» 1954〜1955年に発表された,J.R.R.トールキン著のファンタジー小説「指輪物語」は,それまでは児童文学の範疇に属していた「おとぎ話」を,大人でも十分楽しめる「文学」の域にまで高めた,あまりにも偉大な作品。それをベースとするMMORPG「ロード・オブ・ザ・リングス・オンライン アングマールの影」は,日本において成功しづらいとされる「洋物MMORPG」に属しながら,どのような魅力を我々に提示してくれるのか。同作を愛するライター 大陸新秩序氏によるレビュー記事をお届けしよう。
ファンタジー小説の古典にして金字塔「指輪物語」をMMORPG化
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| ファンタジー小説の金字塔「指輪物語」の初版出版から半世紀,ついにロードオブザリングがMMORPG化された。中つ国を自由に歩き回ることを夢見ていたファンも多かったことだろう |
2007年6月1日に正式サービスが開始された「ロード・オブ・ザ・リングス・オンライン アングマールの影」(以下,LotRO)は,米国Turbine社によって制作され,日本ではさくらインターネットがパブリッシングを行うMMORPGだ。
周知のとおり,LotROはJ.R.R.トールキン著の大作ファンタジー小説「指輪物語」を原作としており,その世界観が忠実に再現された,クエスト/ストーリー重視のゲームデザインがなされている。
原作については,英国本国における初版の出版から半世紀以上,日本でも最初に翻訳された版が出版されてから30年以上が経過しており,インターネット上のサイトでも比較的容易に詳細な解説が確認できる。また4Gamerでも,分かりやすい概要が紹介されているので,そちらも参照していただきたい。
さてここでは,まったく原作を知らないという人のためにも,現在実装されている範囲での,LotROのバックストーリーを簡単にまとめておこう。
ゲームの舞台となるのは,人間/エルフ/ドワーフ/ホビットの4種族,そしてオークやトロルをはじめ各種のモンスターが存在する,中つ国。原作の主人公であるホビットのフロド・バギンズは,成年となる33歳の誕生日に,養父のビルボ・バギンズから一つの指輪を託される。実はその指輪こそが,中つ国の支配を目論む冥王サウロンの捜し求める,「一つの指輪」だった!
その事実を突き止めた魔法使いガンダルフは,フロドをサウロンの捜索から逃れさせ,また指輪による支配から解放させるために,彼を裂け谷へと送り出す。フロドは従者のサムワイズ・ギャムジー(サム),および同郷の友人メリアドク・ブランディバック(メリー)とペレグリン・トゥック(ピピン)と共に,一路裂け谷を目指す。その一向を影ながらサポートするのが,前出のガンダルフと,その同志「馳夫」ことアラゴルンなどである。
LotROにおいてプレイヤーは,ときにアラゴルンやガンダルフの指示のもと,サウロンの配下となった人間やモンスターと交戦しながら,中つ国の各地で冒険を繰り広げていき,ストーリーを進めていくこととなる。つまりプレイヤーは,フロドやガンダルフといった,原作の主要キャラクターを演じるわけではなく,一介の冒険者となって,サウロンの野望を阻止すべく戦うわけである。
本作のストーリー性の核となる一連の「エピッククエスト」は,以上のバックストーリーに基づいて,原作および映画版「ロード・オブ・ザ・リング」を補完するような形で描かれていき,また登場人物達も,NPCとしてクエスト内に配置されている。したがって,原作または映画版に一通り触れておくと,LotROをより楽しめることは間違いない。また逆に,LotROをプレイすることで中つ国の地理関係が明確になり,原作や映画版をより立体的に把握できるというメリットもある。
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| 序盤の主なクエストでは,中つ国各地で頻発しているトラブルを解決していく。クエストを進めて行動範囲が広がると,戦乱の不穏な空気が強まっていく | 冒険を進めていくうちに,巨人のアース族とも知り合う。巨人の中にも,人間やドワーフと同様に,悪に与してしまった者がいる | 「柳じじい」や「枝垂川」でおなじみの古森。複雑な迷路と化しているだけでなく,うかつに歩き回ると熊や狼,巨大な蜘蛛,そして動く木に襲われる |
すべてのクラスに活躍の場が与えられるフェローシップ
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| ソロ/フェローシップのいずれでも,とくに不利なクラスはない。正直なところ,いずれも一長一短なので,自分の好みの種族/クラスを選んだほうが楽しいだろう |
プレイヤーキャラクターとして選択できるのは,人間/エルフ/ドワーフ/ホビットの4種族で,それぞれ男女が存在する(ただしドワーフのみ,外見上男女の区別がつかないので性別の選択はできない仕様)。さらにチャンピオン/ガーディアン/キャプテン/バーグラー/ハンター/ミンストレル/ロアマスターの7クラスが用意されているが,種族によっては選択不可能なものもある。詳細はすでに4Gamerで紹介しているとおりだが,以下にも簡潔にまとめておこう。なお,LotROでは一般的なRPGでのHPを「士気」,MPを「気力」と表記している。
●チャンピオン(人間/エルフ/ドワーフ)
二刀流や両手武器を駆使して戦う近接系アタッカー。範囲攻撃が可能なほか,戦闘中に「熱狂値」を蓄積することで特定の強力なスキルを使用できる。
●ガーディアン(人間/エルフ/ドワーフ/ホビット)
重鎧と盾を装備し,高い防御力を誇るタンク。敵のターゲットを引き付けるスキルや,攻撃をブロックしたり受け流したりした直後に反撃可能なスキルを持つ。また両手武器も使用可能。
●キャプテン(人間)
多彩な補助効果スキルを駆使するバッファー。士気回復,および力尽きた仲間を復帰させるヒーラー的な役割も持つ。ゲーム中では,人型の「使者」(いわゆるペットに当たる)を召喚/随行している姿が特徴的である。
●バーグラー(人間/ホビット)
敵を弱体化させるデバッファー。各種デバフのほか,奇襲や催眠/スタンスキルを駆使する。また,後述する「連携スキル」を任意に発動できるスキルを持つ。
●ハンター(人間/エルフ/ドワーフ/ホビット)
弓を駆使する遠隔攻撃系アタッカー。「焦射値」を蓄積することにより強力な攻撃スキルが使えるほか,敵の足止めや仲間の回復促進,仲間全員を特定地へワープさせるといったスキルを持つ。
●ミンストレル(人間/エルフ/ドワーフ/ホビット)
リュートを弾いて,仲間の士気回復と戦線復帰を促すヒーラー。戦闘中,第一〜第三音階および「凱歌」といった演奏段階を経ることで,さらに強力なスキルが使用できる。
●ロアマスター(人間/エルフ)
主な役割はクラウドコントロール。敵を足止めするだけでなく,ペットを使って敵のターゲットを逸らしたり,仲間に気力を付与したりと,補助面でも活躍できる。
なお,フェローシップ(パーティ)は最大6人で構成する。もちろん理想となるのは,タンクのガーディアンとヒーラーのミンストレルが各1名,あとは適当にバラける構成だが,それほど厳密にこだわる必要はないだろう。これは特定のクラスがいなくとも,ほかのいくつかのクラスさえいればカバーできるようなキャラクターバランスとなっているからである。
例えばガーディアン不在の場合,チャンピオンが圧倒的な攻撃力を駆使してヘイトを稼ぎ,敵のターゲットを固定すればいい。またミンストレルがいない場合には,キャプテンやロアマスターがヒーラーを務めたりすれば,過不足のないプレイが可能だ。実際,筆者の経験だと,特定のクエストクリアのみを目的として現地で募集するフリーのフェローシップでは,ガーディアンまたはミンストレルが不在となる場合が珍しくなかった。メンバー全員で協力して,足りない部分を補い合うケースが多く見られるのである。
すなわち本作では,MMORPGにありがちな,「ある特定のクラスがいないとクエストクリアできない」「ある特定クラスはパーティに必要とされない」というようなケースがほとんどないので,自分の好むクラスおよび種族で,マイキャラクターを作っても問題はないだろう。
一方レベリングは,クエストをこなすことで十分な経験値が蓄積されていき,かなりスムースにレベルアップしていく。レベルアップに伴うキャラクターのステータス増減は任意には行えない(いわゆるステ振り要素がない)が,武器/防具/アクセサリといった装備に付与されたオプションによって,ある程度の調整が可能だ。また各マップに配置された「名所」をすべて訪れたり,特定種類のモンスターを数十匹倒したりといった「功績」に対して与えられる「特性」によっても,個性的なステータスに調整したり,長所を伸ばしたり,あるいは短所を補ったりできる。
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| レベル15/30/45になると,クラス固有のクエストが発生する。このクエストをクリアすると,特殊なスキルや特性が得られ,よりクラスの個性が発揮できるようになる | 非常にバランスの取れたフェローシップ構成。フリーでメンバーを募集した場合,このように完全にバラけることは珍しい | |
フェローシップ内の信頼と協力を実感できる「連携スキル」
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| 戦闘は,攻撃スキルを多用してもなかなか終わらず,決してスピーディとはいえない。またスキルのエフェクトも,若干地味めである |
プレイヤーキャラクターの移動にはW/A/S/Dキーを用い,そのほかの操作には,マウスおよび数字キーなどを使用する。マウスクリックによる移動操作には対応していないため,ほかのMMORPGをプレイしていた人は若干戸惑うかもしれないが,ゲーム開始直後にはチュートリアルを兼ねた非常に簡単なインスタンスクエストが用意されているので,すぐに慣れるはずだ。また,マウス右ボタンを押したまま左ボタンを押すことで前進できるので,マウス操作のみで(キーボードに触れずに)移動することも可能だ。戦闘も,オーソドックスな操作で楽しめる。敵をターゲットしたらショートカットキーを押して,適宜スキルを発動すればいい。
ソロプレイが多いゲーム開始直後からレベル15あたりまでの,全般的な戦闘のプレイ感は,攻撃スキルを多用してもなかなか敵を倒せず,ややテンポが悪い印象を受けた。MMORPGの戦闘シーンに爽快感やスピード感を求める層は少なくないため,若干マイナス要素なのではないか? と思えたのである。
しかし,「エリート」「エリートマスター」と呼ばれる,フェローシップでなければ倒せないモンスターの登場するクエストが出てくるレベル20あたりから,徐々に考えが変わってきた。それは,「連携スキル」の重要性に気づかされたからだ。
連携スキルは,バーグラーや高レベルのガーディアンが,戦闘中に始動スキルを成功させるか,もしくは特定モンスター(エリート,エリートマスターなど)との戦闘中にランダムで発動する。連携スキルが始動すると,フェローシップのメンバー各自の画面上に赤/青/緑/黄の4色のボタンが表示される。
ボタンの色によって効果は異なり,赤は範囲攻撃,青は仲間の気力回復,緑は仲間の士気回復,黄は敵にスリップダメージを与える。同じ色のボタンを押したメンバーが多いほど,それぞれの効果は高まり,またポーカーの役のように,特定の順番で特定の組み合わせを完成させれば,強力な複合効果を得ることも可能だ。
例えば長期戦でメンバー全員が疲弊しているときに,「緑緑緑青青」(ピュアオブハート)などが決まれば,士気/気力が一気に回復。プレイヤー自身の勝利へのモチベーションをも高めてくれる。
先ほど少し触れた,フェローシップ時にヒーラー(とくにミンストレル)がいなくてもなんとかなってしまうというのも,この連携スキルがあればこそである。ヒール面に注目してしまうと,運頼みの感が強いものの,メンバー間の信頼と協力を実感できる好システムといえるだろう。本作における連携スキルの価値と魅力は,爽快感やスピード感に重きの置かれたMMORPGでは,なかなか味わえないものである。
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| レベル20台後半から,ノーマルよりも体力や攻撃力などが高い「エリートモンスター」が頻繁に登場し,ソロプレイでのクエストクリアが困難となる | 同じエリートタイプのボスモンスターでも,攻撃速度が遅いなど明らかに欠点があり,1対1に持ち込められれば討伐は可能だが,そうしたケースは稀である | 連携スキル始動。フェローシップのメンバーがどの色のボタンを押したかは,画面上部の中央に表示される |
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| 押したボタンの組み合わせによって,特定の連携スキルを任意に発動させることもできる。何を発動させるか,事前にフェローシップ内で打ち合わせをしておくといいだろう。ちなみに連携スキルの種類によっては,「先祖の霊」を召喚し,一定時間戦闘に加えることも可能だ | ||
「モンスタープレイ」でプレイヤーキャラクターと対戦
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| モンスタープレイのスタート地点は,エテン高地の最奥部。プレイヤーキャラクターが集う街とは違った,禍々しい雰囲気が漂っている |
現時点のLotROには,一般的な意味でのPvP(プレイヤー対プレイヤーの対人戦闘)は実装されていないが,モンスタープレイ(MP)というコンテンツを通じて,PvMP(プレイヤー対モンスタープレイヤーの対人戦闘)を楽しむことができる。
モンスタープレイは,プレイヤーキャラクターがレベル10以上になると参加できるシステム。各地に配置された「恐怖の水晶占い場」を通じて,サウロン配下のモンスターとして生まれ変わり,NPCやプレイヤーキャラクターを相手とする悪役プレイが行えるというものだ。
モンスタープレイで使用できるのは,「オークリーバー」「スパイダーウィーバー」「ウルクブラックアロー」「ウルクウォーリーダー」「ワーグストーカー」という5種類のモンスター。これらは最初からレベル50となっており,毎回スタート時に種類を選択できる。
モンスタープレイでのスタート地点は,レベル40台以降のプレイヤーキャラクターを対象とする「エテン高地」。従って,このマップに集まるプレイヤーキャラクター達はいずれもレベル40〜50で,スキルの扱いにも長け,また非常に優れた武器/防具を装備をしているということである。1対1,あるいは同数のフェローシップ同士で交戦した場合,モンスター側にほとんど勝ち目はない。集団でプレイヤーを襲うにしても,より多くのモンスター仲間を募る必要があるだろう。
なおエテン高地には,モンスタープレイ専用のクエストも用意されている。基本的な仕様は通常のクエストと変わらないが,その内容は「エルフの耳」や「人間の脚」を持ってこいだの,滝から毒を流せだのと,正統派然としている通常のMMORPGではまずお目にかかれないものばかり。クエストを受けたり,達成したりした際のメッセージもなかなかユニークなものとなっているので,一度は体験しておくといいだろう。またモンスターの拠点となる廃墟などの構成を覚えておいて,将来,通常プレイヤーとしてエテン高地でクエストをこなす際に役立てるという手もある。
ともあれ,モンスタープレイというユニークな対人戦闘コンテンツが導入されている本作では,通常のプレイヤーキャラクターをレベル10まで育ててしまえば,従来のMMORPGよりも気軽に(なにせモンスタープレイでは,名前の異なる悪の軍勢でプレイできるのだから)対人戦闘が楽しめる。プレイヤーキャラクターの平均レベルが高くなってくれば,エテン高地での勢力争いはさらにヒートアップするだろう。今後が楽しみなコンテンツである。
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| モンスタープレイ中に,プレイヤーキャラクターと遭遇。装備もスキルも圧倒的な差があるので,1対1ではモンスタープレイ側は不利 | プレイヤーキャラクターやモンスターに負けると,一部のクエストは失敗となる。同時に罵りの言葉が表示され,かなり惨めな気分になる | 記録されたPvMPの戦績。戦績を上げるためには,同胞との協力が必要不可欠である |
名称表記の統一とクエストの充実など,より安定した内容となることを望む
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| クエストの中には,レイド前提ではないにもかかわらず,複数のフェローシップが協力しないとクリアできないものもある。そうしたクエストの現場では,それこそ何かのイベントが行われているかのような,賑やかな光景が見られる |
もちろん,現時点でのLotROには欠点もある。とくに顕著なのは,日本語にローカライズした際に発生したと思われるゲーム内表記の不一致で,クエスト内に登場する対象モンスター名や地名,アイテム名などと,実際のマップ中に配置されているものの名称が異なるケースが多々見受けられる。
例えば先日,クエストログでは「〜のウォーロード」と表記されていたので該当地域を隅々まで探し回っていたところ,実はすぐそこにポップしていた「〜の将軍」というモンスターのことだった,ということがあった。分かってしまえば些細な不一致に過ぎないが,場合によっては何日もかけて探し回っても対象が見つからず,大げさな話をすれば,LotROをプレイすること自体を投げ出してしまう人も出かねない。プレイヤーのモチベーションを下げてしまうのは,こうした細かい部分の積み重ねであることも多いので,早急な改善が望まれる部分といえよう。
またレベル30以降,ソロプレイで遂行できるクエストが極端に少なくなる点も気になる。レベル15まではソロでも問題なく,レベル20台でも平日はソロを楽しみ,フェローシップクエストは週末などプレイヤーが多いタイミングにログインすれば,毎日1〜2時間ずつでも継続してプレイできる。
しかし,レベル30台ともなるとそうはいかない。クエストの選択肢も少なく,そのほとんどはフェローシップ前提で,かつ数時間拘束される場合も増えるため,社会人など何かと忙しい人は,ログインしてもなかなかクエストに参加しようという踏ん切りがつかないこともあるだろう。
しかし,こちらは幸いなことに,米国では6月中旬にレベル30台を対象とするクエストが追加実装されているので,日本でも早期のローカライズを望みたい。
さて本作は,最初こそ,戦闘はどこかモッサリしているし,フェローシップクエストもレベルを上げさえすればソロでもクリアできるしで,ライトユーザー向けのMMORPGに毛が生えた程度などという感想も出てしまいがちであった。
事実そういった面も否定できないのだが,決してそれがすべてではないと,強く主張しておきたい。
レベル10台後半以降,ブリー郷の「大塚山」やアガマウアの「ガルス・アガルウェン」,北連丘の「フォルノレスト」といったインスタンスゾーン,あるいは,さびし野の「ゴブリンリーダー」やドル・ディネンの「闇の勢力のマスター」などを経験したプレイヤーなら理解していただけると思うが,適正レベルのプレイヤーが揃っているフェローシップでも相当に苦戦を強いられるような,手応えのあるクエストが数多く用意されている。そうした高難度クエストで,ときに全滅しそうになりながらも,先述した連携スキルが次々と綺麗に決まり,何とか無事にクリアできた瞬間こそが,本作の醍醐味といえる。
また,よく指摘されるように,LotROには革新的な要素はほとんどない。グラフィックスは確かに綺麗で,映画版で見られたような風景も,うまく再現されている。しかしそれだって,「これまでにないほど美麗!」というものではないし,連携スキルをはじめとする各種のシステムも,どこかで見たことのある仕様だ。意地の悪い言い方をすれば,指輪物語が原作であることを除けば,よくあるMMORPGの良いとこ取りをしたような,無難な出来に思えるかもしれない。
しかし,過去二十年のPCゲームの歴史を振り返っても,「革新」を謳い,「斬新さ」で勝負したタイトルが,必ずしも魅力的だったかというと,そんなことは決してない。とくに本作のような,秀逸な原作を元に作られたMMORPGならば,革新性を追及するよりも,現状あるものを作品性/商品性に合わせて確実にバランスよく配置していく路線が,むしろ冴えたやり方だといえよう。
結論をいってしまうと,本作はライトユーザーからコアユーザーまでをも視野に入れた――決して「最高の」とはいえないまでも――総じて「良く出来た」MMORPGである。原作ファンの一人としては,今後のアップデートで原作全般をカバーした最終形のLotROがどうなるのか,その全貌をぜひ見てみたい。それに伴って,日本でのサービスが,商業的な成功を収めることを,強く祈るばかりである。
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| 本作のグラフィックスは,映画版で見られたような映像を上手にPCゲームに落とし込んでいる。ゲーム開始当初は,映画版で登場した世界を自由に歩き回れることに感動するだろう | ||
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| 原作でもLotROでも一つの節目となる裂け谷周辺。ここにたどり着く頃には,ゲーム開始当初の牧歌的な(とくにホビット庄の)雰囲気を忘れてしまっているかもしれない | ||






































