4Gamer:
ゲームサービスの一環ともいえる部分だと思うんですが,エヌ・シー・ジャパンは不正ユーザーに対しても,しっかりとした対処を行っていますよね。不正に対する断固たる対処に関しては,日本でもトップクラスだと思います。そのあたりのお考えや将来的なビジョンなどを聞かせてください。Kim Taek Hun氏:
弊社がゲームを開発するときに考えることは,まずお客様に,いろんな面で楽しんでもらうことです。そういう意味において,健全なプレイヤーの「楽しむ権利」を害する不正ユーザーに対しては,厳しく対処していきますよ。今現在も,さまざまな不正の影響で困っているプレイヤーがいますし,その姿勢は崩さず,より強くしていきます。4Gamer:
ゲームを楽しくプレイできる環境を乱す不正ユーザーは,決して許さないということですね。Kim Taek Hun氏:
はい。これは公表していないことですが,毎日各サービスのGMが,不正ユーザーの取り締まりをしています。日々多くの不正IPをブロックしているし,人的リソースもそれに応じて増やしている状況です。4Gamer:
数千から数万のIPブロックですか……。それだけでも結構なコストが発生しますね。Kim Taek Hun氏:
不正に対するリソースの面だけをとってみても,エヌ・シー・ジャパンは,他社のサービスの数倍以上の金銭と人材を投入しています。4Gamer:
それはすごいですね。しかしリネージュ――IIではなくIのほうです――を除いて,プレイヤーに対してそういった努力をあまり見せていないようにも感じるのですが。Kim Taek Hun氏:
そうですね。個人的には,それをするのは当たり前だと思っています。必要以上にアピールしてしまっては,ただの自慢話になってしまいますからね。とはいえ,不正ユーザーのほうも日々進化しているので,常に対応していくのは,難しいところではあるんですが……。4Gamer:
お世辞ではなく,素晴らしいですね。「今月は何人BANしましたよ」とアナウンスするメーカーはいくつもありますが,IPブロックや摘発などすべてにおいて不正取り締まりをやっているところは,そう多くないと思いますよ。Kim Taek Hun氏:
そうかもしれませんね。会社からの公表というのは,すべてのことが解決できたときにするものですから,あまり多くは出せないのですが(笑)。4Gamer:
先日四国で発生した,不正中継サーバーの一件ですが,容疑者逮捕という結果が出ましたよね。法的手段にまで訴えるというのは,普通はあまりやりたがらないじゃないですか,いろいろと面倒だし。そう考えると,エヌ・シー・ジャパンはすごいなと,素直に関心してしまいました。これからも頑張ってください。Kim Taek Hun氏:
ありがとうございます。単なる「見せしめ」で終わらせないよう,引き続き頑張っていきます。4Gamer:
不正ユーザーとも関連するところだと思うんですが,現在のオンラインゲームを取り巻く環境を見てみると,オンラインゲームの「負のイメージ」が表層化してきていますよね。ハッキングだの,倒れるまで遊んじゃう人がいるだの,ゲーム内でのトラブルを現実に持ち込むだの……。そういった状況に対しては,どのように考えていますか? また,こんなプラスの影響もあるよ,ということがあれば,教えてください。
Kim Taek Hun氏:
そういったマイナスイメージは,ゲーム業界全体で,さまざまなリソースを投資して解決すべき問題ですね。しかしオンラインゲームには,もちろんプラスの面も多い。みんなで力を合わせ,さまざまな遊びかたができる点は,とくに素晴らしいことだと思います。友情が生まれることもあるし,ときには,一人の命を救うことだってできる。
これは韓国のリネージュ内で実際にあった話なんですが,あるプレイヤーのために,血液の提供を求める広域シャウトがあったんです。リネージュでは,すべてのユーザーに聞こえる(見える)チャット機能があるので,その知らせは瞬く間に,全国のプレイヤーに伝わりました。そして,血液型が一致する多くのプレイヤーが病院へ駆けつけ,血液を提供しました。
4Gamer:
それはまた,素晴らしいエピソードですね。Kim Taek Hun氏:
リネージュを始めとするオンラインゲームは,たかが「ゲーム」かもしれません。しかし,されどゲームなんです。ゲーム内で生まれた絆や仲間意識は,現実世界のそれとなんら変わりありません。多くの人が参加しているので,ときにはトラブルも起きるでしょうが,前述したような美談だって生まれるんです。ちなみにリネージュでは,そういった広域シャウトがあった場合,GMによる事実確認後,チャットにフィルタリング処理を行って,ログがむやみに流れていかないようにして,情報の伝達をサポートします。韓国では,そういうケースが数件あり,実際に人の命が救われているんです。
4Gamer:
日本でもそういうことがあるといいですね。Kim Taek Hun氏:
そうですね。でも今は,そういうプラスの面もあるということを,知ってもらえるだけでも前進だと思います。そして不正ユーザーは,そういうオンラインゲーム文化のいい面の発展を,阻害している存在ともいえる。やはり,許せません。今まで,弊社にハッキングしようとした不正ユーザーも何人かいるのですが,その相手は,日本のユーザーではありませんでした。日本での悪質な不正は比較的少ないほうなので,弊社としてはその点が嬉しくもあり,誇らしくもあります。
まぁ,エヌ・シー・ジャパンでは,公式サイトのポップアップを一つ作る場合でも,厳しいセキュリティチェックをかけているので,そう簡単にはハッキングできないと思いますが。
4Gamer:
不正ユーザーとの戦いにおいて,NCグループには長い歴史がありますからね。リネージュでは,とくに色んな目にあっているでしょうし。Kim Taek Hun氏:
オンラインゲーム業界で,1番ハッキングに苦しめられたのは,弊社かもしれませんね(笑)。逆に,そういう苦難の歴史があるからこそ,セキュリティに関しては大きな自信がありますよ。