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さくらインターネット代表取締役 笹田亮氏インタビュー

Text by Kazuhisa/大路政志,photo by kiki 

「D&D Online」正式サービスは「夏」にスタート!

4Gamer
 純粋なゲームメーカーではない企業がゲーム業界に参入した場合,パッチの対応が遅れたり,疎かになったりするケースがままあるのですが,その辺についてはどうでしょうか?

 

笹田亮氏
 パッチに関しては,ゲーム関連の子会社もありますし,本国と日本のパッチリリースのズレは,ほとんどない形で展開できると思います。「パッチが3か月,4か月遅れるのは当たり前」という印象を持っている人も多いでしょうが,DDOに関しては,最悪でもそこまで遅れることはまずないと断言します。遅れに遅れても,1か月くらいになるのではないでしょうか。

 

4Gamer
 テキストのローカライズに関わらないようなパッチであれば,即日ということもありえますか?

 

笹田亮氏
 そうですね。公式サイトを更新するくらいで,即日対応できるケースもあると思います。Turbineが,ワールドワイド展開の一環として今回の契約を締結した経緯がありますから,パッチについてもスムースに対応してくれる手はずとなっています。

 

4Gamer
 D&Dといえば,日本ではホビージャパンが書籍関連のローカライズに注力していますが,そちらとの連携もすでに決定しているのですか?

 

笹田亮氏
 ええ。ホビージャパンともすでに連絡を取っていて,日本における用語の統一問題などで協力してもらうことになっています。

 

4Gamer
 なるほど。ローンチまでの準備は,もうほとんど整ってきていると考えてよさそうですね。

 

笹田亮氏
 そうですね。クローズドβテスト,オープンβテストに関しては,比較的早い段階で……,まぁ数か月以内には実施できるはずです。テキストの翻訳も,基本的な部分ではほぼ終了していますし。先日本国で,DDOの拡張パック「Dragon's Vault」がリリースされましたが,できれば日本の正式サービススタート時に,そちらを組み込んだ形で展開しようと考えています。

 

4Gamer
 おお,それは楽しみですね。ところで,テスト開始のタイミングについて,もうちょっと詳しく教えてもらえませんか。例えば,梅雨明けとか夏休み前とか。

 

笹田亮氏
 んー,正式サービス自体は,遅くても“夏”と呼べる範囲には行いたいと考えています。クローズドβテストは数週間程度の実施を考えていて,そのままオープンβテストに以降し,そして正式サービス開始と,そういう流れを計画しています。

 

4Gamer
 本国ではすでに正式サービス中のタイトルだし,テスト期間は短くても,早く正式版をプレイしたいという人が多いでしょうからね。ちなみに,クローズドβテストは何人くらいの規模で行う予定ですか?

 

笹田亮氏
 現在のところ,3000人規模で実施する予定です。クローズドβテスト用にワールドを一つ立ち上げるのですが,一つのワールドで1万5000人から2万人まで収容できるサーバースペックなので,ストレステストを行う意味でも,無理のない人数のテスターを募集しようと考えています。

 

4Gamer
 ワールドは,日本独自のサーバーになるんですか?

 

笹田亮氏
 そうです。ワールドワイドサーバーではなく日本サーバーということで,当社のデータセンターに設置される形になります。といっても,IP制限をするわけではないので,外国在住のプレイヤーがまったく参加できないということにはならないでしょうけどね。

 

4Gamer
 なるほど,そういう意味では,アメリカ版DDOと同じですね。βテスト時から,日本人でもプレイできましたし。
 ところで,これは翻訳に関わる部分なのですが,ゲーム中に言語の切り替えなどは可能なんですか?

 

笹田亮氏
 それに関してはTurbineとも協議したのですが,複数の言語を切り替え可能にするよりは,しっかりとした現地仕様で展開してほしいとの意向がありまして。とはいえ,アイテム名などを直訳してしまうと,世界観の雰囲気を壊してしまうことになるので,ホビージャパンと連携しつつ,基本的にはカタカナ表記で対応していきます。「同じゲームをプレイしているのにアイテム/魔法名が違う」といった問題も抑止できますし,ベターな方針だと考えています。

まずは「D&D Online」で,さくらインターネットクオリティを実感してほしい

4Gamer
 なるほど,DDOに注目している人は,あとはもう待つだけ,といった状況みたいですね。一ファンとして非常に安心しました。ところで,DDOを日本展開していく上での,心構えやアピールなどを聞かせてください。

 

笹田亮氏
 D&Dというと,限られた世代にのみ認知度があるタイトルに思えますが,現在リリースされているMMORPGとDDOを比べてみると,ゲーム性に関してはかなり新鮮味があります。逆にいうと,まったく新しいタイトルとして,多くのゲーマーにプレイしてもらいたいですね。

 

4Gamer
 TRPG版も含め,D&D関連の作品群を知っている人は多いでしょうけれど,実際にTRPG版をプレイしたことがある人は,20代後半から40代くらいの層が中心ですもんね。でも,ある意味「すべてのRPGの基礎」であるD&DがMMORPGになったということで,年齢を問わず,注目しているゲーマーは多いと思います。

 

笹田亮氏
 ええ。DDOは,シナリオを理解し,クエストをクリアしていくことで経験値を稼ぐタイプのMMORPGなので,ゲーム内メッセージを読むことが非常に重要です。そういう意味でも,今回の日本語化は,日本のRPGファンにとって大きな意味があり,アピールも強いと確信しています。

 

 

4Gamer
 とはいえ,TRPGがベースとなっているタイトルだけに,ゲームに不慣れな人にとっては若干ハードルが高い仕様もあると思うのですが。幅広い層に遊んでもらうための工夫などはありますか? そもそも多分,本気でマジメに作ろうとすると,キャラメイクで挫折しちゃうと思うんですよ,あの作品。

 

笹田亮氏
 たしかに,D&Dの奥深いキャラクターメイキングをいかに楽しんでもらえるかが,最初の難関になりそうですね。でも基本的には,デフォルトの設定でキャラクターを作ってもらえれば,すぐにゲームが楽しめます。不慣れな人は,とりあえず好きなキャラクターでスタートしてみて,ゲームについての知識が深まってきたなと思ったら,新たなキャラクターを一から作ってみるといいかもしれません。一つのアカウントで,最大5体までのキャラクターが作成可能ですから。

 

4Gamer
 5キャラクターまで作成可能ならば,あれこれと試行錯誤しつつ,自分に最適なキャラクターが探せそうですね。現状ではレベル10までしか成長させられないから,友達とのレベル差もつきにくいだろうし。

 

笹田亮氏
 そうですね。3か月間,毎日10時間以上プレイしないと高レベルキャラクターが育てられない,といったことは絶対にないので,マイペースで楽しめるはずです。

 

4Gamer
 では,最後に4Gamer読者に向けて,なにかコメントをお願いします。

 

笹田亮氏
 DDOに関しては,当社のほうにも,多くの応援/期待の声が届いていますし,4Gamerさんでの注目度もかなり高いと聞いています。「さくらインターネットだからこそ」というサービスクオリティを,多くの人に実感してもらえるよう,当社としても頑張っていきたいと考えています。今後の展開共々,ぜひ期待していてください。

 単なる海外産MMORPGのローカライズに留まらず,「ゲーム大国」日本のオンラインゲーム市場の活性化をも視野に入れていたという,笹田氏。日本のオンラインゲーム開発/運営環境には,確かに,地力のある大企業にしか乗り越えられない「経済的な壁」が存在している。笹田氏のいうようにデータセンターが協力することでその壁が打ち壊せるなら,日本のゲーム業界にはいい意味での混沌が生まれ,より多様なタイトルが開発される土壌ができるだろう。
 果たしてさくらインターネットは,日本のオンラインゲーム市場を,「オンラインゲーム大国」韓国や,成長著しい中国の域まで引き上げる牽引力を発揮できるのだろうか。2006年夏にスタートするDDO正式サービスと,今後の事業展開に注目していきたい。

 

 

 

タイトル ダンジョンズ&ドラゴンズオンライン:ストームリーチ
開発元 Turbine 発売元 さくらインターネット
発売日 2006/08/10 価格 ダウンロード版 1500円(税込) 利用料金:1500円/1か月(税込)
 
動作環境 OS:Windows XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/1.60GHz以上[Pentium 4/3GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上,グラフィックスメモリ:32MB以上,HDD空き容量:3GB以上

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