― レビュー ―
多彩な武器と派手なアクションでテンポ良く楽しめる
ファンタシースターユニバース
Text by midi
2006年11月7日

※以下の記事は,2006年10月29日時点でのゲーム内容をもとに制作しています。あらかじめご了承ください。

 

 「ファンタシースターオンライン」(以下,PSO)のドリームキャスト版が登場してから約6年。セガの看板RPG「ファンタシースター」シリーズの名を冠し,“鳴り物入り”で2006年8月31日に発売された「ファンタシースターユニバース」(以下,PSU)だが,サービス開始直後から接続障害などのトラブルに見舞われ,不安定な状態が最近まで続いていた。その後,サーバー分割などさまざま対策が講じられ,ようやく落ち着いてきた本作のレビューを,満を持してお届けしようと思う。

 

 

MOならではの密度があるパーティの概念

 

本作はMOタイプのアクションRPG。現在はハロウィンイベントが開催されていて,ロビーはカボチャだらけ(10/29現在)

 まず基本的なことから説明しておくと,本作はMMORPGではなくMOタイプのアクションRPGである。ロビーとなる街には,そのサーバーにログインしているプレイヤーキャラクターが一同に表示されるが,そこからパーティを組んで戦闘に移る(ルームへと移動する)ときには,MOスタイルへ移行し,最大6人での冒険となるのだ。これはPSOから継承されているスタイルで,シリーズを通してプレイしている人にはお馴染みのものだ。6人での戦闘と書くと,MMORPGに慣れている人にしてみれば「ちょっと小規模ではないか?」と思われるかもしれないが,後述するミッション主体の本作のプレイスタイルによって,小規模すぎて不満,などと感じることはない。逆にコンパクトにまとまっているぶん,密度が増しているように思えるほどだ。

 

 本作の核となっているミッションについて細かく見ていこう。
 冒険に出る際は,まずミッションカウンターでミッションを選択する。ミッションは,行われる場所や難易度(ランクと呼ばれている),目的などがさまざまに設定されている。本作での冒険はすべて,ミッションを選択後に戦闘フィールドに移動する,という流れになるので,キャラクターのレベルに合ったものを選ぶのが基本だ。

 

 ミッションを選択すると,次はルーム作成となる。一ルームに最大6人のプレイヤーが入り,パーティを組んで冒険へと旅立っていくわけだ。ほかのプレイヤーが作成したルームには,ミッション進行中でも自由に参加可能(乱入と呼ばれる)で,逆に自分が作ったルームにほかのプレイヤーが乱入してくることもある。また,ルームにはパスワードを設定できるので,知り合い同士で遊びたいというときには活用するといいだろう。
 ゲーム上ではパスワードが設置されていない乱入可能なルームもかなりの割合で存在しており,そういう部屋では,ほかのプレイヤーとの冒険/交流が広く行われている。筆者もルームを作る際は,特別なことがない限りパスワードをかけないようにしている。どんどんほかのプレイヤーに入ってきてもらい,そこで新しい友人を作ろうと思っているからだ。パーティを組んだ人とすぐに打ち解けられるのも,区切られた空間内で目的を共有するMOスタイルの利点だ。

 

パーティを組んだら,カウンターにてミッションを選択。パスワードの有無,アイテムの分配方法などを設定できる  仲間が多いと,そのぶん冒険も賑やかに。ワイワイした雰囲気のなか,敵モンスターを狩りまくり! 受けられるミッションは惑星によって異なり,森林地帯や渓谷などさまざまな冒険の舞台が用意されている

 

 

戦闘システムは,過去作を踏襲しつつも大幅強化

 

ミッションによっては,エリアの最後にボスがいる場合も。ディ・ラガンは初心者にとって最初の壁となるドラゴン型のボスだ

 ミッションに関する説明が終わったところで,次は肝心の戦闘システムについて。こちらはPSOのシステムを発展させ,より爽快感のあるものになっている。PSOでは,ロックオンした敵に対してポン,ポン,ポンと3連続でタイミングよくボタンを押すことで連続攻撃が可能となっていたが,本作ではタイミングによる連続攻撃は廃止されており、適当にボタンを叩いているだけで連続攻撃が繰り出せるようになった。そのおかげで,敵を次々と倒していく爽快感がさらに強まり,初心者でも遊びやすいものとなっている。

 

 またPSOでは,キャラクター作成時に選択したタイプ(クラス)は変更できず,種族によって選択できるタイプも固定されていた。だが本作では,条件さえ揃っていればプレイ中いつでもタイプ変更が可能となり,どの種族でも自由にタイプ選択が行えるようになった。さらに各タイプに使用武器による明確な変化を持たせ,プレイヤーごとに,より特徴あるキャラクターを作れるようになったのは大きな改善点だ。

 

 戦闘における改良点としては,武器,防具の種類が一気に増加したのも見逃せない。以前から,ソード系の武器を一つ取っても,大剣系,セイバー系,ダガー系,ダブルセイバー系など,さまざまな種類が用意されていた。本作ではさらに,スピア系やナックル系,ロングボウ系といった新たな種類が追加され,合わせて戦闘スタイルも一気に増えている。さらに,武器はウェポンショップで販売されているものだけで,3系統に分類(武器製造メーカーが3社ある,という設定のため)されており,細かい特徴付けがなされているところも心憎い。こういうちょっとしたところで違いを出す手法は,設定が細かく作り込まれたファンタシースターシリーズならではだろう。

 

 しかし,武器/防具の数が増えたことには,正直に言うと功罪の両面があるといった感じ。というのも,これら武器/防具のいくつかは,これまでに行われた度重なるアップデートでパラメータが大きく変わっているためだ。極端な話だが,苦労して手に入れた武器が,アップデート後にはまったく役に立たない鉄クズに変わってしまうことだってあり得るわけだ。アイテム数が大幅に増え,しかも運営が始まったばかりでバランス調整がまだ十分ではないのは理解できるが,このあたりは早く安定させてほしいと願うばかりである。

 

武器屋ではさまざまな武器が売られている。また,店舗によって陳列されている武器も違うため,いい武器を入手したいならいろんな店を回ろう 武器には,店で売られている通常武器以外に,イベント用に用意されているレアものもある。こちらは超高価な両手杖パンプキン・ヘッド それぞれの武器には,リーチや威力,攻撃速度といった能力が設定されている。キャラのタイプに合わせて最適なものをチョイスしよう

 

 

戦闘をおもしろくするフォトンアーツの存在

 

フォトンアーツは武器屋で購入できる。買ったあと,対応する武器にリンクすることで初めて使用可能となる。リンクを忘れずに

 戦闘システムを語るうえで,本作から導入されたフォトンアーツの概念を外せないだろう。これは,ややもすると単調になりがちな戦闘の楽しさを,一気に倍増させてくれるシステムだからだ。このフォトンアーツは,一定のフォトンを消費することで使用できる技のことで,既存のオンラインゲームでいうところのスキルに当たる。本作では,PSOでスペシャル攻撃として分類されていたものを,さらに発展させたものとして存在している。
 フォトンアーツは各武器に対応していくつかの種類が用意されており,レベルを上げれば攻撃回数が上がったり,攻撃力そのものがアップしたりする。フォトンアーツを戦闘に組み込んで活用していけば,冒険が相当楽になるはずだ。フォトンアーツの種類はかなり多いので,すべてのタイプ/武器に対応したものをレベルMAXにするまでやり込んでみても面白いだろう。なお本作では,テクニックもフォトンアーツの一部として扱われており,杖などの武器にそのフォトンアーツを装備することで初めて使用可能となる。前作でフォースを使っていて,本作でもフォースを育てたいと思っている人は,注意していただきたい。

 

フォイエやバータ,レスタといったシリーズでおなじみのテクニック(魔法)も,本作ではフォトンアーツとしての扱いだ フォトンアーツ“ボッガ・ダンガ”発動! フォトンアーツには見た目が派手なものも多く,戦闘を盛り上げてくれる

 

 

多数用意されたロビーアクションにセガの本気を見た

 

ガーディアンズ本部にあるカウンターでは,タイプを変更可能。基本タイプはハンター,レンジャー,フォースの三つ。その上位職も用意されている

 さてここからは,戦闘以外の部分についても詳しく触れていこう。まずはロビー内での動作について。これに関しては,特定のキーを押すことで発動する「ロビーアクション」の種類が,大幅に拡張されたことに尽きるだろう。挨拶や感情表現のポーズといった基本的なものはもちろん,バック転やツッコミ,さらにはアイドルっぽいダンスなんてものまである。
 また,メッセージが表示される吹き出しにさまざまな効果が付けられるようになったのも,チャットを楽しむうえで大いに役立っている。重要なメッセージを送りたいときに吹き出しを大きく揺らす,なんてことも可能だ。とあるロビーにて「いまこの人が私のお尻を触りました!」というメッセージが,大きくブルブル震えながら表示されていたのを見たときは,大笑いしてしまった。

 

 さらに,マイルームの概念が加わったことも大きな追加要素の一つだ。マイルームでは,外見を変更するお洒落アイテムである,服やパーツの着替えが自由に行えるドレッシングルーム,パートナーカードをもらった人のマイルームへの移動が行えるビジフォンなどが設置されている。さらに,ショップにて購入できるルームアイテムを置いてデコレートも可能で,マイルームをカスタマイズする楽しさも用意されている。このマイルームの模様替えはかなり自由度が高く,お金さえあれば部屋一面に洋式便座を敷き詰めるなんていう愚行(?)も可能。このあたりはプレイヤーの遊び心が試されそうな感じだ。
 また,PSOではアイテムの処分などはわざわざお店に行って売るなりしなければならなかったが,今回はマイルームでショップ(露店のようなもの)を開くことが可能となった。ほかのプレイヤーが開いているショップの検索や,検索したショップへの移動は,上述のビジフォンから行えるのでうまく活用してほしい。

 

 そして忘れてはならないのが,パートナーマシナリーの存在だ。これは,アイテム合成,アイテム管理などを行ってくれるマスコットキャラのようなマシンで,プレイヤーのお世話係的な存在。さまざまな形で冒険のサポートをしてくれる。ちなみに,このパートナーマシナリーは,アイテムを与える(食べさせる)ことにより成長し,与えたエサによって姿が変わっていく。美少女キャラに成長するという噂もあるが……このあたりはその目で確認していただきたい。

 

用意されているロビーアクションは多種多彩。一昔前のギャグマンガのような,大袈裟に驚くポーズなどもある Tabキーを押しながら発言すると,このようにキャラの顔がカットインで表示される。感情を伝えたいときに使うと便利だ マイルームは自由自在にカスタマイズ可能。部屋に置けるアイテムもかなりの数が用意されている

 

マイルームでは,運営側からのメッセージも確認できる。ミッションの配信情報などはここで確認しておくといいだろう マイルームではショップを開設可能。不要になったアイテムを売りに出せば,お金も得られるし処分もできる パートナーマシナリーは,見た目のかわいらしさに反して超高性能。アイテムの合成なども行ってくれる

 

 

オフラインモードで物語を把握しておくべし

 

オフラインでは,ストーリーモードとエクストラモードの二つが選択可能。エクストラモードは一定の条件を満たすと遊べるようになる

 本作を語るうえで重要な要素の一つに,オフラインモードの存在が挙げられる。システム周りは当然オンライン要素を省いたものになっているが,その代わりに演出面,ストーリー面にはかなり力が入れられている。

 

 簡単に説明するなら,オフラインモードの要素の一つである,ストーリーモードは,主人公のイーサンになって章立てのドラマを体験していくというもの。壮大なスペースオペラが展開される物語,個性的な登場キャラ達,そしてテレビアニメを模した演出にはニヤリとさせられた。もう一つ用意されているエクストラモードは,プレイヤーが作ったキャラを使って,ストーリーモードで登場したミッションをこなしていくという,やり込み専用のモード。ここで作ったキャラをオンラインモードで使うことはできないが,オフラインで一人でコツコツと遊びたいという人にはうってつけのモードだろう。

 

 もっぱらオンラインモードで遊ぶという人にとっても,ストーリーモードでの物語には,この世界で何が起こったのかを知る重要なキーワードが随所に散りばめられている。オンラインモードの合間にちょこちょこ遊び,知識を得ておくと,オンラインモードがさらに楽しくなること請け合いだ。

 

ストーリーモードでは主人公イーサンを操作し,グラール太陽系で巻き起こる事件を解決してゆく。イベントも満載だ ストーリーモードでは,一度仲間になったキャラクターは,いつでもパーティに誘える。もちろん,彼らを率いて冒険できる

 

 

長く愛される作品になるかどうかは,運営次第?

 

エクストラモードでは,オンラインモードと同様に,自分で作ったキャラクターで冒険する。オンラインモードとのキャラ共有はできないので注意

 さて,さまざまな視点から本作について述べてきたが,総じて評すれば,アクションRPGとしては秀逸の部類に入る作品といえる。根幹となるシステムはPSOから引き継がれたしっかりとしたものだし,本作から追加された細かな部分もかなりの作り込みがなされている。純粋に,ほかのプレイヤーと冒険するのが楽しいと思えるネットゲームに仕上がっており,PSOからのファンはもちろん,本作からプレイを始める人にも安心して遊べる内容となっている。

 

 その一方,冒頭でも述べたように,運営開始直後から発生したいくつもの不手際によって,本作に期待を持っていたプレイヤー達を悲しみのドン底に叩き落としてしまった事実も忘れてはならない。筆者自身,PSOを愛し,500時間以上プレイしていたが,本作に関しては前述の問題もあって,「ゲームは楽しいんだけど,運営が不安定だからなぁ……」とやや冷めた目で見てしまっている。

 

 しかし,これは裏を返せば,運営さえ順調に軌道に乗れば,プレイヤーに長く愛される可能性が十二分にあるゲームだということだ。拡張ディスク「イルミナスの野望」の発売も予定されており,これからさらに広がりを見せていくであろうPSU。今後のセガの取り組みに期待しよう。

 

ストーリーモードでパートナーカードを交換したキャラは,エクストラモードで自由に仲間に選べる。 エクストラモードはミッションを何度でも遊べる,やり込み専用のモード。ひとりでガシガシ冒険しよう

 

 

追記:11月上旬より「WebMoneyでセガキャッシュを購入する」際に,購入結果が正しく反映されないトラブルが発生している。まがりなりにも課金に関わる部分で,またしてもプレイヤーに不安を抱かせる事態が起きていることはきわめて遺憾だ。告知や対応についても然りである。前回のトラブルからいったい何を学んだのだろうか。レビューでも触れているとおり,運営さえ軌道に乗れば,素晴らしいタイトルになり得るのだから,過去の経験を踏まえ,運営には慎重を期し,伝える必要があることは迅速に伝えてほしい。これらの速やかな改善を期待したい。(noguchi)

 

タイトル PHANTASYSTAR UNIVERSE
開発元 SEGA 発売元 セガ
発売日 2007/07/26 価格 2100円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 2000 SP4/XP(+DirectX 9.0),CPU:Pentium 4/1.60GHz以上[Pentium 4/2.60GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce4 TiまたはRadeon 8500以上,グラフィックスメモリ:64MB以上[128MB以上推奨],HDD空き容量:9GB以上,ネットワーク環境:1Mbps以上,オンボードグラフィックスは動作保証外,DVD-ROMドライブ必須

(C)SEGA Corporation, 2005

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/psu/psu.shtml


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