前後で神は,いろんなものを与えたもうたんですね。でも確かに,宇宙進出も,情報技術の進歩も,起こるべくして起こったことなのかもしれません。

原島氏:
 別の見方をすれば,宇宙進出は米ソ冷戦の中心にありました。冷戦が終わって,アメリカの新しい世界制覇戦略の中心となったのが情報です。軍事技術を駆使するのではなく,ネットワークを制覇し,情報の世界を掌握すればアメリカは強くなる。その尖兵として,インターネットが使われたという見方です。
 さまざまな見方ができますが,そうやって情報技術が進歩していく中でゲームという徒花(あだばな)が咲いたわけです。

4Gamer:
 徒花はちょっとあんまりなので表現を変えましょう(笑)。

原島氏:
 では「小さな可愛い花が咲いた」,にします(笑)。
 まぁ言葉はともかく,情報技術が進歩し,考え方が変わっていく中で,ゲームに対する考え方も変わっていきます。例えば,これから高齢化社会が来ます。今,ゲームは若い人達のものだといわれていますが,彼らが高齢化するのはあっという間ですよ。

4Gamer:
 常々思っているんですが,基本的にコンピュータゲームというものは,賞味期限が短すぎると思うんです。大体12歳くらいから,普通に考えると35歳くらいでしょうか。たったそれだけの期間しかない。

原島氏:
 ほかの趣味に比べると,ねえ。

4Gamer:
 ええ。囲碁や将棋,ゴルフや釣りなんかとは比べものにならないくらい「短命」なんです。いますぐは無理でも,まずそのあたりを努力するべきだと思います。

原島氏:
 そう。20〜30年後には,「最近のお爺ちゃんお婆ちゃんは,部屋に篭ってネットサーフィンばかりして困る。彼らの若い頃は流行だったかもしれないけど,あんなつまんないことよく続けられるよね」なんていわれてるかもしれません。「部屋でゲームなんてやってないで,若い人みたいに外に出ればいいのに」とかね(笑)。

4Gamer:
 それはそれでちょっと困りますが(笑)。

画像集#010のサムネイル/技術を売りにしているうちは,成熟期とはいえない。CEDEC 2009で基調講演を担当する原島 博教授が業界の外側から見る「ゲーム業界」とは
原島氏:
 そうした場合,ゲームが身近にある世代のクオリティ・オブ・ライフをどのように設定していくかを考えなければなりません。今のゲーム世代を,上手く高齢化社会に持っていけるようなことをね。もしかしたら,そこにとんでもないマーケットがあるかもしれない。

4Gamer:
 そうですね。今の状態を,そのまま持ってはいけないでしょうから,何か変化を加える必要はあると思いますが。

原島氏:
 もちろん全部を全部持っていく必要もないですしね。今でもニンテンドーDSなどは,高齢化社会に対応できる側面を持っていると思います。
 また,若いときはある程度時間がある,高齢者も比較的時間がある。しかし,真ん中の世代はどうか。またお聞きしたいんですが,ゲーム業界で仕事をしながら,自分ではどのくらいゲームを遊んでいますか?

4Gamer:
 ええと,一日3時間程度なら……。

原島氏:
 あれ,さすが業界の人ですね(笑)。
 まぁでも普通は無理です。そしてそれはしょうがないことなんです。10分でできるゲームなら……まあ一晩で終わるようなゲームならできますよね。でも,これにハマッたら先が見えない,仕事に支障が出るゲームはもうできない。ゲーム世代が成長して大人になったときに続けられるようなゲームは,今,ないんでしょう?

4Gamer:
 ほとんどないと思います。自分が「大人」になってみてそれは痛感しました。

原島氏:
 では,どうすればいいかというと,例えば1日30分でもそれなりに満足できるゲームを作る。

4Gamer:
 30分の時間を割くのも厳しい日はありますし,それより短くてもいいかもしれません。

原島氏:
 そうでしょうね。でも,その一方では,疲れたときに「ちょっと30分やってみようか」というゲームがあってもいい。疲れを癒すようなゲームを続けていって,たまに腰を据えて遊ぶゲームがあればいいんです。
 そういう意味では,この前出た「ドラゴンクエストIX」なんかは,短い時間で遊べるモードも用意してあるんでしょう? 僕はまだ触ってないんだけれども,ニュースで見たときに,そういうことを考えてるのかなと思いましたよ。

4Gamer:
 確かに,よくできていると思います。昼間,持ち歩くことで多少なりとも他人と関わることができるし,それによって,さらにゲームを楽しむことができる。おっしゃる通り,寝る前の短い時間に,その日,見ず知らずの人からもらった地図で遊ぶこともできます。

原島氏:
 いろんなことが,よく考えられていますよね。


未だ技術を宣伝文句にしているゲーム産業は,繊維産業でいえば「ナイロン全盛期」と同じレベル


4Gamer:
 高齢化への対応,とはまたちょっと違った話なんですけど,今,新作ゲームの情報を1日に何本も目にする仕事をしていて思うのは,極端な話,自分の父親に勧められるものはない,ということです。

画像集#011のサムネイル/技術を売りにしているうちは,成熟期とはいえない。CEDEC 2009で基調講演を担当する原島 博教授が業界の外側から見る「ゲーム業界」とは
原島氏:
 というと?

4Gamer:
 今ゲーム業界は,市場が広がらず,ユーザーが減り,作品が売れない,とみなが声を大にして言うわけです。でもそれは当たり前の話で,いつまで経っても「いままでのプレイヤー」を対象にした作品ばかりを作っているからなんです。
 むろんアグレッシブな人はいますし,違うことをやればいいという単純な話ではありません。とても正直に述べるならば,アグレッシブな作品は,得てして金銭的成功が伴わないことが多いですし。でも任天堂以外は,市場を広げる努力を自らが率先してやっているとはちょっと思えません。

原島氏:
 なるほどね。

4Gamer:
 ともあれこのままでは,おっしゃるように若くて暇のある時代ならゲームを遊べても,やがて歳を取って忙しくなったり,子供ができてしまったりしたら止めてしまう,その繰り返しになるのが目に見えているんですよ。

原島氏:
 とりわけもう,オンラインゲームなんてやってる余裕がない。

4Gamer:
 10年前にオンラインゲームで知り合った友人達は,それこそ「もうオンラインゲームなんてやってるヒマないよ」と言ってます。しかし,彼らは潜在的な"プレイヤー”ですし,そういった層を取り込んでおく努力はしておかなければならないと思うんです。

原島氏:
 そうですね。そこには大きなマーケットがあるでしょう。

4Gamer:
 またあくまでも個人的な考えですが,産業というものはすべからく何かの社会貢献をすべきだと思うんです。それが産業の義務というか。ところがゲーム産業は,どんな形であれ,今のところそれを成し得ていないと思うんですよ。

原島氏:
 でもそこにはジレンマがありますよね。例えば売れるゲームというのは,一度触れたら1週間は眠らずに遊び続けられるようなものでしょう? それくらいじゃないと売れない。でもそれは,社会的に受け入れられるようなものじゃないですよね。

4Gamer:
 おっしゃるとおりです。でも棲み分け,という選択肢もあると思いますし,じわじわとではありますが,そういう方向性に動いているようにも見えます。

原島氏:
 棲み分け,というのはユーザーの好みによって,ということですか?

4Gamer:
 そうです。例えば車だったら,2シーターが大好きという人がいる一方で,大型車にしか興味がない人もいます。また家族がいるから,ファミリー向けのセダンしか候補にならないという人もいるでしょう。そういったような棲み分けが,なぜゲームではうまく機能しないんでしょうか。「でしょうか」って私が先生に質問するのも変ですが。

原島氏:
 一つには,まだゲームが発展途上だからでしょうね。あるものが売れると,作り手も買い手も同じようなものに飛びつきますよね。まだ多様性のようなものが見えない。それから発展途上期は,同じようなものの大量生産しかできません。

4Gamer:
 コンピュータゲームが世に登場して割と時間が経っていると思っていたんですが,先生のお考えでは,ゲームが成熟するには,まだ時間が足りませんか。

画像集#012のサムネイル/技術を売りにしているうちは,成熟期とはいえない。CEDEC 2009で基調講演を担当する原島 博教授が業界の外側から見る「ゲーム業界」とは
原島氏:
 足りませんね。全然足りない。
 いまの話は,工業においても適用できます。イメージでは理解しているとは思いますが,一般に,産業は発展途上期と成熟期ではかなり違います。
 その典型がアパレル産業ですね。一昔前は,衣服産業や繊維産業が社会のリーダーで,経団連のエライ人もそういうところが握っていました。当時は,ナイロンやビニロンといった新素材を売りにしていたんです。ところが,今はそういった素材や技術を宣伝文句にしているところはほとんどありません。ブランドや,デザイナーの名前を前面に出していますよね。

4Gamer:
 あぁなるほど……言わんとしていることが理解できた気がします。

原島氏:
 そう,ゲームはまだ,ナイロンやビニロンの時代なんです。「ポリゴンでこれだけの表現ができます!」というのがまさにそれですね。成熟期というのは,どこかがナイロンを出したから,それに倣えばいいというものではないんです。皆同じだから,どこかで差別化を図らなければならない。ゲームも技術を売りにするのではなく,別のところで差別化できるようにならないと成熟期とはいえません。

4Gamer:
 ちなみに,繊維産業が成熟期に至るにはどれくらい時間がかかったのでしょう?

原島氏:
 数十年はかかってますよ。ゲームも技術とともに進化しているうちは,ずっと発展途上ですね。技術が飽和してきたら……。

4Gamer:
 近い将来,情報技術は飽和するとお考えですか?

原島氏:
 そりゃ,しますよ。ナイロンも飽和しましたからね。

4Gamer:
 浅はかな表現だと自分でも思いつつ言うんですが,情報技術は,そういった工業技術よりも飽和しにくいイメージがあります。

原島氏:
 もちろん,情報技術が飽和するまではまだまだ時間がかかりますよ。しかしゲームに限っていうなら,そろそろ技術以外の差別化を考えなければならない時期かもしれません。そうなると,もう少し受け手側の好みが反映されるようになるでしょう。

4Gamer:
 個人的にはそろそろその時代にさしかかりつつあると思うんですが。

画像集#015のサムネイル/技術を売りにしているうちは,成熟期とはいえない。CEDEC 2009で基調講演を担当する原島 博教授が業界の外側から見る「ゲーム業界」とは
原島氏:
 そうですね。やっちゃえば,案外すぐかもしれませんよ。例えば,ニンテンドーDSなんて「やっちゃった」パターンです。

4Gamer:
 発売当時は,皆が「タッチペンでゲームなんかやりづらい」「二画面だからなんかエライの?」と批判されましたからね。

原島氏:
 でも,今までゲームを触ったことがない人にもアピールすることができた。ただ残念なのは,今のゲームというものは,ゲーム機というハードと密接に関係している点です。例えばPLAYSTATION 3で「脳トレ」を出しても,明らかに売れないでしょう。あれは任天堂がハードとソフトを両方見ているから,ヒットになったんです。

4Gamer:
 川島教授の顔が,もの凄く写実的になったりしても(笑)。まさに,いい意味での「技術の無駄遣い」ですね。

原島氏:
 ええ。でも,無駄遣いでいいんですよ。無駄遣いでも,面白ければいいわけじゃないですか。無駄遣いせずに綺麗に作ったけど面白くないものより,ローテクでも面白い。これがゲームじゃないですか。
 今後,ローテクで作ったゲームが,YouTubeみたいなところで流通されるようになる時代がすぐ来ますよ。さっきいった,30分だけ遊ぶようなゲームも出てくるかもしれない。

4Gamer:
 ツクールやXNAなんかがその尖兵なのかもしれませんね。

原島氏:
 ロングテールという言葉が使われるようになって久しいですが,これには二つの意味がありますよね。一つは一度大きく売れて,そのあとも継続して売れていくというもの。もう一つは,数はあまり出ないんだけどもずっと売れ続けるというもの。まあテールだけ,とでもいうような(笑)。これからのゲームには,後者のようなものが出てくるかもしれません。


ゲームが社会的に価値を認められるには,オンライン要素の活用も不可欠に


4Gamer:
 ゲームには,もうちょっと産業としての側面がほしいなぁと思っているんですが。

原島氏:
 うーん,今こうして論じているゲームは,経済社会の中の存在ですけれども,そもそもそういうものなのかといわれると……。

4Gamer:
 おっしゃるとおり,確かに違うものです。

画像集#013のサムネイル/技術を売りにしているうちは,成熟期とはいえない。CEDEC 2009で基調講演を担当する原島 博教授が業界の外側から見る「ゲーム業界」とは
原島氏:
 そうなんですよね。トランプは産業かといわれたら違う。いうなれば,文化でしょう。生まれたときからあった,もっと誇っていいもののはずなんです。そういった文化の部分をゲーム産業が培っていけば,次第にそうなっていくでしょう。

4Gamer:
 でも産業として認められないと,社会的な認知が上がらないというのも,また事実だと思うんです。

原島氏:
 経済社会においてはその通りなんだけど,それだけが道かというとそうではない。

4Gamer:
 むろんです。よく理解できます。

原島氏:
 そればかり狙っていたのでは,金儲け産業になってしまいますよね。金儲けだけして,子供達を駄目にしているんじゃないかといわれてしまいます。

4Gamer:
 昔ほどじゃないにしても,今もなお言われています。

原島氏:
 じゃあ,それを乗り越えるにはどうすればいいか。ゲーム産業が社会的な尊敬を集めるにはどうすればいいのか。これは重要なことですよ。

4Gamer:
 ええ,重要なことだと思うんです。でもそういった動きは見えないし――私が知らないだけなのかもしれませんが――それを考えている人が,ゲーム業界にどれくらいいるのか心配になることがあります。
 初代PlayStation以降,リビングにゲーム機が置かれることに違和感を覚える人が少なくなったのは良い傾向ですが。あれはSCEさんの最大の功績だと思ってます。

原島氏:
 その一方で,叩かれているのがオンラインゲームですよね。それこそ,止められなくて夜に寝なくなるとか,金儲けの手段になっているのではないか,とか……。

4Gamer:
 最近は,それに輪をかけて問題が発展している状態です。以前から思っているのですが,オンラインゲームはネガティブなイメージでしか語られていないんですよね。

原島氏:
 僕が関係しているプロジェクトに,オンラインゲームの社会的有用性と発展を研究しているものがあります。そこでは意識をプラスに持っていくようなものを提案していますよ。
 例えばお話したリアルワールドに結びつけるようなものや,あるいは学校などの教育現場でも役に立つようなものですね。

4Gamer:
 実際には一定レベルの貢献ができているケースもあるはずなんですよ。でも産業として確立されていないせいなのか,既存の誰か,もしくは何かの不利益になるのか,功罪の「罪」の部分ばかりが取り上げられています。だからこそ,社会的地位をちょっと上げたいんですよね。

原島氏:
 オンラインというのは,ゲームに留まらない大きな流れですからね。これからのゲームは,何らかの形でオンライン要素が組み込まれていき,もう戻ることはない。じゃあ,それをどう活用していくかというのがこれからの課題というわけです。
 まあ,ゲームの面白さに関して言えば「スーパーマリオブラザーズ」の2Dグラフィックスに全てが集約されているんじゃないかと個人的には思いますよ。3Dになって,何が面白くなったのか,正直なところよく分からない。

4Gamer:
 今のRPGなんかに顕著ですよね。たまに「最新のRPG」というものをやってみると,画面上で何が行われているのかサッパリ分かりませんし,ルールがむやみに複雑怪奇になってるし。

原島氏:
 それは継続してやり慣れている人と,そうでない人の違いでしょうね。コミック誌の漫画も,毎週読んでいれば面白いけれども,数年振りに読むとサッパリ分からない。

4Gamer:
 でもそうやって,やり慣れている人向けにゲームが作られているというのも,市場が閉塞していく一因だと思うんですが。

画像集#014のサムネイル/技術を売りにしているうちは,成熟期とはいえない。CEDEC 2009で基調講演を担当する原島 博教授が業界の外側から見る「ゲーム業界」とは
原島氏:
 やり慣れている人からしか意見が出てこなくなりますからね。その層から評判が悪くなるのが怖いから,そこをターゲットにせざるを得ないわけですし。

4Gamer:
 正直,問題が多すぎてどこから手を付ければいいのか分からないんですよ。全て相互に関連していて,どんどんネガティブな気分になっていくこともあります。


原島氏:
 じゃあ,CEDEC 2009の基調講演は,少し皆を勇気付ける話をしようかな。

4Gamer:
 ぜひ,お願いします。
 ……お忙しいところ長々とありがとうございました。講演,楽しみにしています。


 これまでゲームには深く関わってこなかったという原島氏だが,このインタビューにはここ最近ゲーム業界で注目されている要素や疑問への見解がギッシリと詰まっている。面白さよりも技術の活用を優先しているように見える状況の指摘,なぜ似たような内容のゲームばかりが大量生産されるのかという疑問への言及……。いずれも一朝一夕でどうにかなる問題ではなさそうだが,それでも時間の経過とともに解決するだろうと原島氏はポジティブな意見と可能性を述べる。
 また,社会人が短いプレイ時間でも満足感を得られる,遊びたくなるゲームへの言及もかなり鋭い。インタビュー中では「ドラゴンクエストIX」を例に挙げているが,ここ最近注目を浴びているブラウザゲームの運営プロデューサーなども全く同じ意見を述べており,原島氏はオンラインゲームを含めたゲーム業界を的確に捉えているといえるだろう。
 そんな「分野外のプロフェッショナル」である原島氏の基調講演は,9月1日の9:45からだ。幅広い視点での見解に興味があるみなさんは,ぜひこぞって参加していただきたい。

「CEDEC 2009」公式サイト

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