日本のお隣韓国では,オンラインカジュアルゲームが花盛り。日本でも流行の兆しを見せつつあるこのジャンルに,期待の新作が登場した。
「テイルズランナー」は,ネッツジャパンがサービスするオンライン専用の“本格ランニング カジュアル ゲーム”だ。要するにレースゲームなのだが,ユニークなのはレースの種目が徒競走である点。さまざまなフィールドを2本の足のみで駆け抜け,順位を競う。単に走るだけではなく,時にブロックを跳び渡り,河を泳ぎ,スキーで滑り降り,蔓を登りと,フィールドごとに多彩なアクションが用意されている。
日本でのクローズドβテストも好評のうちに終了し,2月17日からのオープンβテストへの期待が高まる本作。クローズドβテストに参加した人も,残念ながら抽選に漏れてしまった人も,このプレビューで予習と復習に励み,オープンβに臨んでほしい。いやほんと面白いよですよ,これ。
■ゴールを目指して走れ! 跳べ! 泳げ!!
本作のルールはきわめて明快。競争相手の誰よりも早くゴールにたどり着くのが目的だ。
使用するボタンは三つ。“ジャンプ”と“ダッシュ”,そして“アイテム”に,それぞれキーを一つ割り当てる。デフォルトではそれぞれZ,Ctrlキー,Shiftキーとなっているが,オプションで自由に変更が可能だ。
移動は上下左右のカーソルキーを使うが,こちらも同様に変更できる。
早速画面を見てみよう。画面の左上にあるのが自分の順位。下のバーはコースの進行度と自分の位置を示している。順位の下にある丸いゲージがスタミナとパワーだ。前述のダッシュキーを押すと,このスタミナを消費することで一時的に速度を上昇させられる。スタミナは普通に走っていれば徐々に回復するが,スタミナが尽きてなおダッシュしようとすると,キャラクターはへたり込んで大幅なタイムロスとなってしまうので要注意だ。
怒りゲージは,ほかのプレイヤーやフィールド上の障害物から妨害を受けることによって溜まっていく。うっぷんが溜まってゲージが満タンになると,プレイヤーは任意でキャラクターを“憤怒状態”にできる。憤怒状態になると,一定時間速度がアップし,さらにフィールドの障害物をすべて無視できるうえ,ほかのプレイヤーキャラクターを跳ね飛ばすことも可能になる。ここぞというところで使い,一発逆転を狙いたい。
アイテムは,フィールドに落ちているアイテムボックスを拾うことで手に入る。ランダムに決定されるアイテムは,使用することで,ほかのプレイヤーの邪魔をしたり,スタミナを回復させたりと効果はさまざま。このあたりは,カジュアルレースゲームのパイオニアといえる「マリオカート」と同じと考えていいだろう。
これらの基本的な操作は,オフラインの練習モードで一通りレクチャーを受けて試せるので,操作に慣れるまではここで練習するのがおススメだ。
二段ジャンプを使って大ジャンプ。コースをショートカットして最速ラップを目指せ | 憤怒モード発動で一気に加速! ライバル達を蹴散らそう | コースに落ちている「?」マークの箱からアイテムが手に入る |
■オンラインならではの三つのゲームモード
さて,一通り操作に慣れたら,いよいよオンラインデビューだ。初期キャラクターは,男の子の「ダッシュ」と女の子の「ミンミン」の二人から選べる。キャラクターに能力の差はないようなので,ここは好みでさくっと選択。選ばなかったキャラクターも後からTRマネー(ゲーム内通貨)を使って購入可能なのでご安心を。
ゲームのモードごとに部屋が分かれているので,適当なルームに入ってみよう。もちろん自分で部屋を作って参加者を募ることもできる。韓国発のカジュアルゲームではスタンダードなインタフェースだ。
ゲームのモードは「競争」「30人競争」「リレー」の3種類が用意されている。“競争”は,最高8人のプレイヤーと共にコースを走る,一番標準的なモードだ。上位に入賞すれば,経験値やTRマネーが手に入るので,バリバリ走ってガンガン稼ごう。
“30人競争”は文字どおり,最高30人のプレイヤーで一斉に走る,オンラインならではのお祭りモード。本作の目玉といえるだろう。このモードでは,最低9人のプレイヤーが必要で,人数が多い以外は基本的に競争モードと変わらない。ただし30人競争専用のサバイバルコースは,当然このモードでしか走れないようになっている。競争モードに比べてライバルが多く,その分妨害も多いので,上位に入賞するのは難しそうだ。
“リレー”は3人一組でチームを作って走るコース。ラップごとにプレイヤーが交代して走るので,自分の番以外は仲間の走りを見守りながら応援しよう。またバトンタッチのアクションがあるのもこのモードの特徴の一つ。うまく合わせて華麗なチームワークを披露したい。
ショップでは,稼いだTRマネーを使って,キャラクターや装備を購入できる。なお,これらの装備は外見にこそ反映されるが,レース展開に影響を与えるようなものは(少なくとも現在のところは)存在しない。自分の好みでキャラクターを自由にカスタマイズしよう。
少し殺風景だが分かりやすいインタフェース。未実装の「公園」や「錬金術」といったメニューが気になる | リレーモードの部屋。3人チームで最大6組がエントリー可能 |
■とにかくコースを覚えるべし!
本作の一番の特徴は,その多彩なフィールドだ。現時点で「トレーニング」「童話」「サバイバル」の3種で計10コースが用意され,それぞれ多彩なアクションが楽しめる。
「トレーニング」は,比較的シンプルなコースが用意されている。「スピード」「ハードル」「ブロック」「スーパージャンプ」の四つだ。シンプルだけに,順位に実力が反映されやすいのが特徴である。
とくにプレイヤーに人気なのは,ブロックコース。浮遊するブロックが行く手を阻むが,アイテムが登場しないのでプレイヤー間の妨害が少なく,純粋なスピード勝負になるのがポイントだ。
「スーパージャンプ」コース。縦の大ジャンプが連続し,着地のリカバーが攻略のポイント | 「雪女」はスキーで一気に斜面を駆け抜けるコース。スピード感が抜群だ |
「童話」は昔話をモチーフにしたコースで,本作のメインとなるフィールド。現在用意されているのは「雪女」「蛙王子」「太陽と月」「ジャックと豆の樹」の四つ。大まかなコースは設定されているものの,いくつもルートがあるので,自分なりの攻略ルートを確立するまで,いろいろな方向へ進んでみるのがよさそうだ。
また蛙王子および太陽と月では,クエストアイテムと呼ばれる特殊なアイテムが登場する。ゴールの条件にもなっているので,忘れずに取得しよう。
「ジャックと豆の木」。足場が狭くて障害物の多い,少しいやらしいコースか | 「蛙王子」はグリム童話をモチーフにしている。池を泳いで黄金の卵を持ち帰ろう |
サバイバルでは,「タコ親父の怒り」と「トカゲオジサンの怒り」の二つがプレイできる。
サバイバルはほかのモードと違い,奥から手前へ走るコースになっている。後ろから迫るタコ親父やトカゲオジサンから逃げながら,電撃やローラーをかわしていく。タコ親父に追いつかれたり,ローラーに潰されたりすると,その時点でリタイアとなってしまうのだ。
完走すること自体が難しく,まさにサバイバルなコースである。電撃やローラーの順番,トラップの場所を覚えないと攻略は難しいだろう。
「太陽と月」に登場する蔦登り。ジャンプキーを連打することで速く登れる | 「タコ親父の怒り」は手前に走るサバイバルコース。奥に見えるタコ親父に追いつかれたら即リタイアだ |
■軽快な操作感とノリノリな音楽
レースはまず,スタートダッシュの駆け引きから始まる。スタート地点には空中にある扉から“落ちて”行くのだが,着地前の落下中はジャンプキーを連打することによって速度を稼ぎ,着地と同時にダッシュキーでスムースなスタートを切れる。ヘタな位置に着地すると,後から落ちてきたプレイヤーに踏みつけられることもあるので,位置取りには気をつけよう。
ジャンプは,障害物をかわすのはもちろん,ほかのプレイヤーを踏みつけて妨害したりといったことも可能だ。大ジャンプ着地の衝撃や障害物にぶつかったときは,ダッシュキーでリカバーできる。
一通りプレイして感じるのは,やはりこのジャンプ&ダッシュの爽快感だ。レスポンスも良く,何もないところでも,ついついジャンプキーを押したくなる。この手のアクションゲームで最も評価したいポイントだ。
さらにジャンプとダッシュがプレイヤーの行動範囲を広げており,レースにメリハリが出るだけでなく,コースのショートカットなどで攻略の糸口になっている点も見逃せない。スピード感も申し分なく,これらが本作を,単なるマリオカートの二番煎じに留まらせない,魅力的なものにしている。
また音楽についても,ささやかながら賛辞を送らせてもらいたい。ゲームの世界観にマッチしたポップなサウンドと,どことなく漂う妙なノリが印象的で,どうしても耳に残ってしまうのだ。それでいて緊張感も十分で,ゲームミュージックとしては秀逸なデキといっていいだろう。
空中の扉からスタート。着地する前の落下中から勝負は始まっているのだ | ジャンプが勝負の鍵を握る。なんともいえない,この浮遊感がたまらない |
■同期の問題が今後の課題
もちろん,まったく不満点がないわけではない。クローズドβテストと考えれば大半は仕方がないことだとは思うが,一応簡単に紹介しておこう。
一番問題と感じたのは,プレイヤー間の画面の同期だ。本作(の,少なくともクローズドβテスト)では,画面の同期にはポートの開放が必要で,これを行っていないプレイヤーのキャラクターは,ほかのプレイヤーから見て,スタート地点からまったく動いていない状態となる。
あくまで表示上の問題であり,レースの進行自体には差し支えないのだが,邪魔し邪魔されるというゲームの性格上,見えないプレイヤーというのはやはり理不尽だ。
また,カジュアルゲームというジャンルを考えてみても,プレイヤーにポートの開放を強いるというのは少々酷だろう。早めに改善してほしい点の一つである。
もう一つは,その難度。始めたばかりのプレイヤーには,完走さえ難しいだろう。普通に走っているだけでは,制限時間にまず間に合わないのだ。制限時間は,1位のプレイヤーがゴールしてから10秒に設定されているのだが,熟練者と初心者の腕の差を考えると,かなり厳しい。
完走するために必須となるのが,ダッシュ2段ジャンプというテクニックである。これは,ジャンプ中はジャンプ前の速度が維持されることを利用した,スタミナ節約テクニックだ。しかし,このようなテクニックを駆使しなければ,そもそも勝負にすらならないというのは,少し疑問だ。
もちろん,全員が完走するのを待つシステムだとしたら,1位でゴールした人は,しばしば長々と待たされることになるだろう。それを見越した制限だと思うが,初心者にとってのハードルという観点からすれば,もう少しゆるめてもいいのではないだろうか。
そのほか,細かいところでは,カメラの位置や障害物の視認性に疑問を感じた。ほかのプレイヤーキャラクターとの位置関係やコースの誘導が分かりづらく,これがストレスに感じる部分もある。
一度覚えてしまえばどうということもないとはいえ,せめて全体マップの一つでもあればと思える。
基本的にはよく出来た作品だけに,今後のオープンβテスト,正式サービスで,このあたりがどう改善されるかに注目していきたい。
同期の取れていないプレイヤーのキャラクターは,スタート地点から動かないように見える。解決にはポートはUDP9000〜10000の開放が必要 | 難易度Easyでも,完走すらきつい。このあたりは,初心者と上級者で部屋が分かれることで問題が改善されるだろう |
■息抜きにも最適,カジュアルレースゲームの時代到来?
可愛いキャラクターと,演出/仕掛けに富んだフィールド。そして,このちょっぴり妙な世界観が本作の大きな魅力だ。真剣なレースの中にあっても,どこか漂うとぼけたテイストに,思わず笑みがこみ上げてくることも珍しくない。ローカライズも丁寧であり,ゲーム自体も実にそつのない作りと言えるだろう。ちなみにゲーム中の音声によるセリフも,すべて日本語に吹き替えられている。
レースゲームとして見れば,1分1秒のタイムを争うといったシビアな面で,今のところ少々弱いと感じるが(もちろんそういう遊び方も可能だが),それよりもみんなでワイワイやりながら足を引っ張り合うような,古いたとえで申し訳ないが,初代「マリオブラザーズ」のような雰囲気が楽しい。とくに30人競争のサバイバルコースはオススメで,未プレイの人にもぜひ体験してもらいたいデキに仕上がっている。
大作感こそないが,息抜きのゲームとしては最適で,そのコンセプトには感心させられるものがある。「スカッとゴルフ パンヤ」によって日本でも注目されつつあるカジュアルゲーム分野の新作として,注目に値するタイトルと言えよう。2月17日から始まるオープンβで,どれだけの人を集めるのか,注目したい。さぁみなさんご一緒に,「スーパージャーンプ! 楽しいなぁ〜!」。