― 連載 ―

シヴィライゼーション4 (午前)3時のおやつは文明道
第5回:中盤からの飛躍を支える都市ごとの役割分担

ハンマー収入を最重視した都市の周辺の様子。小屋を建てていけば収益が見込める氾濫原にも農場を置いて,鉱山を利用できるだけの食料を確保している

 今回は,中盤での発展に関わる要素である「都市の役割分担」を中心に扱いたい。都市数が増えてきたところで考えたいのが「都市ごとの役割を決める」ことだ。具体的な例に即して考えてみよう。
 このゲームで軍備を整えるためには,ユニットを素早く生産できる,ハンマー収入の多い都市が必要になる。同様に,偉人を生み出したいのであれば専門家を多めに配置して,偉人ポイントを稼ぎたい。ところが,ハンマー収入の多い地形や専門家は,食料を稼いでくれない(定住した大商人を除く)。
 人口を維持するには,専門家も含めた市民総数×2の食料収入が必要だから,ハンマーも専門家も追いかけていては,食糧生産が逼迫してしまう。この二つの要素を一つの都市で追求することには無理があるわけだ。

 

 では,コイン収入はほかの2要素と共存できるだろうか? 食糧生産が2に届かない市民がいる場合,どこかのマスで3以上の食料を作って,全体としてバランスを取る必要が出てくる。だが,3以上の食料が作れるポピュラーな地形としては,草原に農場を設置するしかなく,そうなれば金銭を生み出す小屋は設置できなくなる。つまりコインもまた,ほかの2要素とともに追うわけにはいかないのだ。結局のところ,

 

  • 経済圏内の資源や地形に市民を配置してコインを稼ぐ
  • 経済圏内の資源や地形に市民を配置してハンマーを稼ぐ
  • 市民をできるだけ多く専門家に変換して,偉人ポイントを稼ぐ

 

コイン収益を最重視する都市の場合,置けるだけの小屋を置いて町に育てていくことで,コイン収入を大きく上げられる

という3要素は,よほど恵まれた地形の場合を除いて,一つの都市には集中させにくい。後述するように,ある程度は融通可能な面もあるが,少なくとも複数の要素を「同時に」追いかけるのは,かなりきついのだ。
 だからといってこのゲームで,ちまちまと中間的な性質の都市ばかり揃えるのはよろしくない。逆に,「この都市ではお金を稼ぐ」「この都市では偉人を生産」といった感じで,メリハリをつけたほうが有利になる。すべての都市をそのように特化させるのはたいへんだが,自文明のなかでも上位の都市には,はっきりした性格付けをしたほうがよい。なぜならそのほうが,文化遺産,とりわけ国家遺産の能力を生かしやすいからだ。

 

都市の性格と国家遺産の機能を組み合わせる

 国家遺産は,各文明がそれぞれに持てる文化遺産だ。他文明と建設の速さを競う必要はないが,「文明内では一つだけ」「1都市には二つまで」という制約がかかる。どこにでもホイホイ建てられるものでない以上,効果は最大限に生かしたい。

 

「製鉄所」のハンマー増幅率は,石炭と鉄が両方ある場合で100%と,きわめて高い

 例えば,「鋼鉄」技術で作れるようになる「製鉄所」。これを作る場所は,もちろん「元から十分に高いハンマー生産力のある都市」から選ぶべきである。元のハンマー生産量が4なのを8にするより,30であるのを60にしたほうが,増収分がずっと大きいからだ。とくにハンマー生産量が多い都市は,「高いコストのものも素早く作れる都市」にもなるため,世界遺産や宇宙船パーツを作る場合に,とても大きいメリットになる。というより,宇宙開発競争勝利を狙うなら,こうして卓越したハンマー生産ができる都市を作るのは必須テクニックといってもいい。
 同様のことは,コイン収入を増幅する「ウォール街」についてもいえる。建造時に,短いターン数で建設できる都市を選ぶのではなく,もともとコイン収入が多い都市で,その収入を増幅するほうが,メリットが大きいのだ。

 

こちらは大科学者を生み出すうえで重要になる「オックスフォード大学」。うまく運用できれば,偉人が偉人を呼ぶ状態を実現できる

 国家遺産のみならず,建設都市だけに影響するタイプの世界遺産にも,こうした配慮をすべきだ。このタイプの世界遺産としては,「ロードス島の巨神像」「アレクサンドリア図書館」があり,それぞれコインと専門家「科学者」に効果がある。このほか「ヴェルサイユ宮殿」も特定都市にだけ効果があるが,特定の生産を増幅するタイプのものではないので,とくに考慮する必要はないだろう。
 また,複数の都市で作れる施設ではあるが,大科学者を消費して作る「アカデミー」も,ビーカー生産の多い都市に優先して設置すべきである。こういった配慮をして建物を集めることで,「ある目的に特化した強力な都市」が生まれ,ひいては自文明にさらなる強さをもたらしてくれるはずなのだ。

 

同じ大陸のすべての自文明都市に電力を供給できる「三峡ダム」。非常に強力な世界遺産だが,川沿いの都市にしか建設できない

 なお,どのタイプの都市をいくつ確保するかは,目指す勝利の形によって変わってくる。宇宙開発競争勝利の場合,数としてはハンマー型を二つ以上,できれば3都市で,一つは「英雄叙事詩」により軍事ユニットの生産に専念させたい。そしてコイン収入型が二つ以上,偉人輩出型が一つ以上あると,プレイを進めやすいはずだ。 そしてハンマー型都市のうち,一つは「三峡ダム」のために川沿いに,もう一つは「軌道エレベータ」のために赤道に近い位置に配置したい。軌道エレベータについては,緯度30度以内という条件がプレイ上はっきり判断しづらいものの,「赤道近くの川沿い」であればこれらの条件は1都市で兼ねられる。

 

複数の文化遺産によるコンボ技も

内政重視型のプレイの場合,「英雄叙事詩」による軍事ユニット生産の増幅は,ゲーム後半で間に合うことが多い。この場合,製材所がハンマーの源泉としてあてにできるので,どの都市に置くかという選択が広くなる

 国家遺産や,特定都市に影響する世界遺産は,集め方によって複合効果を発揮することがある。分かりやすい例としては,「英雄叙事詩」(軍事ユニットの生産速度が倍)+「ウェストポイント」(その都市で作られた軍事ユニットに経験値加増)などがそうだ。この二つをハンマー系の都市に揃えられれば,「強いユニットがどんどん生産できる都市」が実現する。
 もっとも,これらの国家遺産には高レベルに昇進したユニットが必要だ。積極的に戦争をしない場合,ウェストポイントの設置に必要なユニットを持つのはたいへん難しく,英雄叙事詩すらも,なかなか条件を満たすユニットを育てられないことがある。

 そこで,とりあえず「製鉄所」と「英雄叙事詩」を重ね,「素早く軍事ユニットが作れる都市」を目指す手もある。ただ,これはこれで,終盤に世界遺産や宇宙船パーツの建造を続ける場合,英雄叙事詩の効果が無駄になってしまうという難点がある。まあ,このあたりは好みやその時々の展開に応じて判断するしかない。

 

実際に「オックスフォード大学」+「民族叙事詩」を実現してみた都市。周囲に氾濫原がかなり豊富にあったため,経済収益が稼げていることも功を奏し,ゲーム終盤では,ビーカー生産が471ポイントにも上った

 

 ゲーム前半で技術開発を加速したければ,「アレクサンドリア図書館」(世界遺産)+「民族叙事詩」というのも手堅いコンボだ。もちろん,アカデミーは真っ先にこの都市に建て,専門家「科学者」もできるだけつぎ込むのが望ましい。首都がハンマー生産より専門家都市に向いているような条件だったら,すでに紹介したアポロ神殿建設までの流れに続けて,首都でこの路線を採るのは有望な手といえる。
 また,巨大な人口を抱える経済都市では,「グローブ座」で幸福を維持しつつ「ウォール街」でコイン収入を増幅する,といったコンボも有効だろう。
 国境付近では,宗教系の最上位施設(できれば複数)+「エルミタージュ美術館」という組み合わせも有用だ。文化ポイントを稼いで,他文明領土の広がりを阻止し,あわよくば近隣都市の文化転向を狙うというのが,この場合の目標である。

 

ハンマー生産の少ない都市で建物を素早く建てるには

 ここで,見落としたくないポイントをもう一つ。専門家重視/コイン収入重視の都市では,ハンマーの生産量が少ないため,コストの高い国家遺産や建造物を作るのに,常に長い時間がかかってしまう……と思っていないだろうか? この問題は,ひと手間かければ十分に緩和できるのだ。
 まず,市民配置はプレイヤーが自由に変えられる,ということを思い出してほしい。専門家やコインを重視したい都市でも,都市圏に鉱山,製材所など,ハンマー生産系の資源活用施設をあらかじめ作っておくことは可能だ。そうした施設を作ったうえで,普段は使わずにいて,急いで作りたい建造物があるときにだけ市民を配置する,という手があるのだ。

 

都市の人口が十数人程度までなら,市民を配置し直してやるだけで,収益構造が大きく変わることがある。同一の都市で,ハンマー収入を重視して,市民を配置し直したのが右の画面だ。その時々の目的に合った配置に変えることは,見落としがちだが重要なテクニックである

 

 また,隣接都市と都市圏が重なっているところにこうしたハンマー生産系のマスがあれば,一時的にそのマスを利用する都市を変えることも可能だ。先に,現在そのマスを利用している都市の画面で,そのマスから市民を外す。そして,利用したい都市の画面に移り,そちらで市民を配置し直せばよい。これは,ゲーム中盤に食糧不足が発生したときなどにも使える手法だ。

 

このプレイでは,緯度の関係で前述の科学者都市で軌道エレベータを作らなければならなくなった。だが,科学者をすべて技術者(ハンマー+2)と聖職者(同+1)に転換すると,志向ボーナスや資源ボーナスの恩恵もあって,十分に高いハンマー生産量が実現できた

 また,専門家重視型都市の場合,そこにいる科学者や芸術家を,必要に応じて技術者や聖職者といった「ハンマーを生み出す専門家」に置き換えるという選択も可能だ。コイン収入重視型の都市なら,「奴隷制」や「普通選挙」の社会制度で,潤沢なはずの人口やコインで緊急生産すればよい。そもそも「普通選挙」の社会制度なら,町がハンマーを生み出してくれる。結局ゲーム中盤以降なら,専門家型,コイン型どちらのタイプの都市でも,一時的にハンマー生産量を増やすことは可能なのだ。

 

 さて,こうした役割分担の例外となるのが,中盤くらいまでの首都だ。首都に関してだけは,ゲームがある程度進むまでは,とくに明確な役割を決めなくてもうまくゲームを進められると思う。首都にはコイン収入+8のボーナスがあるし,「法制度」で「官僚制」をとれば,生産と財政の両方について大きな増幅がかかる。これらを活用すれば,首都は例外的に,複数の役割にまたがって主要都市としての役割を果たせるのだ。

 

「宮殿」には本文で述べたような特別ルールが適用される。それを知らずに,あちこちに作ってしまった……というのはよく聞く失敗の例。首都の移転はただでさえリスキーなので,慎重に行いたいものだ

 とはいえ,いつかは特化の道を選ぶことになる。選択の期限としては,オックスフォード大学(科学者を中心とした専門家生産/ビーカー量を稼ぐ都市として使う場合)やウォール街(コイン型都市として使う場合)を作るくらいまでになるだろう。
 なお連載第4回でも触れたが,首都は移転可能だ。別の都市に宮殿を建てればそこが新首都になり,旧首都にあった宮殿は自動的に消滅する。例えば海沿いの首都からスタートして,一方に偏った形で領土が広がったという場合,内陸の都市に遷都することで,国家全体の維持費を抑えられる。ただ,これは順調に育っている大都市としての(旧)首都の成長に,ブレーキをかける結果になりかねない。この代替策として用意されているのが,同じ回で紹介したヴェルサイユ宮殿や紫禁城を作る方法,ということになる。

 次回は,ぜひとも取得すべき技術項目について,その効用の話を含め,なるべく具体的に解説しよう。

 

■■虹川 瞬(フリーライター)■■
本人はあまり自覚していないようだが,ジャンルを問わず教養主義的アプローチを試みるのが持ち味のPCゲームライター。学生時分に得意だった科目が物理,読書の嗜好が本格/新本格ミステリーという組み合わせは,パズル的探求心の旺盛さをつぶさに物語っている。だがそれと本人のダジャレ好きがどう関わるかについては,それなりに付き合いの長い担当編集にとってもミステリーであり,「文化遺産」でなく「不思議」に属する事柄である。
タイトル シヴィライゼーション4【完全日本語版】
開発元 Firaxis Games 発売元 サイバーフロント
発売日 2006/06/17 価格 オープンプライス
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium III/1.2GHz以上[Pentium 4/2GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce 2 MX/Radeon 7500以上,グラフィックスメモリ:64MB以上[128MB以上推奨]

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