黒ラブにするか,アメショーにするか。それが問題だ
海外で大ヒットを飛ばしている,拡張パック第4弾「ザ・シムズ2 ペットライフ! データセット」。犬や猫,オウムにウォムラット(?)に熱帯魚といったペットを,家族の一員として迎えられる拡張パックだ。子育てより難しい「ペットのしつけ」に頭を悩ませつつ,その可愛いしぐさにメロメロになろう |
世界的に大ヒットした人生シミュレーションゲーム「ザ・シムズ2」に,待望の拡張パック第4弾「ペットライフ! データセット」が登場した。前作「シムピープル」にも,同系統の拡張パック「ペット&ガーデニング」があって,ペット達の愛くるしい外見や動きに,多くのファンが魅了された。シムズ2でもペットの追加は長いこと望まれていた要素であったが,いよいよシム人の日常につぶらな瞳のペット達がやってきたのだ。ブリーダー気取りで新種の犬を生み出すもよし,寂しい独身シムのために猫を添い寝させるのもよし。発売以来プレイし続けているファンにとっては,ちょっとマンネリ気味になっていたかもしれないシム生活も,本作の登場によって,言うことを聞かないペット達にかき回され,さぞかし楽しくなることだろう。
ペットライフで飼育できるようになったペットは,犬,猫,オウム,ウォムラット(謎の生き物),熱帯魚の5種類だ。毛色や体格などのカスタマイズができ,個々に人格(?)が与えられるのは犬と猫のみで,そのほかのペットはアイテムを通じて購入という形になる。まずは,犬猫との生活を中心に解説していきたい。
新しい家族として,ペットを迎え入れる方法は3通り。購入,作成,里親(引き取り)となる。一番手っ取り早いのは,タクシーで公共施設の「ペットショップ」へ出かけて購入する方法だ。だが初めてペットライフをプレイするならば,やはり「ペットの作成」から行うべきだ。残る里親については,後ほど詳しく説明しよう。
ペットの作成についてだが,犬や猫は,シム人を作成するときと同じような方法でカスタマイズが可能だ。名前と性別,年齢を決めたら,次はペットの種類選びで,犬なら52種類,猫なら31種類が用意されている。どのタイプも顔つきや仕草が実にリアルで愛らしく,選ぶだけで相当の時間を費やしてしまうことだろう。
ちなみに筆者は小型犬を飼った経験があるので,犬を選択。現実世界では実現が厳しい大型犬の多頭飼いにチャレンジしてみた。住居の問題でペットが飼えない人などは,「アメリカンショートヘアが飼いたかった」といった夢を,この拡張パックで満たすのもいいだろう。
首輪の色,目のサイズや耳の大きさ,尻尾の形に至るまで,事細かにカスタマイズしたら,最後に性格を決定。複数のペットを飼う場合,後々この性格がかなり大きく影響する。相性の悪いペット同士の場合,頻繁に派手な喧嘩騒ぎを起こすから始末が悪い。とくにオスとメスを同時に飼って,いずれは我が家に子犬や子猫を……と夢見ているならば,2匹の組合せは相当慎重に考えよう。かなり苦労させられることもあるからだ。
可愛い子にこそ愛のムチを……打てないほど可愛い
家を購入して引っ越した途端,さっそく穴堀りを始めるうちの子。しつけだけではなく,欲求を満たすためのオモチャも買い与えなければ,そのうち穴ぼこだらけにされてしまう |
新たに家族の一員となったペット達。庭を駆け回る犬や,虫を追いかけて前足をチョイチョイと動かす猫のリアルな仕草に,動物好きな人はついついウットリと目を細めてしまうだろうが,やらねばならないことは山積みだ。シム人とは異なり,ペットはプレイヤーが直接操作できないため,新たに作成したペットには,まずしつけが必要となる。やんちゃなペット達は,家の中ではやりたい放題。猫のために爪とぎ棒を,犬のために噛む骨型オモチャを買い与えてやっても,それらに見向きもせず平気でソファをバリバリとひっかき,しまいには家具を壊してゴミに変えてしまうのだ。仕事から帰って疲れたシム人を寝かせようとしたところ,ソファはおろかベッドまで破壊されていた日には,正直かなり情けない気持ちになる。
悪いことをしていたら,その場ですぐに叱らねばいけないのは,現実の動物と一緒。いたずらを見つけたらペットをクリックして「しかる」を,逆に良いことをしていたら「ほめる」を選んで学習させよう。この「しつけ」も,目的次第で応用が利くのがシムズ2らしいところ。というのも,家具の上やシム人のベッドに乗りたがるペットを,あえて叱らず褒めてやれば,常にシム人と添い寝する甘えん坊なペットに育成できたりするわけだ。クルンと丸まってベッドの上で眠る猫が「かわいいなぁ〜」と思うなら,そんな育て方をしてみよう。
しつけとは別に覚えさせられるのが,「命令」コマンドだ。こちらは「おいで」や「死んだふり」「ちんちん」といった,いわゆる「芸」がメイン。シム人の子育てをしたことのある人なら分かるだろうが,幼児期のシム人に実行可能な「おまるを教える」「話し方を教える」と同様に,ペットに対して「命令を教える」を実行。根気よくこれを繰り返し,ペットの頭上に表示されるバーが満タンになれば,一つの命令を習得してくれる。一度覚えた内容は「命令する」コマンドから,いつでもペットに実行させられる。気が向いたときに,お手だの死んだふりをさせて可愛い姿を堪能するのも良いが,命令はそのためだけにあるわけではない。
ペットは,ただ可愛くて心を癒してくれるだけの存在ではなく,なんと仕事でお金(シムリオン)を稼いできてくれる忠義者なのだ。新聞やコンピュータを使って,「セキュリティキャリア」「ショウビジネスキャリア」「サービスキャリア」の3種類から仕事を選択できる。まじめくさった言葉に聞こえるが,番犬,タレント犬,介護犬と,確かにどれもペットの仕事としては納得である。
シム人と同様,勤務時間の1時間前には自宅前に迎えの車が到着する。仕事には昇進に必要な条件として,覚えているべき命令が設定されており,きちんとサボらず勤務したうえで,必要な命令を覚えていれば,より高い地位に昇進できるわけだ。
まあ,シム人の職業に比べれば昇進の段階も少なく,もらえる金額も少ないが,ペットがキャリアの頂点を極めると「シム・ギフトコード」のロックが解除され,新しい柄の首輪やボディカラーが出現するというメリットもある。この首輪やボディカラーのギフトコードは共有可能なので,ザ・シムズ2をプレイしている友人がいるならば,お互いに持っていないコードを交換し合うのもいいだろう。
もし,操作しているシム人が仕事に忙しくて,しつけをしている暇がない……というならば,「ペットトレーナー」を雇用できる。電話をかけてトレーナーを呼べば,教えたい命令の内容とペットを指定するだけで,有料で代行してくれるのだ。
苦悩の産物,パピー&キティの作り方
両親によく似た真っ白い子犬達。シム語は理解できないが,なんとなく赤ちゃん言葉で話しかけていそうな光景だ |
さて,ペット達が家族の一員として落ち着き,しつけも万全となったら,次にやることはただ一つ。子犬or子猫作りだ。ペットが我が子のように可愛い存在ならば,気分は「早く母さんに孫を見せておくれ」といったところ。しかしこの子犬/子猫作り,試してみるとひどく苦戦した。何がいけなかったのか,いまだに原因はつかみきれないのだが,なるべく穏やかで友好的な性格の猫同士,犬同士のペアを作っては試すものの,とにかく毎回険悪な仲にしかならなかった。日に日に友好度はマイナスになり,室内での喧嘩が絶えないだけでなく,しまいには犬と猫がえらい仲良くなったり,オス同士が仲むつまじくなったりで,これでは一向にベイビーは望めない……。
シム人同士の場合は,第2弾拡張パック「ホットナイト」以降,相手の好みや願望がある程度は把握できるようになり,気難しいシム人相手でも比較的楽に恋愛から結婚へと持ち込めるようになった。だが残念ながら,物言わぬペット同士は引き合わせてみなければ相性が分からない。
何度も性格の違う犬同士を飼育した結果,ようやく飼い主とペットの,そしてペット同士の友好度が高いペアが出来上がった。シム人ならばベッドで「ウフフな事」をすれば子供が出来るように,ペット同士の場合でもベッドの代わりに「ペットハウス」を買ってやれば準備万端。あとはどちらか片方のペットに「子犬(子猫)を作る」の命令を与えればよいわけだが,ここでペット同士の仲が悪いと,「フーッ!」と威嚇されて終わってしまう。
このほかにも,ランダムで家に遊びに来るNPCペットと仲良くしておけば,NPCペット相手に「子犬/子猫を作る」命令を出すことも可能。しかしシム人と違い,ペットは電話をかけて自宅に招待できないし,遊びにくるタイミングも気まぐれなので,ちょっと難しい。
苦労して友好度80台という仲の良い犬ペアを作り出し,子犬を作らせようとすると,お互いに歯をむき出して失敗してしまったりする……。2匹の間の友好度が下がらないように,なんとかなだめすかしつつ,ようやくペットハウスでウフフに及んでくれるまでには,プレイヤー側が疲れてしまうかもしれない。
ゲーム内時間で3日ほど経過すると,子犬は突然誕生する。シム人の場合は陣痛らしきものに顔をゆがめ,赤ちゃんがポーンと空から降ってくるシーンがムービーで見られるのだが,ペットの場合は唐突というかシンプルというか,いきなり床の上に子犬が現れる。
親犬よりはるかに小さい子犬の姿は,見ているだけで心が癒され,これまでの苦労が報われるというもの。オモチャにじゃれついたりする姿は,愛くるしいの一言に尽き,ついついリアルライフを忘れて画面に見入ってしまうことだろう。子犬,子猫時代のペットに対しては,しつけは行えるが命令は教えられず,仕事にも当然就けない。この時期はひたすら一緒に遊んで,おやつをあげて,キュートな姿をたっぷり堪能しつつ友好関係を築いておこう。
かわいいけれど情はうつりにくい,ウォムラット&オウム
見た目とサイズはどう見てもモルモットだが,これはあくまで「ウォムラット」らしい。可愛いだけが取り柄の生き物。ウォンバットとモルモットの造語かも? |
犬と猫のことばかり書いてきたが,冒頭に書いたとおりペットライフでは,このほかにも「ウォムラット」と「オウム」,「熱帯魚」が追加されている。E3 2006では「ハムスターでもモルモットでもない謎の生物」として紹介されたペットは結局,ウォムラットという謎の生物のままなわけだが……。
入手方法だが,「購入モード」からオウムなら「トロピコ鳥類保護区」,ウォムラットなら「ファジー哺乳類閉じ込めユニット」,熱帯魚は「水槽」といったアイテムを買う。その後,それぞれのアイテムをクリックして「購入」を選ぶだけで,自動的にケージの中にペットが出現するのだ。
ちょっと残念なことに,ウォムラットやオウムは自由度が低く,手や肩に乗せて遊ばせるのがせいぜいで,基本はカゴに入れたままだ。オウムには言葉を教えるといったスキンシップも多少できるものの,犬や猫に比べると少し物足りない。カゴをクリックすると「〜を自由にする」という選択肢が出るので,もしやウォムラットを部屋に放し飼いできちゃうのかも? と期待してみたが,これは文字通り自由にする,つまり「逃がす」という意味だったようだ。慣れないうちは手をかまれるが,新密度を高めれば手乗りウォムラットになる,なんていうオプションが用意されていれば,もうちょっと愛着も深まったと思うのだが。
最後に,ペットサービスについて少し触れておこう。既存作品ではメイドやベビーシッターなどを雇用できる,電話の「サービス」機能に,「ペット里親紹介サービス」なるものが加わっている。これが冒頭で述べた,ペットを新たに家族に迎える第三の方法だ。
このサービスには「引き取り」と「提供」があり,引き取るときにはお金がかかり,しつけがしっかりしているペットほど高価となる。提供は,どうしてもほかのペットとうまくやっていけない犬や猫を預け渡すことを意味している。引き取られたペットは年をとらないし,また電話をかければ自分の家に再度招き入れることも可能だが,ちょっとゲーム的で,寂しい措置のような気もする。
どのペットも一つ一つのしぐさが実にリアルで,いたずらするときの表情や,シム人に叱られたときのしょんぼり具合など,本当によく再現されている。また,シムシリーズの醍醐味というのは,プレイヤー側の操作コマンドには存在しない,シム人やペットの自由な動きを観察することにあったりする。シム人と共におもちゃで遊ぶ猫も十分に可愛いが,ちょっと目を離した隙に背中を床にこすりつけて猫がうねっていたり,犬が水溜りに飛び込んで暴れていたりと,予想外のしぐさを見せてくれるのだ。
いくつかの拡張パックによって,恋愛や結婚が少し簡単になりすぎた感もあるザ・シムズ2シリーズだが,今回のペット育成はちょっと手ごわい。シム的生活に訪れた新たな刺激を,ぜひとも楽しんでみてほしい。