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英文のブリーフィング内容でもまったく問題ないという英語に堪能な人は,残念ながら今回の記事は不要かも |
隊員諸君! 善良な市民の生活を脅かす凶悪な難事件を,今日もせっせと解決しているだろうか。優秀な諸君のことだから,犯人どもをみるみる無力化し,気の毒な人質を解放しまくっていることだろう。
だが英語を得意としない隊員の中には,犯人達が何をしでかし,人質がどういう危険にさらされているのか,何も分からずに事件解決しちゃっている者もいるのではなかろうか。
そこで今回は,現在アメリカで対組織犯罪戦略や危機管理戦略などを研究している学生ライター・松本隆一氏に,ミッション1〜7までのブリーフィングの英文の超訳を行ってもらった。超訳なので,語学に堪能な人に見つかってしまうと,ところどころ眉をひそめてしまうような箇所もあるかもしれないが,各ミッションのだいたいの内容は誰もがこれで掴めるはずだ。
なお,次回連載ではミッション8〜13の超訳記事を掲載するのでお楽しみに。
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・アレックス・ヒメネスの中立化 |
・リアン・ニューの中立化 |
・混乱の収拾 |
・民間人の安全 |
・MAC-10の押収 |
諸君,よく聞け。OCID(組織犯罪捜査部)は,この日のために準備を重ねていたが,犯人逮捕を確実にするため我々の援助を求めて来た。ここ2週間というもの,フードウォールレストランは厳重な監視下に置かれていた。我々の調査では,オーナーのリアン・ニューは名の知れた銃の密造屋で,違法な銃の改造に手を染めている。今回は,違法に改造された,ばかでっかい弾倉を作った疑いだ。ニューは店の下に工場を持ち,そこで商売をやっている。ヤツは以前にも違法銃器で調べられたが,逮捕はできなかった。
10分前,アレックス・ヒメネスがレストランに入っていくところをシェリー刑事が目撃した。ファイルを見てくれ。ヒメネス,またの名を"ザ・ナイフ"は,コロンビアの組織の殺し屋だ。彼は過去1年半に起きた数々の殺人に関係があると見られている。ヤツは間違いなく武装しており,非常に危険だ。
シェリー刑事によると,今ヤツは店内にいて,改造されたMAC-10サブマシンガンを所持している。こいつは,最近の殺人事件でも使われた銃だ。確実な証拠品が欲しい。したがって,ニューとヒメネスに事前に警告するつもりはない。諸君が突入するとき,レストランの内部には常連客と従業員がいるものと思ってくれ。いつものように,目標の確認を怠るな。
最優先事項は,もちろん民間人の負傷を避けることだが,ヒメネスの持つ証拠の銃を押収してほしい。OCIDは,ニューとヒメネスご両人相手の長いおしゃべりを楽しみにしている。あの銃は,話題の中心となるはずだ。現場の見取り図を注意深く確認してくれ。突入プランができたら,出動だ。
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・ミリンダ・クリーンの救助 |
・ローレンス・フェアファックスの中立化 |
・混乱の収拾 |
・民間人の安全 |
準備はいいか,諸君。こいつはタフな仕事だ。目標のローレンス・フェアファックスは,ぞっとするような殺人事件の捜査線上に浮かんだ第一容疑者だ。ちょっと説明するぞ。ここ1年半の間に7人の女性が失踪している。いずれも州立大学の学生だ。1〜3週間後に見つかった遺体には拷問の跡があり,手足を切断されていた。犯人は用心深いヤツだ。合同捜査班の科学捜査チームは,どの遺体からも証拠となるようなDNAサンプルを得ることができなかった。
だが,最新の発見が状況を変えた。今朝,新たな犠牲者が地元の作業員によって発見され,彼女の爪から採取されたDNAが,捜査班が追っていた容疑者のうちの一人と合致したのだ。それがローレンス・フェアファックスだ。
複雑な状況だ。女子学生,ミリンダ・クリーンが2000年10月18日前後に失踪している。つまり6日前の話だ。もし,フェアファックスが彼女を拉致し,ヤツがプロファイル通りの男だとしたら,ミリンダがまだ生きている可能性は高い。彼女の救出が最優先事項だ。したがって,我々は警告なしで突入する。
容疑者についてだ。フェアファックスは臨時雇いの大工で,大学の周辺で働いていた。警察に彼の記録はないが,法廷には,すでに解除済みの差し止め命令が彼に対して二つあった,という記録が残っている。最近,彼は,資材を盗んだという理由で職場から出勤を止められた。フェアファックスは秘密主義で,仕事仲間は,彼についてあまりよく知らない。注目すべきは,犠牲者のうちの3人が失踪する直前,彼が法学部の図書館に何度も出入りしていたということだ。そのうちの一人がミリンダ・クリーンだ。彼に対する警察の事情聴取ではなんの結論も出なかったが,刑事は古い組織から間違いなく彼のDNAサンプルを得ることができた。
仕事をクビになったあと,彼は精神科に通院していたが,我々はその記録を見ることはできなかった。だが,医者は我々に,フェアファックスは彼の住居を要塞のようにしているかもしれない,と警告した。トラップに注意しろ。とくに,ヤツがもっぱら使っているような場所においてはだ。ヤツは母親のグレディズ・フェアファックスと二人暮しをしている。近所付き合いもなく,健康上の理由から,彼女はめったに家を出ない。彼女が事件に関わっていると信ずべき理由はないが,注意を怠るな。
諸君,今後,一秒一秒がミリンダ・クリーンの生死にとって重要になってくるはずだ。見取り図を確認しろ。装備を選んだら,出動だ。
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・ハイディ・ローゼンステインの救助 |
・ウィリス・フィッシャーの救助 |
・キム・ドン・ヨンの救助 |
・アリス・ジェンキンスの中立化 |
・混乱の収拾 |
・民間人の安全 |
見ての通り,人質立てこもり事件だ。少なくとも3人の人質がいる。通信指令本部に911通報が入ったのは0600時のことだ。通勤途中の女性がガソリンを入れるために車を寄せ,再び車を出そうとしたとき,フロントドアから銃を持った一人の女が出てくるのを目撃し,携帯電話で911番に連絡したのだ。最初に現場に到着した警官らが調べたところ,複数の武装した犯人と,少なくとも一人の民間人が中にいることがわかった。銃の数は不明だ。犯人達が人質を脅している間,警官らは後退し,包囲線を敷いた。
今のところ,犯人らしいのが一人分かっている。アリス・ジェンキンスだ。彼女はオキシコドン中毒のリハビリ施設にいた。オキシコドンはヘロインに似た鎮静剤で,同じように依存症になる。こいつはシェジュール2(※ScheduleII:医薬品の分類の一つ。綴りは"スケジュール"と同じで,数字が大きくなるほど規制が厳しくなる。最大は9)の処方医薬品で,つまり偽の処方箋を薬局に持っていけば,どんなバカでも手に入れられるというわけだ。80ドルほどで,路上で気軽に売られている。
ジェンキンスだとすれば,これはヤクの金欲しさから起こした強盗くずれの事件だ。最近,立て続けに起きているコンビニ荒らしとも関係があるかもしれない。彼女とその仲間達は人質など取るつもりはなかったはずだし,人質らをどう扱っていいかも分からない。犯人が何をするか,こちらには予想もつかず,つまり人質は非常に危険な状況にあるわけだ。連中の落ち着かない様子から見て,容疑者のうち何人かはハイな状態だ。しかも、やつらはネゴシエーターとの交渉も打ち切った。今のところ,我々はハンドガンで武装した犯人を目視で3人まで確認しているが,たぶんもっといるだろう。
人質について知る限り,我々は次の三人が中にいると思っている。キム・ドン・ヨン,ハイディ・ローゼンステイン,そしてウィリス・フィッシャー。いずれもスタンドの従業員だ。さらに別の客がいるかもしれないが,可能性は低い。突入には細心の注意が必要だ。諸君が突入可能な2か所の地点に,地上支援班を配置した。激しい銃声が聞こえているところを見て,これ以上の遅滞は許されないだろう。戦術的決着を図るときだ。状況を確認し,装備を整えたら,突入しろ。
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・混乱の収拾
・民間人の安全 |
我々は,現在A-Bombナイトクラブで起きている発砲事件の緊急出動に応じているところだ。少なくとも4人の武装犯──たぶんもっと多いだろう──が,お互いに撃ち合っている。
犯人達は,民間人に向かって故意に発砲したり,人質を取ろうとする素振りは見せていないものの,証言によると,現場には銃撃戦によって負傷した被害者が数多くいる。目撃者の証言は混乱したり,あるいは,ときどき食い違っていたりする。
二人の白人と二人のヒスパニックが,その組み合わせで撃ち合っていて,全員が若い男らしい。
突入地点は二つ。チケット売り場を過ぎたところにあるフロントドアと,裏道に面した荷物の搬入口だ。非番のバーテンダーが描いた,現場の大雑把な見取り図があるから,ざっと目を通しておけ。だが,あまり信用しちゃいかん。
客のほとんどはうまく逃げ出したが,何人かがまだ中に閉じ込められている。目撃者によると,負傷者が出ているのは間違いない。包囲している警官隊からは,まだ散発的な銃声が聞こえるとの報告があり,我々が建物を制圧するまで,救急隊員は中へ入れないだろう。我々の任務は,突入し,混乱した秩序を回復し,犯人どもを逮捕することだ。加えて,残された民間人,とくに負傷者の居場所を特定し,安全に脱出させなければならない。ファイルを見直し,突入地点を選択して,装備を整えろ。仕事の時間だ。
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・ゲーリー・アルトマンの救助 |
・混乱の収拾 |
・民間人の安全 |
事件が起きた。我々は29番街とアーリントン通りの交差点にあるビクトリー・インポートカー・センターに急行しなくてはならない。見たところ,車の盗難事件から人質立てこもり事件に発展してしまったようだ。
911番通報を受けたパトカー,アダム32が,車を盗もうとしていた二人組を取り押さえたが,警官達が投降を命じたとき,彼らは警官に向かって発砲し,メインビルディングに逃げ込んでしまった。犯人の正確な人数は分からない,警官によると,少なくとも4人の男を目撃したそうだ。犯人らは武装しており,何人かは機関銃を所持している。加えて,彼らは人質を取っている。名前はゲーリー・アルトマン。アルトマンは,ビクトリー・インポートの修理工で,残って仕事をしていたらしい。最初に911番通報をしたのも彼で,電話はすぐに切れた。彼と連絡を取るための,それ以上の試みは失敗した。
今のところ,犯人は特定できていない。警官が見たのは若い男で,10代後半から20代前半,明るい肌,服装は普段着で,ジーンズとTシャツ,そんなところだが,特定の犯人に結びつくような重要な手がかりは得られていない。交通課によると,こいつらは新手の車泥棒らしい。地元の修理工場から,似たような事件の報告は上がっていない。ここは,蕾のうちにひとひねりしてしまうのがいいだろう。
警官達は外に出てくるよう犯人に呼びかけたが,散発的な銃声以外,なんの反応も得られなかった。だが,ネゴシエーターが連絡に成功し,彼らは会話に応じた。彼らは食料と防弾ベストを要求し,どちらもこちらに拒否された。ヤツらがアルトマンの解放に納得しなかったからだ。できないのかも知れない。0300時,連中は,自分達を逃がすように,との最後通牒を突きつけてきた。それ以降の犯人との交渉は,短く,とげとげしいものになっている。交渉は暗礁に乗り上げた。関係者はアルトマンの安全を憂慮している。というのも,犯人達が自暴自棄になっているように見えるからだ。この,膠着状態を終わりにするのが我々の仕事だ。
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・ウォーレン・ルーニーの救助 |
・混乱の収拾 |
・民間人の安全 |
今日のちょうど14時を回ったころ,複数の武装犯がウェインライト・ミル・センター・ビルに押し入った。犯人達は,パトロール中の警官に気づかれるまで,オフィスの中で目に付くものを片っ端から撃ちまくった。
もともと,この事件はコミュニティ・セービング&ローン(銀行)に対する強盗として始まったものだ。だが,ヤツらは押し入った直後に警備会社と警察につながる警報機を鳴らしてしまった。犯人達は逃げ出す代わりに強盗を続行することに決めたようだが,結局,金庫室の保安装置を破ることができなかった。
警備係との戦いで,犯人のうち二人が撃たれ,残りは逃げ出した。パトカーとの短い追跡劇のあと,犯人達はウェインライト・ミル・センターに突入し,レッド・リバティー・オフィスに逃げ込んだ。警官達は後退し,包囲戦を敷いた。
レッド・リバティーは,データの処理・保存を得意とするソフトウェア会社だ。従業員はしばしば土曜日も働き,そのため,そこが犯人達の見つけた最初の"鍵のかかっていないオフィス"だったのだろう。残念ながらこのことはまた,犯人が飛び込んだとき中には人が大勢いた,ということも意味する。
ネゴシエーターは,1530時から犯人との交渉を開始している。全体的な見積もりはこうだ。彼らは重武装しているが,彼らがそこで何をしたいのかは自分達にもよく分かっていない。今のところ,容疑者は,複数の人質を解放することと引き換えに,脱出ルートと現金500万ドルを要求している。ネゴシエーターは,これまでに4人の人質を解放することに成功しているが,引き換えにガスマスク二つと,防弾ベスト2着を渡した。解放された人質からは,従業員の正確な数を聞き出すことはできなかった。今日,何人が出勤していたかなど誰も知らないのだ。銃声の数がどんどん増えている。つまり,我々が突入し,残りの人質を助け出すときがきた,というわけだ。
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・ルイス・バッカスの拘束 |
・サイモン・ゴーワンの中立化 |
・アレン・クルースの中立化 |
・ジェレミー・ウォルシュ刑事の救助 |
・混乱の収拾 |
・民間人の安全 |
※コインランドリーの調査(追加目標) |
こいつは少々やっかいだ。風紀取締班は,ここ3〜4週間というもの,ノースサイド・ベンディング&アミューズメントの内偵を続けてきた。彼らは店の地下で行なわれている賭博容疑を立件したいのだ。潜入捜査官のジェレミー・ウォルシュは,容疑者の近くで働いており,今日,地下室への招待を受けていた。
ウォルシュがこちらの視野から消えるまでは,すべてが順調だった。ウォルシュに取り付けた無線機は,依然として彼が容疑者と会話を続けていること知らせており,容疑者は,ウォルシュに対する疑惑などまったく見せていなかった。10分も経たないうちに,穏やかな状況は急変した。彼の無線機が突然止まってしまったのだ。すべてが予定通りに運べば,ウォルシュはとっくに戻っているはずだ。彼は地下に降り,ちょっと賭けをして,すぐに帰って来るはずだったからだ。ウォルシュが現在,どうなっているかを知るすべはなく,我々は,彼が危険な状況に陥ったものと推測している。つまり,我々が突入し,彼を助け出すときなのだ。
我々は,少なくとも3人がそこにいることを知っている。まず,ルイス・バッカス。彼はこの店の経営者だ。残りの二人は,アレン・クルースとサイモン・ゴーワン。クルースとゴーワンは賭博の黒幕で,バッカスが彼らに偽の身分と場所を提供しているのは確実だ。風紀取締班は,中にはさらに多くの容疑者がいると考えている。賭け屋と集金屋だ。数は分からないが,合わせて10人ぐらいの容疑者がいるだろう。何人の関係者がいるか突き止めるのも,ウォルシュの仕事の一つだったのだ。
クルースとゴーワンは,ケチなコソ泥から火器による襲撃事件まで,非常に多彩な記録を持っている。二人は武装しており,危険だろう。バッカスについてはよく分からないが,彼の相棒達の記録から見て,武器を持っていると考えたほうがいいだろう。注目すべきは,ウォルシュの最後の通信で「あんたの道具の大きさ」に驚いていることだ。口調から察するに,彼は何か感銘を受けたらしい。意味は分からないが,あまり我々にとっていいことではないだろう。
我々は,ショップの見取り図こそ持っているが,地下の様子はよく分からない。倉庫から地下につながっていることは分かっているが,賭博場がどうなっているかは不明だ。注意を怠るな。いくつか不意打ちがあるかも知れん。ウォルシュ刑事を助け出し,容疑者を逮捕するときだ。慎重に装備を選べ。出動だ。
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