思うままの動物園を作れるフリーモードと
ストーリーも意外とイケる計20のミッションモード
3Dグラフィックスになり,動物達のモーションがぐっとリアルかつ豊富になった「ワイルドライフ パーク2」。動物園の定番となっている動物達や,滅多に見られない珍種,さらには恐竜まで,さまざまな動物達を飼育できる |
ズーから2006年12月22日に発売された「ワイルドライフ パーク2」(以下,WLP2)は,前作「ワイルドライフ パーク 〜大自然に動物園をオープンしよう!〜」に続く動物園経営シミュレーションだ。プレイヤーは前作と同様,動物園の経営者として飼育動物と来園者の両方を満足させるべく,すみずみにまで目を配り成功へ導いていく。
前作からパワーアップした部分といえば,まず3D化されたグラフィックスだろう。各動物固有のしぐさや表情が,とても細かくリアルに再現されるようになった。カメラワークの自由度もぐっと高まっており,より近くから,ときには水中からでも動植物を観察できるのが嬉しい。また,飼育可能な動物の種類が大幅に増えたのも,続編として順当なところといえる。
本タイトルの難度は,経営シムとして見た場合さほど高くない。最初はうさぎ,フラミンゴ,ダチョウなど単価が低くて繁殖させやすい動物を飼育し,生まれる子供を次々と売却すれば,資金難に陥ることもまずない。むしろ動物の檻や来園者のための歩道の配置を計算したり,植物や,飲食物の販売店をキレイに並べ,美しい動物園の設計にあれこれ悩む時間が楽しくてたまらないといった,箱庭愛好家向けの作品といえる。
ゲームモードには「フリーモード」と「ミッションモード」が用意されている。ミッションモードには「生命の源」から「子供の頃の夢を実現」まで計20のミッションが用意されており,序盤は操作方法や雇用スタッフの役割などを学ぶための単純な内容だが,先へ進むほど課せられるタスクが数多く,複雑になっていく。前作には登場しなかったスタッフ「研究者」や新しい設備類もあるので,前作をプレイした人でもミッションモードから始めることをお勧めしたい。
また,このミッションモードはストーリー仕立てになっていて,「あなた」(プレイヤー)が失踪した父親の謎に迫ってみたり,経営に失敗した動物園の再建を世界中から求められたりと,動植物の専門家として自分が徐々に成長していく物語が,各ミッションの冒頭で語られる。正直,ミッションが始まってしまえばすっかり忘れてしまうような内容だが,毎回良く出来たストーリーなので,新ミッションに挑戦するときには,ちょっと目を通してほしい。
一方のフリーモードでは「アラスカ」「ロッキー山脈」「日本」など20の国/土地からマップを選び,だだっ広いだけで何もない土地に一から夢の動物園を築いていく。その土地の気候に適した動物だけを飼うのもよし,あえてアフリカでシロクマの飼育に挑戦するもよし,そこはプレイヤーの自由。ゲーム開始時に資金面などの難度をある程度調整できるが,どちらかといえば上級者向けの遊び方だ。
注文の多すぎる動物達に快適な生活条件を
ピューマは気難しい動物の一つで,行動範囲内にほんの少しでもなだらかな部分があると,ご機嫌斜めになる。遊具や餌を置く場所以外は,自然な隆起をつけてあげよう |
来園者の入場料や売店による収入が軌道に乗るまで,主な資金源は,動物園で自然繁殖する動物の子供達の売却益である。動物にはそれぞれ「魅力度」が★印で設定されており,来園者へのアピール度が高く珍しい動物ほど★が多く付き,購入/売却価格とも高くなる。とはいえ最初は,ウサギやポニー,ダチョウといった無難な動物がおすすめだ。これらの種は寿命が意外に長くて妊娠期間が短く,さらに多産と,殖やして売るにはいいことずくめ。しかし動物達は,飼育環境が心地良くなければ,繁殖してくれない。まずはすべての動物を満足させる,適切な環境作りに注力しよう。
動物の詳細情報を表示すると,彼らが好む地面の硬さや気温,好きな運動などが記されているので,新しい動物を迎えるときは事前に確認しておこう。前作ではこの情報欄に,好きな地面と植物,囲いのタイプ,最低限必要な檻の面積などが一目で分かるように記載されていたのだが,本タイトルでは情報量が減ってしまい,少し分かりにくくなっているのが残念なところ。
泳ぐのが好きな動物ならプールが,ジャンプが好きな動物ならジャンプ台の設置が必須だ。餌も,肉だけ与えていれば満足な手のかからない動物もいれば,チンパンジーやゴリラのように緑植物,果物,野菜と3種類も欲しがるワガママなやつらもいる。欲求が満たされない動物達にはストレスが溜まり,子作りなど望めないし,餌が足りないと檻を壊しておとなしい動物を襲い,怪我を負わせたりと,暴れたい放題やりだすのだ。
動物達が快適に暮らし,繁殖がスムースに行われるようになってきたら,さらに経営に力を入れる絶好のタイミングだ。動物園の入場ゲートをクリックすると四つのアイコンが表示される。このうち「マーケティングパネル」を選ぶと,動物園の広告/宣伝方法を選択できる。宣伝には安価な「パンフレット」「ポスター」のほか,「経済雑誌」「地域のテレビ番組」などの種類があり,それぞれ費用と範囲,対象となる所得階層が異なっている。
パンフレットは比較的安く済むが効果は小さく,しかも集まるお客はあまりお金を持っていない。雑誌や新聞はコストが高い代わりに,懐に1500ドル近く持った客層が来てくれるというわけだ。こういった客は園内のドリンクや,お土産屋の価格を少々上げたところで,気にせずにお金を使ってくれる。ATMを数か所設置すれば,さらに長い時間過ごしてくれるので,ある程度資金繰りに余裕ができたら広告にはお金をかけよう。序盤でオススメなのは,月々の費用は1500ドルと低めだが効果はそこそこある「教会の広報」だ。ただし教会という場所を反映してなのか,集まるお客がみんな老人になってしまうのだが……。
こうして集客に成功したら,あとは園内での来園者の満足度を高めていくだけだ。道が平坦すぎても,植物やオブジェクトが足りなくても,お客様はすぐに不満を抱く,なかなかのワガママっぷりだ。園内のルートに高低差をつけたり展望台を置いたりと,飽きさせない工夫が必要になる。慣れないうちは,どうしても動物を優先した設計をしがちなため,あとからベンチや自動販売機を設置しようと思っても余分なスペースがないことも多い。失敗を重ねるうちに「このあたりで飲み物屋を1軒,これぐらいの間隔で眺めの良い高台を置こう」といったカンが身についてくる。そこまでマスターすれば,夢の動物園作りに取り掛かれる日は近い。
前作同様,攻略ポイントはスタッフの配置にあり
建物をクリックしたときに表示されるサークルの内部が,そのスタッフが行動可能なエリアとなる。あまりに作業量が多く,仕事が追いつかないようであれば,範囲を狭めて仕事量を減らす判断も必要だ |
動物園を支えるスタッフの雇用と配置は,今回もゲーム内で重要な位置を占めている。飼育係,技術者,ガーデナー,調教師,ゴミ処理係,獣医は前作同様に雇用可能だが,猟師,救急隊員,警備員は本タイトルでは登場しない。というのも,前作では動物愛護団体によるデモが起きたり,逃げ出した動物が来園者に怪我を負わせたりしたため,警備員や救急隊員が必要だったのだが,本作ではそういった状況が発生しないためだ。餌の補充と清掃を担当する「飼育係」,檻のメンテナンスを行う「保安係」は,とくに欠かせないスタッフだ。各スタッフには仕事を行う活動範囲が決まっており,その中で忙しく動き回るわけだが,費用を節約しようとして,一人あたりの負担を大きくするのは得策ではない。スタッフ一人の活動範囲内に数多くの動物を詰め込むと,餌の補充が間に合わずに動物が餓死したり,フンの始末が追いつかず病気になったりするのだ。
WLP2で新たに追加された「研究者」は,エリア内に点在する化石をもとに,太古の生物を蘇らせるというスタッフだ。化石はどこにでもあるわけではなく,いくつかのミッションと一部マップのみ。有望な化石の発掘量は有限なので,蘇らせる頭数には限度があるが,その後うまく自然繁殖に成功すれば,映画「ジュラシックパーク」のような恐竜園を作ることも可能というわけだ。
動物達の生態と,彼らが生きる自然環境の描写が巧みなのが,WLP2の特筆すべき点だ。水棲動物や恐竜など新たに加わった動物達,3Dで表現される動物達の愛らしい表情と仕草,そして前作に比べてスッキリと洗練されたインタフェースなどにより,いっそう魅力あるタイトルに仕上がっている。サバンナやジャングルの中で自然の営みを観察しつつ,ノンビリと夢の動物園経営を楽しんでみてはいかがだろうか?
さまざまな動物達の営みを自宅でのんびり観察できるのが,何より面白い部分だろう。スクリーンショットでは伝わらない,そのリアルな動きをぜひ本作で楽しんでほしい |