特集:PCゲーム新作ガイド 2007

PCゲーム新作ガイド 2007

Text by 奥谷海人 

 

アクション/タクティカルFPS

 基本的にはFPSだが,より戦略的なゲームプレイを求めた作品を別のジャンルに分けてみた。いずれも優秀な開発チームの作品ばかりで,新作/続編にかかわらず,こちらも期待できそうなゲーム満載だ。Unreal Engine 3.0をライセンスしている作品も多い。全体的な進化傾向は,クラスベースのチーム戦とConquestモードという人気の遊び方を推し進めたゲームシステムにあるようだ。

 

開発元: EA DICE
発売元:Electronic Arts
発売予定日:3月

 

 仕事の速さで知られる「Battlefield」開発チームが,最新ブースターパック「Battlefield 2142: Northern Strike」を発表した。3種類の新マップと2種類の新兵器が追加されており,戦線は極寒のヨーロッパへ。欧州への足がかりを築こうとするアジア連合(PAC軍)に対し,ヨーロッパ連合(EU軍)が反撃を仕掛けたのだ。
 登場するのは,ドイツのレマゲン橋,ババリア,ライプチヒといった,第二次世界大戦の激戦地をモチーフにしたマップ。新兵器としては,強力な武器を搭載したGoliath APC(EU軍)と,ホバー型の軽戦闘車両Hachimoto(PAC軍)が追加されたほか,バッジやリボン,アンロックされることで使用可能になる武器などが増えている。
 全体的には,「Battlefield 2142」よりも接近戦に重点を置くらしく,Titanモード対応の市街地マップが追加される。さらに,Conquestモードでは“Assault Lines”という新しいルールが楽しめる見込みだ。

 

 

開発元:Gearbox Software
発売元:Ubisoft Entertainment
発売予定日:3月

 

 戦史を忠実に再現した戦闘の様子だけなく,実在した兵士の名前まで使用して,第二次世界大戦のリアリティを突き詰めることに情熱をかけたシリーズの最新作,「Brothers in Arms: Hell's Highway」も,昨年からリリースがずれ込んだ作品の一つ。プレイヤーは第101空挺師団第502歩兵連隊に所属するマット・ベイカー軍曹として,“マーケット・ガーデン作戦”と呼ばれた史上最大の空挺作戦を遂行。オランダからドイツ北西部の重工業地帯まで走る「地獄のハイウェイ」を舞台に激戦を繰り広げることになる。
 Unreal Engine 3.0で描かれた戦場の風景や,テクスチャの細かさもさることながら,戦略的に兵士を配置しながら進んでいくゲームプレイと,ときおり挿入されるムービーシーンとの差が分かりにくいほどシームレスに物語が進んでいく臨場感も素晴らしい。隊員が垣根を乗り越えるのに失敗して転んだり,傷ついた兵士が仲間の肩を借りて脱出したりといった,キャラクターの細かい動作も見物である。今回は恐怖にかられて逃げ惑う一般市民なども描かれており,彼らもまたゲームに絡んでくることになりそうだ。

 

 

開発元:Splash Damage/id Software
発売元:Activision
発売予定日:年内

 

 id Softwareファン待望の「Enemy Territory: Quake Wars」は,ストログ(Strogg)軍が地球への侵略を開始した「Quake II」直前の世界を描く。基本的にはフリーソフトとして人気の高い「Wolfenstein: Enemy Territory」によく似たゲームプレイとなる。地球防衛軍(EDF),そしてストログ軍にはそれぞれ五つのクラスが用意され,マップ上の拠点を攻めたり守ったりするわけだ。40種類にも及ぶ搭乗型兵器を操り,最大参加人数は24人から32人とされている。
 使用されているのは,DOOM 3エンジンをモディファイしたものだが,今回は“Mega Texture”という新技術が導入される。これは,地形のテクスチャをタイルパターンにするのではなく,1枚の巨大なテクスチャで覆ってしまうもので,ハードウェアに負荷を与えることなく,これまでのDOOM/Quakeエンジンに不足していた「遠方までの距離感覚」が実現されることになる。永らく「Counter-Strike」や「Unreal Tournament」などに対戦ゲームとしてのお株を奪われていた感のあるQuakeシリーズだが,このあたりで本領発揮となるだろうか?

 

 

開発元:Kaos Studios
発売元:THQ
発売予定日:第3四半期

 

 アメリカや西ヨーロッパ諸国からなる「西部連合軍」と,ロシアと中国が手を結んだ「レッドスター軍」が戦うスクワッドベースのFPSが「Frontlines: Fuel of War」である。開発を手がけるKaos Studiosは,「Battlefield 1942」のMOD,「Desert Combat」で知られる元Trauma Studiosのメンバーによって結成され,現在はTHQ直属の開発チームとなっている(Trauma Studios自体は,2004年にDigital Illusionsによって買収され,「Battlefield 2」の開発に携わった)。
 ゲームエンジンはこれまたUnreal Engine 3.0。地下資源の奪い合いから発展した近未来の戦争を描いており,廃墟となった巨大な工業施設などが戦場になる。リモコン制御の偵察ロボットや相手の武器を無力化する静電気手榴弾など,60種に及ぶ武器や車種はすべて現在,実際に研究中だったり構想されているもので,プレイヤー同士のコミュニケーションも洗練されたものになりそうだ。シングルミッションはオープンエンドな作りになっており,シングル/マルチとも“Frontline combat system”というゲームシステムが採用される。これは,敵の拠点を奪うことで前線が形成され,それを押し上げていく形で戦闘が進んでいくシステムとのことだ。

 

 

開発元:Free Radical
発売元:Ubisoft Entertainment
発売予定日:年内

 

 「Haze」は,昨年のE3において簡単なプレビュー映像が公開されて以来,詳細がほとんど公開されていないFPSだ。2025年の近未来を舞台としており,人体に無害の麻薬で世界を牛耳る,Mantelという製薬会社の私的軍隊に属する傭兵,ジェイク・カーペンターが主人公(=プレイヤーキャラクター)だ。彼が,南アメリカの反乱軍を鎮圧するために出動した小隊の一員として戦ううち,戦闘を通して企業倫理のおかしさに気づいていくという内容になっている。
 全体として,「Halo 3」のプレイ感覚に「Far Cry」や映画「スターシップ・トゥルーパーズ」の世界観を盛り込んだようなイメージに近いだろうか。Free Radical独自開発のゲームエンジンを使用しており,露光オーバー気味の表現によって反射光が強調された,タイトルどおり,どこか霞がかかったような幻想的な雰囲気も魅力的だ。
 同社は,「007: Double Agent」や「TimeSplitter」など,コンシューマ機タイトルで名を馳せたイギリスの精鋭開発チーム。きっと,ありがちなFPSでは終わらない「何か」を見せてくれるはずだ。

 

 

開発元:Valve
発売元:Electronic Arts
発売予定日:年内

 

 今はValveに所属する開発者達が,「Half-Life」用MODとして世に送り出した「Team Fortress」が生まれ変わった。長い開発休止の期間を経て,これまでの予想とはまったく異なる,トゥーンシェーダを利用したコミカルな雰囲気のゲームになったのである。「Half-Life 2: Episode Two」のマルチプレイ用コンポーネントとして,Episode Twoと同時期にリリースされる見込みだ。
 「Half-Life 2のマルチプレイ用コンポーネント」という言葉に疑問を持つかもしれないが,SourceエンジンのSDKに含まれていた資料などによれば,本作はHalf-Life 2と同じ世界を共有しているらしい。実際,公開されたムービーに映し出された「ニワトリの歩き回る農家」は,Half-Life 2: Episode Twoに出てくる場所に,非常に似ている。現在公開されているクラスは「Team Fortress Classic」と同じ9種類だが,リリース後に新しいクラスを追加していくとも発表されている。

 

 

開発元:GRIN
発売元:Ubisoft Entertainment
発売予定日:第2四半期

 

 Ubisoft Entertainmentの,看板タイトルの一つともいえるトム・クランシーシリーズだが,今のところPCプラットフォームで,2007年中のリリースが確実視されている唯一のタイトルが,「Tom Clancy's Ghost Recon: Advanced Warfighter 2」である。前作の発売から一年も経過していないが,ゲームの設定は前作からちょうど一年後の2015年。“ゴースト”として知られる秘密特殊部隊は,メキシコとアメリカ(テキサス)国境で起こった新たな紛争に介入することになる。不法移民流入防止のために建設された3000kmに及ぶ壁を,反乱軍が破壊しようとしているのだ。
 近未来的な兵器や兵士の情報システムがいかした前作だったが,今回は現実路線へ修正され,登場する武器は現行の米軍で扱われているものばかりになるという。マップは広大になり,距離を置いた戦闘が増えそうだ。グラフィックスエンジンがUnreal Engine 3.0にアップグレードされたこともあり,テクスチャの透明度や爆発の描写,起伏のある地形や物理効果などに大きな改善が見られる。また,今回から,シングル/マルチ共に新兵科としてメディックが加わるところも目新しい。

 

 

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