待望久しい「ロード・オブ・ザ・リングス・オンライン アングマールの影」(以下,LotRO)の正式サービスが,2007年6月1日,ついに始まった。英語版で行われたクローズドβテストから日本語版クローズドβテストと参加し続けた筆者は,今LotROの面白さにずっぽりとはまっている。
とはいえ,正直な第一印象は,「何てぬるいゲームなんだ!」。
キャラクターのレベルはずんずん上がるし,負けそうになったら走って逃げればたいていの場合,逃げ切れるし,体力はあっという間に回復するし,なんなんだこのゲームは? と思ったのを覚えている。だが,プレイを続けていくうちにふと気がついたのだ。このゲームは,次から次へとクエストや戦闘をこなしてレベルを上げていくだけのゲームではない。「指輪物語」の世界そのものを楽しむゲームなんだ,と。
それに気づいたとたん,それまで何気なく見過ごしていた風景が,とてつもなく広がりを持ったものであることが分かったのである。
道を走っている途中,ふと見上げれば鳥が群れをなして飛んでいたり,夜になると無数の星がまたたいていたり,遠くの山の頂にまだ訪れたことのない城が遙かにかすんでいたり。デフォルトの状態から,かなり遠景までが表示される仕様になっているのは,こうした世界の広がりを感じさせるためのものだったのだ。
そう,LotROの面白さは表面的なゲームシステムにあるのではなく,ゲーム世界に浸っているうちに身内にジワっと染み出してくるような類のものなのだ。
というわけで,今週から始まったLotRO新連載「指輪(リング)にかけろ!」では,ゲームシステムがどうこうとか,あんまり細かいことは言わない。そういう話はほかの記事がちゃんとフォローしてくれるだろうし,プレイを続けていくうち自然に分かることだ。その代わり,筆者の分身である「さすらいのリュート弾きエディー」の物語を読者にお届けしたい。トールキンもびっくりの彼の冒険を通じてLotROの魅力を感じ,ぜひ中つ国の冒険に参加してほしいのである。
キュートでクールなリュート弾きのエディーは,ホビットのミンストレルだ。愛用のリュートを使って回復から攻撃までこなし,シャウトで敵に大ダメージを与えることもできる
オイラの名はエディー,中つ国でイチバンの速弾きリュート奏者だ。
オイラのリュートから弾き出される燃え上がるような旋律は,傷ついた者の心と体を癒し,邪(よこしま)なものを挫くのさ。だから人はオイラのことを速弾きミンストレルのエディーとか,スローハンド・エディーなんて呼ぶよ。
今は,ソロで中つ国をツアーして回ってる。町々にあるライブハウスで演奏したり,気が向けば街角でプレイすることもあるね。
オイラがこうしてツアーを始めたのは,この中つ国のどっかにまだ見ぬリュートの達人がいるという噂を聞いたからだ。噂によれば,そいつがリュートを弾きだすと野の獣も立ち止まり聞きほれるとか,ばかでかいトロルの化け物を,しぶいビブラートで改心させたとか,あのガンダルフが涙を流して感動したとか,まあその手の噂には事欠かないってんだ。
マユツバっぽい話ではあるけど,中つ国ナンバーワンを自負するオイラにとっては聞き捨てならない話だから,いてもたってもいられなくなって,生まれ故郷のホビット庄を飛び出してきたってわけなんだ。
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さて,ここらへんで軽く解説しよう。種族と職業の組み合わせに,それほど長所短所がはっきりあるわけではない。
ただし人間を選択した場合,意思のステータスが低く,したがってスキル発動に必要な気力の数値も低いので,ゲーム序盤では泣かされることになるかもしれない。
とはいえ,これらステータスはレベルが上がるごとに増えるほか,レベルが15を過ぎるあたりから,ステータスを上げる効果を持ったアイテムなどが続々出てくるので,先行きに不安はまったくない。
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いかつい髭がトレードマークのアーチェト村守備隊の要,ブラッケンブルック隊長。親子で村の防衛に力を尽くしており,息子のジョンは仲間からも一目置かれる凄腕ハンターだ
あれは,旅に出て間もなくのことだけど,アーチェト村ってとこに立ち寄った。ライブハウスもない小っさい村なので,しょうがないから広場で演奏しようかと思ったんだけど,そこでは村のやつらが大勢で弓や剣の稽古をしてるんだ。
物騒な村だなあと思ったら,なんでもブラックウォルドとかいうごろつきだか山賊だかの一団が村を襲おうとしてるっていう噂があって,それで村中がピリピリしてたんだよね。
しょうがないから酒場で飲んでたら,ブラッケンブルックっていう偉そうな髭を生やしたおっさんが,人手が足りないからミンストレルとして自警団の一員に入ってくれっていうんだ。
リュートを弾くような雰囲気でもなくて暇だったから承知したら,それから,やれ狼を倒してくれとか,やれ山賊の連中から情報を仕入れて来てくれとか,まあ次から次へと。しまいにはブラックウォルドが占領している砦に侵入して,やつらの指令書を盗んで来てくれとか言っちゃって,まあ,乗りかかった船だし,隣町で開かれるビッグなライブイベントにコネがあるって言うんで結局引き受けたんだよ。
そっからが大変だったなあ……。実を言うと指令書を盗むのは簡単だったんだよ。おいおい,こう見えたってオイラもホビットの端くれだからね。歩く時には足音なんかカサリとも立てないし,いざ見つかったらオイラの速弾きリュートでイチコロさ。
で,指令書を持って村に戻ったら,なんとブラックウォルドの連中が村を襲ってたのさ。どうやらオイラに指令書を盗まれたのが分かって,計画を早めてその晩のうちに襲撃しちまったらしいんだ。
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回復役として活躍するミンストレル。攻撃力は他職におよばないものの,回復ソングを駆使することで格上の敵とも互角以上のしぶとい戦いを展開できる。ソロプレイに向いた職業といえるだろう |
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指令書を盗んでまっすぐ帰らず,途中で狩猟小屋のハンター連中を相手に,酒飲みながらミニライブを演っちまったのがまずかったね。さすがにあのときは,オイラにも原因があることだから必死こいて戦ったな。
襲撃してきたブラックウォルドの親玉を倒して,なんとかやつらを追い出したんだけど,あっちこっちに死人は横たわってるし,気の毒に,村なんかほとんど丸焼け。さすがにブラッケンブルックのおっさんに,ライブイベントのコネを紹介してくれとは言い出しにくくて,すぐに出て行っちまったよ。
ああ,あのイベントには出てみたかったなあ。なんでも例のリュートの達人がゲストで演奏して,すんごいプレイをしたらしいって風の噂で聞いてね,やっぱりコネを紹介してもらえばよかったって後悔したよ。
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急報を受け,急ぎ村に駆けつけるプレイヤーの眼前に,夜空を背景に赤々と燃え上がる村の建物が見えてくる。初期エリアのアーチェト村は,エピッククエストの最後で山賊の襲撃により炎上してしまうのだ |
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アーチェト村について少々。ホビットが,まず最初に訪れることになるのがアーチェト村だ。ここは人間プレイヤーも最初に訪れる場所でもあり,いつも新規のキャラクター達で賑わっている。
メインクエストは,街を襲おうとしているブラックウォルドに関連したものだが,サブクエストとして葉っぱを集めてきたり,農場を荒らす猪の怪物を倒すといったものが用意されている。メインとサブのクエストを合わせてプレイすることで装備が一通り揃うので,ぜひプレイしておこう。
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ホビット庄の各村にいる郵便局員からは,郵便配達クエストを受けられる。詮索好きなホビット連中をかわし,マップ中を駆け回るというクエストだ
旅に出てからしばらくたって,ホビット庄に戻っていたときのことさ。
旅先で見かけた,ビンテージのリュートがたまらなく欲しかったんで,郵便局でアルバイトすることにしたんだ。ホビット連中は,とにかくまめに手紙を書くからね。ちょっとしたことにもすぐ葉書を出して,その返事にもまた葉書を出すんで,ホビット庄の郵便局はいつも人手不足でピーピーいってる。
え,いーめーる? なんだいそりゃ,Eコードなら知ってるぜ。高音部の開放弦の響きと,低音部の豊かな鳴りがミックスして気持ちいいんだな。オイラの好きなコードの一つさ。
まあとにかくオイラは郵便配達のバイトを始めたんだ。あんなの,決められたとこにちょいちょいと配れば終わりで,ちょろいバイトだぜって思ってたんだけど,こいつが大間違いだ。
ほら,ホビットってのはおしゃべり好きで,しかも詮索好きときてるだろ。郵便持って走ってると,あちこちに立ってるやつらが目ざとく見つけて「ねね,私宛の郵便来てる? 来てるでしょ? ねえねえ,見せてよ見せてよ」とかいって,オイラが持ってる郵便物を,全部その場にぶちまけて探し始めちゃうんだよ。葉書なんて泥まみれになっちまうしで,そしたらもうアウトさ。
だから,そういった詮索好きのホビットの目に触れないように,林の中を抜けたり大回りしたりで,もう大変な仕事だったね。それに持っていく時間まで指定されているから,それに遅れるとバイト代はもらえないし,ホビット庄中を走り回らされるしで,もう二度とやりたくないバイトだなあ。
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郵便配達クエストの最中は,馬に乗ったりスキルを使ったりできない。制限時間もあるので,なるべく最短距離を行きたいところだが,泳がなければならないほど深い水の中に入ってしまったり,モンスターと戦闘状態になってしまったりするとクエストは失敗となる |
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え? で,ビンテージのリュートは買えたのかって? 買いに行ったら,一足違いで売れちまってたよ。なんでも,ゴンドモンだかゴンダモンだかいう街の吟遊詩人が買っていったらしい。いつかその街に行くことがあったら,訪ねてみようって思ってるんだ。良い音してたもんなあ〜,あれ。
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そう,郵便配達なのである。まさにホビット庄を代表すると言ってかまわないクエストが郵便配達なのだ。クエスト自体はとても単純で,郵便物を決められた街の郵便局に持っていくという,ただそれだけ。だが,道中には詮索好きなホビットが目を光らせており,彼らに見つかってしまうとその場でクエストは失敗となる。
同じようなクエストとして,焼きたてのパイを配達するというものもある。こちらも途中に腹をすかせたホビットがうろうろしており,見つかるとやはりその場でクエスト失敗となってしまう。なんという連中だ!
原作小説を読んだことのある人は,ぜひ一度はホビット庄を訪れてみよう。ホビット庄に足を踏み入れた途端,「ああ,ここだ」という気分になれるはずだ。「あのホビットがこんなところにいる」「あの建物って,こんな形をしていたのか」など,小説のままに作られたホビット庄の地理や人々の名前,建物の名称などを見て思わず嬉しくなってしまうだろう。
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Illustration by めざし
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今回は,ゲームのスタート直後といえる段階で貰えるクエストを紹介してみた。アーチェト村でのクエストは,ホビットの種族を選んだプレイヤーなら誰でも一度は経験する。
ブラックウォルドの襲撃の後にアーチェト村がどうなったかを知りたかったら,一度訪ねてみよう。「あっちこっちに死人は横たわってるし,村なんかほとんど丸焼けさ」というエディーの言葉が大げさでないことが分かるはずだ。
郵便配達のクエストは,ホビット庄のあちこちを歩き回って地図をある程度埋めた状態にしてから受けることをお勧めする。
いきなり「ひじりこ村の郵便局まで行ってくれ」と言われても,どこにあるのか分からないようでは話にならないのだ。東にあるか西にあるか程度の情報は受けるときに教えてもらえるが,やはり村の正確な位置を知っておいたほうがスムースに進められるだろう。
というわけで,今週の「指輪(リング)にかけろ!」はおしまいである。今回はもっぱらエディーの紹介と序盤のミッションを紹介したが,来週からは,中つ国狭しとあっち行ったりこっち行ったりのエディーの本格的な冒険をお届けしていこう。
さて,最後はショートムービー「今日のエディー」。さすらいのリュート弾きとして,人々を癒して歩くエディーがライブ公演を実施。さんざん練習した彼だったが……,続きはムービーで。それではまた来週。