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DeToNatorが第1次リーグを突破――オンラインFPS「Alliance of Valiant Arms」の国際大会「AIC 2014」1日目の模様をレポート
……というところまでが,前回のレポートである。今回はこの第1次リーグをDeToNatorがいかに戦ったかをお伝えする。また世界の強豪クランの模様もあわせてレポートしよう。
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なお第1次リーグは,3試合中2試合先取で勝利。試合ごとにマップが変わり,7マッチ先取でその試合を取ったことになる。ゲームルールは,「爆破」ミッション。「攻撃側」が爆破ポイントに爆弾を仕掛け,そのまま40秒経過すれば攻撃側の勝ちとなり,「防御側」がその爆弾を解除できれば防御側の勝利となる。また,リスポーンがなく,全滅した場合も負けとなる。
先攻を選んだチームが先に「攻撃側」となって6マッチを行い,その後攻防のサイドを入れ替えて試合を続ける。このように3クランで総当たりの勝負を行い,勝ち点の多い2クランが第2次リーグへと進出するのだ。
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■第1戦:DeToNator vs 1st e-Sports
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この大躍進の踏み台にされてしまったのが,日本代表としてIeSFに出場したDeToNatorだった。DeToNatorは,事前の予想に反して1st e-Sportsに敗北し,予選敗退。遠いルーマニアの地で,リベンジを誓うことになった(関連記事)。
そして今回,そのチャンスが早くも到来した。IeSFからチームメンバーを1名入れ替えたDeToNatorと,IeSF出場時とまったく同じメンバーの1st e-Sports。DeToNatorは,ブカレストでのリベンジを果たすことができるのだろうか?
最初のマップは「India」。奇しくも,ブカレストで両チームが戦ったマップだ。くじ引きの結果,DeToNatorが先攻,1st e-Sportsが後攻となった。
第1ラウンド,第2ラウンドともに,DeToNatorは素早くKillを重ねて数的有利になったところで,爆弾を設置。40秒以内にこれを解除しないと負けてしまう1st e-Sportsは,無理を承知で敵陣に飛び込んで撃ち負けるという展開に。DeToNatorとしては,最初の2ラウンドを圧勝で飾ることができ,幸先の良いスタートになった……と思われたのだが。
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第3ラウンド,1st e-Sportsの狙撃手Zeus選手の活躍で,嫌な空気が流れ始める。前ラウンドと同様に数的有利を作りだしたDeToNatorに対し,Zeus選手は2連続で見事なスナイプを成功させ,3対2という状況を1対1に持ち込んだ。そのまま1st e-Sportsが最初の勝点を手に入れた。
この逆転劇に,流れが変わるのかと思われた第4ラウンド。DeToNatorはこれまでの作戦を変更した。主攻軸を激しく切り替えて,1st e-Sportsを翻弄する作戦で勝利。第5ラウンドも同様の作戦が見事に決まる。
第6ラウンドでは,1st e-Sportsの裏をかく形で爆破ポイントに侵攻し,途中で気づかれたものの手早く爆弾設置に成功。解除のために突入してきた1st e-Sportsを確実に撃破していく。
5対1とDeToNatorの圧倒的有利なスコアで,攻防が入れ替わった第7ラウンド,1st e-Sportsは時間を十分に使って,防御側のDeToNator3人が守る部屋を全員で包囲,一気に突入して勝負を決める。第8ラウンドも「撃ち合いに強い」ところを存分に発揮し,マッチスコア5対3とDeToNatorに詰め寄っていく。
第9ラウンドで1st e-Sportsは中央突破を仕掛け,それにはほぼ成功したのだが,ここでAk~ayS選手の個人技が冴えわたる。
包囲され困難な状況になりつつも次々とKillに成功し,銃撃戦が収まったところで残っていたのはDeToNatorが2人,1st e-Sportsが1人。時間が残りわずかとなった1st-eSportsは爆弾を設置しようとするも,そこまでだった。これにより,マッチスコアは6対3となってDeToNatorがリーチをかけた。
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しかし,ここから1st e-Sportsが,驚異の粘りを発揮する。
第10ラウンドでは,正面からの撃ち合いで1st e-Sportsが競り勝ち6対4。もともと攻撃側有利なマップではあるが,DeToNatorは1st e-Sportsの勢いを抑えられない。続く第11ラウンドも1st e-Sportsの作戦が綺麗に決まり,6対5とわずか1ポイント差に。
運命を分ける第12ラウンド。互いに1Killずつ取り合っての4人対4人で,1st e-SportsはDeToNatorの裏をかいて爆弾の設置に成功する。別室で観戦していた日本の運営スタッフから「まずい」という声が漏れる。
だがここで,DeToNatorは4人を2人ずつの2チームに分けて,別方向から同時に爆弾の設置ポイントに突入。先に突入した2人は,1st e-Sportsとの銃撃戦を2 Kill/1 Deathで制し,続いて迂回した2人が合流した瞬間,DeToNatorの勝利が確定した。
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続いてのマップは「Dual Sight」。今度は,1st e-Sportsが先攻する。
第1ラウンドから第3ラウンドまでは,シーソーゲームとなった。1st e-SportsではMinORu-選手の動きが切れ味よく,一気呵成にDeToNatorの選手を討ち取っていく。一方でDeToNatorはmancho.選手が好調で,正面からの撃ち合いで次々にKillを取り,やすやすと勝ちを譲ることはない。結果,第3ラウンドまで終えてDetonatorの1勝2敗となった。
第4ラウンド,DeToNatorにとって厳しい展開のなか,やはりmancho.選手が状況を打開。爆弾は設置されるものの,防御側のDeToNatorはこの解除に成功し,スコアをタイに戻した。
第5ラウンドでは,DeToNatorが非常に攻撃的な形で防衛線を展開。俗に言う「前進防御」に近いだろうか。この作戦は見事に的中し,第5ラウンドを勝利すると,第6ラウンドも,好調のMinORu-選手をうまくKillして勝利に結びつける。
攻撃側となったDeToNatorだが,第7ラウンドは再び苦しい展開に。無理やり爆弾の設置を試みるも,1st e-Sportsに逆襲されて敗北してしまう。
続く,第8ラウンド,嫌な展開を打破したのは,またしてもmancho.選手だ。正面からの撃ち合いに撃ち勝って数的有利を作ると,爆弾を設置。これを40秒守りきって勝利した。
第9ラウンドでは,前ラウンドの勢いで攻め込むDeToNatorに対して,1st e-Sportsの狙撃手Zeus選手のスナイプが,DeToNator前衛に手痛い一撃を見舞う。これによって足が止まってしまったDeToNatorは包囲され万事休す。
お互い1歩も譲らない展開で迎えた第10ラウンド。DeToNatorは,4人対4人の状況から今度は危なげなく爆弾の設置に成功すると,それを解除するために飛び込んでくる1st e-Sportsを撃破し,スコアを6対4とする。あと1勝でDeToNatorの勝利だ。
だが1st e-Sportsは,「あと一つで負ける」程度のことに臆するチームではなかったようだ。もっとも,その程度のメンタルでは,この場にいることはなかっただろうが。第11ラウンドでは,DeToNatorがファーストKillを取るも,そこから攻めあぐね,逆に1st e-Sportsに3人抜きされて落としてしまう。これで,スコアは6対5だ。
先ほどの試合と同じ,1点差という展開になった第12ラウンド。DeToNatorは戦力を1か所に集中させ,同時に爆弾設置ポイントになだれ込む。突入した段階の撃ち合いで,両チームの残存戦力は3人ずつに
ここでDeToNatorは爆弾設置に成功。当然ながら1st e-Sportsはそこに襲撃をかける。しかし,DeToNatorはこの攻撃を退け,爆弾を守り切ることに成功。7勝めを挙げ,ここにブカレストの雪辱を果たしたのである。
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■第2戦:DeToNator 対 United5
DeToNatorにとって2戦目となり,そしてUnited5にとっても本日2戦目となるこの試合は,解説者つきで配信される注目のカードとなった。
実のところUnited5も1戦目で1st e-Sportsを下しており,DeToNatorともども第1次リーグの突破を確定させている。ルール的に言うと次も抽選でのリーグ戦になるため,1位抜けでも2位抜けでもまったく関係はなく,いわば「消化試合」のようなものだ。
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だが選手にとってみれば,「だから手を抜いていい」わけではない。全勝で抜けて明日に弾みをつけたい,優勝したければどこかで必ず勝たねばいけない相手などなど,勝ちたい理由はあっても,負けていい理由などありはしないのだ。
そして実際,勝負は激しい展開となった。
1マップめは「Cannon」。DeToNatorの先攻である。
Cannonは比較的攻撃側有利なマップだが,ここでUnited5は非常にうまい守りを見せ,6ラウンドまでをスコア3対3のイーブンで終える。
攻防入れ替わり,DeToNatorもまた巧みな守りを見せる。Ak~ayS選手の狙撃の冴えも手伝い,一時はスコア5対6とUnited5にリーチをかけられるも,6対6のイーブンに戻す。まさに実力伯仲だ。
最後の第13ラウンド,United5は3人対3人の状況から爆弾を設置。苦しい形になったDeToNatorは果敢に攻めかかるも,1歩及ばず。1試合めを取ったのは,United5となった。
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2マップめは「Fox Hunting」だ。DeToNatorは後攻で,かつ防御側がとても強いマップなので,前半戦でどれくらい稼げるか,また,苦しい後半戦でどう勝ちを拾うかが課題になる。
DeToNatorは第1ラウンドを落とすも,そこからは順調に勝ちを重ねる。観戦者から「完璧な守り」という評価が出るほど,隙がない。United5も懸命に攻めるが,ギリギリのシーンでRobiN選手が撃ち合いを制し,スコアは2(United5)対4(DeToNator)で折り返しとなった。
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さて,DeToNatorにとってみると,問題はここからである。いかにこの「攻撃側不利」なマップで,強豪United5からスコアを取るか。
しかし,試合は意外な展開を見せる。Saih4tE選手を筆頭に,DeToNatorの攻撃が次々にUnited5の防御を切り崩していく。United5は守り方のパターンを変えるも,DeToNatorの勢いは止まらず,結局,終わってみれば3対7でDeToNatorの圧勝となった。
そして3マップめは「Dual Sight」。
先攻のDeToNatorは,Darkよっぴー選手が大爆発する。第3ラウンドにUnited5の5Dark-選手と1on1になり,文字どおりの「Dark対決」となった勝負を制すると,5ラウンド終わったところで実に12キル。1ラウンド平均2人以上を倒している計算になる。6ラウンドで折り返した段階で,スコアは4(DeToNator)対2(United5)。DeToNatorのキル数分布を見ると,完全にDarkよっぴー選手が試合を動かしている状況となった。
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攻防入れ替わってからも,DeToNatorは強かった。とにかく連携がうまく,銃撃戦になると最低でも1Kill / 1Death交換に持ち込む。もちろん被害なく撃ち勝つこともあって,そうなると徐々に人数差は開き,最終的にUnited5は「詰んだ」状況に追い込まれてしまうわけだ。
だが6対2で迎えた第9ラウンドで,United5はこれまでの戦術を捨て,ラッシュに打って出る。これが大当たりし,第9,10,11ラウンドと,United5はまたたく間にKillを積み重ね,スコアを伸ばす。
とはいえ,ラッシュにはギャンブルな側面がある。はじめのうちはラッシュに対応できていなかったDeToNatorだが,第12ラウンド,ついにUnited5のラッシュを捕まえる。落ち着いて対応できれば,飛び込んでくる相手は「自殺志願者」と変わらない。United5は次々に撃ち倒され,DeToNatorは「初日1位通過」を決する最後の1勝を勝ち取ったのだった。
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■大番狂わせも起こりえた「驚異の個人技」
さて,DeToNatorが1戦目を戦っているころ,別のリーグでは異常事態が発生していた。前回王者である台湾のチームahq e-Sports club(以下,ahq)が,予想外の大苦戦を強いられていたのだ。
ahqを苦しめているのは,中国のチームであるyiyou_N4。なかでもjungle選手の個人技が明らかに卓越していて,「これが国際大会か?」と思うほどのKill数を叩き出していく。基本的に「チームのみんながうまい」「対戦相手もみんなうまい」世界において(しかもこのルールで),累計20Killという数字は,滅多に見られるものではない。だが,実際に目の前で起きていることは信じるしかない。
ahqは最初の試合をマッチスコア5対6から意地と根性で2連取して逆転勝利を収めるも,次の試合ではyiyou_N4に押し切られてしまう。
そして運命の3試合め。第1ラウンド,jungle選手は5Killを叩き出す。いや,待っていただきたい。相手チームは5人しかおらず,リスポーンがないルールで5Kill? そう,彼は文字どおり「5人抜き」を成し遂げたのだ。
とはいえAVAはHPが回復しないゲーム。序盤の銃撃戦でHPをすり減らした相手を,最後にまとめて「刈り取っていく」展開は,プロシーンでもまったくないわけではない。それに,なんだかんだで「Kill」には偶然が絡むもの。今回も,そういうことではないのか。
ところが第2ラウンド。再び勝利したyiyou_N4のスコア詳細を見ると,jungle選手は累計で9Killとなっている。5人抜きの次のマッチで,4人抜き? さすがにこうなってくると,会場のギャラリーも「もはやフロックではありえない」という見解で一致する。
ahqにとって幸いだったのは,yiyou_N4がチームとしてはまだ完全に熟成していないと思われることだった。簡単に言えば,あまり連携がよろしくない。そのため,yiyou_N4はahqに無駄なKillを献上することがままあった。いかにjungle選手と言えども完全に包囲された状態から3人抜き,4人抜きといった展開は不可能だったのだ。
結果,ahqは辛くもyiyou_N4を退ける。勝負の世界に「たられば」は通用しないものだが,それでも,もう少しチームとして完成していたならば,昨年王者のahqがまさかの黒星スタートという歴史も十分にあり得たかもしれないと考えてしまう。世の中に化物というのはいるものだ。
■DeToNatorの戦いは続く
1日目を終えて,DeToNatorは見事,目標とする「リーグ1位通過」を成し遂げた。だが,明日は第2次リーグ。第1次リーグの激戦を勝ち抜いた6チームが,3チームずつ2つのリーグに分かれて戦い,それぞれのリーグで上位2位までがベスト4トーナメントに出場できる。
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このリーグ分け抽選会で,DeToNatorは王者ahqと同じリーグに入った。もう1チームは,香港代表のCGALs。1次リーグに続き,またしても厳しい組み合わせだ。
第2次リーグは,第1次リーグと異なり,1位通過に意味がある(1位通過すると,ベスト4トーナメントで,自分が入っていないリーグの2位通過チームと対戦することになる)。果たしてDeToNatorは悲願の王座へとまた一歩近づけるのか? ahqやUnited5といった強豪達はどう動くのか? そして驚異の個人技を誇るjungle選手は,どんな奇跡を見せるのか? AIC2014の2日目も注目だ。
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