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印刷2007/10/26 17:05

連載

奥谷海人のAccess Accepted

 最近,なにかとクローズアップされることが多い「Second Life」だが,スウェーデンで2003年にリリースされた「Project Entropia」(現題:Entropia Universe)も,サービス開始時から我々にさまざまな話題を発信してきた。ゲーム内の不動産や銀行にまつわる問題,さらには中国政府との結びつきなど,かなりきわどいことを大胆不敵に展開しているような印象だが,今回はそんなEntropia Universeを紹介してみよう。

Access Accepted第147回:バーチャル不動産王現る
一味違う,Entropia Universeの世界

 「Project Entropia」はスウェーデンのMindArkが開発したMMORPGである。2003年1月に登場して以来,現在までに50万アカウントに達したと発表されており,2006年には「Entropia Universe」として大幅バージョンアップを果たし,現在も進化を続けている。

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2006年4月に大幅アップデートとともに「Project Entropia」から「Entropia Universe」に改名したMindArkのMMVW。今年7月にはCryEngine 2.0のライセンスを発表し,2008年中旬までには対応版をリリースするとしている

 Entropiaの世界にはさまざまなモンスターが徘徊しており,プレイヤーキャラクターがそれらを倒してスキルを上げていくという一般のMMORPG的な要素はあるものの,同作はリリース直後から「Second Life」のようなMMVW(Massively Multiplayer Virtual World)としての立場を明確にしてきた。この作品の最もユニークな部分がその経済モデルで,プレイヤーが月額のアカウント料を徴収されず無料でプレイできるというのは,当時のMMORPGでは珍しいことだった。

 その代わりに,Entropiaには1ドル=10PEDというゲームの固定相場がある。プレイヤーは,自分で一定金額をアカウントに振り込み,それを使ってアイテムなどを購入するという仕組みなのだ。もちろん,プレイヤーはモンスターから得た貴重なアイテムをトレードしたり,ゲーム内で行われるコンサートイベントのチケットを販売したりといったやり方でPEDを得ることも可能だが,こうしてゲーム世界で稼いだPEDを現金にもできるという仕組みになっており,この点について早くからギャンブルとの類似性が指摘されてきた。

 このPEDによる経済モデルは,「MindArkが銀行を運営する認可を受けていない」という理由から,たびたび問題になってきた。しかし,今のところMindArk側は一向に気にしないという姿勢を崩さず,かえってこのようなバーチャルワールドの問題が報道されることによって,Entropia Universeの広報が無料で行われるという計算もあるようだ。

 MindArk側は,レアアイテムを製造したりゲーム世界に大陸を制作したりといった拡張だけで,ほとんど元手のかからないアセットを自在に生み出せる。ただ,MindArk自体は銀行ではないので,万一MindArkが倒産するといった事態になった場合は,投資した人が一般の銀行倒産のような保護を得るのは難しいはずだ。ちなみに,2006年5月には,とある銀行と組んでゲーム世界の預金をATM機器を使って引き出せるというサービスを始めたものの,その際使われていたMasterCardは2007年1月,このサービスの合法性に疑問があるとしてカードの使用を禁止した。

 

バーチャル不動産に1000万円を注ぎ込んでも
元が取れる?

 以前から何度かニュースを賑わせているEntropia Universeだが,よく取り上げられるのが「ゲーム世界におけるバーチャル不動産」関連のもの。大きなニュースとして登場したのは2004年12月のことで,当連載の第29回,「オンラインアイテムの所有権」でも取り上げたように,“トレジャーアイランド”と名付けられたゲーム内の不動産を,あるプレイヤーが26万5000PED(2万6500ドル/約300万円)で競り落としたのだ。

 トレジャーアイランドを購入したのは,“Deathifier”というアバター名で知られた人物で,当時「最も高額で取引された架空のアイテム」として2004年度版のギネスブックにも登録されている。この島の海岸地帯をリゾート地域として切り売りしたり,島の中央付近に出没するミュータントの狩猟権を販売したりすることにより,11か月後には競売額以上の利益を得ることとなったとBBCニュースなどが報道している。

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先に開催されたE for All Expoのラウンジでくつろいでいたバーチャル世界の不動産王Jon Jacobs氏を発見。Entropia Universeの不動産販売やリゾート開発を手掛けるだけでなく,最近ではゲーム内での銀行運営にも着手している

 そんなDeathfier以上の不動産王として知られるのが,“NEVERDIE”ことJon Jacobs(ジョン・ジェイコブズ)氏だ。トレジャーアイランドが販売された翌年の2005年10月,MindArkが新たに競売にかけたアステロイド・スペースリゾートという新区域を,なんと100万PED(10万ドル/約1100万円)で購買したのである。

 Jacobs氏は,もともとEntropiaにいくつかのBGMを提供したことでも知られるミュージシャンであり,このスペースリゾートを「バーチャル世界最大のライブ音楽発信地」と定義づけ,購入した土地を「クラブNEVERDIE」と名付けて派手に活動している。どこまで本当か分からないが,2006年には「10万ドルの元手が150万ドル(約1億7500万円)の資産価値にまで膨れ上がった」と発表されており,今ではオンライン世界初の不動産ミリオネアーとして知られている。もっとも,Second Lifeには不動産の売買で生計を立て,今や実世界で20人ほどの従業員を持つ会社のオーナーになった,Anshe Chung(アンシー・チュン)氏のようなライバル長者もいるが。

 MindArkは,見たところ現在も非常に大胆不敵に行動しており,2007年5月にはEntropia Universeの世界の中で銀行を運営できる権利を販売した。これには,Jon Jacobs氏やAnshe Chung氏のようなバーチャル世界のアントレプルヌール(冒険的起業家)達5人が飛びつき,五つの銀行を合わせて40万400ドル(約4600万円)というライセンス料になった。このバーチャル銀行に預金した人には利息が付き,銀行経営者もそうして集めた資金を使って大きな事業を展開するという,実世界のような仕組みになるはずだ。

 また,MindArkは2007年5月に,当連載の第130回,「中国版『Second Life』が登場」で紹介したCRD(Cyber Recreation Development)という国営のオンラインエンターテイメント企業と提携して,Entropia Universeと同じシステムで作ったオンライン世界を制作し,世界から最大で1億5000万人ものユーザーを集めるという計画を練っている。その世界を切り盛りするため,1万人規模のオンライン就業者を中国国内で雇用するというから驚きだ。Entropia Universeに関するニュースには,今後も目が離せないかもしれない。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。コーヒー好きで知られる奥谷氏だが,最近外出先で飲むのはスターバックスではなくマクドナルドのプレミアム・ローストコーヒーなのだとか。彼は「数年前に自分でコーヒーをこぼしてヤケドした老女が起こした訴訟で数億円を払って以来,マクドナルドのコーヒーはずいぶん美味しくなった」と話しているが,マクドナルドが“プレミアム・ローストコーヒー”の販売を開始したのは去年のことで,数年前のヤケド裁判とはなんの関係もないのである。うーん,さすが違いの分かる男。

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