― 連載 ―

奥谷海人のAccess Accepted
2006年1月11日掲載

 4Gamerの読者の多くは,“Windows搭載”のPCで,ゲームなどのエンターテイメントや,メール/チャットなどのコミュニケーションを日常的に楽しんでいるはず。とはいえ,世界で2番めといわれるMac市場を持つ日本には,Macintoshユーザーもかなり多い。もちろん,Macでゲームを遊んでいる人も少なくないだろう。そこで今回は,昨年に続き,Macworldの出展内容からMacゲームの動向を探ってみよう。

 

Mac用ゲームの最新事情 2006

 

■「World of Warcraft」など人気作がMacworldに出展

 

 カリフォルニア州サンフランシスコで,毎年恒例のMacworldが,現地時間の1月9日から13日まで開催されている。
 Macworld 2006の目玉はやはり,Intel製のCPUを採用したMacintoshだ。これまで親しまれてきたPowerBookの愛称も“MacBook”へと変更され,デスクトップ用のiMacでは,既存の機種と比較して最大で3.2倍,PowerBookとMacBookなら5倍近くも実際の処理速度が向上するのだという。
 Intel CPU搭載Macの到来は,会場のMacユーザー達にも大評判のようで,筆者と話した何人かの一般入場者も,非常に好意的に捉えていた。

恒例になりつつある,iMacを利用した16人用対戦ブース。「StarWars: Battlefront」などの対戦が行われていた

 しかし,これがMac用ゲームにどのような影響をもたらすかは現在のところよく分からず,Apple ComputerのCEO Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏の基調講演では,何も語られずじまい。毎度のことだが,もう少しマルチメディアとしてのゲームにも力を入れてほしいものだと思う。
 Intel CPUの採用,そしてグラフィックスカードの進化など周辺機器メーカーからのサポートを通して,Macのゲーム環境がこれまで以上に整理されてきているのは事実。数々の名作を生み出したApple II時代のような状態に回帰してくれることを願うばかりだ。

 さて,今回Macworld会場のゲームアーケードブースでは,2004年に引き続いて,「Unreal Tournament 2004」や「Star Wars: Battlefront」のトーナメントが行われており,若者達が(学校も行かずに?)昼間から集まって,対戦に興じていた。
 Windowsで人気のある作品は,Aspyr Mediaなどのメーカーが盛んにMacへ移植を行っており,どうしても1〜2年ほどWin版から後れるとはいえ,そのラインナップはかなり充実してきている。最近でも,上の2作のほか,「DOOM 3」「The Sims 2: University」「Tiger Woods PGA Tour 2005」などがリリースされているし,拡張パックを含めた完全版「Sid Meier's Civilization III: Complete」も会場で人気があった。
 しかし,2005年で最も話題になっていたMacゲームは,「World of Warcraft」で間違いないだろう。今回のMacworldでも,Apple Design賞の「Best Mac OS X Entertainment」部門受賞の栄誉に輝いている。
 開発元のBlizzard Entertainmentは,「Diablo II」以来,常にWindows版とMac版を同時リリースしており,2005年7月初旬にリリース予定の拡張パック第一弾「World of Warcraft: The Burning Crusade」も例外ではないという。会場でも朝から熱狂的なプレイヤー達がモニター前にたむろし,かなり専門的な質問を係員に投げかけるなどしていた。

■ほかにも注目タイトルが目白押し

 

Freeserveの「Airburst Extreme」。テーブルテニスの要領で,相手のバブルを弾けさせていく。一つのキーボードを使っての二人対戦や,4人までのオンライン対戦もフィーチャーしている

 今年のMacworldでとくに目立っていたのが,Mac用ゲームで知名度の高いFreeverseだ。同社は,昨年にも「Toy Sight」を出展してApple Design賞を獲得していたが,今年はテーブルテニスのようにボールを跳ね返し,キャラクターの周りのバブルを弾けさせていく「Airburst Extreme」などカジュアル系の独創的な作品を出展していた。
 その中でも「WingNuts 2」は,3Dグラフィックスながらトップダウンのカメラ視点でアーケード風のルックスを保っており,かなり遊びやすそうな気配。前作はWindows用にもリリースされていたので,いずれWindowsでプレイできる機会もやってくるかもしれない。
 また,ゲームとは言えないものの,自分でコミックを制作できる「Comic Life」もなかなか質の良いソフトだった。これは,人物の写真や風景画像,下描きした漫画などを取り込み,カット割りやセリフの吹き出し,色付けをはじめとした画像加工を自在に施して楽しめるものだ。

 今回のMacworldでは,2006年もAspyr MediaがMacのゲームを引っ張ってくれそうだと感じた。独自のツールを利用して,人気のWindowsゲームを迅速に移植する能力のある同社だが,今年はActivisionとの提携により,「Quake4」や「Call of Duty 2」などが移植される予定だ。さらに,Windowsでリリースされたばかりの「Sid Meier's Civilization IV」も,今回は早々に移植/リリースできそうだということである。
 また同社は,Activisionがコンシューマゲーム機向けに発売しているソフトのWindowsプラットフォームへの移植も手がけており,ギャング系アクションの「True Crime: New York City」や「Tony Hawk's American Wasteland」の作業が開始されている。

Apple Design賞を受賞した「World of Warcraft」は,いまやWindowsプラットフォームばかりでなく,MacでもMMORPGの代名詞になっているようだ

 興味深いところでは,イギリスをベースにヨーロッパで広く展開するFeral Interactiveが,Codemastersの「Colin McRae Rally 2005」やRazorworksの「Ford Racing 2」といったレーシングゲームを,本腰を入れて紹介していた。さらにLionhead Studiosとも提携し,あの「Black&White 2」や「Fable: The Lost Chapters」などもMacに移植していくとのことだった。

 ただ,ライセンス用物理エンジンのHavokも,ようやくMac OSサポートへの理解を示しているようだが,「移植も一つのライセンス」という姿勢は崩しておらず,そのために「Half-Life 2」や「Age of Empires III」のような良作は,Macユーザーはプレイできないままでいる。Intel CPUの採用を契機に,このあたりの差も埋めて,WindowsとMacとでお互いに良い影響を与え合ってみてもいいんじゃないだろうか。

 


次回は,「2005年の話題をさらった業界有名人」について。お楽しみに。

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。今年も例年同様,アメリカでの“正月気分のない正月休み”を過ごしていたという奥谷氏。つまりアメリカでは,年末は盛大に休む代わりに,1月2日には日常に戻っているのだが,日本を対象にした仕事の多い奥谷氏は休みとなるわけで,そのあり余った時間とエネルギーは,すべて「Sid Meier's Civilization IV」に注ぎ込まれたそうだ。奥谷氏は,夜な夜なローマのユニークユニットのラッシュを使ったプレイに興じ,ついに96,000点(!)を叩き出すようになったとか……。レビュー記事執筆時点では「高難度の攻略法が分からない」と嘆いていた奥谷氏だが,今では「正月早々縁起が良い」などと,周囲に自慢して回っている。


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