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制作担当 廣瀬氏に聞く「フィゲル」アップデートと,「ラグナロクオンライン」不正対策の現在
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印刷2006/10/20 23:58

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制作担当 廣瀬氏に聞く「フィゲル」アップデートと,「ラグナロクオンライン」不正対策の現在

 MMORPG「ラグナロクオンライン」(以下,RO)で2005年後半から実装が続く,シュバルツバルド共和国の最後の1ピースとなる,「フィゲル」アップデート。その導入を直前に控えたタイミングで,制作担当の廣瀬高志氏に話を聞けた。フィゲルアップデートで追加される新ダンジョン「オーディン神殿」の難度や,新職業「ガンスリンガー」と「忍者」の概要と楽しみ方など,アップデート内容に即した話が一つ。そして二つめの大きな話題が,取り組みの続く不正対策についてだ。
 今回のアップデート以後におけるROの課題や,今後の不正対策とインフレ抑制策の見通しにまで及ぶ話題を,お届けしよう。

※テスト環境での取材のため,名称や仕様は変更となる場合があります。

■ハイレベル向けのダンジョン,中級向けのフィールド

4Gamer:
 フィゲル実装を間近に控えた時期にお時間をいただきまして,ありがとうございます。早速ですが進捗状況はいかがでしょうか。予定どおりに実装できそうですか?

廣瀬氏:
 はい,いくつか調整が必要な部分もありましたが,現在はほぼ問題ないレベルにまで仕上がり,スケジュールどおりに実装を迎えられそうです。このアップデートで,シュバルツバルド共和国のストーリーは完結となります。

4Gamer:
 フィゲルアップデートは,端的に言ってどのレベルのプレイヤー層をターゲットとしているのでしょうか。新エリアのモンスターの強さなどを見る限りでは,前回のノーグハルトアップデートに引き続き,上級プレイヤー向けにも思えるのですが。

廣瀬氏:
 確かにダンジョンだけに注目すれば高レベルプレイヤー向けですけれど,フィゲルアップデートはあくまで全プレイヤー層を対象としています。キル・ハイルのクエストやモンスターレースといった新要素は,戦闘職でないプレイヤーにも楽しめる内容ですし,田園都市「フィゲル」周辺のマップには,レベル30〜40台のプレイヤーキャラクターが相手にできるモンスターも出現します。リヒタルゼンエリアで「メタリン」が倒せるプレイヤーなら遊べますね。

4Gamer:
 新エリア追加のたびに同じ質問をしている気もして恐縮ですが,「オーディン神殿」と「機械人形工場」で安定してプレイするための,推奨レベルはどのあたりですか?

廣瀬氏:
 オーディン神殿はパーティプレイならばレベル80以上,ソロプレイなら90以上は欲しいところです。キル・ハイムの機械人形工場は,クエストだけならレベル70台で問題ありませんよ。ダンジョンとしては80以上でなければ厳しい,といったところでしょうか。

4Gamer:
 なるほど,レベル80以上であればオーディン神殿をはじめ,新エリアを楽しめると。しかし,最近の「リヒタルゼン」や「アインブロック」,そして今回の「フィゲル」を見る限り,パーティメンバーに上位2次職,とくにハイプリーストの存在が必須となる難度のエリア追加が続いているようにも思われます。上級プレイヤーに重点を置いているようにも感じられるのですが,どうでしょうか?

廣瀬氏:
 いえいえ。上級プレイヤーだけを対象にしているわけではありません。確かに「タナトスタワー」や「アビスレイク」など,リヒタルゼン実装以降のエリアについては,転生職がいないと厳しいダンジョンが増えています。ただ,フィールドに目を移していただければ,極端に高いキャラクターレベルでなくても遊べるエリアが,以前よりはるかに広がっています。
 ただし,これはあくまで私個人の意見ですが,高レベル向けの“遊び場”に関しては,すでにある程度整備されていると思います。むしろ今後の新ダンジョン追加時には,成長途中のキャラクターが楽しめるエリアを増やしていくべきだとは考えています。

4Gamer:
 ふむふむ。例えば逆方向のレベル制限で,転生職が入れないエリア/ダンジョンなどがあると面白そうですよね。

廣瀬氏:
 そうですね。今はゲーム内イベント「蜃気楼の塔」で,高レベルだと入れないエリアを用意していますが,アップデートにおいても同様のことができれば楽しいですね。

4Gamer:
 ところでフィゲルアップデートでは,新職業が二つ追加されました。これもまた,アップデートのたびにお聞きしている事柄ですが,キャラクタースロットの追加予定はありますか?

廣瀬氏:
 プレイヤーさんからの要望が多いことは承知していますが,残念ながらスロットの追加は,フィゲルアップデートに含まれていません。

4Gamer:
 では例えば,キャラクタースロットを有料で増やせるといったサービスは予定されていませんか?

廣瀬氏:
 実際,キャラクタースロットを月額課金に絡めた形にしてでも販売してほしいという要望は,プレイヤーさんからいただいています。もちろん,色よいお返事を差し上げたいという気持ちはありますが,残念ながら今のところ予定はありません。



■新しいアクションとプレイスタイルのための特殊1次職

4Gamer:
 では,引き続き新職業のお話なのですが,ガンスリンガーと忍者,どちらも2次転職が存在しない特殊1次職という,今までにない特徴を持った職業です。新職業をそれぞれ成長パターンが似ているアーチャー系/シーフ系と比較したとき,その強さはどの程度でしょうか?

廣瀬氏:
 特殊1次職というのは,2次職には及ばないものの,通常の1次職に比べれば強いです。2次職と単純に比べてしまうと,与ダメージで劣るとはいえ,ガンスリンガーのスキルの中には,ハンターが持つスキルをはるかに上回る一撃必殺のものもありますし,一概にはいえないですね。

4Gamer:
 既存の職業が2次転職してやっと一人前になれるところを,この二つの職業はいわば1次職を飛ばして,ノービスからいきなり主戦力になれる。そう考えてよいのでしょうか?

廣瀬氏:
 そうですね。ただ,さきほども述べたとおり,通常攻撃の与ダメージ値だけを見れば,どちらも2次職には劣ります。今回のガンスリンガーと忍者は,どちらかといえばスキル使用時のアクションや,豊富な武器を楽しんでもらう意味合いを持っています。

4Gamer:
 レベル制のMMORPGにおいて,日本国内のプレイヤーは何か明確な目標が見えていると,そこにたどり着くまではつらくてもがんばる人が多いですよね。今回の二つの職業は,成長が早くてすぐ戦力になれる半面,2次転職という目標がないため,ある程度まで育てたら飽きられてしまうという恐れはありませんか?

廣瀬氏:
 「スーパーノービス」も途中にゴールがとくにない職業ですが,楽しんでいただいている方もいます。ガンスリンガーと忍者も同様に,あえて制限がある中で,どんな風に育てていくか試行錯誤を楽しむタイプなのです。
 その意味で,職人気質なプレイヤーさん向けの職業かもしれません。既存の職業をひととおり楽しみ,新たなプレイスタイルを探している人に,ぜひ試していただきたいですね。とくに忍者には,近接攻撃のあとにハイディングし,次の攻撃に向けて移動するといったアクション性もあり,操作していて楽しいはずですよ。

4Gamer:
 テストプレイでは残念ながら確認できませんでしたが,新アイテム「ヴァルキリーセット」が,プレイヤーの間で注目されているみたいですね。3点セットのコンプリートは,やはり難しいのでしょうか? 揃えたときにセットボーナス効果があるのかも,お聞きしたいところです。

廣瀬氏:
 詳しくはお教えできませんが,入手は相当難しいです。セットボーナスは,今回のヴァルキリーセットには存在しませんが,将来的にはそういった付与効果のあるセットも,実装を予定しています。ただ,いつのアップデートで導入されるかは決まっていません。



■アカウント認証と「措置」の両輪で進む不正対策

4Gamer:
 話の方向はがらりと変わるのですが,ROの不正対策については,月例で「措置」(アカウントの一時凍結および停止。なお一時凍結は主として,不正か否かの判定期間)数やゲーム内通貨の回収額などが発表されるようになりましたね。BOTの数もひと頃に比べてだいぶ減ったという声を耳にします。運営側として,ここまでの対策の手応えをどのように捉えていますか?

廣瀬氏:
 ゲーム内で不正なことを行っているキャラクターに対して,適切な措置を続けていくことがある程度でき始めており,一定の効果が上がっているのは確かだと思っています。
 Zeny(ゲーム内通貨)の回収額,インフレ対策の効果についても毎月報告させていただいていますし,「措置」が実施された場合の件数についても同様です。もっとも,ただ単に「措置」を続けていけばよいと考えているわけではありません。「措置」を行ったあと,新たにIDを取り直してくるケースも増えているのです。
 そこで入り口部分,つまりID取得段階における対策として,入力フォームの見直しを行いました。具体的に言いますと,個人情報部分をコピー&ペーストで入力できないようにしたり,画面に角度を変えて表示されるひらがなを,キー入力する形の文字認証手続きを導入したりといったことです。つまり,アカウント取得ツールを利用しづらくしたわけですね。
 ただし,先にも述べたように,これで十分だと考えているわけではありません。今後とも入り口部分を含めた,さまざまな対策を強化していきたいと考えています。

4Gamer:
 長期的には根比べになるのかもしれないですが,現状である程度効果が認められるとすれば,それは喜ばしいことです。ところで,ゲーム内通貨の回収についてはいかがですか? 数字で判断する限り,目指すべき達成水準はかなり高くなりそうですが。

廣瀬氏:
 そうですね。NPCのアイテム販売を通した回収や,不正プレイヤーキャラクターからの回収などの実績は,これまで明らかにしてきたとおりです。
 これは今後の話になりますが,ドロップテーブル(アイテムドロップの内訳や確率の設定)の見直しも含めて,対策を考えていきたいと思っています。不正プレイヤーがターゲットとするようなアイテムだけを即物的にどうにかするのでなく,もっと広い範囲でゲームのバランスを考え,なるべく一般のプレイヤーさんに影響が出ないようにしたいと思います。あくまで検討段階ですが。
 それと,以前発表した,そのほかのインフレ対策については,現在準備を進めているところです。

4Gamer:
 しかし,仮にドロップテーブルを広範に見直すとなると,それこそ直接プレイバランスに影響しそうな気がします。手段として,それは本当に大丈夫なのでしょうか。

廣瀬氏:
 ええ。確かにそう思えるかもしれませんので,順番に説明します。ゲーム内通貨の流通が増えるというのは,本をただせばモンスターからのドロップアイテム,とくに高額なアイテムがNPCに売り渡されることによってのみ生じます。ですから,対NPC売却価格が高いもののドロップは,やはり抑えるべきなんですね。これによって,ゲーム内に流通する全体のZeny量を調節できます。
 ただ,そうしてしまうと,上級ダンジョンでプレイする方の,ゲーム内における“稼ぎ”が減ってしまう。そこは性格の異なるアイテム,つまりNPCに販売しても高額にならないけれど,プレイヤーにとって価値のあるアイテムをドロップさせることで,補正しようと考えています。

4Gamer:
 なるほど。NPCによる買い取り価格設定はともかく,プレイヤーにとっての価値をさまざまに用意するからこそ,手広く調整する必要が出てくると。

廣瀬氏:
 そうです。そしてこれは,高レベルプレイヤーのみを対象としたものではなく,まだレベルの低いキャラクターを使っているみなさんのことも視野に入れて考えるべきなのです。
 ゲーム内でアイテムの取り引きが活発になれば,Zenyの需要が高まる方向でインフレが緩和されます。ですから中級以下のプレイヤーに関しては,むしろアイテムを手に入れやすい状態,ゲーム内でのプレイヤー間格差が小さい状態でなければならない。現状ではアイテムの需要に対して供給が追いつかないから,どうしても価格が高騰してしまう(=インフレが進行する)という面もあるわけです。 もちろん,不正プレイヤーが生み出してきたアイテム供給分が減ることも,考慮に入れる必要があるのですが。

4Gamer:
 NPCに売られず,プレイヤー間で広く売買されるアイテムが増えればよいわけですね。



■BOTのみならず「倉庫」アカウントをも取り締まる

廣瀬氏:
 不正対策についても,さらに歩みを進める必要があると考えています。BOTキャラクターを取り締まるだけでなく,そこからアイテムやZenyが送られる対象であり,RMT市場に持ち出すための「倉庫キャラクター/アカウント」,またゲーム内でそれを販売する「露店キャラクター/アカウント」についても,取り締まりを強化していこうと考えており,実際に始めてもいます。

4Gamer:
 倉庫キャラクターや露店キャラクターについては,データベース上でのアイテムやゲーム内通貨の動きを見て判断するのですか?

廣瀬氏:
 ええーと,それはさすがにお話しできませんよ(笑)。具体的な「捜査」の中身になってしまいますから。

4Gamer:
 それもそうですね(笑)。新手のロンダリング手法を編み出されても困りますし。

廣瀬氏:
 ええ。我々も,不正対策にどう対抗するか,掲示板で不正プレイヤー同士の話し合いが持たれていたりするのを見ています。実際,不正を働くキャラクターは捨てゴマ的に使われるものですから,普通にアカウント停止処分などを行っても効果がないのです。元を断つのが重要。そう捉えています。
 人間同士の問題ですから,仮にイタチごっこが続くとしても,それはそれで努力していくほかないですね。取り締まりの手法についても,専門チームを組み,ほかの部署と会議を重ねて,効果的かつ効率的な方法を,とくに今年から重点的に模索し続けています。
 もちろん,システム的な対策についても,開発元であるGravityや,セキュリティツールメーカーと協議しています。事の性格上なかなか,いつ何をやるといったアナウンスができないのですが,時期が来た段階でお知らせしたいと思います。
 不正対策に関してはとくに,プレイヤーさんの意見も実現可能なものはぜひ取り入れていきたいと思っています。

4Gamer:
 ところで,直接にゲーム内部での話からは少々離れるのですが,ゲームの外側でBOTやインフレを誘発する要因となっているRMTについて,何らかの対応を打ち出すお考えはありますか?

廣瀬氏:
 法整備の問題もあり,外に向かって踏み出すのは現段階でなかなか難しいものがあります。もちろん,啓蒙活動は引き続きしていきますし,ROとしては,RMT全面禁止というスタンスに変わりはないのです。
 私個人としては,外部の要素,例えば不正な資金によってオンラインゲームが利用されるのは嫌ですし,腹立たしいことで,これは許したくないですね。



 初心者の方にもこのアップデートの内容を楽しんでほしいというのが廣瀬氏のメッセージではあるが,フィゲルアップデートでの追加要素を虚心坦懐に見る限り,やはり高レベルプレイヤー重視の感は否めない気もする。
 新職業についても,一見したところ2次転職が存在せず,育てやすいものに思えるが,消費アイテムのコストなどを考えると,純粋な意味でビギナーにお勧めとは言いづらい。上級プレイヤー,とくに転生済みのキャラクターにとって挑戦しがいのあるエリアやボスモンスターの実装は嬉しい内容ではあるが,中級プレイヤーにも楽しめる部分の充実が,今後の課題といえるだろう。
 もちろん,シュバルツバルド共和国におけるさまざまなバックストーリーは,比較的キャラクターレベルを問わず楽しめるものだったし,廣瀬氏も述べるとおり,フィールド戦闘部分の難度においては,中級以下のプレイヤーも考慮されている。だがアインブロック以降のダンジョンは総じて,やや高レベルプレイヤー向けに寄ったものだったのも事実だ。
 その意味で,「蜃気楼の塔」と同様の,中級/初級プレイヤー限定の仕組みを通常のアップデートで導入したいという廣瀬氏の見解には,大いに期待したい。

 また,ここ数か月でBOTキャラクターがだいぶ減ったといわれる不正対策の効果について,廣瀬氏は「措置」とアカウント取得時の認証を組み合わせたことの意義を強調する。捕捉が難しいと思われる「露店」アカウントについては判断しがたいが,「倉庫」アカウントに捜査の手が伸びることは,事態の改善に一役買ってくれるはずだ。
 流通するZenyを減らす/モノを増やすという両面から成るインフレ対策については,プレイへの影響が大きいと思われるだけに,慎重かつ大胆な施策を期待したい。オンラインゲームは“社会”であり,そこでモノが果たす役割が変わることは,取りも直さず“生活”が変わることを意味する。インフレ終息ももちろん重要なのだが,プレイヤーのコミュニケーション内容や目標意識を多様化する方向に働くならば,それはそれで意義のあることだ。具体的なアイデアを,とにかく早く聞いてみたいというのが,インタビューを終えての感想であった。(ライター:麻生ちはや)

※2006年10月16日収録

  • 関連タイトル:

    ラグナロクオンライン

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