― レビュー ―
映画のような迫力の戦闘シーンを手軽に楽しめるRTS
スター・ウォーズ エンパイア・アット・ウォー
Text by Sluta
2006年3月14日

 

■ルーカス・アーツ久々のスター・ウォーズストラテジー

 

音声のみ英語で,そのほかは日本語化されている。英語版と互換性があり,パッチの適用が同時なのがうれしい

 スター・ウォーズを題材にしたゲームは,それこそ数え切れないほど存在しており,毎年数作品がコンスタントに発売されている。だが,アクションゲームやRPG系はたくさんあるものの,“ストラテジーのジャンルで”と条件をつけると,途端に数が少なくなってしまう。本作「スター・ウォーズ エンパイア・アット・ウォー」は,実に5年前の「スター・ウォーズ ギャラクティック・バトルグラウンド」以来となる,久々のストラテジー作品だ。

 

 「ギャラクティック・バトルグラウンド」は「エイジ オブ エンパイアII」の基本システムを,そのまま採用した作品だった。本作品はというと,はっきり言及されていないが「コマンド&コンカー ジェネラルズ」(原題 Command & Conquer: Generals)の制作に携わったメンバーが多く在籍する,Petrogryph Gamesが開発している。ゲーム自体は完全に一から作っているので内容はかなり異なるが,グラフィックスの質感や操作の感覚には共通する部分が多い。

 

 ゲームの舞台となるのは,映画でいうエピソードIIIの終了後から,エピソードIVまでの間。パルパティーンが皇帝となりジェダイ達を抹殺したあと,軍事力により全銀河に圧政を敷いているところに,帝国の支配に反対する者達の間で,密かに反乱同盟軍が組織される。プレイヤーは帝国軍か反乱同盟軍のいずれかを指揮し,銀河系のすべての惑星の支配を目指して戦っていく。

 

 XウィングやAT-AT,ストームトルーパーなど,お馴染みの兵器がユニットとして登場するほか,ハン・ソロやオビ=ワン・ケノービ,ダース・ヴェイダーなどをヒーローユニットとして操作できる。ゲーム後半では巨大なデス・スターも登場し,それを破壊しようとするレッド中隊との攻防も,このゲームの大きな見どころだ。

 

 シングルプレイヤーのゲームモードは,ストーリーに沿ったミッションクリア型の「キャンペーン」,シナリオを選んで自由に戦略を練ってプレイできる「銀河系の征服」,マップを選んで宇宙あるいは地上で1回の戦闘のみを行う「小戦闘モード」の三つがある。このうち,「銀河系の征服」と「小戦闘モード」の二つはマルチプレイが可能だ。

 

宇宙ステーションはそれ自体が大きな要塞だ。アップグレードすればさらに強さを増し,難攻不落になっていく 帝国軍はAT-STやインペリアル・スター・デストロイヤーのような,大型の兵器が中心だ。デス・スターも建造できる 反乱同盟軍はXウィングやアサルト・スピーダーのような,機動力があって小型の兵器が中心。奇襲にも長けている

 

左上に見えるのがデス・スター。惑星軌道上に到着してスーパーレーザーが発射されると,惑星は消滅する デス・スターによって消滅してしまった,オルデラーン星。一度破壊した星はもちろん元に戻せないので注意 小戦闘モードはほかの二つのゲームモードと異なり,戦闘マップ上でユニットを生産する。最大4人対戦が可能だ

 

 

■宇宙でも地上でも,防御シールドの突破がカギ

 

アサルト・スピーダーはケーブルを足に巻いてAT-ATを倒してしまうという特殊能力を持つ。こんな点も再現しているのはすごい

 ゲームは「ギャラクティック・マップ」「宇宙の戦略バトル」「地上の戦略バトル」の三つの部分から構成されている。

 

 ギャラクティック・マップは「戦略/戦術」のうちの戦略部分で,銀河系全体を見渡しながら個々の惑星を管理していく。進行はリアルタイムで,1日単位でちょっとずつ時間が進行する。1日の終わりには支配下の惑星から収入が得られるので,それを使ってユニットを生産して部隊を編成したり,惑星間を移動させたりするのだ。
 そのユニットだが,大きく分けて宇宙部隊と地上部隊とがあり,宇宙部隊は宇宙ステーションで,地上部隊は惑星表面に建設した兵舎や車両工場で作成する。敵の惑星を支配するためには,まずは目的とする惑星の上空を宇宙部隊で確保し,その後に地上部隊を使って地上に侵攻,その戦闘に勝利すれば,ようやくその惑星が支配下に入るという流れだ。

 

 惑星上空で敵味方の宇宙部隊が遭遇すると「宇宙の戦略バトル」になり,地上の場合は「地上の戦略バトル」になる。どちらも純粋なRTSに近いシステムだが,いくつか特筆すべきポイントがある。

 

 まず宇宙の戦略バトルでは,各ユニットが「シールド」と呼ばれる,スター・ウォーズではお馴染みのバリアのようなものを持っている点が特徴的だ。ユニットを破壊するためには,まずシールドの防御力を0にしてから,直接そこへダメージを与えるという順番になる。シールドは時間が経つと再生するので,ちょっとずつ攻撃していたのではユニットに十分なダメージを与えられない。そのため,ある程度の集中砲火が必要になる(シールドを突き抜ける兵器も存在する)。
 また面白いのは,宇宙ステーションや大型の宇宙船が「ハード・ポイント」と呼ばれるパーツから構成されていることだ。例えば帝国軍のヴィクトリー・クルーザーは,

  • イオンキャノン砲塔
  • ターボ・レーザー砲塔×2基
  • 格納庫
  • エンジン
  • シールド・ジェネレーター

 という計六つのパーツが,一つのユニットの中に存在している。攻撃する際には,これらのうちどれを攻撃するかを選べるので,それに応じて戦術が異なってくるのだ。移動を止めてしまいたいと思ったら「エンジン」から狙うべきだし,母船を護衛する小型のTIEファイターの出現を止めたいと思ったら「格納庫」を攻撃する,といった具合である。基本的には,シールドを再生する「シールド・ジェネレーター」を最初に壊すというのがお決まりのパターンで,これは映画にも出てくる戦術であり,誰でもついそうしたくなるに違いない。

 

 地上戦では,防御側の基地をすっぽりと覆うシールドが存在しているから,攻撃側はまずこれを破壊することになる。地上のシールドは宇宙とは違って攻撃しても破れないため,シールドを作り出している「シールド・ジェネレーター」か,そこに電力を供給している「パワー・ジェネレーター」を直接壊す必要がある。そのため,その2施設をめぐる攻防が戦闘中盤までのポイントになる。
 攻撃側は配置できる自部隊を増やすため,攻撃と併行して「増援ポイント」を確保しなければならない。戦闘開始時,攻撃側は3〜5部隊程度しか配置できないが,マップ各地に点在する増援ポイントを占領すれば,新たに援軍を配置できるようになるのだ。逆にいうと増援ポイントが奪われれば増援部隊が配置できず,ジリ貧になってしまうだろう。
 基本的には防御側に有利なゲームバランスになってはいるが,攻撃側に有利な点もあり,それは惑星上空に滞在している宇宙部隊からの支援砲撃だ。固まっている敵部隊へと撃ちこめば大きな被害を与えられるだろう。

 

 このように,本作にはいくつかのユニークな特徴がみられるものの,全体的にはあっと驚くようなところはなく,ごく普通のRTSといっていい。操作もあまり忙しくなく,システムも簡単なことから,ストラテジーとしてはかなりライトなユーザー向けに作られているといえるだろう。
 したがって,このシステムに「スター・ウォーズ」という冠を乗せたとき,それに見合うどれほどの付加価値が付いてくるかが,本作の最大の焦点になる。

 

緑の直線で結ばれた惑星間は短時間で移動できる。これをうまく使えば,大軍を一気に移動させたり,電撃作戦を仕掛けたりと作戦の幅が広がる ゲームを進めていくうえで憶えるべきことはそう多くなく,ストラテジーとしてシンプルな部類に属するが,簡単すぎるというわけではない どのハードポイントから破壊していくかが重要。巨大な宇宙ステーションの場合,護衛船がたくさん出てくる格納庫を優先して狙いたい

 

ユニットはそれぞれ,得意な相手や苦手な相手が決まっており,このように一目で分かるように整理されている。画期的な親切さだ 技術が上がると上位ユニットが生産可能。帝国軍は独自に研究できるが,反乱同盟軍側はC-3POを使って帝国軍側から技術を盗む 低解像度では左上の字幕が読みづらい。1280×1024ドットならば問題ないが,これより下の解像度では厳しいため,注意が必要だ

 

 

■映画さながらの演出を楽しもう

 

C-3POとR2-D2は宇宙と地上の両方に登場。宇宙では技術を盗むのに使い,地上では味方車両を修理したり,敵の砲塔をコントロールしたりするのに使う

 本作の演出上の大きな売りとして「シネマティック・ビュー」という画面モードがある。これは,プレイ中にスペースバーを押すことで画面が切り替わり,特定のユニットの動きを追いかける視点になったり,急にズームインして爆発のエフェクトをアップで見せるといった,映画さながらのカメラワークで戦闘が展開するというもの。純粋に映像(グラフィックス)を楽しむという割り切った機能だが,この演出には凄いと感じた。

 

 RTSの戦闘が,リアルタイムで映画さながらの演出とカメラワークに切り替わり,そのつど異なる迫力満点の戦闘を見せる,このモード。映画のワンシーンのような状況をプレイヤー自身で作り出し,それを映画のように鑑賞できるのだから,スター・ウォーズの好きな人にはたまらないだろう。
 このモードの難点は,シネマティック・ビューの間,ユニットの操作ができないところだ。迫力の映像に長時間見入っていると,いつの間にか戦況が悪化していた,なんてこともしばしばある。RTSとしてのゲームシステムが驚くほどシンプルに作られている理由の一つは,こんなところにもあるのだろう。

 

 さて,本作をスター・ウォーズのライセンス物としてみた場合,どうだろうか。
 実は筆者はそれほどのスター・ウォーズのファンではなかった。そこで,本作をプレイするに当たって映画をシリーズ通して見直したのだが,予想外にその世界にどっぷりと漬かってしまい,今さらながら「スター・ウォーズって面白い!」と感動したところだ。
 ちょうど,劇場版では一番新しい「エピソードIII」の直後の時代が舞台で,帝国軍が勢力を広げているところに反乱軍が登場して銀河内で内戦を繰り広げ,エピソードIVの“デス・スターの破壊”へと繋がっていくストーリーは,非常にタイムリー。だが,逆に言うと映画のエピソードの狭間の時期を扱っているため,映画のような思いがけない展開を期待していると,がっかりする。「RTSである」という理由からか,むしろゲームは淡々と着実に進行していく。劇的なストーリー展開に期待を寄せるというよりは,頭を使って戦略を練り,自らの力で味方を勝利に導いていくといった雰囲気だ。

 

 グラフィックスや音楽は,スター・ウォーズの世界観を見事に再現している。兵器やヒーロー,宇宙や惑星の雰囲気は映画にそっくりで,声優こそ違うものの,“よくここまで似せたな”と感心するほど「それっぽい」声になっている。コアなファンもきっと満足できるだろう。本作の演出面の出来は素晴らしく,スター・ウォーズに登場する兵器やヒーローに詳しく,戦闘シーンが大好きという人には,ぜひお勧めしたい作品だ。

 

シネマティック・ビューは本作の一番のアピールポイントといってもいいだろう。戦闘に細かい操作はあまり必要ないので,じっくり鑑賞できる スペースバーを押すと,次々に視点が切り替わっていくが,カメラワークは操作できないため,イマイチ好みの視点を得にくいのが難点か 宇宙戦闘のグラフィックスは,とりわけ美しい。実際のプレイ中の扱いは2Dに近いのだが,画面全体に非常に奥行きが感じられる

 

ルーク・スカイウォーカーはレッド中隊の5機めのパイロットとして,地味に登場する。ハン・ソロが宇宙と地上で派手に暴れまわるのと対照的だ ハン・ソロはミレニアム・ファルコンに乗って登場。反乱同盟軍側でプレイする際にはかなり頻繁に使うことになるユニットで,主役級の存在感がある 帝国軍側のヒーローはさらに強い。パルパティーン皇帝のフォースは周囲の歩兵を一掃する。しかしオビ=ワン・ケノービが弱すぎやしないか

 

タイトル スター・ウォーズ エンパイア・アット・ウォー
開発元 Petroglyph Games 発売元 エレクトロニック・アーツ
発売日 2006/02/23 価格 オープン価格
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium III/1GHz以上[Pentium 4/2GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスメモリ:32MB以上[64MB以上推奨]

LucasArts and the LucasArts logo are registered trademarks of Lucasfilm Ltd. (C) 2006 Lucasfilm Entertainment Company Ltd. or Lucasfilm Ltd. All rights reserved.

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/sweaw/sweaw.shtml