― 連載 ―

灰色着てるやつを見たら撃て!ブラザー イン アームズ
第1回:ただのFPSだと誤解してないか!?
ゲームの説明&連載内容

戦場の兄弟達(部下や仲間)に的確な命令を出して,数々の激戦を乗り越えていく本作は,実際の資料や当時の戦いに参加した兵士の話を基に再現したリアリティが売り。目の前に広がるのは1944年のノルマンディそのものなのだ

 第二次世界大戦シューティング「ブラザー イン アームズ ロード トゥ ヒル サーティー」(原題 Brothers in Arms:Road to Hill 30。以下,BIA)。2005年9月15日に日本語版が発売された本作だが,まだ購入していない人はもちろん,すでに購入した人の中にも,BIAというゲームを誤解している人がいるかもしれない。
 まず最初にいっておくが,BIAはごく一般的なFPSではない。プレイヤーは一人の米軍兵士として一人称視点で戦うのだが,主に自分の銃で敵兵を倒すゲームではないのだ。極論だが,本作は自分で銃を持ちつつも,実際は部下を指揮して部下に敵を倒させるという,戦術的なゲームなのである。

 

 とりあえずBIAの作品紹介をしておこう。プレイヤーは米軍第101空挺師団第502パラシュート歩兵連隊の分隊長マット・ベイカー軍曹となり,ノルマンディ上陸作戦における戦略拠点「ヒル30」攻略までの8日間の道のりを,仲間達と共に生き抜いていく。

 

ノルマンディ上陸作戦で海岸から上陸する歩兵部隊のために,内陸の重要拠点を制圧するのが空艇師団の役目だ

 主人公を始めとする登場人物,ゲーム中の作戦行動,時間軸,天候,風景,地形,建物など,すべてがアメリカ国立公文書館にある当時の膨大な資料,第二次世界大戦経験者の実話,そして米軍の協力のもと,史実に基づいて忠実に再現されており,まさにD-DAYの8日間をそのまま再現してしまったといっても過言ではない。モニターの中に広がるのは1944年ノルマンディそのものなのだ。

 

 BIAではミッションをクリアしていくことで,ゲーム作成のために使われた数々の資料,当時の貴重な写真や兵士が書き残した手記などが徐々に見られるようになる。これらの資料にある作戦や戦闘の記録などは,実際にゲームで再現されている部分も多く,ゲームをクリアしてから記録を見ていると「おお,この日記はあのシーンの……」ということが多々ある。こういった資料を眺めたうえで再度同じミッションに挑戦すると,また違った面白さがあるわけだが,すべての資料を見るためにはすべてのチャプターを難度「ハード」と「リアル」でクリアする必要がある。

 

 イージーでも難しいといわれる本作で,ハードともなると半ベソになるほど難しいチャプター(ミッション)もある。「別に資料なんていいやー」と,半ばあきらめてしまった軍曹もいるのではないだろうか。それは,もったいなさすぎる!

 

 というわけで本連載では,この貴重な資料収集をプレイヤー諸君にコンプリートしてもらい,物語をより深く楽しんでいくためのサポートをしていく。具体的にはゲーム中の8日間をいくつかに区切って,高難度でのチャプター攻略例や,こだわりの部分などを紹介していく予定だ。

 

モーションキャプチャーで再現された兵士の動きは人間そのもの。倒れる様子も気持ち悪いくらいにリアルだ 実際にあった出来事がゲーム中に多く取り入れられている。クリア後に"ボーナス"を見ると裏話などが楽しめる
制圧,分隊指揮,操作性

 第1回は,まずBIAの基本的なゲームシステムをしっかりと理解してもらい,「ただのFPS」という誤解を解いてもらわねばならない。BIAの基本とは,すなわち「分隊指揮」と「制圧」である。

 

分隊指揮

 BIAは従来のFPSとは異なり,部下に「移動」「攻撃」などの指示を出し,チームプレイで敵を撃破しては,先へと進んでいくゲームである。「フル スペクトラム ウォーリア」のような分隊指揮インタフェースを持ったFPS,といえばピンとくる人もいるだろう。やたらと銃の命中率がシビアなゲームなので,主人公だけでランボーのように敵兵どもを撃ち倒して進むのはほぼ不可能。逆に部下だけに戦わせて,自分はあまり戦わないような進め方が可能だ(場合によるが)。

●チーム切り替え

銃撃班と突撃班の2チームそれぞれに命令を出して戦っていく。忠実に従う部下の命は分隊長であるプレイヤーが握っており,指揮がマズいと部下はみるみる死んでいく

 プレイヤーには部下として,射程の長い小銃や重機関銃で武装した"銃撃班"と,敵を素早く叩けるように軽い銃器と手榴弾で武装した"突撃班"を与えられる。チームの切り替えはシフトキーで行うのだが,突撃班に出そうと思った突撃命令を銃撃班に出してしまった,なんてことも多い。数字キー1,2(デフォルト)で銃撃班と突撃班をダイレクトに選択できるので,自分の使いやすいキーにダイレクト選択をアサインしておくと便利だ。

●移動,攻撃,強襲,集合/散開

部下を特定の場所に移動させるときに使うのが移動命令。移動中に敵と遭遇すると遮蔽物に隠れて応戦する

 移動,攻撃,強襲といったチームへの命令を簡単かつ迅速に出せるのが,BIAの優れたポイントだ。マウスの右ボタンをホールドすると"コマンド・リング"が表示される。この状態で移動させたい地点にコマンド・リングを重ねて右ボタンを離すと"移動",攻撃したい敵にコマンド・リングを合わせるとアイコンが変わり(赤くなる),その状態で右ボタンを離すと"攻撃",左ボタンを押すと"強襲",この3種類の命令がマウスで出せる。

 このほか,集合命令(デフォルト:Zキー)を使うと,部下がプレイヤーと一緒に行動する。別の命令を出すこと,もしくは散開(デフォルト:Xキー)の指示で集合命令は解除される。集合命令がかかっている状態で敵を発見したり攻撃を受けたりすると,部下は自発的に攻撃/応戦したり,被弾しないように最適な場所を求めながら移動する。ダメージを受けていると足が遅くなり,ますます被弾しやすくなる。

 

敵にコマンド・リングを合わせると,チームに攻撃命令が出せる。隊長は自分自身で戦わなくてもいいからラク 部下を突撃させる強襲命令。制圧状態でも接近すると応戦してくるので,部下がダメージを負うことも多い
制圧

敵を発見したら制圧射撃で動きを封じ込める(完全制圧)。そこからどう攻撃するかは分隊長次第だ

 BIAの特徴の一つに「制圧」という概念がある。この場合の制圧とは,つまり激しい銃撃を浴びせて敵を遮蔽物の陰に閉じこめることだ。この状態では,敵は遮蔽物から頭も出せなくなり,攻撃が止むのをじっと耐えるしかなくなる。アクション映画などの「援護してくれ!」というのも,この制圧を意味する。
 敵を遮蔽物に釘付けにしている隙に,敵の死角に回り込んだり強襲命令を出したりすることで,敵を倒す。ライフゲージが回復しない本作では,いかにダメージを受けずに行動するかがポイントとなるため,「制圧射撃(射撃班)」→「側面攻撃or強襲(突撃班)」が,戦闘の基本スタイルとなる。

 

 敵を発見すると赤丸の制圧メーター(制圧状態指数)が表示され,敵に向かって攻撃を開始すると次第に灰色の部分が増えていく。相応の攻撃を加えると制圧ゲージはすべて濃い灰色に変わり,完全に制圧したことを意味する。ここで攻撃を止めると再び灰色の部分が増えていき,制圧されていない状態まで回復すると敵は攻撃を再開してくる。自分や部下の移動は,敵が制圧状態から回復するまでのわずかな時間内に行わねばならない。

 

左から制圧してない状態,制圧射撃で怯んできた状態,完全にビビっている状態。完全制圧状態にしても攻撃を加えなければ,次第に制圧状態が解かれていく。制圧メーターの濃い灰色の部分が増え,完全に回復すると制圧していない状態に戻り,再び攻撃してくる。
●制圧→側面攻撃

遮蔽物に隠れながら敵の側面に移動して叩く。敵に見つかる前に攻撃を仕掛けよう。しっかり狙って撃つべし

 敵を制圧しておいて側面に回り込むのが,最も基本的なパターンだ。自分で回り込むか,部下を回り込ませるかは状況によって判断したい。筆者が好きな戦法は,敵を側面から狙える位置に移動し,1発だけ撃って隠れる。敵がこちらに攻撃を仕掛けるべく立ち上がったところで部下に始末させるというもの。単独で狙うよりも部下2〜3人の攻撃で狙ったほうが成功率もアップし,弾薬の節約にもなる。

●制圧→強襲

制圧状態にしたら直接強襲する手もある。銃撃班に強襲させてしまうこともあるが,やはり突撃班がベストだ

 敵を制圧してから,突撃班を使い敵の塹壕などを強襲させる戦法もある。直接的でシンプルだが,そのぶん危険も大きい。敵にマシンガンなどがある場合は,とくに注意が必要だ。自分自身で強襲してもいいが,接近戦でも命中させにくい本作では,腕に自信のある人のみお勧め。強襲は素直に部下に任せたほうがいいだろう。

●複数箇所からの攻撃対策

複数の敵がいる場合は腕の見せどころ。思い切って飛び出して下の敵を強襲し,階上の敵を倒すのも手だ

 敵が複数の場所から攻撃してくることも多い。こうなってくると,まるでパズルだ。あるポイントの敵を制圧することで,別の敵の死角を突ける安全地帯を作り出せる場合もあるが,どの位置の敵から制圧していくかを判断できるのはプレイヤーだけなので,とにかく頭を使って冷静に指示を出したい。
 同一ベクトル上の手前と奥に敵がいる場合,手前側を銃撃班が制圧したら突撃班に強襲命令を出し,すぐに自分が奥側の敵を移動しながら攻撃して引きつけるという方法もありだ。こちらの攻撃が当たりにくいのと同様,敵もこちらが攻撃しているときや移動中は当たりにくいため,敵に向かって真っ直ぐ移動しない限りダメージを受けることは少ないのだ。

●部下と敵には弾切れがない!

 敵を制圧するには相応の銃弾を浴びせる必要があるわけだが,忘れてはならないのが弾薬制限はプレイヤーキャラだけにあり,部下や敵は弾切れがないという,ちょっぴり不公平な仕様だ。部下と敵は膠着したまま何時間でも撃ち合いを続けられるが,自分だけは弾切れ……という切ない状況になる。基本的には弾薬を節約しつつ戦いたいが,落ちている武器を拾って補充という手もある。部下も弾数無制限というのはある意味ありがたいので,自分一人で積極的に戦わず,できるだけ部下に戦わせたい。

 今回はBIAの基礎知識を頭に叩き込んでもらったが,次回からいよいよノルマンディ降下当日からの8日間を数回に分けて追っていく予定だ。お楽しみに。

コラム
■第101空挺師団

 1942年にアメリカ陸軍空挺師団として,第82空挺師団と第101空挺師団が設立。ノルマンディ上陸作戦ではドイツ軍の後方に降下し,連合軍地上部隊が上陸するまでにドイツ軍陣地を制圧し,街や主要道路の安全を確保することを目的として投入された。第82空挺師団は1943年のシシリー島上陸作戦で実戦降下を経験しているが,第101空挺師団は2年間の厳しい訓練を行い,ノルマンディ上陸作戦が初陣となった。

 第101空挺師団はノルマンディ以降,オランダでのマーケットガーデン作戦および,バルジの戦いのうち要衝バストーニュの戦闘に参加。戦後は1965年に再結成され,ヘリコプターによる空中機動任務をこなすエア・モービル師団としてベトナム,アンケ地区の掃討作戦に参加する。ごく最近では湾岸戦争などにも参加し,現在はケンタッキー州フォート・キャンベルに駐留しており,活動は"公式サイト"(音が鳴ります)で確認できる。

 本作では制服や装備なども忠実に再現されており,隊員の左肩にはScreaming Eagleの師団インシグニア(ワッペン),そして第502パラシュート連隊を表すハートのヘルメットマーキングなども見られる。ミリタリーマニアの人は,じっくり眺めてみるといいだろう。

 

階級,銃撃/突撃班により装具/武器の違いなど細かいところも再現されている。左肩にはインシグニアがある ノルマンディ戦時にはドイツ軍の対空放火により輸送機が撃墜され,空挺師団の多くが空に散った "ボーナス"で見られる資料は第101空挺師団の情報も多い。ぜひすべての資料を見てほしいところだ

 

■武器&兵器紹介
▽連合軍:
・M1911 半自動拳銃(M1911 Semi-Automatic Pistol)

1900年代初めから米軍の制式軍用拳銃として採用され,空挺部隊の多くが携行する.45口径拳銃。装填は半自動式(セミオートマチック)で装弾数は弾倉に7発,薬室に1発である。1927年から改良型M1911A1が登場している。"コルト ガバメント"の俗称で呼ばれるのは民間バージョンで,護身用として人気が高い。ちなみにルパン三世の銭形警部が使っていたのはコルト ガバメント M1911A1。戦争映画だけでなく「ターミネーター」「タイタニック」「ハムナプトラ」「バイオハザード」など多くの映画に登場している。

 

・M1カービン半自動小銃(M1 Carbine Semi-Automatic Rifle)

アメリカのウィンチェスター社が軍用に開発した全長92.9cm,重さ2.49kgと軽量コンパクトな半自動小銃。弾倉装弾数は7.62mm弾×15発で,ゲーム内での命中精度も拳銃やサブマシンガンより当然高く,約200メートルの射撃にも対応できる。空挺部隊向けに木製ストックではなく金属製ストックに変更し,折り畳み式にしたM1A1カービンは全長64.5cm(折り畳み時)となり,少々重くなったものの機動性は一層向上したらしい。

 

 

▽ドイツ軍:
・マウザーK98小銃(Mauser K98 Rifle)

ノルマンディ防衛時のドイツ軍歩兵部隊制式火器として使用されたマウザーK98小銃は,ボルトアクション式を採用した小銃。弾倉装弾数は7.62mm弾を5発入れられるマガジンボックスを採用している。有効射程距離は390mで命中精度が高く,狙撃を目的にスコープを取り付けて使用した場合もあった。ゲーム中も命中率が高く設定されているのか,アイアンスコープを覗いて撃っても当てやすい印象で,手持ちの銃を捨ててK98を使うことが多かった。

 

■登場人物紹介
マット・ベイカー軍曹(SGT.BAKER)

主人公であるベイカー軍曹。空挺隊員に志願したが,分隊長をやる羽目になるとは予想もしていなかったらしい。口には出さないが「分隊長になどなりたくはなかった」と心の中で思っている。"部下を殺さない"を頭に置いてプレイすると分隊長の大変さが分かるはず。

 

ハッセー二等曹長(PLT.SGT.HASSAY)

グレッグ「マック」ハッセー三等曹長。根っからの軍人で第502パラシュート歩兵連隊第2大隊フォックス中隊第3小隊(ベイカー軍曹の配属小隊)の二等曹長を務める。多くの作戦指示はハッセー二等曹長から出されるのだが,中には「オマエがやれよ」と言いたくなる作戦もある。

 

■■UHAUHA(ライター)■■
4Gamer専属ゲームライター。副業として,会社員と二児の父をやっている。映画「プライベート・ライアン」とTVドラマ「バンド・オブ・ブラザーズ」は,どちらも10回は観ているほどのオーバーロード作戦好き。そのわりには「オマハビーチ」を,ずっと「オハマビーチ」だと思っていたらしい。今でもオハマだと思っている人は多そうだ。
タイトル Best Selection of GAMES ブラザーインアームズ 〜ROAD TO HILL 30〜 日本語版
開発元 Gearbox Software 発売元 フロンティアグルーヴ
発売日 2006/11/10 価格 3990円(税込)
 
動作環境 Windows 2000/XP,PentiumIII/1GHz以上(Pentium4/2.5GHz以上推奨),512MB以上(1GB以上推奨),VRAM 32MB以上(128MB以上推奨)のビデオカード,DirectX 9.0c以降

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