業界動向
Access Accepted第369回:年末恒例「Access Accepted大賞 2012」発表
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PCやコンシューマ機向けにリリースされる新作タイトルの数が減少傾向にあった2012年の欧米ゲーム市場だが,その一方で,良作や傑作が目立った年でもあったように思える。コンシューマ機は成熟期を迎え,デベロッパが時間をかけて蓄積したノウハウによって,ゲームはいちだんと洗練されていると感じる。ビジネスモデルも多様化し,相変わらずこの業界はダイナミックな変化を続けているようだ。そんな今年,皆さんはどのようなゲームをプレイしただろうか。今週は,2012年に発売されたタイトルから優秀な作品を選ぶ,恒例のAccess Accepted大賞をお届けしたい。
遊ぶ時間がない!
2012年が欧米のゲーム業界にとってかなり激動の年だったというのは,本連載でも何度か取り上げてきたことだが,個人的にもいろいろなことがあった。昨年(2011年)末頃から,父親のがん治療のため2か月ほど帰国し,無事に父が快方に向かったことで一息ついたと思ったら,春には祖母が鬼籍に入った。夏の新作情報ラッシュが過ぎると,今度は,ある仕事で2か月ほどロサンゼルスに単身赴任することになり,そのときに叔母が亡くなっている。まったくの私事で申し訳ないが,こういう形で筆者は,1年の半分近く自宅から離れていたことになる。
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そんな事情にもより,今年は「十分にゲームをプレイできていない」ような気がしていたのだが,この記事をまとめるために2012年の作品をピックアップしてみると,意外とメジャーな作品を遊べていたことに気づく。1本1本のプレイ時間は例年より短かったかも知れないが,新作が出るたびにとっかえひっかえ買っていたし,筆者が忙しくなかった春先にリリースされた作品が多かったことも,理由の一つに挙げられそうだ。
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さて,年末恒例のAccess Accepted大賞だが,これは筆者が自分の連載を使って勝手に選んでいるもので,何かの裏付けがあるわけではないし,もちろん4Gamerの総意でもない。それに,プレイするゲームジャンルを問わない筆者ではあるものの,「欧米生まれのゲームのすべて」を十分に評価できるほど遊び込める時間も残念ながらなく,今回も,メジャーどころでは「Far Cry 3」と「FIFA 13」には手を付けられていない状況だ。
そういうことから,「そういえば,今年はこんなゲームがリリースされていたな」とか,「ボクならこっちを選ぶな」とか,「どうしてあのゲームが入ってないんだ」などと思いながら,軽い気持ちで読んでいただければ幸いだ。
Best シューティング
Borderlands 2
開発元:Gearbox Software
発売元:2K Games
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そんな中で,今回筆者がBestシューティングに選んだのは「Borderlands 2」。前作で「ストーリーがよく分からない」とされていたキャンペーン部分も大幅に改善され,キャラクター達の個性もさらに際立ったものになった。ソロでも30時間は遊べるうえ,リプレイバリューが非常に高いゲームでもある。インベントリやユーザーインタフェース,Co-opなどの改善もぬかりなく行われており,矢継ぎ早にリリースされるDLCも含め,エンターテイメントとしての総合レベルの高さは,他作品より頭1つほど抜けていたのではないだろうか。
■次点
○Black Mesa
○Call of Duty:Black Ops 2
○Halo 4
○Planetside 2
Best アクション/アドベンチャー
Dishonored
開発元:Arkane Studios
発売元:Bethesda Softworks
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デザイナーのヴィクトル・アントノフ(Viktor Antonov)氏が産業革命期のロンドンをモデルにしたスチームパンクな世界を描き,「Thief」や「Deus Ex」のリードデザイナーを務めたハーヴィ・スミス(Harvey Smith)氏と,「Dark Messiah of Might&Magic」の開発に携わったラファエル・コラントニオ(Raphael Colantonio)氏の2人が協力してゲームを作り上げるという,スタッフ一つとっても夢のような共演になっている。続編タイトルばかり目立つ欧米ゲーム市場で「新たなIPを開発する」という,彼らのクリエイターとしての意気込みも,この作品を通じてプレイヤーにヒシヒシと伝わってくるようだ。
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次点
○Assassin's Creed III
○Max Payne 3
○Journey
○Sleeping Dogs
Bestストラテジー
XCOM: Enemy Unknown
開発元:Firaxis Games
発売元:2K Games
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XCOM:Unknown Enemyは,それぞれの隊員の能力を駆使して宇宙からの侵略者と戦い,敵のテクノロジーを奪って新兵器を開発し,次なる戦いに挑んでいくという,ターン制ストラテジーだ。チェスの駒のように隊員達を動かしていく細かい作業が必要であるうえ,プレイヤーの判断ミスで隊員達が簡単にバタバタ死んでしまうというシビアなゲーム性が特徴。
キャラクターが成長するにしたがって,彼らに対する愛情もわいてくるが,一度死んでしまった隊員は二度と帰ってくることがないので,彼らの死はダイレクトにプレイヤーの感情に訴えてくる。瀕死の隊員を助けるか,それともミッションを優先するか。……このように,プレイヤーがゲームに没入する仕掛けがあちこちに用意されているところも面白い。
次点
○Crusader Kings II
○Guardians of Middle-Earth
○Orcs Must Die! 2
○Sid Meier's Civilization V:Gods & Kings
Best RPG
Mass Effect 3
開発元:BioWare
発売元:Electronic Arts
2012年の欧米ゲーム市場では,RPGジャンルの多くの新作タイトルが,年の前半にリリースされた。ある意味,問題作といえる「Diablo III」や「Mass Effect 3」,カルト的な人気を得た「Legend of Grimrock」や,王道的なゲーム性が光る「Kingdoms of Amalur: Reckoning」,そして価格の割に遊びごたえのある「Torchlight II」など,RPGファンには豊作の1年だったようだ。
筆者が現在,最も遊んでいるRPGは「Torchlight II」なのだが,さまざまな意味で楽しめた作品として,ここでは「Mass Effect 3」を選んでおきたい。ゲームのエンディングに至る30分ほどは,シリーズを全作をやり込んできた筆者を含めて,多くのファンを納得させるものではなかったのだろう(関連記事)。しかし,そこまでのストーリーやゲームプレイは十分に満足がいくものであり,総合的なエンターテイメント性の高さは,同ジャンルの中でも屈指と言っていい作品であった。
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次点
○Diablo III
○Kingdom of Amalur:Reckoning
○Legend of Grimlock
○Mass Effect 3
Best インディーズゲーム
Rebuild
開発元:Sarah Northway
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自らを“テクノノーマッド”(放浪の技術屋)と称するカナダ人プログラマ,サラ・ノースウェイ(Sarah Northway)氏の処女作であるRebuildは,筆者が日本に帰国中,「ゾンビアポカリプスの建設シム」というキャッチーなコピーに惹かれてダウンロードした作品だ。
本作は,ゾンビに追われてある街に流れ着いたプレイヤーが,そこに集まってくる生存者達を使って周辺を開拓し,生活領域を広げていくというものだ。「自分だけ逃げる」とか「脱出ヘリを修理する」といった最終目的が用意されており,1〜2時間あれば1ゲームを終わらせることができるボリューム。エンディングの世紀末的なギターの旋律が頭に残って離れない作品であり,看病のために出歩けなかった2か月間を紛らわせてくれた,個人的に思いの深いゲームになった。
次点
○FEZ
○Hotline:Miami
○Little Inferno
○Marks of the Ninjas
Best スタジオ
Telltale Games(for The Walking Dead)
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「The Walking Dead」は,コミックスやテレビドラマとは異なる独自のストーリーをエピソード形式で配信するというシリーズ作品で,古いと思われているポイント&クリック式のシステムを使い,さまざまな部分をしっかりと作り込んだアドベンチャーの良作だ。そんな「The Walking Dead」を制作したTelltale Gamesに,今回のBest スタジオ賞を贈りたい。
ちなみに同作は,「エピソディック」※という販売スタイルにこだわり続けてきたTelltale Gamesが,長年にわたって蓄積してきたノウハウの結晶であり,今回の受賞は,巨大な予算に頼れないデベロッパとして,大手ゲームメーカーに一矢報いた形になったようにも思える。エピソードごとに100万本が売れる大人気タイトルとなり,2013年には「シーズン2」がスタートする予定だ。
※主にオンライン配信を使用し,エピソードごとに分割して販売する形式のゲーム。安価で開発時間もかからないとして一時期もてはやされたが,現在,この形式の採用例は少ない
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次点
○Mojang(for Minecraft)
○Firaxis Games(for XCOM:Unknown Enemy)
○Sony Online Entertainment(for PlanetSide 2)
○thatgamecompany(for Journey)
Access Accepted大賞
Borderlands 2
開発元:Gearbox Software
発売元:2K Games
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そんな彼らの作ったBorderlands 2の持つノリの良さを,簡単な言葉で表現するのは難しいが,たとえるなら,アメリカ人がバーやパーティで騒いでいるのを,間近で楽しむというのに似ている。大騒ぎしているのに嫌味がなく,知らないうちに自分もそれに巻き込まれてしまう感じだ。
Borderlands 2では,そんなノリがさらにグレードアップしているが,ゲームの細かい部分を見ていくと,「前作よりも良いものを作ろう」というプロの配慮が感じられる。同じことは,「Assassin's Creed III」や「Call of Duty Black Ops 2」,そして「Halo 4」にも言える。いずれにしても,過度なシリアスさを避け,楽しくゲームを遊ばせてくれるという部分で,Borderlands 2がひときわ輝いているのは間違いない。
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著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
次回の「奥谷海人のAccess Accepted」は,2013年1月21日の掲載を予定しております
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