レビュー : The Elder Scrolls IV: Shivering Isles

レビューコンテスト佳作作品

Darongさん作 「The Elder Scrolls IV: Shivering Isles」

2007年8月10日

※レビューコンテストの性質上,エントリー原稿をそのまま掲載します。ただし,諸般の事情により4Gamer編集部で,必要最低限の修正を行っている場合がありますので,ご了承ください

 

奇妙なポータルが出現した。転送先は,狂気の王子‐Sheogorathが創造したShivering Isles。プレイヤーはSheogorathの下で,“Greymarch”を止めるため奔走することになる

 4Gamerの読者ならご存知のファンタジーRPG「The Elder Scrolls IV: Oblivion」。その初の拡張パックが「The Elder Scrolls IV: Shivering Isles」(以下,SI)だ。発売から三ヶ月が過ぎて,遊び尽したというプレイヤーも多いだろうし,さまざまな媒体で本作のレビューに触れたこともあるだろうが,「興味はあるけれど,プレイしようか迷っている」という貴方に,その魅力を今一度お伝えしたい。

※Oblivion本編に関しては,こちらに詳しいレビューがあるので参照して欲しい。

 

 

 Oblivionの発売以降に追加されたデータパックは8個。しかしそれらは「プラグイン」で,呪文やアイテム,数個のダンジョンに小規模なクエストの追加に留まっていた。SIは「エキスパンション」である。まずは本作の特徴を簡単に紹介しよう。

(1)エリアの追加:
「飽和状態に達しているCyrodiil(Oblivion本編の舞台)のマップにエリアを追加する」‐Bethesda Softworks(開発元)のスタッフは,この難題に「ポータルを介して往来できる別世界」という答えを出した。反則気味の感は否めないが,本編の世界観を損なうことなくシュールなエリアを追加することに成功している。

(2)クエストの追加:
SIで用意されたクエストには,16編のミニクエスト(分岐点が設けられていて,実際には18編ある)で構成されたメインクエストと,10編を超えるサブクエストがある。メーカーのコメントでは,メインクエストのクリアに要するプレイ時間は30時間以上とのことで,ボリューム感はそれなりにあると言える。

(3)アイテムの追加:
武器に防具,書物にIngredientsなども追加された。武器と防具が物足りないが,Oblivion自体,アイテムのバリエーションが少ないので,拡張パックという位置付けを考慮すると適量かとも思える。そもそも,これは主観でしかないのだ。Ingredientsは主にポーションの調合に用いる材料である。

(4)クリーチャーとNPCの追加:
10種類を超えるクリーチャーが追加された。姿を消したり巨大化したり,アクロバティックな動作をするものや,敵意の無いものまでいる。敢えてNPCも追加要素に加えたのは,味のあるキャラクターが目に付いたからである。筆者はクエストに無関係なNPCの言動に魅力を感じるのだ。

 マジックやトラップなども増えたが,新種族は追加されていない。残念である。それでは,もう少し詳しく見てみよう。SIの魅力を少しでもお伝えできれば良いのだが……。

 

 

「狂気の王国」は,非現実的な景観をも甘受させる理想的なテーマ

 

 SIの最大の売りは「新しいRealm(エリア)の追加」にある。ゲームデータを思いのままに修正できるコンストラクションセットが無料配布されている以上,単にエリアを追加しただけでは,プレイヤーは納得しない。マスタークラスのスキルを身につけたキャラクターを操るコアなファンから,Oblivionに触れたことのない新規のプレイヤーまでをも満足させるテーマが必要になる。また,既存の地形データを編集しただけでは新鮮味に欠けるし,新たなテクスチャはゲームの世界観を損なうことにもなりかねない。Bethesda Softworks(開発元)のスタッフは,それをよく理解していた。ポータルを介して往来できる別世界‐斬新な発想では決してないが,狂気の王子が創造した島という設定は実に的を射たものである。

 Shivering Islesの大きさはCyrodiilの4分の1程度である(Oblivionをプレイした経験のない方のために,キャラクターを走らせて実時間を計測した。島の外周を道なりに一周して約15分。諸々の条件によってスピードの増減はあるが,目安として捉えて頂きたい)。この島は南北で様相が異なる。南側が,視認性が低く陰湿な沼地が点在する「Dementia」サイド,そして北側が,シュールで色彩豊かな植物が生い茂る「Mania」サイドとなっていて,それぞれが独自の雰囲気を持っている。
 Oblivion本編にも平坦な土地はほとんど無かったが,SIでは丘陵や山岳が増えて,よりアップダウンが強調されたマップになった。20を超えるダンジョンの構造もまた然りで,Cave(洞窟型のダンジョン)の内部は絡み合う枝が高低差を生み,Fort(廃墟型のダンジョン)の内部はより広く,より多層化された。複雑化した構造がキャラクターの直線的な移動を阻み,戦闘に幅を持たせている。

 

起伏に富んだ地形はマークスマンの独壇場。間合いがじゅうぶん取れるので,射的ゲームのような楽しみ方も可能だ Fortの内部。部屋,階段ともに広めに作られている。視認性は高いのだけれども,見えすぎると案外緊張するものだ

 

 ダンジョンのトラップにも進化が見られる。プラント(Ingredientsを採取できる植物)だと思って近づくと麻痺したり,ドアのロックを外すボタンだと思って押してみると落とし穴に落ちたりと,Oblivionに慣れ親しんだプレイヤーが容易に引っかかるトラップが増えていて,ニヤリとさせられる。

 

 

「一本で二度美味しい!?」‐分岐するメインクエスト

 

クエスト報酬として得られるアーマーである。なかなかの垂涎ものだが,分岐点での選択次第で入手できないこともある

 SIのメインクエストは流れるようなリズムで展開し,時間を忘れてプレイしてしまう。ストーリーの中間地点には分岐点が設けられ,選んだ結果によって展開が異なり,得られるアイテムも変わる。違う選択をしていたらどうなっていたのか,後で気になることだろう。結末に関するご質問にはお答え致しかねるが,メインクエストを終えた後にやり直す価値があるのかと問われれば,筆者は「もちろん」と答えるだろう。
 謎解きも凝ったものが増えている。松明を持って走り回ったり,クリーチャーを利用したりと,クエストを解く楽しみも増したと言える。

 

倫理的に躊躇するような選択肢でも,喜んで選んでしまう。教育上よろしくないが,ここは狂気の王国なのである

 SIにはサブクエストも用意されている。使いっぱしり的なものが多いが,これが結構面白い。勿論,単純なお遣いクエストばかりではない。クリアに根気と時間を要するものや,クエストログ自体が表示されないものまである。サブクエストの発生条件の多くが「トリガーとなるNPCとの会話やアイテムの発見によるもの」なので,これらを探すことも楽しみである。クリアの「ご褒美」も,マジカルアイテムからスキルポイント,ペット(といっても飼いならすことはできない)まであり,次は何を貰えるのかと,こちらもつい夢中になってしまう。

 

 

初登場の交換システム

 

せっかくなのでAmber Armorを一式揃えてみた。ライトアーマーだが,パーフェクトクラスのものなら防御力もそこそこある

「Matrix」とそれに対応する「Amber」か「Madness Ore」を必要数用意すると,特殊能力が付加された武器や防具が手に入る。
 装備品はキャラクターのレベルに応じて攻撃力/防御力が上がるが,グラフィックの変化は見受けられない。また,装備品は「Amber」と「Madness」に一種類ずつしかない。バリエーションを増やしてほしかったと思うのは贅沢だろうか。
 これも数が少ないが,ユニークアイテム(複数の魔法効果,または特殊能力が付加されたアイテム)の追加もある。高レベルのキャラクターはベースアイテムをメイジギルドなどに持ち帰ってエンチャントしたほうが強力な物が得られるが,エンチャントに必要な条件が整わない場合や,新たにキャラクターを作成してSIからプレイするというようなケースでは重宝するだろう。朝晩6時を迎えるごとに付加能力が切り替わり,なおかつリチャージされる剣などは今までに無かった物で,なかなか使い勝手がよろしい。
 書物は,追加されても感動が薄い。英語なんだもの。あまりの数に,めまいさえ覚えるほどだ。スラスラっと読み流せるほどの語学力を身に付けたならばSIの世界をより楽しめるとは思うのだが……(開くだけでスキルアップするものもあるので,見慣れないタイトルの書物をみつけたら,とりあえずクリックすることをお薦めする)。
 SIで初めて登場する奇妙な植物からは,新種のIngredientが採取できる。クリーチャーから手に入る物も合わせると,その種類は30以上に及ぶ。Alchemy(薬剤を合成するスキル)のレベルが低い内はその恩恵に与れないが,合成マニアは諸手を挙げて歓迎するだろう。未だ見ぬIngredientを捜し求める旅も一興である。

 

 

種類は少ないが個性的な新クリーチャー

 

 新規のクリーチャーはおよそ12種類。それぞれに亜種が存在し,生息地域によって形態が異なる。Cyrodiilで目にしたものは一切出現しない(Skeleton Championを除く)。
 冒頭にも記したが,クリーチャーは様々なスキルを身につけている。SilenceやInvisibilityなどのillusion spellを唱える,プレイヤーの疲労耐久度を下げる,攻撃を受けると巨大化する等々……。曲芸師並みの動きをするクリーチャーには思わず見入ってしまい,瀕死の状態に追い込まれたことが何度もあった。プレイヤーのレベルに応じてクリーチャーも強くなるので,どのレベルからSIを初めても同じように楽しめる。

※これもまた残念なことに,飛行及び浮遊タイプのクリーチャーは存在しない。BladeやBluntタイプのキャラクターが不利になるからなのだろうか。一度でいい。空を飛び交うドラゴンと戦いたいと願う筆者はマークスマンである。

 

 

 ――どうだろう。少しはお役に立てただろうか。筆者の拙い文章ではイマイチだろうか。ここまで読んでまだ迷っている貴方は,逆に言えば脈アリである。思いきってOblivionの世界に飛び込むことを推奨しよう。Xbox 360用とはいえ,もうすぐ日本語版が発売されることだし(SIは未収録),公開時期は来年の春以降になるようだが,PC用の日本語MODも公開予定なのだ(こちらもSIは未収録だと思われる)。Oblivionはまだまだ熱い。SIが最初で最後のエキスパンションだそうだが,ここで貴方が加わって,更なる盛りあがりを見せればもしかして……なんてね。

 

 

タイトル The Elder Scrolls IV: Shivering Isles
開発元 Bethesda Softworks 発売元 2K Games(Take-Two Interactive Software)
発売日 2007/03/26 価格 29.99ドル
 
動作環境 OS:Windows XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/2GHz以上[Pentium 4/3GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce FXまたはRadeon 9000以上[GeForce 6800またはRadeon X800以上推奨],グラフィックスメモリ:128MB以上

(C)2007 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. All Rights Reserved.
(C)2007 2K Games.

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