― 特集 ―
「ファンタジーアース ザ リング オブ ドミニオン」正式サービス開始記念開発者インタビュー

Text by 星原昭典 / Photo by kiki 

正式サービスの前後に計画されている改良と要素追加

4Gamer:

 国が勝っていると,良いものが買えるようになるというフィーチャーが当初は発表されていましたが,これは廃止されてしまったのでしょうか。となると今後,自分の国を勝たせるメリットがどこにあるのか,とても気になります。そのあたりを教えてください。

田中氏:

 このゲームにおけるご褒美というのは,バランスが難しいんですよね。勝った国には高性能アイテムを,とやってしまうと,強い国がより強くなってしまう。なのでここは,もう少し時間をかけてバランス調整をしていきたい部分です。この要素のせいで,根本となっている戦争のバランスが見えなくなってしまうとマズイので,いったんはこれは閉じて,あとから改良しようという方針でいきます。

渡辺氏:

 例えば勝ち続けた国で,強いアイテムがずっと売られているという状況は,国同士のバランス的には結構クリティカルな問題です。何か,アイテムの渡し方などに工夫が必要ですね。

4Gamer:

 廃止,というわけではないんですね。ただ,一時的にせよそれがなくなってしまっているので,今は何のために戦争に参加するのかが捉えにくい状態になっている思います。諸々を含めて,今後プレイヤーの戦争に対するモチベーションをどうやって上げていくのでしょうか。

藤本氏:

 “アイテムと交換可能なリングがもらえる”という要素は今でもあります。さらに必要なのは「領土を広げることの意義」ですよね。そこに一方的なメリットを設定してしまうと,β初期にあったような,弱い国が負け続ける“負のスパイラル”がまた生まれてしまいます。そういうことも計算に入れつつ,今後調節していきます。

4Gamer:

 なるほど。この「プレイヤーに戦争に行こうと思わせる何か」は,ユーザーに「FEって面白そうだからプレイしたいと思わせる何か」と同じものだと思うんです。それをどう設定するかにはとても興味がありますし,期待しています。
 さて,第3次βテストを終えて,いよいよ正式サービス開始となるわけですが,そこに向けてどのような作業をしているのでしょうか?

田中氏:

 正式サービスに向けての,いろいろな修正をひとまず終えたところです。その後,次のアップデートのための作業を開始します。

渡辺氏:

 βフォーラムでのフィードバックとか,あとはこちらで認識した問題とか,そういったものをダーっと,順次やっつけています。

4Gamer:

 正式サービスは,第3次βテストをベースにバグフィックスが施されたような形になるのでしょうか? 第2次βテストから第3次βテストへの移行で見られたような,大幅な変更というのはありますか?

藤本氏:

 第2次から第3次のときのような,大改造はありません。

4Gamer:

 じゃあ,基本的には第3次βテストが,最も正式サービスに近いものであったという点に,ぶれはないわけですね。
 先ほど,次のアップデートというお話が出ましたが,その内容は……?

田中氏:

 うーん……。ここで言ってしまうと確定ですよね……(笑)。

4Gamer:

 あはは,そうなってしまうかもしれませんね。ではちょっと聞き方を変えますね。次のパッチということでなく,近々導入していきたい要素を教えてください。

藤本氏:

 情報としては既に出ていますが,召喚モンスターの追加があります。当初,普通にナイトとかジャイアントと同じような形で出す予定でいたんですが,もっと特殊性を出したいというところがあって……。当初はβ期間中から出していこうというアイデアもあったんですが,仕様をもっと戦争に絡めたものに改良するために,運営後の実装ということにしました。

渡辺氏:

 実は,結構大幅な変更があります。

4Gamer:

 計画中の,次の召喚モンスターというのは,かなり変わった特徴を持ったものになるわけですか?

藤本氏:

 それ自体の特徴というよりも,「出し方」ですね。今の出し方/システムだと,どうしても大差が付くともうそれをひっくり返せない状況になってしまっているので,そこを打破するための逆転要素となり得るような,そういった意味合いでの特殊性です。

4Gamer:

 例えば,自軍が負けそうになると召喚可能になる,みたいな?

藤本氏:

 例えばですが,だいたいそういう感じです。

4Gamer:

 第3次βテストでは,召喚モンスターがテスターからあまり好かれていなかったような印象もあります。人間のままで戦っていた方が,何かと手っ取り早いような気がしてしまって。

渡辺氏:

 使い方が皆に伝わると,急に強くなったりするときってあるんですよね。召喚モンスターは,長所もあれば短所もあるので,単体ではなかなか活用が難しいかもしれません。誰かが助けてくれればものすごく強いのに! という状態が,周りの誰かに伝わって,うまくかみ合ったとき,急に強くなったりするんです。これはわれわれのコントロールしにくいところで難しいです。そのような情報がうまくユーザーに伝わっていないのであれば,インフォメーションをより強化することも考えます。

田中氏:

 召喚モンスター以外の拡充要素としては,コミュニティをサポートするために,“部隊”という要素を追加したいと考えています。

渡辺氏:

 これは「ファイナルファンタジーXI」でいうリンクシェルみたいなもので,フィールド間で会話ができて,ログアウトしても残ってる大きなグループですね。そして部隊として活躍すると,部隊に対して何かしらご褒美が出る,みたいなのを考えています。まだまだ検討中の部分ではありますが,部隊でしか使えないスキルがあったり,召喚モンスターがあったり,建築物があったり,いろいろと話は出ています。

4Gamer:

 MMORPGのギルドみたいなものですね。そのほかに,部隊を作ると使えるようになる機能にはどのようなものがありますか?

渡辺氏:

 例えばメンバー表のようなインタフェースとかですね。そこにはコメント表示や,その人の部隊への貢献度みたいなものも表示したいですね。ただこれらは製品稼働時点で実装されているものではなく,それ以降の追加になります。

4Gamer:

 キャラクターのレベルキャップは,第3次βテストでは25でしたね。前のインタビューでは20くらいを上限で考えていると聞いていましたが,とりあえず正式サービス開始時点ではではどうなりますか?

田中氏:

 正式サービスでは,40まで上がります。

4Gamer:

 一日2時間程度プレイしたとして,だいたい40が見えてくるまでにどれくらいの期間がかかると想定していますか?

渡辺氏:

 だいたい2か月から3か月の間,という感じでしょうか。

4Gamer:

 レベルアップに必要な経験値の入り方ですが,PvEよりもPvPでの方がたくさん経験値が入るという基本ラインは,このままでしょうか?

田中氏:

 基本はそうですね。とくに,レベルがある程度高くなってきてからは,ますますそうなります。プレイ開始直後は,Mobで操作に慣れたいと思う方がいると思いますので,10レベル程度まではMobでも稼げます。ですがそれ以上になると,Mobはお金目的で狩るようになっていきます。ちなみに,一桁台のレベルでも,戦争で得られる経験値と狩りで得られる経験値は,同程度になっています。

4Gamer:

 回復アイテムをたくさん持っていたいという人は多いと思うのですが,これを買い揃えるためには,Mob狩りもしよう! という感じでしょうか。

田中氏:

 はい。同じレベル帯のMobを1時間くらい狩れば,それなりにお金が入ってくるようなイメージです。

4Gamer:

 なるほど。だいぶ正式サービスのイメージを掴めてきました。そういえば,正式サービスの課金方式が1280円/月(税込1344円)に決定しましたが,この方式と金額はどう決まったんですか?

渡辺氏:

 社内のほかのタイトルと揃えているというところはあります。これに関しては,それに見合うサービスを頑張りますとしか(笑)。

4Gamer:

 キャラクターは,基本料金では1アカウント1体で,料金追加で2体まで作成できるということですが,こうなった理由をお聞きしていいですか?

藤本氏:

 3体以上のキャラクターを3国以上に作れてしまうと,国同士で戦っている感覚が薄くなってきてしまうのではないかという危惧があるんです。でも,1アカウント1体だとさすがに少なすぎる。その間をとって2体に落ち着きました。

4Gamer:

 国に関しては制限はないんですね。1アカウント1国のみ,みたいなものは。

藤本氏:

 それはないです。いろいろな国の首都を見たかったりもすると思いますし。

4Gamer:

 ちなみに,キャラクターを他国に亡命させる,みたいなことはできるのでしょうか?

渡辺氏:

 アイデアとしては出ています。β段階で実装,なんていう話も出ていました。

藤本氏:

 その背景としては,第1次βテストで,片方の国が一方的に負けてしまっている状況を何とかしたかったというのがありました。それで,移籍みたいなこともできていいのではないかとなったんですが……。とくに第3次βテストでは参戦コストなどの導入によって,ある程度バランスがとれてきましたので,実装の優先度はちょっと下がってきています。

4Gamer:

 では最後に,正式サービスに向けての意気込みをお聞かせください。

渡辺氏:

 今後は,FEでしか楽しめないような新しい体験をできるように,いろいろな部分のクォリティを上げていく,ということに尽きますね。ただ単にモンスターを倒すだけではない,新しい遊び方を生み出すためのリソースは,ゲーム中にまだまだあると考えています。
 戦争のルールのバリエーションとか,いくつかのアイデアは出ているんですけれど,それをどうやって,どういうタイミングで提供していこうかというところです。FPSでやっているような遊び方は,一通り提供できると思うんですよね。

4Gamer:

 今あるルール以外の戦い方というと……?

渡辺氏:

 開発の現場では,アイデアを試してみて「あ,これは面白い」というのはいくつもあるんです。例えばドラゴンだけ出して空中戦,みたいな遊び方もしています。そういうものをどうやってゲームとして公平なものに調節して,シームレスな運営の上に載せていけるのか。全部を実現できたらとても面白いんだけど,簡単ではないなぁ……と頑張っているところです。

4Gamer:

 現状では,今ある戦争のバランス取りにフォーカスしているが,ゆくゆくはさらに新しいルール/遊びを追加,上乗せしていきたいということですね。FEがどんなゲームに成長していくのか楽しみにしています。本日はありがとうございました。

 「PvP戦闘とPvEハンティング,どちらも面白いRPG」というイメージで開発が進められてきたFEだが,その二つをいかにしてバランス良く両立させるかという部分で,作り手たちは非常に苦労をしてきたようだ。そして「まずはPvP戦闘の完成度を高め,その後PvEハンティングの改善に着手する」という方針を固め,作業を進めていくという。
 このように目標を絞ったことの成果は,βテスト中でもある程度感じることができた。とりあえず戦争の場面においては,第1次βテストの頃のようなストレスを感じることもなく,戦いに集中することができた。
 ただ,意地悪な言い方になってしまうが,それらは“できて当然”のことであるとも言える。現状を起点として,さらに今後どのような魅力を付加していくのか? 付加できるのか? そしてその魅力は,どれぐらいの数のプレイヤーを引きつけることができるのか? このあたりが,今後の見どころといえそうだ。(2006年2月13日収録)

タイトル ファンタジーアース ゼロ
開発元 スクウェア・エニックス 発売元 ゲームポット
発売日 2006/12/21 価格 月額プレイ料金無料(アイテム課金制)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium 4/1.30GHz以上[Pentium 4/2GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスメモリ:64MB以上[128MB以上推奨],HDD空き容量:3GB以上,ネットワーク環境:300kbps以上

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http://www.4gamer.net/specials/060223_fe/060223_fe_003.shtml