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「ローズオンライン」(以下ローズ)は韓国Gravity社が開発したMMORPGで,日本ではフェイスが運営を手がけている。2005年8月より正式サービスが開始され,すでに多くのプレイヤーを獲得している作品だが,先般より次期大規模アップデート「エボリューション」に向けてのクローズドβテストが開始されている。既存のサービスと平行し,専用のサーバーを設けてのβテストだ。開発も継続中ということで,全貌を語るには時期尚早かもしれないが,今回のプレビュー記事で,ぜひその片鱗を感じてもらいたい。
■「エボリューション」で何が変わるのか?
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まず基本的なことをおさらいしておこう。「ローズオンライン」は3Dグラフィックスで描かれた可愛らしいキャラクターが目を惹くMMORPGで,親しみやすいファンタジーをベースにしながら,銃器や騎乗用カートといった近未来的要素も盛り込まれている。七つの「惑星」を行き来しながら冒険が楽しめるというスケールの大きさも,大きな特徴といえよう。ゲーム内の「機能」に対して課金するサービス課金方式をいち早く導入したということでも,注目を集めたタイトルである。
システム的には,四つの基本クラス(各クラスには二種の上位クラスが用意されている)とスキルツリー,六つの能力値,二次転職,NPCによるクエスト,精錬/強化スロットによる装備カスタマイズなど,韓国製MMORPGの基本に忠実で,初心者にもプレイしやすい作りとなっている。
さて今回の「エボリューション」での大きな変更点は以下のとおり。
- 新しいスキルの実装/スキルツリーの改良
- 装備のクラス専用化
- インタフェースの変更
- 一部マップの変更
- 既存モンスターのリデザイン/再配置・新モンスター追加
- 「女神アルアの降臨」の実装
- 精錬システムの変化
- 二人乗りカート,武装カートの実装
- ソケットのないアイテムにソケットを追加する"ジャミングシステム"
基本的にはバランス調整や細部の改良がメインだが,いくつか新しい要素もあるので,順番に解説することにしよう。
なお上記で赤字の部分は,原稿執筆時には未実装であったため,その紹介は後日を期したい。
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スタート地点近くの神殿。新しいフィールドに冒険の期待が高まる | 新しいインタフェースに,新しいモンスター。新しい驚きが待つ「エボリューション」の世界 |
■より「らしさ」を追求したキャラクターへ
まずはキャラクターの成長に関する要素から。
「エボリューション」では,スキルツリーに大規模な変更が行われている。新しいスキルが追加されたほか,既存のスキルでも変更が加えられたものが多い。ツリーの外見も文字通りのツリー形式で表示されるようになり,キャラクターの成長具合が把握しやすくなった。
また,能力値のみが装備条件だったいくつかの装備品にも,クラスによる制限が新たに設けられた。これらはどれもクラスの特色を強調していくための変更であるといえよう。
以上のような変更要素は,ローズにおけるキャラクター育成の定石を,一変させるものになるかもしれない。その点に関しては,正式導入後に,プレイヤーそれぞれが検証していくこととなるだろうが,現状のローズを隅から隅まで遊び尽くしたという人にとっても,新たな楽しみとなるのではないだろうか。
「女神アルアの降臨」は,ごく低い確率で,プレイヤーの側に「女神アルア」がやってくるというシステム。女神アルアが降臨している間,キャラクターの能力が大きくアップするというのだが……,これに関しては,残念ながら筆者のプレイではお目にかかれず,その条件(女神アルアを降臨させやすくするポイントなどがあるのだろうか?)は不明だ。とはいえ,「ローズ」の世界観と密接につながっている女神アルアの実装は,古参のプレイヤーにとっては,実に嬉しいアップデートである。
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スキルツリーが可視化され,分かりやすく。取得条件も把握しやすい | スキルの一新に戦闘のバランスも激変。キャラクターの育成にも幅が増えるか? | 女神アルアの降臨。お目にかかれたら相当にラッキーかも? |
■インターフェイスはWindows XPのLunaライクに
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エボリューションでは,キャラクター選択画面やユーザーインタフェースなどもリファインされている。
キャラクター選択画面についてだが,これまでローズのキャラクター選択画面は,神殿風の建造物をバックにしたオーソドックスなものだった。しかしエボリューションでは,「キャラクター達の住む家」が選択画面になっている。キャラクターを選択したときのリアクションも可愛らしく,実にゲームの雰囲気に合った選択画面である。
なお,キャラクターメイクの際に選べるグラフィックスパーツも,男女ともに数種類ずつ追加されている。グラフィックス(とくに顔パーツ)の好みは人それぞれだろうが,こうしたキャラクターの個性を演出するための要素は,プレイヤーとしては実に嬉しいものだ。
ゲームの新たな基本画面構成は,Windows XPのLunaスタイルに似たブルー基調の配色と,透過ウィンドウによるデザインが目に優しい。
これまで左上に集中していたメニュー表示が右下に移動され,いくつかの情報ウィンドウも統合された。実際に各種情報チェックやメニュー操作をしてみた感触としては,「より直感的な操作がしやすくなった」印象がある。
これまで一つだったショートカットウィンドウも2列になり,より多くのスキルを登録できるようになった。そのほか,従来のAltキーを絡めた2ストロークのキーバインドや,チャットEnterと併用になる1ストロークショートカットも利用できる。好きなほうを選ぶといいだろう。
また,NPCとの会話中,相手のバストアップグラフィックスが表示されるようになった点も見逃せない。これまでのポップアップウィンドウによる会話より,格段に「会話をしている」感じが強まり,ストーリーへの没入度が増しているのだ。世界観やストーリーを重視するクエスト重視派プレイヤーには,とくに嬉しい変更要素といえる。
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従来のウィンドウから色調が統一され,見やすい画面に変更されている | アクティブモンスターのいる場所だと会話中に攻撃されて反撃できないのはちょっと困りものだが |
■初期チュートリアルを一新するフィールドの拡張
ワールドの変更は,主に序盤のフィールドである「冒険家の草原」に関するものだ。従来のチュートリアルフィールドであった「誕生の島」が廃止され,新規のキャラクターはより広い「冒険家の草原」からスタートする。
チュートリアルフィールドは廃止されても,チュートリアルクエストは健在で,最初はこの冒険家の草原を舞台に,基本操作や戦闘方法,買い物,クエストなどについて学ぶことになる。しっかりとしたチュートリアルが搭載されている点は,ややカジュアル傾向の強い作品の性質上,素直に評価していいだろう。
そのほか,新規モンスターが100種類以上追加され,惑星ジュノンや惑星ルナーの出現モンスターが配置変更されたほか,一部の既存モンスターの強さも調整されている。新規プレイヤーは驚きと興奮に満ちた戦闘を,既存プレイヤーは新鮮さに溢れた戦闘を楽しめるはずだ。
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惑星ごとの全体マップが表示できるようになり,各フィールドの繋がりが分かりやすくなった | 冒険家の草原で行われる序盤のクエスト。イベントシーンもより冒険らしくなった? | 同じ種族のモンスターでも,グラフィックスや強さは異なっている。積極的に戦闘をこなし,キャラクターだけでなく,プレイヤーとしての経験も積んでいこう |
■装備品の強化システムがシンプルに
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生産職であるディーラー系統にとっては大きな変更。新しい装備も追加されるので期待しよう |
ゲーム内で高値で取り引きされる武器や防具,およびその強化アイテムにも変更が入っている。これまで武器や防具の精錬には,その材料として「化学品」と呼ばれるアイテム群が必要だったが,エボリューションでは,武器は「タリスマン」,防具は「バインドルーン」というアイテムで精錬できるようになった。タリスマン/バインドルーンには1〜9の等級があり,武器の等級に応じたものが必要になる。
以前のシステムでは,材料アイテムの組み合わせにより成功率が変動するため,選択肢こそ多いものの,やはり少々煩雑だったことは否めない。エボリューションでの精錬ならば,初心者〜中級者でも,より気軽にチャレンジできるはずだ。
さらに,アイテムから材料や宝石を取り出す「分解」システムも,すべてのプレイヤーが行えるよう変更された。ディーラーの特徴である分解が一般化されることには賛否両論あるだろうが,「製造」スキルがディーラーの特権であることには変わりない。より多くの材料アイテムが市場に溢れることで,製造効率も大幅にアップするはずだ。
■生まれ変わる「ローズ」の目指す"進化"とは
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さて,エボリューションの特色をザッと紹介してきたが,いかがだっただろうか。筆者(主にディーラーキャラクターでプレイ)の個人的な感触としては,よりユーザーフレンドリーになった各種仕様が心地よく,キャラクターも比較的サクサクとレベルが上がるので,ストレスなくプレイできた。
限られた時間の中でのプレイということで,エボリューションの魅力をすべて味わうことはできなかったものの,七つの惑星という広大な世界や,多くのクエスト,個性的な装備品の数々など,MMORPGとしての「コンテンツ」の豊富さはかなりのもの。ローズでも頻繁にゲーム内イベントが行われているので,エボリューションが正式稼働した後も,活気ある冒険/生活が楽しめそうだ。
今回のプレビューでは,エボリューションの新要素に重点を置いて解説してきたが,エボリューションの最も重要な改革とは,実はバランス調整面にあるのではないか,とも思える。MMORPGにあって,大規模なバランスの変更が,いかにゲームの様相を一変させるかは,ローズに限らずほかのMMORPGでも,身をもって経験したという人が多いだろう。
例えばあまり大きく告知されておらず,上でも触れなかったが「二次転職レベルの引き上げ」などは,実のところとんでもなく大きい変更だったりするわけだ。こういった部分は現役プレイヤーでなければ分かりづらく,安易に是非を判断できないものの,これこそが「エボリューション」という名前を冠する理由であるはずだ。
現行バージョンと平行したβテストという対応をとったGravityおよびフェイスの判断は,おそらく正鵠を射ている。ゲームバランスという繊細な要素を,プレイヤーによりオープンな形で作り上げていく姿勢には,意見を真摯に汲み取ろうという積極的な意思の表れだろう。
そしてそれがいかに重要なことであるかについて,彼らは非常に自覚的であるように思う。第三次クローズβテストも近々に行われるとのことで,エボリューションの(スタートラインとしての)完成形も徐々に見えてくるだろう。
現在参加しているテスター,そしてこれからテストに参加するテスター共々,ぜひとも積極的に意見を出すようにしてほしい。それが,まだ見ぬ新生「ローズオンライン」を,より多くのプレイヤーに望まれた形へと,“進化”させることとなるだろう。
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