― レビュー ―
株取引! 国家経営! 経済概念を積極的に取り込んだMMORPG
君主オンライン
Text by 川崎 政一郎
2006年4月24日

※以下の記事は,主に2006年3月末(オープンβテスト)〜4月24日(正式サービス後)のゲーム内容をもとに制作しています。あらかじめご了承ください。

 

基本システムはクリックタイプの2DベースMMORPG

 

「君主」は,ぱっと見ではオーソドックスな2DタイプのMMORPG。しかし見た目とは裏腹に,政治,経済,さらには株取引といったシステムが盛り込まれている

 今回紹介するMMORPG「君主」は,韓国NDOORS社が制作したMMORPGだ。国内版のローカライズおよび運営に関しては,「スカッとゴルフ パンヤ」で一躍有名になった,ゲームポットが行っている。そして課金形態は「基本料金無料+アイテム課金」と,現在人気の高いシステムを採用。
 君主は3月31日に正式サービスへと移行しており,4月21日には第2サーバー「アルディア」がオープンしたばかり。見た目は地味ながら,かなり特徴的なゲームシステムを採用している本作,その魅力を紹介していこう。

 まずは基本システム面から先に説明しよう。本作はクォータービュー視点の,2D MMORPGである。文明が崩壊して15〜6世紀程度の文明レベルにまで後退した未来が舞台で,キャラクターなどは可愛らしくデザインされている。
 キャラクターの移動や戦闘操作はすべてマウスクリックによるポイント指定で行い,ファンクションキーに登録した回復薬をゴクゴク飲みながらフィールド上の敵を叩くという,オーソドックスなスタイルのゲームだ。既存の韓国産タイトル経験者であれば,なんら問題なく入り込めるだろう。

 このタイプのMMORPGは,純粋な戦闘面をウリにするタイトルが多いものの,本作では“政治・経済面”に焦点を当てている(このへんの詳細は後述する)。よって,戦闘面に限っていえば,かなりあっさりとした内容だ。キャラクターのモーションは秒間3コマ前後で描かれており,まさに一世代前のMMORPGといった感じでアクション性も高いとはいえない。そのぶん必要とするマシンスペックは低く,数世代前のPCでも問題なく動く。常時ウィンドウモードで起動できるのもポイントだ。

 キャラクターを作成して最初に降り立つのは,この世界において首都に近い存在「トキヤ」。ここにはさまざまな役回りのNPCが滞在しており,彼らからクエストを受け,それらを順番にこなしていくのがゲームの大筋の展開となる。例えば,プレイヤーが最初に関わるNPC「咲夜」から受けられるクエストは,その過程で冒険者にとって必須の知識を身につけられるという仕組みだ。
 クエストをこなしてレベルアップさせていくわけだが,このとき獲得する「BONUSポイント」というスキルポイントを割り振ることで,キャラクターはさまざまな方向へと育っていく。スキル種別で最も分かりやすいのは「武器」で,その中からさらに,剣,槍,銃などのカテゴリへと分岐する。剣は素早い攻撃が可能,槍はバランス型,銃は遠距離から安全に攻撃できるなど,それぞれに個性がある。

 本作には「武器」のほかにも,「基本生産」「武器製造」「防具製造」「装備製造」「道具製造」「海洋技術」など,さまざまなスキルが用意されている。見てのとおり,戦闘以外にちなんだスキル群がとても多く,生産に特化するような遊び方も選択できる。
 スキルポイントの量には限りがあるため,すべてのスキルに熟達することはできない。ゲーム内の要素を一通り楽しみたいのであれば,武器の中から1種類,そのほかから1種類程度のスキルを専攻すればよいだろう。
 ちなみに,一人のNPCから依頼されるクエストは,その多くが20本前後の連続物となっている(生産系クエストは数本程度)。クエストの多くは最初の拠点「トキヤ」近辺のみで行えるため,序盤から中盤までのレベルアップ作業は,比較的スムースに運ぶだろう。もし,次の目標を見失いそうになったら,トキヤに滞在しているNPCの「ジーク」または「フィーユ」を訪ねれば,何かしらのクエストを依頼してもらえるはずだ。

 

広域マップで移動中。詳細エリアへの移動や,施設の利用は,画面内に表示されていればワンクリックで行えるのが便利 プレイヤー達の拠点となるトキヤは,いつも賑わっている。冒険時の仲間集めや,商談などのやりとりが,ひっきりなしに行われているのだ 序盤は,NPCの「ジーク」と「フィーユ」のクエストに要注目。彼等から受けられるクエストを経て,本作のシステムを自然と覚えられるようになっている

 

序盤に依頼されるクエストにはシンプルなものが多い。写真のように,対象となるモンスターはぎっしりと密集しているので,戸惑うことはない レベルアップすると,ステータスポイントを5ポイント得られる。これはスキル用の「BONUSポイント」とは別なので,忘れずに割り振っておこう 課金システムは「アイテム課金」を導入。基本プレイ料金は無料だが,有料アイテムを活用すると冒険はより行いやすくなるだろう

 

 

マーケットなどの生産に関連したシステムがとても便利

 

必要な材料品を持っていれば,現在生産できる品目がリストアップされる。レシピ一覧を見たりせずとも,気楽に生産を行えるようになっている

 本作の大きな特徴の一つとして,アイテムの生産や流通に関連したシステムが充実していることが挙げられる。例えば生産品の種類は,上記で触れたように,なかなか豊富だ。
 しかもこれらアイテムの多くは,NPCは販売しておらず,プレイヤー達が自分らで作らねばならない。
 また武器と防具は,現在では一度でも密封を解除とそのキャラクター専用アイテムとなる「帰属制」が採用されている。さらに服,帽子,生産道具,漁具,文具,金物,陶器は,使用すると一定日数で壊れてしまう。よって,武具を含めた生産品の多くが消耗品であり,需要は常に生じていくのである。
 生産品の需要が生じるということは,そのための材料も大量に必要ということに結びつく。材料となるアイテムはフィールドやダンジョンなどにいるモンスターを倒せば,かなりの確率で入手できる。しかも本作の場合,モンスターの生息地域やドロップアイテムの情報がデータベース化されており,ゲーム中いつでも参照できる。そのため,目的の材料を取りに行くのは,それほど難しくないのだ。

 プレイヤー間の流通に関しては,街にある施設「マーケット」を利用するのが便利だ。これはいわゆるオークション(競売)システムで,ほかのMMORPGタイトルでも珍しくはないが,本作では生産が重視されるため,とくに重要な意味を持つ。
 例えば,マーケットの出品履歴を見てみたところ,ある生産品が高騰し始めていたとする。それはつまり,必要となる材料の需要が高まりつつあることを意味するので,先のデータベースを参照して自分で確保できる材料であれば,生産者以外でも一儲けできるチャンスが眠っているというわけだ。
 一応,NPCにアイテムを売却することも可能だが,この場合はマーケット相場よりも値段が大幅に下がるので,得策ではない。しかし,一度に出品できるアイテムは最大で4種類と少なく,必然的にこまめにマーケットに通うことになる。出品したアイテムが落札されると,いつでもメッセージウィンドウが表示されるので,それを確認したら再びマーケットへ赴き出品,といったプレイスタイルを想像してもらうとよいだろう。

 マーケットに出品されたアイテムは,すべての値段が表示されるため,これを利用した商業上の駆け引きも醍醐味の一つ。例えば,値段が安い日中に材料品をあらかじめ買っておき,ログイン人数の多い夜間に高値で売る,といった商売も行える。もっとシビアな世界になると,ライバルに生産を行わせないために,その材料を買い占めたりすることもある。
 戦闘や生産といった各スキルに割り振るためのBONUSポイントは,レベルアップ時に1しか得られない。よって,材料確保から生産までのすべてを一人で行うのは不可能に近い。アイテムを生産する者,生産したアイテムを使う者,そして材料を集める者。本作はどの立場でプレイするのかを選択でき,そしてそれぞれに違った面白さがあるのだ。

 

「密封」を解除した武器と防具は,そのキャラクターしか装備できなくなる。転売できないため,生産者の仕事はなくなることがないのだ モンスターのデータベースには,生息地域とドロップアイテムが細かく表示される点に注目してほしい。生産時に必要な材料集めがとても行いやすいのだ マーケットで武具に入札するときは,「密封」されているかどうかに注目。安値だからといって不用意に買ってしまうと,その直後に壊れてしまうかも

 

マーケットに出品する前に,現在の相場と在庫を調べておこう。在庫が少ない品物であれば,高値で売るチャンスがあるかもしれない マーケットに出品したアイテムが落札されると,いついかなる場合でもメッセージが表示される。思わずにんまりしてしまう瞬間だ アイテムを生産すると,ごく稀に高性能な品が出来上がる。そのときは全プレイヤーにメッセージが通知されるというのは,ユニークなシステムだ

 

 

いつかは一国一城の主に!
株取引のシステムを取り入れた国家都市に注目

 

魅力的な国家都市には多くのプレイヤーが集まり,そして経済も発展する。本作では,その都市国家の運営面にプレイヤーが直接携われるのだ

 さて「君主」には,ほかのタイトルでは到底お目にかかれない独自システムが用意されている。タイトル名もそれとなく匂わせているが,本作はプレイヤー自身が「国家」の運営面に携わることができるのだ。そしてこのシステムを「株式」によって支えているのである。

 順を追って説明すると,この世界には40以上の「国家都市」が点在している。この国家都市は株式会社に近い形態をとっており,それぞれが発行する株を資金源として運営していく。そして国家都市の代表者は,各国の株を持つ株主達によって,「国守」として選出されるのだ。国守になったプレイヤーは,官庁,証券取引所,銀行,倉庫といった施設の運営を行う。具体的には施設の利用料を調節するなどして,利用者にとって魅力的な国家にするために尽力することになる。
 魅力的な国家都市には数多くの人が集まり,税金等の収入によって大きく発展していく。しかしその一方で,人が集まらずに廃れてしまう国家都市もある。そのような国家都市は株式市場での価値が低くなり,別のプレイヤーに乗っ取られてしまう可能性があるのだ。これは,本作のポップな第一印象からは想像もつかない,実にシリアスでヘビーな要素といえよう。少なくとも筆者は,今までのMMORPGでは見たことがない。

 この構想を初めて耳にした人の中には「本当に実現可能なのだろうか?」と訝しむ人もいるだろう。しかし実際に,韓国サーバーでこれらの機能はすでに実装されており,公称200万人ものプレイヤーを集めているとのことだ。なお,本作を開発した韓国NDOORS社のKim Tae Gon氏は,かつて商業にスポットを当てたMMORPG「巨商伝」の制作に携わった人物。MMOにおける複雑な経済システムを成功させることにおいては,まさに第一人者といえるだろう。
 実際に株取引を行うには,国家都市の新株が国守によって発行されるので(未公開株は運営側が発行),希望者は申し込んだうえで抽選後に購入できる。そして株主となったプレイヤーは,上記のような国家都市の運営面に携われるようになる。
 株主には配当金が支払われるが,その一方で株式の下落によって損害を被ってしまうかもしれない。このあたりのリスクとリターンを見極めつつ,株を購入していくわけだ。まさしく現実世界の株式会社と同じことが,この仮想世界の中で行われているのだ。少なくともMMORPGジャンルとしては初の試みといえよう。現実の株式の勉強にもなるかもしれない。
 フィールド上には全42の都市国家が存在しているが,2006年4月24日現在,少しずつ公開されている状態。最初,都市が二つしかなかった頃は株価が異常に高騰してしまい,ほとんど誰も株を手にできない時期があった。しかし最近は入手方法が抽選式になったことと,公開都市が増えてきたことにより,入手困難な状態は以前よりだいぶ緩和されている。徐々に適切なバランスに向かっているようだ。

 このように,本作は戦闘,生産,国家運営という,まったく異なる三通りの遊び方を選択できる。戦闘面に限っていえばモーションがぎこちなく,アクションRPGとして飛び抜けて優れた要素はあまりない。その一方で,本作の個性的な経済システムはとても新鮮であり,似通った作品の乱立する現状にあって輝いていた。例えば,ほかのMMORPGタイトルでアイテム合成システムなどにのめり込んでしまう人であれば,本作を一度試してみる価値はあるだろう。

 

ワールドを冒険していると,数多くの「国家都市」を見つけられるだろう。ゆくゆくは,それぞれをプレイヤーが直接運営できるようになる 魅力的な都市には数多くの人が集まり,さらに発展してく。都市を利用するだけでなく,運営する側にも回れるのが魅力だ 写真は「官庁」の表示画面だが,「株主総会」や「収益配当内訳」といった,見慣れない言葉が並んでいる。政治経済をここまで重視したMMORPGはほかにない

 

ハイレベルなダンジョンも実装されている。生産や政治経済に重点を置いたタイトルだが,戦闘を目的とした遊び方でもしっかりと目的が用意されている 君主のローカライズにあたって,グラフィックス等は日本向けにアレンジしている。元々は韓国産のタイトルだがすんなりと遊べるだろう 3月からキャラクターが2種族の中から選べるようになっている。旧キャラクター「エルマシア系」は東洋風,新キャラクター「イクシア系」は西洋風の容姿

 

タイトル 君主 online
開発元 NDOORS 発売元 ゲームポット
発売日 2006/03/31 価格 基本料金無料+アイテム課金
 
動作環境 OS:Windows 98SE/Me/2000/XP(+DirectX 8以上),CPU:Pentium III/800MHz以上,メインメモリ:128MB以上,3D対応グラフィックスカード

(C)2005 Ndoors Corporation., All rights reserved.
(C)2005 Gamepot Inc., All rights reserved.

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/kunsyu/kunsyu.shtml