ゲームポットと元気が手を組んだ「オンラインカート ステア」。タイトルを見れば一発で分かるが,オンラインで対戦するカートゲームだ。今回はそのβテストをプレビューしてみよう。 |
「オンラインカート ステア」は,あの「スカッとゴルフ! パンヤ」や「君主」で有名なゲームポットと,コンシューマ機/PCオンラインで「首都高バトル」などのタイトルを手がける元気が手を組んだ,新作カジュアルレースゲームである。オンラインゲームの雄と,主としてコンシューマタイトルで定評のある開発チームのタッグで,このジャンルでは珍しい純国産タイトルとなっている。
かつては“開発サポーター募集”という形でのテストが行われたこともあり,着々と完成に近づいている本作。先日行われたクローズドβテストではかなりプレイアブルな状態で本作を体験することができたので,今回はそれをプレビューさせてもらうことにする。「最近この手のレースゲーム多いなぁ」とお思いの皆さんも,“話題性”には事欠かないこのタイトルにしばしお付き合い願いたい。
■「マリオカート」+「パンヤ」?
操作方法は非常に簡単で,レースゲームビギナーでも理解するのは容易だろう。 |
さてさて,本作の基本はやっぱりレースだ。それもいわゆる「マリオカート」タイプということになる。マリオカートをご存じない方のために説明させていただくと,比較的簡易な操作でドリフトを多用しつつ,ほかのプレイヤーを妨害するアイテムを駆使してゴールを目指すというレースゲームだ。ドライビングテクニックもさることながら,アイテムを駆使した駆け引きが重要になってくるところも本作と同じである。
この「ステア」はモノが“カート”であるだけに,操作方法やルールが実に明快だ。上下/左右のカーソルキーに,ドリフトキー,アイテム(本作では魔法)使用キーと,レースゲームはそれほど得意ではない筆者にもすんなり理解できるインタフェースになっている。もちろんキーコンフィグはオプションから変更可能なのでご安心を。
そのほかのシステムもコース上に配置された「魔法」に加速パネルなどのギミックと,なじみのあるものが揃っている。今回プレイできたコースは3種類のみだったが,カーブの多いオフロードコースに,周回を競うサーキット,高低差のある洞窟コースとバリエーションに富んでいる。
「インフィニット ドラゴン」。S字カーブと最終コーナーの大ジャンプが特徴的なオフロードコースだ | 「ドラゴン フォールズ」。シンプルなスピードサーキット。加速パネルとアイテムの使いどころが勝負の決め手か | 「メンヒル鉱山」。起伏のある砂漠部分と,狭い通路が連続する鉱山部分からなる。鉱山内でのデッドヒートが熱い |
独自の要素という点では,「魔法切替キー」がその一つに挙げられるだろう。本作ではコース上で手に入れた魔法を二つまでストックでき,任意に切り替えて使用可能。必殺のチャンスがめぐってくるまで魔法を温存したり,相手の攻撃に対してカウンターを用意したりといった戦略が使える。
キャラクターは今のところ男女一名ずつだが,今後増えていくことは誰でも想像可能。衣装もいろいろ出てくるんだろうなあ |
ロビー周辺についても見ていこう。といっても,こちらもどこか見覚えのある光景だろう。今回用意されたオンライン対戦モードは,ロビーでルームを作り,数名のプレイヤーを募ってゲームを始めるという形式になっていた。もちろん,ほかのプレイヤーが作ったルームに飛び込んでもOKだ。部屋を作ったプレイヤーはその部屋のMASTERになり,ルール(周回数やコース,人数制限など)を設定/変更できる。ユーザーインタフェースは丸みのあるウィンドウやアイコンでまとめられており,操作に戸惑う部分もない。ロビーに接続しているプレイヤーは左側のウィンドウに一覧表示されており,ロビー部分でのチャットも可能になっている。
……などと説明するよりも,やはりここは同社のパンヤを思い浮かべてもらったほうが早いというもの。デザインもパンヤと共通した雰囲気にまとめられており,同作をプレイしたことのある人ならすぐに理解できるはず。もはやカジュアルゲームでは,これらのインタフェースはデ・ファクト・スタンダード(事実上の標準)といってよい。パンヤという実績を持つだけに,同作で評価の高かったポイントは外さない作りである。
そのほか,残念ながら今回のテストでは未実装で購入はできなかったが,キャラクターの着せ替えやステアの変更が可能なガレージも用意されている。今回選択できた男女二人のキャラクターに用意された衣装やステア,また,今後ポイントで買えるであろう第三のキャラクターも確認できた。
シンプルにまとめられたロビー画面。“フレンド登録”や“ささやき”も使えるようだ。上部のアイコンが気になる | ガレージではキャラクターの着せ替えが可能。残念ながら今回は実際に買うことはできなかった | 3人目のキャラクターはすこし大人びた女性。衣装はまだ少ないが,彼女を選べる頃にはきっと衣装も増えているだろう |
■純国産カジュアルゲームの実力は?
概略を掴んでもらえたところで,もう少し本作の内容に迫ってみよう。最初に断っておくが,これはあくまでクローズドβテスト段階での話である。今回は,とくに実装度の面において,まさにテスト段階という状態だった。クローズドβテストの本来の意味に近い状態での言及であることを忘れないでほしい。
ロケットスタートのタイミングはさほど難しくない。カウントに合わせてタイミングよくブレーキを踏もう |
まず肝心のレース部分について。本作ではマリオカートでもおなじみのロケットスタートが用意されている。これはスタート直前のランプカウントにあわせて,ブレーキ(↓)を3回入力し,スタートとともにアクセル(↑)に入れるという操作になる。しっかり3回入力しないと,失敗したぶん速度は落ちてしまう。ただし,タイミングはかなり大雑把であり,タイミングがそれなりにシビアだったマリオカートよりもハードルが低いといえる。簡単な操作だけに,これを知らないと大きく出遅れてしまうこと必至である。レースの序盤を制するためにも必ず身につけておくようにしよう。
今回登場する8種類の魔法。基本的にハズレはなく,どれも使いでのある内容になっている |
また,飛びぬけて強力な魔法がないというのも特徴の一つだろう。まず,マリオカートで強力な兵器だった「赤こうら」に相当するホーミングアイテムが存在しない。ステアでは,火の玉を撃ち出す「モエール」「モエーロ」は当たり判定こそ広いものの,基本的に直進しかしないため,距離が開いている場合,当てるのはなかなか難しい。判定が広いというのはほかの魔法にもいえるようで,使うことで障害物(モアイ)を設置する「ジャマース」が,かなりいやらしいことになっている。的確に配置すれば効果的な魔法だろう。ちなみにこのモアイ,前述の「モエール」で破壊できるので,「モエール」はトップに立っているときでもなかなか有効な魔法なのだ。
そのほか,嫌がらせ系の「マワール」「ケムール」「スベール」も見逃せない。マリオカートでこれら(ゲッソーとか)が出ると正直ハズレ感が強かったが,本作ではかなり強力に効く魔法になっている。コーナーに差し掛かった敵に使うのが有効で,ふらふらと壁に激突していくステアを横目に,颯爽と抜き去ってしまえるだろう。
魔法については,一発逆転という大技こそないものの,地味ながら効果的なものが揃っており,かなり考えているなと唸らされる。このあたりの調整には運営/開発側もかなり気にかけている様子で,テスト期間中に何度もバランス調整が入っていたことを付記しておきたい。
コース上に配置される魔法。後続に取られて妨害を受けないためにも,できるだけたくさん取っておきたい | 「モエール」で前方の敵を攻撃。ホーミングはしないのでよく狙って撃つべし | 進行を妨害する「ジャマース」。上手に配置して後続の追い上げを断ち切ろう。 |
オンラインゲームではとくに気になる成長要素にも触れておこう。レースに勝つと得られるポイントによってキャラクターのランクはグリーン1→2→3……グリーン9と上がって行き,これが本作の“成長”になる。グリーンの次はイエロー,ブルー,レッドとさらに上昇する。しかし現在のところこれは「プレイヤーの強さの目安」にすぎず,とくにそれによって何らかのメリットがあるわけではない。ここもやはり「パンヤ」と同じだ。キャラクターの能力はステア自体にあり,ガレージでアイテムを購入することによってのみ強くなれるようで,どちらかというとやはりレースによって得られるお金(PP)が重要な要素になる。ユーザーインタフェースを見るとPPのほかにSPというポイントもあるので,こちらは恐らく課金ポイントだろう。クローズドβテストではこれらのポイントが使用できなかったため,このあたりのバランスが今後どうなるか分からないが,ぜひ絶妙な采配を期待したいところだ。
今回のテストでは利用できなかったショップ。開店が楽しみだ | ステータスを表示する部分も,ほぼパンヤを踏襲したデザインになっている | パンヤに習うなら,将来的にはランクによるアイテムの購入制限がつくかもしれない |
■未実装項目にも期待。正式サービスでは化けるか?
正式サービスで我々の前にどのような姿を見せるのか? 非常に気になるタイトルである |
駆け足で今回のクローズドβテストでの内容を眺めてきたが,雰囲気はご理解いただけただろうか。誤解を恐れずに言うならば,文中で何度も引き合いに出した通り,これはマリオカートであり,同時にパンヤなのである。実際にプレイした印象では,この二つが違和感なく融合されている事実に驚かされた。
ゲームは非常にシンプルで,これはもちろん未実装な部分が多いからこそのシンプルさなのだが,これがこの後どう化けていくのか,というのが楽しみだ。ポイントによるアイテムの購入や,コースの追加は必ず行われるだろうし,ゲームモードも「大会モード」や内容はまだよく分からない「Quickモード」など,今後追加されることがメニューに用意された項目から見て取れる。ゲームの根幹であるレースの部分が非常に丁寧に作られているだけに,本作の完成した姿に期待したい。
今後の課題になると思われるのは,演出面だろうか。次期バージョンではぜひとも強化して欲しい部分である。とくにキャラクターモーションやエフェクトについてはもうひとがんばりほしい。画面の見栄えという以上に,こうした細かい演出がキャラクターへの思い入れや爽快感を煽ってくれるはず。その観点からすると,本作は今一歩という印象だ。もっとも,実はそのへん,筆者はあまり心配していない。なにしろ運営を行うのが,あのゲームポットなのだ。演出を意識していないわけがなく,「パンヤ」でカジュアルゲームに火をつけた同社の手腕に期待したい。