レビュー : ポスタル2 ロシアより愛をこめて 英語版・日本語マニュアル付

極悪おつかいゲームの新作がついに解禁!

ポスタル2 ロシアより愛をこめて 英語版・日本語マニュアル付

Text by 虎武須(Kobs)
2006年11月21日

※本作の内容から,本レビューは,人によっては過激,不快と感じられる表現を含んでいます,あらかじめご承知おきください。

 

目が覚めると……ない! ナニがない! ていうかここはどこだ?

 

毎度お馴染みの傍若無人な主人公,ポスタル・デュード。パッケージイラストと,えらく雰囲気が違う気がするのだが……

 多くの人には説明するまでもないかもしれないが,Running With Scissorsの「ポスタル2」は,超過激かつ超お下劣なことで有名なFPSである。いくつかの国で発売禁止騒ぎを起こし,クライムゲームの代名詞ともなっているゲームだ。
 アメリカはアリゾナ州の田舎町で,道行く人々を殺して殺して殺しまくるFPS……いや,「超過激おつかいゲーム」と言ったほうが適切だろうか。おつかいの目的は「牛乳を買ってくる」などと庶民的なのだが,その目的を果たすための手段がプレイヤーに委ねられており,平和的に解決するもよし,相手を殺害して強奪するもよしといった感じで,このあたりの歯止め無き自由さが,ポスタル2シリーズのアイデンティティであるといっていいだろう。
 まぁ,平和的に解決していこうとしても,かなりの困難を強いられ,挫折する場合が多い(強制的に撃ち合いに発展する場合もある)ので,結局は手っ取り早い方法(暴力とか)に頼っちゃうことになるんですけどね。ともかく感情の趣くまま行動して,事態をガンガン悪化させてしまうのが,おそらくは開発側が想定するとおりのこのゲームの趣旨と言うことなのだ。

 ポスタル2シリーズではこれまでに,月曜日から金曜日までのステージが収録された「ポスタル2」本編と,土曜日と日曜日のステージを収録した追加パック「ポスタル2 ウィークエンド」が発売されている。「パワーアップキット1」という追加パックも発売されているが,これは音声の日本語化とマルチプレイモードを収録したものだ。
 このたび紹介するのは「ポスタル2 ロシアより愛をこめて 英語版・日本語マニュアル付き」(以下,P2R)だ。日本語マニュアルは付属するものの,ゲームは英語版のまま(字幕表示もなし)という点はご注意を。しかし日本語マニュアルはかなり丁寧に書かれていて,英語が分からなくてもゲームに支障がないほどだ。なお,嬉しいことにP2Rにはポスタル2本編(英語版)が同梱されているので,これさえ買えば二つのシナリオ(計9ステージ)を楽しめるお得な内容となっている。

 さてP2Rでは,お馴染みの主人公「ポスタル・デュード」が目を覚ますと,どういうわけかそこはロシアの病院のベッドの上。しかもナニを……率直にいうと男性器をちょん切られているうえ,記憶までも失っているという,なんとも感慨深いシチュエーションから始まる。
 というわけで今回はロシアを舞台に,もはや(ある意味)男ではなくなったデュードが大暴れするのだ。失われた記憶を辿りながら,一刻も早くナニを奪還して,こんな体にしたヤツらをひどい目に遭わせてやるという,設定の狂気さは明らかにレベルアップしている。
 しかし,ナニが失われたことで,声もしゃべり方も女性っぽくなっており,本シリーズではお馴染みの「放尿」ができない。ポスタル2ファンにとっては大きな損失ということで,そのためにもナニを奪い返さなくてはならないわけだ。
 その代わりといってはアレだが,新しい武器として「悪臭ソックス」なるものが登場する。これは手裏剣のように投げると,跳弾するかのごとく壁で跳ねまくり,周辺を悪臭で充満させるというイカれた武器だ。ほかにもパチンコが新しい武器として登場するが,これらには,ほかの使い方も隠されていそうだ。そのほかスタンガンやガソリン,火炎瓶,ピストル,マシンガン,ロケットランチャーといったお馴染みのエモノは,もちろん健在。どの武器を使って何をするか,真剣に頭を悩ますファンもいることだろう。

 

刑務所の内部。かなり広く,うかつなことをすれば,あちこちから銃弾が飛んでくる これは拷問部屋か? デュードも暴れすぎると,ここに座る羽目になるのだろうか 「動くな! しゃべるな!」と言われ,ゲップとオナラで返事をするのがデュードらしい

 

お馴染みの武器,スタンガン。一定時間,相手の動きを止められる非殺傷武器だ 牛の頭。……使いどころは難しいが,これも立派な武器となるのだ。ぶん投げて使う 新武器,臭い靴下。民家の浴室近くなどでよく発見できる。手裏剣のような飛び道具

 

 

ロシアの人達もあまり変わりはないようで……

 

ピストルを数発撃っただけで,炎を上げて吹っ飛ぶ車。巻き込まれた人は焼け死ぬので,周りに人がいる時には大惨事になる

 P2Rでは,これまでのように妻君から言いつけられたおつかいをするのではなく,「俺のナニを奪い返す」というれっきとした目標があるため,各ミッションも自発的な行動目標といえるものになっている。とはいえ,プレイ感はこれまでのシリーズとまったく同じ。プレイヤーにとっては,それが言いつけであろうが自発的なものであろうが,達成しなくてはならない目標が提示されることに変わりはない。

 P2Rでは月曜日から木曜日までのステージが用意されている。最終日の木曜日を除いて,それぞれ提示される6〜7個のおつかい(ミッション)を達成すべく,街をあちこち奔走することになる。もちろん目的地に着いたからといって,すんなりミッションが達成されるはずもなく,各地でさまざまなハプニングが起こる。平穏無事に事を済まそうにも,それができないのがこのゲームのポイントなのだ。
 ちなみに各ミッションには,制限時間というものがない(というか,そもそもこのゲームには1日の時間の流れという概念がない)ので,途中で寄り道しようが,他人の家を物色しようが自由である。マップは広く,ほとんどの建物に侵入が可能なので,あちこち行ってみるだけでも楽しめることだろう。むしろ,そうしないとアイテム収集が困難なのである。
 もちろん不法侵入行為なので,住人は逃げ出したり,怒って文句を言ってきたり,あるいは発砲してきたりとさまざまな反応を見せる。これにどう対処するかもプレイヤーの自由だ。とは言っても,大きく分ければ,退散するか返り討ちにするかの二択なのだが……。

 町にはいろいろな人達がいる。延々とゲロを吐いている人もいれば,デュードが殺害した死体を蹴る人,デモ行進をしている集団,ダンスしている人などなど。危害を加えたときの反応もいろいろで,悲鳴をあげて逃げ惑ったり,恐れおののき命乞いをしたり,銃を抜いて向かってきたり。プレイヤーの対応もさまざまだろう。
 悪さを重ねると「お尋ね者メーター」が上昇し,このメーターによって警察官の攻撃性が変化する。少しでもメーターが上がっていれば警察官が追ってくるし,限界近くまで上がっていれば,いきなり発砲されることもあるのだ。このメーターは時間の経過と共に下がっていくが,もちろんポスタル・デュードなら警察官とのバトルは望むところだろう。
 また,街には数多くの団体が存在するのだが,一旦それらと敵対関係になると,彼らはデュードを見つけるたびに全員で攻撃してくる。つまり普通にプレイしていても,町には敵がわんさか……となるわけで,結局は開発側が想定したとおりのゲーム進行となるわけだ。

 

マップはいつでも参照できる。おつかいのリストもここに載っているのでマメにチェック こいつは! あのビンラディンでは? と思ったら,変装しているだけの,ただの科学者だ この人,ずっと屋根の上で踊ってるんだけど,何してるんだろう……。変な人が多い

 

自宅に戻ると,何やら家の前でデモが。よくデモの起こるゲームだが,今度は何事? 何者かは知らないが,特殊部隊風のいでたちのカップル(?)。サマになっている この3人は警察官だがダンスの練習に夢中で,銃を構えようが物を盗もうが気づかない

 

 

さすがに古さは否めないが……アクの強さは健在

 

敵が多数いるときは火炎瓶が非常に効果的だ。しかし火だるまのまま突進してくるのが困りもの

 そんなわけで,ゲームとして心底楽しめるなら良かったのだが,残念ながらそうともいえない。ここからは真面目に批評をさせていただこう。ポスタル2の発売は2003年,そしてP2Rはその追加シナリオということで,率直に言って2006年のFPSとしては古臭さが否めない。
 スクリーンショットを見て分かるとおり,目の肥えた現在のFPSファンにとって,お世辞にも美しいとは感じられない描画だ(内容が内容だけに,リアル過ぎるのも困るが……)。イベントが起こるフラグが曖昧だったり,狭い場所でキャラクター同士が引っ掛かって動けなくなったりと,「これはちょっとなぁ」と思わせる場面が少なからず見受けられた。
 さらに,広大というほどでもないマップでありながら,マップローディングが頻繁(しかも長い)に行われる点も,ちっとも改善されていない。あちこちに移動しなければならないおつかいゲームにとって,これは致命的なマイナス点だろう。

 しかしポスタル2シリーズには,こうしたマイナス点を吹っ飛ばすだけの極端な魅力があるからこそ,根強いファンがいるわけだ。それはゲーム全体に見られるブラックジョーク満載の雰囲気もさることながら,基本的に何をしてもいいという自由さこそ最大の魅力だろう。平穏無事に過ごす努力をするプレイヤーがいても,町中の人を片っ端から虐殺するプレイヤーがいても,ゲームはその人なりに進む。殺人に慣れさせることを目的にゲームが作られるわけではなく,現実では「できない」ことを,仮想空間で「存分にやる」ことが,この悪趣味なFPSの狙いなのだ。
 元来クライムゲームであり,とかくネガティブなイメージの強いシリーズではあるが,いろんな遊び方が存在し,いかようにでも楽しめるという点は高く評価したい。2007年にはシリーズをモチーフにした映画も公開され,さらにSourceエンジンによる「Postal III」も,2008年の発売に向けて開発が進められているなど,ポスタルワールドはまだまだ広がりを見せるようだ。万人にお勧めできるゲームではまったくないが,もしあなたが,デュードの過激な悪行をゲームと割り切って楽しめる大人なら,たまにはポスタル2の世界で大いにハメを外して息を抜いてほしい。

 

至近距離からショットガンをぶっ放すと,相手の頭部は粉々に吹き飛んでしまう。グロいので注意! 警察官に警棒で撲殺された。このゲームは警棒がやたら強力だ。壁に飛び散った血痕が生々しい スタンガンで失神した相手は,痙攣しながら失禁してしまう。しばらくすると起き上がるのでご安心

 

刑務所の刑務官と特殊部隊が,銃撃戦を始めてしまった。おいおい敵は俺だっての いかがわしいポスターがいたるところに貼られているゲームではあるが,コレは…… NPCに生きたままガソリンをかけて燃やすことも可能。かなり凄惨なシーンである

 

タイトル ポスタル 2 ロシアより愛をこめて
開発元 RWS 発売元 ドライブ
発売日 2006/10/27 価格 7980円(税込)
 
動作環境 Windows Me/XP,PentiumIII/733MHz以上(Pentium4以上推奨),メモリ 128MB以上(512MB以上推奨),HDD空き容量 3.5GB以上,32MB以上(64MB以上推奨)のVRAMを搭載したビデオカード,DirectX 8.1以降

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