― 連載 ―

コサックスII 大陸軍の軌跡
国家別データ&解説:後編

 前回に引き続いて,登場する全6か国の解説とユニットのデータ集をお届けする。今回はその後編,イギリス,ロシア,エジプトの3か国についてだ。
 なお,ユニットデータの各項目の意味は以下のとおり。

 

育成に必要な金の量
育成に必要な木の量
育成に必要な食料の量
育成に必要な鉄の量
ライフ いわゆるヘルス値。これが0になるとユニットは死亡する
訓練 育成時間
弾薬 射撃一発あたりで消費する石炭の量
追加 経験を積むごとに得られる乱戦攻撃力アップのボーナス値
乱戦 乱戦攻撃力
射撃 所持している銃の火力
イギリス:軍事と内政に隙のない強国

 初っ端から恐縮だが,このゲームの主役であるはずのフランスは,実のところあまり強くない。6か国の中で"標準"と位置づけられているために特徴に乏しく,はっきりした長所がないのである。やはり,優秀な指揮官がいてこそのフランスの強さということだろうか。
 ただし,ユニットの種類が多いのでプレイスタイルに合わせていろいろな戦略を採れるという楽しみはある。

 

ユニット:士気の高い歩兵と,軽騎兵のコンビネーション

ロケット弾の,矢継ぎ早に繰り出される弾は相手をイライラさせるのに十分。どちらかというとマルチプレイ向きかも

 高地連隊兵とてき弾兵は,初期状態での士気が70。他国の標準的な歩兵が40であるのに比べると,段違いに高い士気を誇る。この二つのユニットは疲労にも強いため,士気が低下することがほとんどなく,歩兵部隊同士の撃ち合いでは,他国の歩兵に対し圧倒的に有利に戦えるだろう。イギリスではこの二つのユニットを中心に据えて戦っていきたい。
 高地連隊兵はフランスでいう選抜歩兵に似た射撃特化型のユニットだが,経験を積むことにより乱戦攻撃力が高まっていくため,大事に育てれば万能のユニットにできる。
 一方てき弾兵は初期状態での乱戦攻撃力が22もあり,120人で隊形を組むタイプの歩兵の中では最強を誇る。てき弾兵も経験により乱戦攻撃力がアップしていくので,なるべく隊形の崩壊を避けるようにし,経験を積ませて成長させていきたい。
 どちらがよいかは一概にはいえないが,射撃コストの低さをとるなら高地連隊兵,てき弾で建物を壊す能力を高く買うならてき弾兵だ。そして,数が揃えやすいという意味では,育成が早い高地連隊兵のほうに一分の利がある。

 

コラム:士気の高いユニット,低いユニット

 各ユニットの,初期状態での士気はまちまちだ。ここでそれらを整理してみたい。

 

初期状態の士気ユニット
90フランスの重騎兵,プロシアの重騎兵
85ヤタガン戦士
80射手
75フランスの軽騎兵,プロシアの軽騎兵,そのほかの国の騎兵すべて
70高地連隊兵,イギリスのてき弾兵,黒い軍団
60トゥアレグ,猟歩兵,ライフル銃兵
55イェニチェリ
50工兵
40そのほかの歩兵すべて

 

初期状態の士気は高いに越したことはないが,戦いに勝つごとに士気は自然に上昇していく

 これに加え,隊形を組むことで士気がアップするのだが,そのアップ値は,

 

  • 隊形を120人で組むユニット:+25
  • 隊形を15人で組むユニット:+3
  • 隊形を45人で組むユニット:+9

 

となっている。さらにこれに士官,鼓手,旗手を加えることで,それぞれ+10される。

 

 

 騎兵は軽竜騎兵,フザール騎兵,重竜騎兵の3種類。高地連隊兵もてき弾兵も乱戦が得意なユニットであるため,正面は彼らに任せてしまっても大丈夫。となると,側面に素早く展開できる軽騎兵タイプを組み合わせるのがよいだろう。軽竜騎兵はコストも強さも標準的ながら使いやすいユニットなのでおすすめだ。
 なお,イギリスには大砲のユニークユニットであるロケット弾が存在する。ロケット弾は主に威嚇目的に使う大砲で,発射速度が非常に速く,敵軍が大軍で集結している地点に向かって撃つと効果的だ。その代わりに命中精度は低く,使っている途中で壊れて使用不能になってしまうこともある。なかなか使いどころが難しいユニットだが,エフェクトが派手で面白いので,せっかくイギリスでプレイするならぜひ使ってみたいユニットだ。

 

内政:石炭を生産できる「工場」をフル活用

炭鉱居留地の少ないマップでは,工場の存在価値はひときわ大きい。石炭を食う射撃ユニットを心置きなく使える

 イギリスの内政で一番特徴的なのは,「工場」の存在だ。これを建設することにより,自動で石炭が生産される。これは居留地の石炭鉱山の労働者に換算すると,8人分程度の生産能力に相当する。工場は2軒目までは楽に建設できるため,約16人分の生産能力が余分にある計算だ。イギリスは他国に比べ,石炭収入においてかなり有利といえるだろう。
 その半面,イギリスは町の公会堂の建設コストが高い。2個目の建設コストが(木14000,石8000,金6000),3個目の建設コストが(木280000 石160000,金120000)となっているため,がんばって2個が限界で,3〜4個は建設できる他国に比べると不利になっている。これを補う手段は,宮殿で研究できる,町の住民の育成速度を50%アップさせる技術である(「減税」。金2000,鉄3000)。忘れずに研究しておこう。
 主力となる高地連隊兵とてき弾兵の育成に金を使うため,自動で金収入を得られる宮殿を早期に建設することがイギリスの内政のポイントだ。幸いにもイギリスの宮殿はコストが低い(木2500,石1000,金500)ので,序盤のうちに建設できる。

 

歩兵

 ライフ訓練弾薬追加乱戦射撃
マスケット銃兵 2051001015010100
高地連隊兵 2 50510015255130
てき弾兵 5 70101002510522100
ライフル銃兵 10020100605005200
工兵 15 50510010010010100

 

騎兵

 ライフ訓練弾薬追加乱戦射撃
軽竜騎兵  606025012010014150
フザール騎兵  901203001601501715
重竜騎兵40 25018030020010020200
ロシア:安価な歩兵を使って,数で勝負の国

 「国防義勇兵」の安さと生産の早さを特徴とし,物量で勝負する国家だ。町の公会堂の建設コストが安いので,町の住民の数も他国より増やしやすい。軍隊としては,歩兵の弱さを補うために騎兵に力を入れよう。

 

ユニット:安価で白兵戦に特化した国防義勇兵を盾に

いかにも即席兵士といった趣の国防義勇兵だが,安価ゆえに数を集めやすくなかなか怖い存在だ

 なんといっても食料10だけで育成可能,育成の所要時間も10と短い国防義勇兵がポイントだ。マスケット銃兵もてき弾兵も標準よりやや弱めで魅力がないため,国防義勇兵の物量を前面に押し出していくのがロシアらしい戦い方ではないだろうか。
 国防義勇兵は射撃ができない(!)のが最大の弱点だが,乱戦攻撃力は10あり,物量で押すには十分な攻撃力となる。加えて守備モードに入るのが早いので,拠点の確保も得意だ。
 攻撃/防御いずれの場合においても重要なのは,単独で行動せず,常に2〜3部隊で行動を共にすること。乱戦攻撃時には数で上回るようにし,防御時には,退却中の部隊が,守備モードを取って踏みとどまる部隊の後ろに,逃げ込めるようにしたい。

 国防義勇兵のコストが低いので,その分騎兵に資源を使えるのも利点だ。ロシアの騎兵は豊富で,とくに軽騎兵系に魅力的なものが揃っている。ユニークユニットの「ドンコサック騎兵」はデータを見れば分かるように,育成が早くて数を揃えやすい割には強く,戦闘経験による乱戦攻撃力のアップもあるので,育てがいのあるユニットだ。
 国防義勇兵を盾にして前進しつつ,その背後から騎兵が飛び出すというパターンがロシアの典型的な戦術になるだろう。

 

コラム:追加ダメージとは?

イギリスの高地連隊兵の場合は,追加ダメージが5なので,20×12で現在+12のボーナスが付いている計算になる

 部隊(隊形)は敵を倒すごとに経験を積み,士気が上昇していくが,それに加えて一定数の敵を倒すごとに乱戦攻撃力がアップしていくタイプのユニットがいる。この連載でも何度か触れているが,データ編にある「追加ダメージ」の数値がそのアップ値に関するデータだ。この数値の意味は少々分かりづらい。実際に数えてみたところによると,

 

  • 「追加ダメージ」が10のユニット:50人倒すごとに乱戦攻撃力+5
  • 「追加ダメージ」が5のユニット:20人倒すごとに乱戦攻撃力+1
  • 「追加ダメージ」が1のユニット:100人倒すごとに乱戦攻撃力+1

 

となっているようだ。攻撃力をアップさせるためには,ある程度まとまった数を倒す必要がある。

 

 

内政:町の公会堂の安さを生かす

 ロシアの内政の特徴として挙げるべきは,公会堂の安さおよび,町の住民が製粉所との関係で発揮する能力が挙げられる。
 まずは町の公会堂の建設コストから見ていこう。町の公会堂の建設コストは国によってまちまちだが,ロシアはとくに安い。例としてフランスと比較してみると,

 

ロシア

 
1個目700600300
2個目14001600600
3個目280032001200

 

フランス

 
1個目400600250
2個目160024001000
3個目640096004000

 

 その差は歴然としている。驚くべきことに,ロシアでは5個程度までなら楽に建設できるのだ。
 ただし,ロシアの町の住民は他国のそれに比べて育成速度が1割ほど遅い。そしてさらに悪いことに,畑から食料を収穫する効率が他国の町の住民に比べて劣る。
 ロシアの住民と他国の住民とでは,木や石の収集速度は同じなのだが,畑から食料を取るとき,

 

  • ロシアの住民は一度に50の食料を運べる
  • 他国の住民は一度に100の食料を運べる
  • ただし,一回分の収穫にかかる時間は,ロシア住民は他国住民と比べて半分(つまり収穫速度そのものは同じ)

 

ロシアは町の住民の数を増やしやすい。木や石に十分割り当てたら,残りには畑で食料を収穫させよう

という性格の違いがある。
 普通に考えるなら,他国の住民のほうが効率がよいのは確かだ。収穫速度そのものはどちらも同じだが,ロシアのほうが収穫地点と収納地点を往復する回数が多いため,その時間分がロスになるからである。
 そのロスの埋め合わせとして,ロシアでは製粉所が任意に建設できるようになっているのだろう。他国では畑を自前で用意できないため,居留地の畑を借りて食料を収穫し,それを倉庫や町の公会堂へ運ばなければならない。だから収穫場所と収納場所は距離が長くなってしまいがちだ。
 それに対してロシアの住民は,製粉所の周囲に畑を展開することで,収穫場所と収納場所の距離を近くできるため,往復時間が短縮できるのだ。
 細かい部分だが,ロシア住民に食料を収穫させるときは,以上のことに留意しておこう。特別に用意されたルールを使って,不利な条件を可能な限り埋め合わせておきたいということだ。

 

歩兵

 ライフ訓練弾薬追加乱戦射撃
国防義勇兵  10 1001000100
マスケット銃兵  20510015555100
てき弾兵  1101210015555100
猟歩兵  10020100605005200
工兵15 100510030501050

 

騎兵

 ライフ訓練弾薬追加乱戦射撃
猟騎兵  606025012015014150
槍騎兵 20060 2509001014 
ドンコサック騎兵 2004040300120151014150
フザール騎兵  1001003001601501715
黒海コサック騎兵90 20020040026010025150
竜騎兵  10016030016015017150
胸甲騎兵60 10010030020015020100
エジプト:「イェニチェリ」の火力を核に

 6か国中唯一のイスラム系国家で,個性的なユニットが揃っている。とくに銃に対する防御力を持つ「ヤタガン戦士」の横隊形はまさに"動く壁"で,敵にとっては非常に厄介な存在だろう。
 自分でプレイするとあまり強く感じないが,敵に回すとやたらに強い印象を受けてしまうのは,その特殊性のゆえだろうか。6か国中のダークホース的存在である。

 

ユニット:銃に強い歩兵と弓矢で18世紀的な戦闘を

 前述のように,エジプトのユニットはどれも個性的だ。順に見ていこう。
 ヤタガン戦士は乱戦専用ユニットで,銃に対する防御力を持つことが最大の特徴だ。加えて,ロシアの国防義勇兵と同様に守備モードに入るまでの時間が非常に短い。また宮殿には,乱戦攻撃力を5から10へとアップさせる研究項目(「新しい剣術をマスター」。金2000,鉄3000)がある。これは非常に重要なので,なるべく早期に研究するようにしよう。

 

トゥアレグは30人で隊形を組む特殊なユニット。乱戦攻撃力が40もある,白兵戦最強の歩兵だ

 注目したいのは,5から10へのアップは敵に与えるダメージが単純に2倍になるという意味ではなく,もっと大きな効果があるということだ。コサックスIIにおける戦闘は,通常は隊形同士で行われるため,攻撃力は+2,防御力は+3(旗手がついている場合には,それぞれ+3と+5)の補正がついており,攻撃力の値から防御力の値を差し引くことで損害が計算される。細かい計算は省くが,このアップグレードには実際のところ2倍以上の効果があるのだ。

 

 「イェニチェリ」は射撃時の火力が130あるうえ,経験による乱戦攻撃力ボーナスを持つ。つまりイギリスの高地連隊兵と同等の強さを持つユニットであり,エジプト軍の主力として使える。ただし高地連隊兵と違って,射撃コストが非常に高いのが難点だ。石炭の残量に注意しよう。
 「射手」はこのゲームで弓矢を使う唯一のユニットだ。弓矢は射撃コストが0で発射間隔が短い代わりに,一発当たりの攻撃力が18しかないのが難点といえる。
 ただし,敵との距離を問わずダメージが常に18なのは魅力的なところ。命中精度に多少の差は出るが,敵を引き付けて射る必要はとくにない。
 また,矢は放物線を描いて飛ぶため,味方の背後からでも問題なく射撃できるというのも重要なポイント。ヤタガン戦士を壁にして,その背後から射手が矢を射かけるという戦術が使える。
 エジプトには騎兵育成所や大砲製造所はなく,騎兵と大砲は要塞という施設で育成/生産する。要塞は騎兵育成所や大砲製造所ほど数多くを作れないため,騎兵や大砲は出しにくい。

 

ヤタガン戦士で壁を作り,その後ろから攻撃するようにすると,射手が持つ超過射撃能力を生かせる

 エジプトの騎兵はベドウィン,軽騎兵,騎馬マムルーク兵の3種類。ベドウィンは軽騎兵にもかかわらず移動が遅いのが泣きどころ。ただし育成速度が40と非常に短く,とにかく数を揃えたいのならば無条件でベドウィンを育成したい。
 軽騎兵と騎馬マムルーク兵はどちらも2丁拳銃を装備した軽快な軽騎兵だが,育成速度で比較するとベドウィンに明らかに劣る。やはり本作は「量>質」といった側面が強いので,とりあえず数を揃えなければならない状況では,ベドウィンを使うのが正解だろう。 ただし,人口の上限に迫っている場合にはその限りではなく,騎馬マムルーク兵を作ってみても面白いかもしれない。

 

内政:市場で買ってでも石炭の確保に努めたい

 エジプトでは,町の公会堂がゲーム開始直後に建てられない。建てるにはまず歩兵育成所と倉庫を先に建てなければならないが,そこで木と石を使ってしまうため,公会堂の建設に必要な木と石を集め直さねばならない。必然的に他国と比べて,町の公会堂の建設が2〜3分遅れてしまうことになる。
 またイェニチェリを大量に使う場合,射撃コストが一発あたり15と非常に高いため,石炭の確保を重点的に行いたい。炭鉱の居留地を確保し,可能な限りアップグレードするのはもちろんのこと,それだけでは足りないので,市場で何か別の資源を売って石炭と交換することになるだろう。
 総じて本作では,市場で売る資源としては食料が一番効率がよい。そこで食料の増産,とくに居留地のアップグレードを重点的に行っていきたい。

 

歩兵

 ライフ訓練弾薬追加乱戦射撃
ヤタガン戦士  5510015005(10)
イェニチェリ  1531001515105130
射手4 40 20001018100
トゥアレグ20 100401008010040200

 

騎兵

 ライフ訓練弾薬追加乱戦射撃
ベドウィン  30604004015014150
軽騎兵  801203006015017100
騎馬マムルーク兵  1006040017515025150
■■Sluta(ライター)■■
"コサックスシリーズ"のベテランプレイヤーにして,4Gamerレビューコンテストで歴代唯一の大賞受賞者。このコーナーで何回か話題にした,彼が通う大学でのオンラインゲームの講義についてだが,つい先日試験があった模様。ゲーム関連の問題が出たら高得点間違いなしと意気込んで臨んだところ,結局ゲーム関連の出題はなく,講義前半で扱ったインターネット全般の話題に終始したという。氏の得点が少々心配になるところだが,それより何より,連載最終回にオチをつけてくれたのは,この教授ということになるだろうか。
タイトル Best Selection of GAMES コサックスII〜皇帝ナポレオン〜
開発元 GSC Game World 発売元 ズー
発売日 2006/10/13 価格 3990円(税込)
 
動作環境 N/A

(C) 2005 CDV Software Entertainment AG. All rights reserved. CDV, the CDV logo and Cossacks II - Napoleonic Wars are either registered trademarks or trademarks of CDV Software Entertainment AG or GSC Game World in the US and/or UK and/or other countries.