― 連載 ―

 キャラクターゲーム各タイトルの紹介と個別の考察に終始してきた本連載だが,ここらでちょっと"考現学"らしいこともしてみよう。とりあえず考えてみたいのは,今やキャラクターゲームに不可欠で,どうかすると定義の構成要件ですらあるかもしれない,キャラクターボイス(以下CV)についてだ。

 今回,クロムシックスとエレクトロニック・アーツのご厚意により,"エンジェリック・ヴェールシリーズ"の主役級キャラのCVを担当するお二方にインタビューする機会を得たので,その結果をお届けしよう。
 映像作品と異なり,シナリオが一本道でないゲームのアフレコでは,仮組みされた絵コンテの映像を見ながら掛け合いで進めるというわけにはいかない。担当声優ごとに別録りのレコーディングにおける"芝居"の要素とは,どういった部分に込められるのだろうか。そこに着目しつつお読みいただきたい。
 また声優さんへのインタビューに続いて,開発側であるクロムシックスの方にもお話を伺った。こちらはCVを"使う"側の視点と,ゲームならではの作業工程が見どころになる。同時に,最新作「エンジェリック・ヴェール新伝 エフェメール島綺譚」で気になる点についても聞いてみたので,「こちら」のレビュー記事や,本連載の「こちら」などで適宜おさらいしつつ,読んでほしい。



荻原秀樹


飯塚雅弓


4Gamer:
 ときどき見当違いの質問もあるかと存じますが,本日はよろしくお願いします。さっそくですが,ゲームのアフレコでは,台本でほかの人が担当するパートにも目を通したりするものでしょうか?

飯塚さん:
 作品によってですね。自分の原稿だけいただく場合もあるんですけど,今回はみなさんのセリフも入っている中に自分のがあるというパターンで,一応台本は全体に目を通しました。

荻原さん:
 小説を読んでいるように全体を把握したところで,相手がこう来るんじゃないか,というのを読んで……ゲームの場合は一緒に録れないんで。録れたら,感情の移り変わりとか,細かーくできると思うんですけど,それができないぶん,ある程度想定しつつ,やってみて。出来上がりが楽しみだったりもするんですけど。

4Gamer:
 なるほど。その場で一緒に掛け合いができないから,そのぶん台本やキャストからニュアンスを読みとる必要があるんですね。

荻原さん:
 そう,知らない声優さんでなければ,この部分はこう来るかな,というのがあるんですけど,たまに,あ,こういうふうにお芝居されたんだ,って驚くこともあります。

飯塚さん:
 想像力の世界というか……。あ,でもけっこうやった者勝ちっていうのもあるので(笑)。同じセリフでもいろいろなパターンをやってみるんです。その中から音響監督さんが選んで,後に収録する相手方さんに「○○○みたいにしてください」ってディレクションされるんです。


荻原さん:
 ああ,ありますね(笑)。「先に録った方(かた)が,こういう感じでやられてるんで,すいません,ここはもうちょっとこういう感じでお願いします」という。

4Gamer:
 掛け合いはないけれど,前に録った部分との関係は考えなければいけない,と?

荻原さん:
 そうですね。音響監督さんが総括されてるんで。例えば崖の上から呼びかけられるとして,相手が「おぉぉぉーい!」とか言ってるのに,ただ「なに?」とか軽く返してしまったらちぐはぐだし,相手が助けを求めているとして,小さな声だったら,あまり大声で返すのも変かな,とか,そういったところですね。

4Gamer:
 一定のディレクションがあるにせよ,本当に先に録った者勝ちなんですか?

荻原さん:
 いや,キャラクターのイメージとかありますので,ダメ出しということもありますけど,基本的に先に録るほうが自由度が高いというか。先に録った方(かた)がものすごいアドリブとか入れてたら,「おーし,負けねえぞ」という。こっちも面白おかしくしてやろうとかいうときもありますね。

飯塚さん:
 役者としての楽しみだったりしますよね。

4Gamer:
 そのあたりが,アニメ作品でなくゲームのアフレコの難しいところであり,面白いところ,ということでしょうか?

荻原さん:
 そう,ともいえますね。役者としては抜き録りでなく,本当は一緒にやりたいんですけど。ただワード数が多いですし,これやったら何週間かかっちゃうんだろうという。

飯塚さん:
 とくにこのゲームは掛け合いも多いですし。

荻原さん:
 僕がもらったシナリオって,全体のシナリオじゃなくて,出ているシーンごとのシナリオだったんですよ。それで,知らないストーリーがまだあるんですね。そこらへんは,僕も普通にプレイヤーとして楽しめるんじゃないかと(笑)。


   

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