― 特集 ―
ゲーム開発者達のアカデミー「D.I.C.E.サミット 2006」開催

 アメリカ現地時間の2月8日から10日まで,快楽の都ラスベガスにおいて「D.I.C.E. Summit 2006」が開催された。会場となったのは,ラスベガスを少し南下したヘンダーソンという郊外住宅地外にある,Green Valley Ranchというリゾートホテル。ここに,「AIAS」(Academy of Interactive Arts and Science)の会員である世界のゲーム開発者達が集結したのである。
 D.I.C.E.とは,「Design」(デザインする),「Innovate」(開発する),「Communicate」(対話する),そして「Entertain」(楽しませる)の頭文字を並べたもの(Digital Illusions CEとは無関係)。サイコロのイメージがよく似合うラスベガスで開催されており,今年で早9回めとなる。主催するAIASは,ハリウッド映画界でいう映画芸術科学アカデミー(AMPAS)と同じ趣旨で組織されているもので,GDC(Game Developers Conference)を共催するIGDA(Independent Game Developer Association)とは異なり,開発者達の推薦によって会員となれる。

 D.I.C.E.サミットは,ゲーム界のアカデミー賞ともいえるInteractive Achievement Awardに付随されて行われており,業界のトレンドや向かうべき方向についてを,最前線で活躍するリーダー達から聞き出そうという趣旨で行われている。一度に複数のセミナーが行われるGDCとは異なり,1時間に1セミナーの全員参加型となっており,規模も400人程度と非常に小さい。
 しかし,集まっているメンバーたるやそうそうたるもので,今回AIASで9人めの殿堂入りを果たしたUltimaシリーズのRichard Garriott(リチャード・ギャリオット/NCsoft Austin)氏をはじめ,セミナーも行う予定のWill Wright(ウィル・ライト/Electronic Arts)氏やPeter Molyneux(ピーター・モリニュー/Lionhead Studios)氏,そしてPeter Moore(ピーター・ムーア/Microsoft)氏など,リーダー中のリーダーが揃う。このほかにも,Sid Meier(シド・マイヤー/Faraxis Games)氏,Warren Spector(ウォーレン・スペクター/Junction Point Studios)氏,Bruce Shelly(ブルース・シェリー)氏,Ray Muzyka(レイ・ミュージカ)氏などが出席しており,日本からも「ワンダと巨像」が高く評価されているソニー・コンピュータ・エンタテインメントの上田文人氏と海道賢仁氏,そしてAIASの役員であるソニー・コンピュータ・エンタテインメント・オブ・アメリカの吉田修平氏らが参加している。

 D.I.C.E.サミットは開発者向けの話が多く,新しいゲームの内容などが語られることはないが,トップレベルの開発者が一堂に会するだけあり,セミナーの内容も一際質が高い。ゲーマーの我々にも興味深い内容が多いはずなので,これよりPC系の開発者の話題を中心にまとめていく。(奥谷海人)

 

 D.I.C.E.サミットやGDC(Game Developers Conference)を取材すれば,アメリカでの業界トレンドがよく分かる。4Gamerではコンシューマ機用タイトルの話題が出ることはあまりないが,この記事では,今回のイベントで大きな評価を得ていたソニー・コンピュータエンタテインメントの「ゴッド・オブ・ウォー」「ワンダと巨像」の2作について,お伝えしよう。

 D.I.C.E.サミットは,基本的には業界のトレンドや方向性を語り合う場所ではあるが,ホッと一息つけるようなセッションもあった。「The Battle of Bunker Hill」は,業界の著名開発者たち8人が寄り集まって,昔懐かしのテーブルテニス「Pong」の技を競いながらも行われた,「クイズ100人に聞きました」のようなノリの即席イベントで,会場を巻き込んでの楽しい時間が過ぎていった。

 Microsoftにおける,PCやXbox 360などゲーム関連の“顔役”としてお馴染みのピーター・ムーア氏が,今回のサミットでデベロッパ達にPCゲーム開発への回帰を呼びかけた。ゲームファイルの管理を簡潔にしたGames Explorerの存在やインストールの容易さ,家族向けの調節機能など,よりゲームプラットフォームとして進化した次世代OS「Windows Vista」の魅力とは?

 Ultimaシリーズの生みの親であるリチャード・ギャリオット氏といえば,古参のPCゲーマーには依然として雲の上の存在だ。現在,韓国の雄NCsoftがアメリカの拠点にするテキサス州オースティンの支部で,年内リリース予定の「Tabula Rasa」を開発中だが,彼の長い経歴の陰には,いつも兄ロバートの姿があった。今回の講演では,この二人三脚の秘話が公開され,多くの聴衆の興味をそそっていたようだ。

 ゲーム界のアカデミー賞とも言える「インタラクティブ・アチーブメント賞」(Interactive Achievement Award)の結果が発表された。アメリカの開発者中心のパネリストが選出したため,おのずと海外ゲームの比率が高くなったが,そこはやはり地域色の違いであろう。PCゲームでもいくつの受賞作品があり,さらには日本でも有名なあの人物が壇上にあがった。

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http://www.4gamer.net/specials/dice2006/dice2006.shtml