いよいよ最終回となった今回は,極寒の霧ふり山脈でのマンモス退治と,蘇ったドワーフの魔王スコルグリムとの血湧き肉躍る対決を語ってもらおう。
このところミュージシャンとしての活動が滞りがちだったエディーだが,今回は中つ国に降りかかった災厄を知り,ついに戦士として立ち向かう決意を固めた顛末を語ってくれる。最終回とはいえ,エディーの冒険はこれで終わりではないのだ。
さらに,エディーの分身である“ダークエディー”が登場する「指輪(リング)にかけろ外伝」までオマケについた,最終回ならではの豪華永久保存版だ。
霧ふり山脈って知ってるかい? トロルの森の東に南北に伸びるでっかい山脈があるんだけど,そこのことさ。
裂け谷を北に抜けると,やがて道が徐々に上りになる。両側に山が迫ってきて,道は狭くて曲がりくねってるんだ。道が東へと折れるあたりを過ぎると勾配はもっと急になってね,そのあたりから風景も寒々しくなってくるんだ。たぶん,だいぶ標高が高いんだと思うよ。進むにつれて雪に覆われた場所が増え,登りきったあたりは一面の銀世界さ。
そんなところに,ドワーフの野営地があってね。あんまし寒いんで,そこで暖を取らせてもらったんだけど,そのとき,山の奥にマンモスとかいうでっかい生き物がいるっていう話を聞いたんだな。
マンモスなんてそれまで全然知らなかったから,後学のために見に行くことにしたんだよ。霧ふり山脈って,名前はちょっとロマンチックだけど熊とか雪男みたいな怪物がうろうろしてる,実はすっごい危険なところさ。
野営地から東にかなり行ったら,なんだかやたらでかいのが動いてるのが見えたんだ。だいたい家ぐらいの高さがあって,オイラの背丈(まあ,そんなに高いわけじゃないけど)より長い牙が生えてるんだ。いっとう驚いたのは鼻が長いこと。最初は,顔の真ん中に手がついてるのかと思ったくらいだよ。
実は「マンモスを見に行くのなら,ついでにその牙を持ってきてほしい」って頼まれてたんで,3頭ほど狩ることにしたんだけど,さすがにでっかいだけあって強かったなあ。たまたま一緒にマンモスを見に行きたいっていう連れがいたんでよかったけど,オイラ一人じゃあ,ちょいと手に余ったかもしれない。
マンモス狩りは無事に済んだけど,次はあの長い牙を裂け谷まで持って帰るのが一苦労だった。なにしろ重くてでかいんだもんね。で,なんとかその牙を渡したら,ついでにゴンダモンに持っていってくれって言うんだよ。
オイラ,耳を疑ったぜ。なにしろゴンダモンだよ,あのドワーフの街の。裂け谷からゴンダモンまでなんて,どれだけ距離があると思ってるんだろう。さすがに断ろうとしたんだけど,そいつ,オイラのライブによく来てくれる常連さんだから,結局断ろうにも断れなくてさあ……持っていったよゴンダモンまで。最初から言ってほしいなあ,そういうことは。
そしたらますますやっかいなことに,今度はそのマンモスを操っている巨人を倒してくれって話になっちまってさ,さすがに勘弁してくれよって感じだよ。でも,オイラってほら人がいいから,やっぱり断りきれなくってさ。あ〜あ,野次馬根性を出して,マンモスを見になんて行かなければよかったよ。
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マンモスは,グローインの野営地から東に行ったところにいる。そのそばを通り過ぎるくらいなら危険はないが,あまり近くに寄ると襲いかかってくる場合がある。エリートモンスターなので士気が非常に高く,一人で倒すのはちょっと困難だろう。
まわりにはマンモスのほかに熊やタカのような鳥がたくさんおり,こちらを見かけると攻撃してくる。マンモスと戦っている最中に,そういった新手に襲われないよう,位置取りには注意する必要がある。
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ああ,なんてこった。中つ国がこんなことになってるなんて……。
この間,調べ物をしようと裂け谷の図書館へ行ったんだ。いや,オイラだって調べ物ぐらいするんだよ。そしたら,偶然ガンダルフとエルロンドの話が耳に入っちまってさ。悪いとは思ったけど,ついつい聞いちまったんだよね。二人の話は,サウロンの軍勢が攻め込んで来ようとしていることとか,フロドが一つの指輪を持っていることとか,物騒なことばっかりなんだ。たまらなくなって,あとでそのことをガンダルフに問い質したら,全部話してくれてね,それでようやくオイラにもいろんなことが分かってきた……。
理由を言ってる暇はないけど,間もなくフロドは指輪を持って裂け谷を出る。
オイラもフロドについて行きたかったんだけど,フロドの旅を助けるためにも消えたナズグルの行方を突き止めてほしいってガンダルフに頼まれたんだ。
で,そのナズグルはスコルグリムとなんか関係があるらしい。スコルグリムってのは,ドワーフの一族であるドルハンド族を束ねていたやつで,魔王と結託してドワーフを支配しようとしていたんだ。でもそれは昔の話さ。スコルグリムはとっくのとうに死んだのに,それを誰かが生き返らせやがったらしいんだ。こいつが甦ったとなると,国中がかなりヤバイことになりそうだってんで,オイラはまず霧ふり山脈のドルハンドの砦を調べることにしたんだよ。
砦にはかなり厳重な警戒が敷かれていたけど,秘密の入り口があることが分かった。で,その話をしたらギムリってドワーフとその仲間が一緒に付いて来てくれることになった。
砦の中はドルハンドだらけだったよ。次から次へと出てきやがるし,おまけにフロスト・ジャイアントまでいたのにはギムリも驚いてたね。あいつらのでかい拳で殴られると,一瞬だけど気が遠くなるんだ。
ヤツらを片っ端から蹴散らしながら,砦の一番奥まで来たら,ついにスコルグリムの野郎が出てきやがった。ギムリの一族のことをひどく侮辱しやがってさ。オイラはホビットだから関係ないとはいえ,ギムリはオイラの仲間さ。仲間を侮辱する奴は許せない! たぶん,そのとき一緒にいた仲間はみんなそう思ったはずだよ。
スコルグリムの野郎,さすがにドワーフを支配しようなんて考えるだけにえらく強い奴だ。でも,ギムリを侮辱したのは失敗だったね。オイラ達の怒りに火をつけちまったから,マジでリュートが燃え上がるんじゃないかってほど弾きまくったよ,オイラ。
とても長い戦いだったけど,ついにスコルグリムの野郎,がっくりと膝をついたかと思ったら派手にぶっ倒れやがった。「ざまあみやがれ」って言うか言わないうち,奴の体から青い幽霊みたいなのが,すーっと出てきて空のかなたに消えていったんだ。あれがスコルグリムの魂なのか,ほかの何かだったのかは未だに分かんない。
ま,とにかくスコルグリムを倒したことで,ギムリも,その親父のグローインもすごく喜んでたよ。
ただ,ナズグルの行方がまだ分からないんだよなあ。ドルハンドの砦の近辺に潜んでいるらしいってのは確かなんだけどね。これはオイラの勘なんだけど,スコルグリムを裏で操っていたのはナズグルなんじゃないかって気がしてしょうがないんだ。
オイラも,ここまで来たらとことんやってやる。ナズグルって奴をぶっとばして,アングマールに行ってサウロンの軍隊をボコボコにしてやるんだ。そしてサウロンをやっつけて,やつの城で中つ国中のミュージシャンを集めた,世界一のロックコンサートを開いてやる! みんな,楽しみにしていてくれよな。オイラ絶対にやるぜ。
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スコルグリムを倒したあとは,消えたはずのナズグルとの対決が待っている。スコルグリムとナズグルに関係したクエストが,裂け谷から霧ふり山脈にいたるメインストーリーだ。
極寒の地でナズグルが果たして何を企んでいるのか? それが判明したとき,プレイヤーは彼との直接対決を迎える。サウロンの片腕として働いているだけに,ナズグルの強さは並大抵ではない。だが不屈の精神で立ち向かえば,きっと勝利を得られるだろう。
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Illustration by めざし
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ホビット庄の一介のリュート弾きだったエディーも,ついに中つ国を救うべく戦う決心を固めた。だが世界を覆う暗雲は,ますます深まりつつあり,彼の道のりはまだまだ遠い。
中つ国の命運は,サウロンの力が込められた「一つの指輪」を破壊できるかどうかにかかっている。そして,フロドが首尾よく指輪を破壊できるかどうかは,われわれ中つ国に住む冒険者達の動き次第なのだ。
フロドの旅同様に,われわれの行方も危険で満ち満ちているだろう。だが恐れてはならない。世界の命運は,われわれの手に委ねられているのだ!
さて,ここからは,お待ちかねの「モンスタープレイ」について紹介していこう。
光の軍勢と闇の軍勢の戦いを背景にした本作では,キャラクターレベルが10になった時点で,サウロン軍団に属するモンスターとなってゲームを楽しめるのだ。ブリー村などにある「恐怖の水晶の占い場」へ行って,5種類のモンスターから一つを選び,エテン高原に入ることができる。
モンスターとなったプレイヤーは,レベルが一律に50となる。最初からレベル上限のキャラクターを使え,クエストをこなしたり敵を倒したりすることで得られるモンスタープレイならではの「宿命点」を消費して,新たなスキルを手に入れられるのだ。
いままで敵として戦ってきたオークやトロルを味方にし,エルフやドワーフ,ホビット,人間といった種族を相手に戦うというのはかなり新鮮。180度視点を変えてみた中つ国は,なかなか面白い世界なので,機会があればぜひモンスタープレイに挑戦してほしい。
というわけで,エディーから抜け出した悪の権化,ダークエディーを主人公にしたリプレイをちょっと紹介してみよう。いつものお人好しのエディーとはかなり違い,凶悪そのもの。もう,見ためからすごいことになっているからビックリだ。
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これがダークエディーだ。ポッチャリ型のリュート弾きだった頃の面影すらない。とはいえ,しばらくプレイしていれば,こんなキャラでも愛情が……微妙
うう,殺したくてたまんねえ! あのお高くとまったエルフの頭をぶちのめし,どこにでもうじゃうじゃいる人間どもを引き裂き,髭づらドワーフの首を引っこ抜き,こまっしゃくれたホビットを踏み潰してやりたくてたまんねえ。いやもう,マジで。
俺の名はダークエディだ。ナズグル様の力でエディーの体から抜け出した悪意の塊,それがオレだ。ホビットだったときのことなんか,思い出したくもねえ。いつもいつも周りに気を使って,やりたいこともできないなんて,生きてる意味がないぜ。こうやって窮屈なホビットの体から抜け出せて,今はえらく気分がいい。最高さ!
目が覚めたとき,俺はここ,エテン高地にいた。その瞬間から,俺は何をすればいいのか分かっていた。俺を自由にしてくれたナズグル様のため,偉大なる冥王サウロン様に歯向かう野郎どもを皆殺しにする,それが俺の使命だ。
しかし生まれ変わったばかりというのは,猛烈に腹が減るもんだな。人間どもを殺すまえに,まずは腹ごしらえだ。そこの沼地に,うまそうなナメクジがいるな。よしナメクジを狩って,その肉をたらふく詰め込むことにしよう。腹がいっぱいになったら,今夜の酒のつまみにエルフの耳でも集めてくるとするか!
ああ,よく寝た。昨晩はカリカリに焼いたエルフの耳を肴に,しこたま飲んじまったからな。だが,気分は爽快だぜ。……なに? 敵がホアデールの橋に集結しているだと。来やがったな野郎どもめ。よ〜し,今晩はホビットの脳みそシチューとしよう,考えただけでよだれが出てくるなあ!
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おお,いやがるなあホビット野郎ども。ざっと見たところ,20人ってとこか。それっぽちでサウロン様の軍勢に立ち向かおうなんざ,考えが甘すぎるんだってことをたっぷりと教えてやらねえと。
まずは俺様の弓を,挨拶代わりにぶちこんでやるとするか。だ〜れがいいかなあ……よし,あの後ろでリュートをかき鳴らしてるホビットのミンストレルだ!
くっそお,もう少しってところで,ほかのミンストレルに回復されちまったか。まあいい,ほかにも敵はうじゃうじゃいるからな。
おっとあぶねえ,だれだ俺に矢を射掛けてくるやつは……。あのエルフのハンターか,弓の腕なら俺だって負けねえぞこら。おっと逃げやがったな,待てこら。てめえの耳を食ってやる,待てってぇんだよ! ぐぁ!,なんだこれぁ! しまった,ハンターの罠にひっかかちまった。俺様としたことが,くっそ〜足が外れねえ。おい,だれか援護してくれるやつはいねえのか,おい!
くそっ,敵が引き返してきやがった。こうなったら,誰でもいい道連れにしてやるぜ! くっ,このドワーフめガーディアンか,やたら固えなこいつ,弓じゃあ分が悪いぜ。
おっと,やっと足が外れた。こうなったら砦まで下がらないと,こっちの身がもたねえ。卑怯だぁ? ば〜か,誰に言ってるんだよ。俺達は悪の軍団だ,卑怯やずるいは俺達の専売特許なんだよ!
へっへっへ,ここまでおいでときたもんだ……あ,あれ……。どうしたんだ,足がもつれて……か,体が動かねえ……。しまった,こいつは……バーグラーの……放心……だ……。ぐああああ! ナズグル様ぁ,サウロン様ぁ……む,無念……。
……と,どうやらあまりクエストがうまくいかなかった様子のダークエディー。なかなか悪の道も険しいようだ。とはいえ指輪を巡る戦い以外にも,PvPや宿命点を溜めての能力アップなど,いろいろと楽しめるのは間違いない。ちなみに,モンスターになるとNPCからなんと「うじ虫」と呼ばれてしまう。「よく来たな,うじ虫どもめ」とか「おまえらうじ虫どもは……」みたいな感じで,なんとなく昔のアメリカ海兵隊新兵訓練を思わせるのが愉快である。
一部では大人気のムービー,「今日のエディー」も最終回である。エディーの脳裏を走馬燈のように駆け抜けるあんなことやこんなこと。ああ,いろいろあったよなあ……。だが,彼の冒険はまるで大海原のように果てしなく続くのである,というイメージで一つよろしく。ちなみに,たいていのホビットは泳げないので水が嫌いだが,ご存じのように勇敢なフロドとビルボは船に乗っていた。エディーはそのさらに上を行く勇敢さなのである,と思う。