連載 : 奥谷海人のAccess Accepted


奥谷海人のAccess Accepted

2007年4月4日掲載

 「Civilization IV」や「The Elder Scrolls IV: Oblivion」を手がける2K Gamesや,Grand Theft Autoシリーズといった過激なソフトを多数輩出するRockstar Gamesというブランドでお馴染みのTake-Two Interactive。「Hot Coffee事件」でも話題になったパブリッシャだが,さらなる事件が同社に起きている。

 

「GTA」のTake-Twoに起きた株主の反逆劇

 

「Hot Coffee」から始まったTake-Twoの凋落

 

 1993年に若き実業家 Ryan Brant(ライアン・ブラント)氏が起業したTake-Two Interactive。Grand Theft Autoシリーズの人気も手伝い,スポーツゲームブランド「2K Sports」でMLBのライセンスをElectronic Artsから奪い取るなど急激に成長してきたが,ここ2年ほどは泥沼ともいえる状態だ。

 

1994年に「Hell: A Cyberpunk Thriller」というアドベンチャーゲームでデビューした頃は,まだ開発専門の小さな会社だったTake-Two。Grand Theft Autoシリーズの第1作が出た1998年頃から,年に複数のタイトルを手がけるようになり,今では北米やヨーロッパ13都市に支社を持つ大企業に成長した

 ケチのつき始めは,メディアやファンから「Rockstarの最高傑作」と絶賛された「Grand Theft Auto: San Andreas」の発売。本作には,プレイヤーが自分のキャラクターの髪型などを女の子の好みに合わせるという要素があり,うまく行けば,彼女の家やアパートに「コーヒーでも一杯いかが?」と誘われるという仕掛けがあったのだが,ここに問題が潜んでいた。実は,誘われて部屋に入った後に,かなり作り込まれたセックス描写を含むミニゲームが用意されていたのだ。さすがに発売されたバージョンでは,プレイできないように処理されていたのだが,データとしてはそのまま残されており,オランダ人ゲーマーが制作したMODによって,これが表に出てしまった。これが世にいう「Hot Coffee事件」である。
 これが問題となり,本作は事実上の発禁処分を受け,同社は各小売店やオンラインショップの在庫収集,くだんのミニゲームを完全に取り除いた新バージョンの制作,という負担を負うことになった。またこういった経済的なダメージを受けただけでなく,経営陣の対応があまり良くなかったようで,政府機関との軋轢を生むなど,会社の社会的信用にも傷がついてしまったのだ。
 おりしも,Hot Coffeeパッチがリリースされた2005年6月9日は,Take-Two Interactiveが2000年度に起こした不正会計に対して,875万ドル(約10億円)という追徴金の支払い命令が下った日であり,会社の面子は丸つぶれ。同社の株価は,事件発生直前には30ドル台を目前にしていたが,1年ほどで10ドル未満という状態になってしまった。

 

 

質の良いゲームメーカーを乗っ取った,
質の良い経営者達

 

ゼルニック氏の参入で,Take-Two Interactiveの経営も安定するだろう,というのが大方の予想だ。同氏がCEOを務めたBMG Entertainmentは,'90年代にBMG Interactiveというゲーム会社を北米で展開しており,その資産を売却したときに,Grand Theft Autoの版権がTake-Twoに渡ったという過去もある

 そして先月(2007年3月)になってから,これら一連の騒動に業を煮やしていたTake-Two Interactiveの大株主達が,ついに反撃に出た。それぞれの持ち株を合わせた数が46%に及ぶことから会社の経営権を掌握し,「ゲーム業界最悪のCEO」などと呼ばれるPaul Eibeler(ポール・アイべラー)氏をはじめとする幹部や役員の一部を,事実上追放したのである。
 3月29日に行われた株主総会では,株主の一人だったStrauss Zelnick(ストラウス・ゼルニック)氏が,暫定的にCEOに就任することが決定した。ゼルニック氏は,メディア帝国として知られるNews Corp出身で,これまではBMG EntertainmentでCEOなどを務めてきた人物である。
 新たな経営陣が誕生したが,Grand Theft Autoシリーズは,どう転んでも同社の“金のなる木”であることには変わりないため,Rockstar Gamesや2K Gamesのテイストが大きく変わることは考えづらい。また,同社で開発部隊を率いてきたSam Hauser(サム・ハウザー)氏は在籍し続けているので,長らく培ってきたファンを失望させるようなマネはしないだろう。

 Take-Two Interactiveからリリースが予定されているゲームソフトといえば,「Grand Theft Auto IV」と「Manhunt 2」,そして「BioShock」などがある。とくに,ニューヨークを彷彿とさせる街へと舞台を移し,10月中にプレイステーション3とXbox 360で発売される予定のGrand Theft Auto IVは,早くも一部メディアの標的になっているようだ。
 New York Daily Timesの3月31日版の記事には,「NY市を標的にしたビデオゲームに政治家達が憤慨」という見出しで,3月29日に初公開されたトレイラームービーの内容を非難。しかし,記事中に「これまでのシリーズでプレイヤーは,警察官を殺したり,子供にポルノを売ったり,売春婦を殺すことでゲームを進行させる」とあり,かなり記者の誤解が含まれている内容だ。

 

 

再起をかけるTake-Two Interactiveに立ちはだかる名物男

 

Grand Theft Auto IVは,'80年代に設定された仮想都市Liberty Cityが舞台。とはいえ,ムービーではタイムズ・スクウェアや自由の女神のようなものが映し出されており,ニューヨークに行ったことがない人でも,それと分かる。早速このことに反発している人も現れたとか

 もちろん,当連載に何度も登場している,あの反ゲーム弁護士Jack Thompson(ジャック・トンプソン)氏もだまってはいない。地元フロリダ州の地方裁判所に,「暴力的な内容であるGrand Theft Auto IVとManhunt 2を,販売できないように規制してほしい」という嘆願書を提出している。これらのソフトが発売されることは,「公の場での迷惑行為」だというのが彼の言い分だ。
 トンプソン氏は,2006年10月に発売されたプレイステーション2版の「Bully」でも,同じように販売差し止めを要求したのだが,フロリダ地裁はトンプソン氏に,Bullyの内容を発売前に検証することを認めたうえで,氏の要求を却下した。
 Take-Two Interactiveは,Grand Theft Auto IVとManhunt 2に関してもトンプソン氏が同じような行動を起こすと見ていたようで,すでに「トンプソン氏は,表現の自由を侵害している」という声明を出し先手を取っている。今回のトンプソン氏の行動はTake-Two Interactiveに対する仕返し的なものだろう。

 

 ある程度のヒットが予想できるGrand Theft Auto IVだが,話題になればなったで,別の問題が発生する可能性を秘めている“諸刃の剣”的なタイトルだ。そのヒットが総合的な意味で会社のプラスには直結しないだけに,新生Take-Twoがどのような施策を打ち出すのかにも注目していきたい。まあ,PCゲーマーとしての当面の心配は,Grand Theft Auto IVがPCでも発売されるかどうかなのだが……。

 

 


次週は,シリアスゲームについて。

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。酷いインフルエンザにハードなトレーニングによる筋肉痛と,最近とことんツイてない奥谷氏だが,今度は右手首を捻挫したという。なんでも,通りすがりの自転車に乗った子供と接触し,相手が倒れるのを防ごうとしたところ,自分が倒れて腕をついてしまったのが原因だとか。連載の危機かと思いきや,「手首が固定されていてなにかと不便」とこぼしながらもゲームを遊んでいるようなので,締め切りは延ばしませんよ。


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http://www.4gamer.net/weekly/kaito/120/kaito_120.shtml