4Gamer:
スキルの取り直しや,スキルポイントの振り直しはできますか?
渡辺氏:
現時点では想定していませんが,要望があれば可能にしていきたいとは思っています。
ただ,どのスキルも使いどころを見つけると俄然強くなるという側面を持っています。ぜひ,手に入れたスキルをいろいろと研究してほしいと思います。
市川氏:
スキルはかなり練り込まれていますよ。"使えないスキル"かな? と思っても,あ,こういう使い方すれば"使える"じゃん! という発見が,きっとあると思います。
他プレイヤーとの連携や,そのほかの特殊な状況下での使用までを想定して,スキルを配置しているんです。
4Gamer:
おおっ,それは興味深いですね。何か一例挙げてもらえますか?
渡辺氏:
例えば……,そうですね,ソーサラーにはファイヤーボール系のスキルがあります。これって威力はとても高いのですが,弾速が遅いのでかなり当てづらいんですね。1対1で相手がこちらを見ている状態だと,間違いなく避けられまくるんです。が,ちょっと戦士系のキャラクターに敵に絡んでもらって,膠着(こうちゃく)したところに放り込むと,気持ちよく当たるんですよ。
4Gamer:
先ほどは偶然でしたが,そういう連携がうまく決まると,本当に気持ち良かったです。ところで,ソーサラーに関して気になったことがありました。クレリッククラスがなくなって,回復魔法はソーサラーのスキルの一つになるのかと勝手に思っていたんですが,そうではないですよね。いわゆる回復担当はFEにはいないということでいいんでしょうか?
渡辺氏:
実際にやってみたら,回復がやたらと強力だったんです。ヒーラーがいるチームはほとんど無敵で,それが戦争を膠着させる原因になってしまっていました。他方,戦争に誰が集まってくるか分からないという状態で,たまたまヒーラーがいないとその部隊はひどいことになるんです。なので,もう回復役という役目はなくして,みんなで攻撃をしましょうということにしました。
市川氏:
回復役は,やってみると本当に影響力が大きいんです。回復量を減らすとかも考えましたが,そうすると今度は存在意義が薄くなってしまいます。
これは,自分達でゲームを作ってみて分かったんですが,FPSには強力な回復役が存在しないものが多いじゃないですか。防弾チョッキとか回復アイテムはありますが,そういうものがあってもやられるときは一撃でやられる。あれって,きっと考えたうえでそうなっているんですね。強力な回復能力があると,こういうタイプのゲームではその力が重要になりすぎてしまうようなんです。
ということで,結局まるごと削ることになりました。回復担当キャラクターって,ファンタジー世界を舞台にしたゲームでは普通にあるものですよね。それをなくすというのは,大きな決断でした。ただ半面,そうやって整理していった結果として,今残っているスキルやクラス,キャラクターの役割は,相当選ばれたものになっています。
サービス開始後も,新しいスキルの追加などは行う予定ですが,それらは現在あるスキルの役割をさらに特化させていくものになるでしょう。
4Gamer:
ではファンタジーアースを楽しみにしているプレイヤーに向けて,何か一言お願いします。
市川氏:
まず,このゲームをMMORPGだと思って始めると,きっとかなりとまどうと思います。
渡辺氏:
そうですね。MMORPGって,Webサイトでいえばポータルのようなところがありますよね,どんなものも全部そこに入っていると。だから複雑で面白いんですが,その分,ハードルも高くなっている。
でもゲームって,もうちょっとシンプルに楽しめてもいいじゃないですか。FEでは,オンラインゲームにはこういうものもありますよと,新しい形を提示できたらいいなぁと思います。
市川氏:
みんながみんな,毎日何時間もゲームをプレイできるわけではないですよね。でもカジュアルなゲーマーにも,人とつながっているというオンラインゲームの楽しさは,味わってもらいたい。FEの1〜2時間でそこをうまく感じてもらうことができたら嬉しいです。
4Gamer:
MMORPGを知らない人に対して,「FEってこんなゲームですよ」と説明するとしたら,どんな表現になりますか? MMORPGを知っている人に説明するのなら,その差異を伝えることで分かってもらえると思うんですが。
渡辺氏:
えー,「100人対戦アクション」みたいな感じです(笑)。ゲームが終わった後にやっぱりいろいろ言い合いたいですよね。オフラインの対戦アクションだったら,きっとリアルのコミュニティがあって,そこでゲーム後に「あそこはああだった」「いや,こうだった」といろいろな話をすると思うんです。
4Gamer:
親しい友人なんかとやった日には,半分ケンカみたいになりますね(笑)。それがまた楽しいんですよね。
渡辺氏:
FEはオンラインゲームで,ちゃんとコミュニケーションをとる機能も用意しています。あの一試合終わったあとにワイワイガヤガヤ言い合う部分まで楽しめるはずですよ。
4Gamer:
ちなみに,FEで戦争が終了すると,どうなるんですか?
渡辺氏:
しばらくはそのフィールドで戦争が起こせなくなって,敵味方入り交じっての言い合いタイムになります。首都やほかのフィールドに飛ばされたりはしません。しばらくガヤガヤとしゃべって,そのうちポツリポツリと出ていって,じゃあ次の戦いへ……みたいな雰囲気ですね。
4Gamer:
なるほど,将棋で言うところの感想戦のようなものを,みんなでわいわいやれるということですね。楽しくて濃密な時間を体験できるゲームになることを期待しています。本日はありがとうございました!
一般的に,FPSやRTSのプレイでは,なかなかMMORPGほど密なコミュニケーションは生まれにくいようである。そしてMMORPGという枠組みは,強力なコミュニティ生成作用を持っている。
FEのゲーム内には各国の首都=町が存在するし,そこには広場があって,ベンダーがいる。そこではプレイヤー同士のコミュニケーションも生まれてくる。
この作品は,カジュアルプレイヤーにとっては仲間を作りにくいという対戦型アクションゲームの弱点を,仲間を作りやすいMMOスタイルの枠組みを使って解消しようという試みだと捉えることができるかもしれない。
開発に想像以上に時間がかかってしまっていた理由は,バランスの調整に多くの時間を割いているからであったようだ。回復担当を削るといった,冒険的ともいえる変更を加えていることからは,ここに至るまでに,かなりの試行錯誤が繰り返されていたのであろうことが想像できる。
そのような地道な過程を経て作られたファンタジーアースは,サービス開始時の段階から,かなり快適に遊べるゲームになっているのではないだろうか。そうなればおそらく残る問題は……爺さん王国の過疎化回避対策のみとなるに違いない。