前回までの連載で,Guild Warsでプレイできる対人戦システムの概要を一通り説明した。連載もひと区切りとなる今回は,それらの中でも最もハイレベルな"Guild Battle"の魅力を中心にお伝えしていこう。
Guild Warsはあらゆるシステムが対人戦に向けて調整されたアクションRPG。独創的なアイデアの数々に,プレイ中は何度も驚かされること請け合いである
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Guild Battleの何が面白いかというと,8名という限られた条件下で,仲間とともに戦術を追究することである。単独で戦ったときに強いキャラクターをただ集めただけでは,おそらくGuild Battleを勝ち抜くことはできない。各メンバーが果たすチーム内での役割をしっかりと決め,お互いが力を補うようにチームワークを発揮することで,初めて勝算が出てくるのだ。
具体的なチームワーク発揮の例として,現在人気の高いMesmer用の"Fragility"スキルを活用した戦術を紹介しよう。このスキルは,かけた相手が状態異常から回復するたびにダメージを与えるというもので,一定時間効果が持続する。
これをMesmerが単独で活用するとしたら,状態異常を引き起こすスキルを別途使う手間が生じる。それは正直なところ効率がよくない。しかし,Mesmer以外のメンバーもタイミングを合わせて,Fragilityの直後に状態異常スキルを使うとどうだろうか? そう,場合によっては合計7〜8種もの状態異常が瞬時に引き起こされ,それらに加えて回復時のダメージが立て続けに入るのだ。このラッシュが完全に決まると,"秒殺"ともいえる破壊力を見せる。
これが本文中で触れたスキル"Fragility"。アトリビュートを極限まで注ぎ込むと,効果が増大して20秒近くもの間,敵に致命的な"脆さ"が生じる
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ただし,Fragilityラッシュにも当然ながら弱点はある。例えば,Fragilityの効果そのものを事前に防いだり,消去したりするスキルがいくつか存在する。また,Fragilityを受けた相手がその場から素早く逃げ出せば,続く状態異常スキルの射程外に出ることも可能だ。しかも,Fragiligyのリキャストは15秒と長いため,仕留められなかったときのリスクは高い。もう一つ根本的な問題として,数名が特定の戦術に固執しているということは,逆にそこにつけ込まれて攻撃される危険も同時に生じる。
現実にFragilityラッシュを使う場合,成功率を高めるため,上記の弱点を一つずつ潰していく必要がある。例えばWarriorは敵のMonkを狙い,回復スキルを使わせないようにする。また射程圏外へ逃げられないために,あらかじめ自陣深くへおびき寄せてから使う,といった具合だ。
そして,各メンバーが担う役割に応じて,キャラクターの細かいスペックを煮詰めていくのである。大げさに言うと8スキル×8名分,さらには各自のアトリビュート配分やマジックアイテムの効果までもが,Fragilityラッシュという大技に向けて特化されるのだ。
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補助魔法や状態異常の効果は,画面左上にまとめて表示される。Fragilityラッシュに熟達したGuildが,瞬時に10近くの状態異常を仕掛けるさまは圧巻 |
Monkはとにかく敵から狙われやすい。しかしこれを逆用して敵を単独でおびき寄せれば,逆にFragilityラッシュを仕掛けるチャンスを作り出せるのだ |
もちろんFragilityラッシュはあくまでも一例であり,ほかにもさまざまな戦術が考えられる。また,Guild Battleの戦場はとても広いため,個々の戦闘局面以外にも目を向けねばならない。例えばMorale Boostの獲得を主眼に置いたキャラクターは,移動速度を上げるなど,単独行動時の生存率を高めるようスペックを調整するわけだ。一人のキャラクターが選択できるスキルが約150種類あるにもかかわらず,実際に戦場へ持ち込めるのはたったの八つ。こういった限られた材料で,コンセプトをしっかりと決めなければ勝ち抜けない世界,それがGuild Battleなのである。
PvPではさまざまな戦術を試してみたくなるのが常。スキルやマジックアイテムのUnlockを求め,冒険者は再びRPGモードをこなしていくのだ
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実際に筆者がGuild Battleにしばらく参戦して感じたのは,対人戦の面白さもさることながら,RPGモードの重要性だ。すでに説明したとおり,一度"Unlock"を行ったスキルやマジックアイテムの効果は,PvPモード用のキャラクターにも適用される。つまり,Guild Battleにおける戦術の幅を増やしたいがために,Unlockを求めてRPGモードをやり込むことになる。
Guild Battleに熱心なギルドの多くは,俗に"チームビルド"と呼ばれる,参加者8名単位でのスキル構成を考案している。ギルドメンバー同士でああでもない,こうでもないと悩み抜き,独自のチームビルドを組み立てる。
初級者は既存のチームビルドを手本にするだけで精一杯かもしれないが,慣れていくにしたがって,自分でアレンジしたり,新たに考案したりできるようになる。自分一人だけの力ではなく,7人の仲間とともに勝利に向けた手立てを練り上げていく過程が非常に面白い。
このように,エリートスキルは名前やアイコンが黄色く表示される。際立った効果があるためか,スロットには一つしか盛り込めない設定になっている
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チームビルドの中核となる要素の一つが,"エリートスキル"と呼ばれる上級スキルである。これを習得するには,RPGモードの世界各地で待ち受けるボスモンスターから,専用のスキルを用いて"キャプチャー"するのだが,ときにはミッションの流れとほとんど関係ない,世界の果てのような場所に行く必要も生じる。
このように,エリートスキルの習得にはかなりの手間を要するものの,際立った効果があり,多くの局面で攻守の要となるため,その習得がプレイの目標になる。
"Under World"と"Fissure of Woe"への入口となる"Temple of the Ages"では,Districtが15を超えることも。RPGモードの最高峰だ
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上級者にとって,RPGモードの魅力はほかにもいくつかある。中でも現在最も人気が高いのは,"Under World"と"Fissure of Woe"という超高難度エリア。挑戦時の最大人数である8名がぴったり息を合わせないと,最初の遭遇戦で全滅しかねない。もちろんそれに見合うだけの価値があり,ここでしか入手できない豪華なマジックアイテムや,膨大な経験値を獲得できるクエストがふんだんに用意されている。
このようにしてRPGモードのプレイを進めつつとPvPモードで戦術を探求していくのは,なかなか新鮮な体験である。Guild WarsのUnlock対象項目は,スキルやマジックアイテム効果などをすべて合わせると700を超える。対人戦を始めて間もないころは,いったいどれから手を着けてよいか分からず,途方に暮れるものである。しかしGuild Battleを軸に考えることで,これらの膨大なUnlock項目は,より現実的な目標に変わるのだ。
さて,本連載も今回で8回目を迎え,とりあえず一区切りということになる。まだまだ全然書き足りないというのが本音だが,そうした書き残した要素に軽く触れつつ,筆者の所感を述べてみたい。
上述したGuild Battleは実に面白く,これがゲームのメインフィーチャーとなっているのだが,ギルドメンバー8名を恒常的に集めなくては成り立たないのが少々ツラいところだ。8人揃わなかったり,逆に溢れてしまうといったことがどうしても生じる。ぜいたくを言うなら,4名同士や6名同士といった,よりメンバーを集めやすい小規模なギルド戦モードの導入も望みたい。
しかしGuild Battleの,というよりもGuild Wars全体で気になったのは,逆に言うとそれくらいである。MOとMMOの良いところを抜き出したロビーシステム,戦闘以外の余分な部分をばっさりと切り捨てた潔さ,そしてRPG/PvP両モード連携など,独創的なアイデアに満ちており,それぞれが所を得ている。
筆者の実感で語るなら,2000年6月の「Diablo2」の発売から約5年が経過したが,アクションRPGはGuild Warsで新たな地平を見いだしたと思う。少なくとも完成度だけに目を向ければ,Guild Warsは希有なレベルに達していると断言できる。この作品を,一人でも多くのゲーマーが楽しむことを心から願ってやまない。
ゲームシステムに沿った解説は今回でいったん終了するが,次回はスキル/アイテムコレクションなど,付随的なお楽しみ要素について補足したい。