本編に入る前に,10月13日に実施された大規模アップデートについて解説しておきたい。変更/新要素は多岐にわたるが,プレイに最も影響するのが,順位とアイテムボックスの廃止だ。
エピソード/クエストをがんばってプレイする動機でもあり,同時に醜い争いの種でもあったこの2要素だが,順位はなくなり,ボーナスアイテムは完全にランダム配布となった。
レベルが低いうちは三角牛乳を飲みながら,捨て身で突っ込んでもなかなか1位が取れなくて悔しい思いをし,修行を重ねるうちにいつしか常時上位に食い込めるようになる……。順位制には自分の成長を実感できるというメリットもあった。
大活躍した人を尻目に,そうでもない人がレア武器を手に入れることも。"誉められて伸びる子"には向かないが,確かに他人の足を引っ張る意味はなくなった
確かにアイテム欲しさにマナーの悪いプレイが生じたのは事実だが,完全になくしてしまうには惜しい,ユニークなシステムだと個人的には思っている。ぶら下げるニンジンについては考え直す必要があると思うものの,競争要素そのものは,ぜひうまく使ってほしい。「ゆとり教育」を終えた後,現実に放り出されるのは競争社会じゃん! という皮肉はさておくとしても,ゲームプレイを盛り上げ,引き締めてくれるスパイスとして貴重なものではないだろうか。
一方,進級に必要な成績システムは健在である。B+以上の成績を取るためには,「エピソード/クエスト終了までの時間」を短縮し,「個人のモンスター殲滅数」を上げていかなければならない。相対評価から絶対評価になったとはいえ,ボーっと突っ立ってるだけでは落第してしまうのである。
アップデート直後はうまく作動しないこともあったが,原稿執筆時点ではマップ間移動もきちんとこなしてくれるようになった
ヨーグルティングのマップは,学校とその周辺という限られたものだが,各エピソード/クエストをプレイするためのゲートは,各所に分散している。学年が上がり,プレイ可能なエピソード/クエストが増えるにつれて,「あのエピソードって,どこのゲートからだっけ?」などと迷うことも,しばしばあった。
そこで役立つのが,新しく導入された「GO!」ボタンだ。プレイ可能なエピソード/クエストをチェックするための「案内板」で,目的のエピソード/クエストを選択し,「GO!」ボタンを押せば,所定のゲートの前まで移動できる。ミニマップでゲートの位置を確認していながら,しっかり正反対の方向に進んでしまう筆者には,今回のアップデートで地味ながら一番嬉しい機能である。
校内で新入生をサポートする学級委員に遭遇。お互い慣れないエピソードについて語る姿は微笑ましかったが,筆者の熱い視線はひたすら,入手不可能なその制服に注がれていた
熱心なプレイヤーの中にはとっくに3年生のエピソード/クエストを終了した人もおり,そんな人達が待ちわびていたのは4年生の追加であろう。専用エピソードが7本も追加され,学校の謎もさらに明かされていくに違いない。3年生への進級も,いささか遠く感じられる筆者だが,公式サイトによれば,我らが宵月学院のアイドル暗田君が,またも大活躍してくれるらしい。
エピソードの追加に伴い,新たな制服も登場した。応援部と料理部の二つで,個人的にはスカートの丈がたいへん短い宵月料理部にの制服から目が離せない。自慢じゃないが,家庭科の成績は10段階評価で10でしたしっ(編注:ウラとってません)。
そして,プレイヤーを陰でサポートしてくれるキャストキャラクター「風紀委員」(GM)とは別に,「学級委員」(サポーター)が新たに登場した。学級委員はGMと一般ユーザーのちょうど中間のような役目を担っており,イベントの企画/運営なども行うが,ごく普通にプレイヤーと一緒に遊ぶこともある。タイミングが合ったらぜひご一緒したいものである。
前回取り上げた,牛乳箱を運ぶ「サム先生のお願い」では,モンスター「アンモネラ」がピンク色のゼリーお化けに変わった
以前インタビュー記事で触れた,新しい操作方法の導入や,そのほかの細かいシステム変更については,公式サイトにまとめられている。
ゲームバランスにもかなり調整が入ったようで,全体的に難度が下がった。例えば筆者がひたすらプレイを重ねた「私の三角定規を返して!」エピソードもそうだ。アップデートを境に,筆者のキャラクターのレベルは変わっていないにもかかわらず,回復剤の使用が数本に減り,危険を感じることはほとんどなくなった。制限時間も少し伸びて,クリアしやすくなったことがはっきり分かる。なお,配置されるモンスターが変わったエピソードもある。
どちらの学校に向かうにしても,チケットは購買で入手可能。購買にわざわざ行かずとも,携帯電話を利用した通販ならバス停の前からでもすぐに買える
さて,この連載では今まで入学した宵月学院ばかりを紹介してきたが,天気もよいことだし,今回は進級だの成績だのを全部無視して,もう一つの学校「エスティバー学園」に出かけてみることにした。いわば,自主的なバス遠足だ。引率の先生もガイドさんもいないけど。
実は13日のアップデートで,宵月学院とエスティバー学園の間をバスで行き来するのがグンっと楽になった。これまでは行きも帰りもクエストのクリアが要求されたうえに,そのクエストはソロ限定で,ある程度のレベルが要求されるものだった。
ところが今や,バスのチケットは購買のおばちゃんに150taff(ゲーム内通貨)払うだけで片道切符が買えるという,お手軽簡単ぶりである。ものの数秒で到着してしまうではないか。いやその,別にこのアップデートを待って今までエスティバー学園に行かなかったわけじゃないんですけどね。
前述のように宵月学院からエスティバー学園へは,バス以外にクエスト「エスティバー学園へ行こう!」で行ける。出現モンスターは1年生だと手こずる「ラッチュー」だが,2年生にもなればキツくはない。マップには,レバーを押して扉を開けるポイントが2か所あり,初めてのときは少し迷うかもしれない。といっても道はほぼ一直線なので,一度プレイすればそれ以上の困難はないだろう。
やっと到着したエスティバー学園。表敬訪問なので(?),衣装は手持ちの中で最もゴージャスな雰囲気の看護服をチョイス。見慣れぬ制服の女学生の群れをスイスイとかき分けながら,いっちょ他校のエピソード(クエストはいっさいプレイできない)で暴れてやるかぁ!と意気込んだ筆者は,いきなり出端をくじかれてしまった……。
他校のエピソードについては,自分が2年生だからといっていきなり2年生エピソードをプレイすることはできない。1年生エピソードから順番にこなさねばならなかったのだ。いまさら「ソソ」相手にA+の成績を出して大喜びする筆者。いーんです。器が小さいほうが,身近な幸せを味わえるんです(強弁)。
本来ならば,宵月学院と同じようにエピソード/クエストの見どころ,攻略ポイントを解説すべきなのだが,さすがにそれではスペースがいくらあっても足りないので,詳細は割愛させていただき,ここからしばし,ハイライトシーン集という形でお届けしよう。
●圧倒的じゃないかっ!「マルシュ・アタック」の壁
すでに2年生のため緊迫感はないが,モンスターの数が半端ではない。「新入生」の称号が外れたばかりならば,1,2度戦闘不能に陥ってもおかしくない
エスティバー学園の1年生が,まず洗礼を受けるのが「マルシュ・アタック」エピソード。プレイヤースキルがどうのという以前に,とにかく圧倒的な物量で襲い来る本の群れは,1年生には相当イタいことだろう。このエピソードが無難にこなせるころには,レベルも上がっているはず。キャラクター育成を兼ねて,先を急がずしばらく修行するのに向いたエピソードのようだ。
●エスティバー学園のアイドルは誰?
畳が敷かれたこの部屋は,エピソード「特命生徒会」で訪れる「修行部屋」。学校の地下にあるのだが,これは日本の学園ヒーローアニメに影響された設定だろうか
他校のクエストはプレイできないとなると,出会えるNPCも自ずと限られてしまうわけだが,そんな中で唯一印象に残ったのが「スーチョン」君。武闘派らしい彼の発言は毎度意味不明なのだが,登場回数は割と多めだ。宵月学院の暗田君と同じように,プレイヤーに愛されてるかどうかが少々気になるところである。
●「やーん,羊さんカワイイ〜」とかいいながら……
宵月ではさんざん,ダンボール箱だの牛乳箱だのを運びましたが,何頭だって運びますよ,こんな美味しそ……いえ,可愛いヒツジちゃんなら!
逃げ出してしまったヒツジ,ポーじゃなくて「ヤンヤン」21匹を運ぶエピソード。このヤンヤンが実に愛らしいのだ。ふかふかした羊毛と丸っこい体型,それらにそぐわない,何かを達観したかのごとき冷たい目。このヒツジにあるまじき表情が,なんともいえない魅力である。ついついプレイしながら「カワイィ♪」発言を繰り返す筆者だが,このエピソード名「ジンギスカンの夕べ」なんですよねぇ……。
2年生進級がそろそろ実感できるころ,その前に立ちはだかるとおぼしきエピソードが「オズの魔法使い」だ。誰しも子供時代慣れ親しんだであろう同名の児童書,その主人公ドロシーが,ここエスティバー学園ではプレイヤー達を容赦なくいたぶってくれる。
私が悪かったと,逆に謝ってしまいそうなドロシーの涙。「ツンデレ」が分からない人は,「こちら」の解説を参照のこと
「オズの魔法使い」最終ステージで,ドロシーは巨大ロボット「メガドロシー3号」を呼び出す。いわゆるラスボスである。
図書館が舞台のエピソードだけあって,メガドロシー3号は本棚が変形(!)した姿で,画面内に入りきらないほど大きい。最終的にプレイヤー達は協力して,このボス・メガドロシー3号を倒す。
だが,首尾よく倒すや否や,画面はいきなりムービーに切り替わり,「ひっどぉ〜い,メガドロシー3号を壊しちゃうなんて〜っ!」と子供っぽい口調で,そっと涙をぬぐうドロシーの姿。先ほどまでの強気かつ生意気な態度はどうしたのか? 敵ながら思わず駆け寄って,ゴメンネと謝ってしまいそうになるその小さな背中。こ,これはもしかしてツンデレの予感……?
この異境の地にも,体操着+ブルマのゴールデンコンビが。繰り返すようだが,最近ブルマ指定の学校なんて,絶滅一歩手前ですよ
せっかくのエスティバー学園だが,そろそろ遠足の時間も終わりに近づいてきた。まあ遠足はおうちに帰るまでが遠足なわけだが,ここらで一つ恒例のアレを……。
何とも残念なことに,エピソードでもらえるエスティバー学園の各種衣装を,宵月の生徒である筆者のキャラクターは着用できない。かといって,通りすがりの女生徒に「こ,これを着て撮影させてくれませんかね」などと話しかけたら,一発で"嫌がらせ発言によるGMコール"モノである。どうしたものか。
そこで,目当ての衣装を着て雑談している女生徒のグループに加わって,撮影させていただくことにした。これはこれで文字にすると問題がありそうに読めるアクションだが,きちんとお友達になったので,その点はご心配なく。
何ともうらやましいのだが,エスティバー学園はグラウンドのすぐ隣にプールがある。お約束のビート板に飛び込み台と,舞台は整った。お友達になっていただいたみなさまを半ば強引な形で誘い,歴史に残るベストショットを読者のみなさまのためにご用意しました。もう夏はとっくに終わりましたけど,今さらながら行く夏のなごりをこれで味わっていただければ。
なんとエスティバー学園の「飼育部」制服セットは黒いネコミミにしっぽ付き! ……エスティバー学園に入学しておけばよかった,と筆者を深く後悔させるほどの破壊力だ。だって,ネコミミですよ?
学校指定のスクール水着を着て,タイトルは「プールサイドの乙女達」。若いっていいなぁ〜と,画面のこちら側でシャレにならない実感をコボしていたことは,ここだけの話にしておいてほしい
暴れて,遊んで,お友達まで作った,やりたい放題のエスティバー学園自主遠足はこれにて終了。一緒にエピソードをお手伝いしてくれたみなさま,ありがとうございます。今度はぜひ宵月学院に遊びに来て下さいね。おもてなし致します。
くたびれ果てた帰りはバスを利用する。読者のみなさま,来週はまた宵月学院で会いましょ〜。