― 連載 ―

The Art of Guild Wars
第1回:戦闘をピュアに楽しめるテンポのよい作品

 4月末に発売されて順調な滑り出しを見せている,対人戦重視のオンラインRPG「Guild Wars」。オンラインRPGの世界市場では「World of Warcraft」の一人勝ち状態が長く続くものと見られていたが,現在このGuild Warsがダークホース的な存在として大きく浮上しつつある。発売後一週間で30万本を売り上げた実績,アカウント課金のみで月額課金のないサービスなど,注目すべきポイントを多々持ち合わせたオンラインゲームなのだ。

 翻って日本での状況を見るに,「こちら」のインタビュー記事でNCsoftのT.J.Kim氏が日本国内でのサービス提供に言及したとはいえ,まだまだ知名度が高いとは言い難い。そこで本連載ではこれから,Guild Warsの魅力を余すところなくお伝えしていこうと思う。連載第一回ではまず,ゲームシステムの概要面を解説しよう。

対人戦を重視し,画期的な新要素をぎっしり詰め込んだRPG

Guild Warsには,他タイトルでは見られない斬新な試みがぎっしりと詰め込まれている。現在最も注目すべきRPGの一つだ

 Guild Warsは,NCsoft傘下の開発チーム"Arena.net"によって作られた。「こちら」の記事でも触れているように,Arena.netはかつてBlizzard Entertainmentを離脱したコアメンバー達が新たに興した会社で,初めて手がけるタイトルがGuild Warsということになる。彼等はBlizzard時代に「World of Warcraft」や「Warcraft III」そして「Battle.net」の開発に携わっており,Guild Warsの出来についても自ずと期待感が高まる。

 そのGuild Warsの基本システムは,やや乱暴に言えば「Diablo II」に近いアクションRPGである。冒険者が選べるProfession(職業というより専攻分野)には,Warrior,Monk,Ranger,Elementalist,Mesmer,Necromancerの6種類があり,メインとサブにそれぞれ一つずつを選ぶ。イメージとしては「ファイナルファンタジーXI」におけるサポートジョブシステムに近いが,Guild Warsでは一度決めた職業は基本的には変わらない。

普遍的なファンタジー世界を基盤としながらも,独自の雰囲気を醸し出している。我々日本人にとってもとくに違和感はない 俯瞰視点での操作はDiabloでおなじみのアクションRPGにおける定番スタイル。たとえ説明書を見ずともプレイできる 一人称視点はなかなかの迫力。グラフィックスのクオリティはそれなりに高いが,マシンスペックへの要求はさほど高くない

 キャラクターの移動指示はマウスクリックで行うが,カーソルキーやW/S/A/Dキーも使える。マウスホイールでは画面のズームイン/ズームアウトができ,その気になればFPSとまったく同じスタイルで操作可能で,このあたりはアクション戦闘に力点を置いた作品らしい部分かもしれない。三人称視点+WASD移動ができるのはそれなりに便利だ。
 プレイヤーの参加形態に関しては,MMOとMOの両面を取り入れたデザインとなっている。ゲームを開始すると,冒険者は大勢の他プレイヤーでごった返す拠点エリアへと降り立つ。ここで仲間を募っってから冒険エリアへ向かうわけだが,そこから先はグループ単位のプライベートエリアとなっている。つまりMMO作品と同様の拠点エリアと,MO方式の冒険エリアが,シームレスにつながっているのだ。Diabloにたとえるならば,チャットロビーのJPNチャンネルに居る時点で,すでに拠点エリアでのゲームが始まっているものと考えてよい。

 冒険がプライベートエリア内で行われるということは,第三者の干渉を受けることなくキャラクターの成長やスキルの取得に励める。また,冒険エリア内では登場するオブジェクト数が限られるため,遅延問題もまず生じない。そのためGuild WarsではMMOタイトルでは成し得ない,素晴らしくテンポの良い戦闘が実現している。

この画面内に集まっているのはすべてプレイヤーキャラクターだ。拠点エリアに限ってはMMOのシステムとなっている 仮に拠点エリアが混雑しても,複数の"District"(地区)にプレイヤーが自動的に分散される仕組みである 冒険はプライベートエリアを使ったMOの形で行われる。拠点エリアからの移動は門をくぐるなど自然な演出だ

画期的な形で結びついた「RPGモード」と「PvPモード」

キャラクターはRPGモードとPvPモードで別々に作成する。ただし,インベントリは両者共通だ

 次にGuild Warsの最大の特徴である,対人戦(PvP)システムについて説明しよう。Guild Warsには「RPGモード」と「PvPモード」があって,それぞれにキャラクターを作成できる。RPGモードは普通の作品と同様に,戦闘やクエストをこなしながらストーリーを進めるというもの。そしてPvPモードは,ゲーム中最高であるレベル20のキャラクターをいきなり作成して,果てしなく対人戦を繰り広げるというものだ。

 PvPモードでのキャラクターレベルが最初から20というのは,ゲームコンセプト上大きなポイントである。例えば対人戦を重視したRPGである「Dark Age of Camelot」には,レベル上げの煩わしさを軽減するためのさまざまな仕掛けが用意されていた。Guild Warsはこの方向性をさらに押し進め,「PvPのためのレベル上げは不要」と割り切っているのである。プレイヤーは,さまざまな職業の組み合わせによるPvPをすぐに体験できるのだ。

RPGモードの内容でも,対人戦が強く意識されている。画面は最序盤におけるミッションでの一幕 画面中央の"Skill Unlocked"の表示に注目。このスキルは今後PvPモードでも扱えるようになるわけだ

 RPGとPvPの両モードは,ユニークな方法で結びついている。Guild Warsで注目すべきは,職業別に習得できる合計470種類ものスキルだ。実はPvPモードのキャラクターをいきなり作成しても,初期段階では最小限のスキルしか習得できない。別途RPGモードのプレイを進めることで,新たなスキルを一個ずつ"Unlock"し,それがアカウント情報として記録される。そして,以降PvPモードのキャラクターで使えるようになるのだ。ここがGuild Warsの最大の注目点といってよい。

 各職業にはそれぞれ80種類弱の専用スキルが用意されている。そしてRPGモードで習得できるスキルは,自分が選んだProfession(メインとサブの二つ)に属するもののみ。約470あるスキルをすべてUnlockしてPvPモードで使えるようにするには,膨大な時間を要する。プレイヤーによる試行錯誤と工夫の余地が,大いに残されているのだ。
 ちなみに各スキルは,例えばFighterであれば"Swordmanship"や"Axe Mastery"などといった5〜6の系統(アトリビュート)に整理されている。そして,キャラクターのレベルアップ時に獲得したアトリビュートポイントを上記の系統に割り振ることで,スキルがより強力になる。ここで面白いのが,アトリビュートポイントさえしっかりつぎ込めば,サブProfessionのスキルでも遜色なく扱えるところ。全部で30通りになるメイン/サブProfessionの組み合わせに,膨大なスキルが絡み合うことで,キャラクターの育成は非常に奥深くなっている。

どんなに多くのスキルをUnlockしても,一度の冒険時に用意できるのは八つだけである。ここが悩ましくも面白い 拠点エリアでスキルスロットの入れ替えを行う。冒険のタイプに見合ったスキル構成を選ぶのが楽しい アトリビュートポイントは24まで溜められ,いつでも割り振りを元に戻せる。育て間違いの心配は少ないだろう

すべて局地戦に特化した,いさぎよいゲームシステム

Guild Warsにおける戦闘のテンポは,他タイトルと比べてかなり速い。毎回の戦闘が最大出力といったイメージだ

 Guild Warsの特徴をもう一つ挙げるとしたら,あらゆるシステムが局地戦に特化し,それ以外はばっさりと切り捨てられている点だ。ほかのRPGの経験者がGuild Warsの戦闘でまず驚くのは,HealthとEnergy(HPとMP)の回復速度だろう。Guild Warsではたとえ瀕死の状態からでも,十数秒あれば全快してしまうほど回復が早い。そのため,既存のRPGにおけるHealingやMedicateに相当する動作は必要なく,プレイはほぼノンストップで進行する。
 戦闘のテンポはかなり速く,使用のタイミングが重要なスキルも多い。プレイ感覚としてはRPGというよりアクションゲームに近いのだ。Guild Warsではザコ敵との戦闘一つ一つが常にパワー全開で行われ,それが最後まで間断なく続くのである。RPGでありながらe-Sports化の展望も打ち出しているのは,決して根拠のないことではないのだ。

自然回復のスピードも速いため,休憩時間をとらずにゲームを進められる。また死亡時のペナルティも事実上存在しない

 もう一つ,あえて手軽なシステムになっているのが移動だ。プレイヤーキャラクターはワールド中に複数設けられた拠点エリアへ,いついかなる場合もノーリスクで移動できる。キャンプポイントとの往復に何十分もかけて走る必要はなく,また万が一ピンチに陥っても瞬時に脱出できる。これらによって,プレイ時間のほとんどすべてを戦闘に使えるのだ。
 ほかにも,どうかすると会話ログを読む必要すらない(!)クエストサポートや,材料さえ持ち込めば後はNPCが行ってくれるアイテム合成,少人数での冒険時に役立つ傭兵"Henchman"などなど,戦闘以外の負担を軽減するためのさまざまな工夫が盛り込まれている。こうした"簡略化"が戦闘自体の面白さをまったくスポイルしていないのは特筆に値しよう。この取捨選択のセンスは,ほかのデベロッパにはちょっと真似できないレベルに達していると筆者は思う。

 今回は連載初回ということで,ゲームの全体像を把握してもらうために,詳細な説明をばっさりと省いてみた。次回からはまずRPGモードを中心に詳しい説明を交えながら,Guild Warsの魅力を伝えていきたいと思う。よろしくお付き合い願いたい。

好きな拠点へいつでも移動できるのは大胆なアイデアだ。戦闘以外の手間を極力なくすコンセプトなのだろう クエストでは,目標がミニマップ上に表示される。これを追っていけば,たとえ英文を読まずともクリアできる
アイテム合成はレシピに従って材料を揃えるだけで後はNPCが行ってくれる。戦利品を分解するなど,材料の入手方法は幅広い まとまった時間を取れない人でもマイペースで遊べるのが嬉しい。NPCが積極的に介入するためソロプレイでも大いに楽しめる

■■川崎 政一郎(ライター)■■
PCゲーム各誌およびPCゲーム情報サイトで活躍する,フリーライター/記者。得意ジャンルはRPG全般およびRTS。いけるクチだという噂もちらほらなので,口実を作って(他人のカネで)呑みに行こうではないかと,担当編集は画策しているらしい。まあ,連載が始まってから打ち合わせもないもんだと思うが。
タイトル ギルド ウォーズ
開発元 ArenaNet 発売元 エヌ・シー・ジャパン
発売日 2006/01/27 価格 オープンプライス(パッケージ版) / 月額課金料金980円
 
動作環境 Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上(PentiumIII/1.0GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(512MB以上推奨),HDD空き容量 500MB以上,VRAM 32MB以上(64MB以上推奨)

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