― レビュー ―
実はドラマ性がメインの西部劇アクション
ガン 日本語マニュアル付英語版
Text by Gueed
2005年12月22日

 

“誰でもガンマンシステム”を搭載した
極上の西部劇エンターテイメント

 

2丁拳銃でQuickdraw(バレットタイム)。拳銃は,なぜか弾数制限がなかったりと優遇されている。今では芸術品として扱われそうな象牙グリップの美しい銃も登場

 アメリカにおいて19世紀(とくに1860年〜1890年前後)は,西部開拓時代と呼ばれている。筆者はその場にいなかったので定かではないが,髭をもっさりとたくわえた白人が酒を飲みながらシングルアクションのリボルバーをバンバン撃ち,金を見つけてラッシュをかけまくっている,そんなイメージ(あくまでもイメージ)の時代。

 

 2005年12月2日にラッセルから発売された「ガン 日本語マニュアル付英語版」(原題 GUN)は,そんな背景を持つ北アメリカのモンタナやニューメキシコを舞台に,Colton Whiteというガンマンが自らの銃撃スキルを高めつつ,ほこりっぽい荒野を冒険するという,三人称視点のシューティングアクションである。
 本作の開発元Neversoft Entertainmentは,Tony Hawk’sシリーズや「Spider-Man」を手がけたActivision傘下のゲームスタジオ。本作もActivisionのパワフルな資金的バックアップを得て,ハリウッドの豪華俳優を声優に採用するなど実にリッチなキャストを配しているが,キャラクターのモーションとプレイヤーの操作感にこだわるという同デベロッパらしさは健在だ。

 

 主人公のColton Whiteは,幼い頃から父Nedにハンティングの基礎を叩き込まれた青年。父と共にハンティングの旅のため乗り込んだ汽船が,何者かの襲撃によって撃沈されてしまう。NedはColtonに自分が本当の父親ではないことを告げ,そして「Dodge CityのAlhambraという売春宿でJennyという女性に会え」という言葉を残して,船と共に葬られてしまう。一人,船から逃げ延びたColtonは,失意に打ちのめされながらも,Nedの言葉通りDodge Cityへ向かい,いつしか大きな陰謀の渦に巻き込まれていく――。

 

 「まだ元気そうなのに,なぜNedは一緒に逃げなかったのか」という疑問はさておき,本作のゲームプレイは,登場キャラクターとの会話を挟んで西部の地を踏破する簡単なアクションフェイズに,銃撃による戦闘を主眼に置いたシューティングフェイズを散りばめた形で展開される。

 

 Coltonは顔つきは優しいが,実は凄腕のガンマン。当時活躍したColt社のPeacemakerなどの拳銃,Winchesterといったライフル,ショットガンを駆使するのはもちろん,格闘用武器としてナイフや手斧を使ったり,ダイナマイトなどの投げ物までを駆使して敵と戦っていく。

 

 ただ,本作はプレイステーション2やXbox,Xbox 360といった各コンシューマ版も存在するマルチプラットフォーム用の設計のためか,難度Normal程度では一般的なFPSのようにシビアな射撃精度が必要となることはない。体力回復アイテムのウイスキーをガブ飲みしつつ,軽いオートエイミングにサポートされながら敵に照準を合わせてドンパチ撃ち合うという,爽快感重視のプレイスタイルがとられている。

 

 このオートエイミングは抜群の按配で設定されているため,筆者のような独身男性でも,馬に乗って高速で目の前を駆け抜ける敵の頭をパシュっと撃ち抜けたりするわけだが,その爽快感をさらに向上させているのが,いまだに人気継続中のバレットタイムだ。本作では「Quickdraw Mode」という。
 西部といえば,ガンマンが早撃ちや抜き撃ちを競うFast Drawという競技を連想するが,こちらは一定時間周りがスローになる定番のバレットタイムだ。このモードに移行すると,画面が一人称視点に切り替わり,Coltonがどんな武器を使用していても素早くピストルに持ち替えて,無敵の早撃ちガンマンと化す。モード中はリロード不要,さらにワンキーで次々とターゲットを切り替えて射撃できるので,まず弾を外すことはない。シングルアクションのリボルバー2丁拳銃で,どうやって撃鉄を起こしリロードしているのかは謎だが,ヒロイックな爽快感があるのは確かだ。

 

 こういった要素が銃の照準補正と相まって,本作は敵を「狙う」より,弾数制限のあるライフルやショットガンを使いつつ拳銃の射程圏内まで肉薄し,いかにしてQuickdrawの時間を使うかというマネジメント部分に「頭を使う」ことが多い。そしてヘッドショットの精度も徐々に上がり,確実にうまくなっていくのが体感できる。親切設計の中にもプレイヤースキル向上の余地と愉悦を残すという作りが実にうまい。ここが,FPSプレイヤー以外にも本作をお勧めできる所以(ゆえん)だ。今ここで初めてお勧めしたわけだが。

 

主人公のColton Whiteは,あどけない顔とは裏腹なガンスリンガー。事件に巻き込まれていく様子が少し不憫 騎乗の戦いは難しいが楽しい。ミッションによっては,馬を併用しないと倒せない敵も何人か出てくる 殺したので,顔の皮を剥いでいます。というか,血は飛び散るわ首はちょん切れるわ,全体的にゴア表現が強烈

 

たまに遭遇する固定の兵器はうまく使いたい。爆薬などの各種オブジェクトを駆使すれば,戦闘を有利に運べる ライフルは超万能だ。ズーム機能がついているが,使わなくても照準補正が強いので,やたらと当たる 砲台を使ったミニゲーム(?)的なミッションもあり。放物線をうまく計算して命中させられると爽快だ

 

 

西部劇GTAとなれるか?
サイドミッションの存在価値は……

 

これはメインストーリーにかかわる護衛ミッション。馬車のスピードに合わせて馬を制御しつつ,戦闘を行う

 前述の通り,“誰でもガンマンシステム”は秀逸。しかし本作を本作たらしてめているのは,豊富に用意された寄り道要素「サイドミッション」の数々である。

 

 サイドミッションは大きく分けて,「戦闘系」と「非戦闘系」の2パターン。
 戦闘系には,例えば保安官代理となって街の治安を守る,またはバウンティハンティングとして賞金首を追う,といったものがある。
 バウンティハンティングは,西部の各拠点となる街を中心に貼り紙が出されているので,それを読んで賞金に納得したなら,ターゲットがいると思われる場所へ赴き,殺すか生け捕りにすればいい。ターゲットの位置は画面右下のレーダーですぐに分かる。場合にもよるが,総じて生け捕りにしたほうが賞金が若干高く設定されているので,敵が馬に乗っていた場合は馬を撃って敵を落馬させ,さらに手足に軽く銃弾を浴びせて後ろから羽交い絞めにする。そして銃のグリップでガツンと後頭部を殴打すればミッション達成,賞金獲得となる。

 

 一方,非戦闘系のサイドミッションも多彩だ。非戦闘系では,ポーカーや牧場の管理といったのんびりしたものから,ポニーエクスプレス(馬を使った速達便)というウエスタンらしい趣向の凝らしたものまで存在する。

 

 ちなみに本作でColtonが全編を通してほぼ乗りっぱなしの馬は,モーション良し,乗り心地良し,人の踏み潰し具合良しで,本作の一つの見どころとなっている。ときには砂塵を巻き上げて荒野を疾走し,ときにはひづめの跡を残しながらパッカパッカと街を散策し,ときにはヒヒーンと一般市民を蹴り上げる,このカタルシスは格別。要するに「馬に乗っているのが気持ちいい」という,我ながら説得力のない主張をしているわけだが,現代を取り扱った作品にはない要素であり,ぜひ一度体験してみてほしい部分なのである。

 

 これらサイドミッションは,メインストーリー関連ミッションの合間に遊べるもので,達成することで自動的にColtonの銃撃および乗馬スキルが向上し,いくばくかのお金が手に入る。このお金を元手に街のショップでバレル研磨アイテムや,弾薬の装備スロット拡張アイテムなどを購入し,さらにColtonを強化できるという仕組みだ。
 また本作には,サイドミッションの達成具合や,ヘッドショットの確率,乗り潰した,または撃ち殺した馬の数といったColtonの行動が逐一記録されており,いつでもそれらデータを閲覧できるようになっている。こうなってくると俄然コンプリート魂に火がついて,ストーリーそっちのけで遊びたくなってしまう。さらにサイドミッションすら無視して,GTAライクに弾が尽きるまで市民を撃ち続けることもできる。

 

 ただサイドミッションで惜しむらくは,難度こそ徐々に上がっていくものの,報酬で得られるものがColtonの装備強化に集約されてしまっているという点である。つまりサイドミッションがあくまでもストーリーを円滑に進めるための手段として用意されている感が否めないのだ。
 これは,サイドミッションやColtonの強化アイテムが有限であることに起因しているのかもしれない。ストーリーを進める,そしてアンロックされたサイドミッションに挑むという流れがシステマチック過ぎて,「これは用意された自由なんだな」と,我に返ることが多い。とはいえ,強化アイテムを買うなら,サイドミッションをプレイしなければならないわけで,冷静に考えると,ひたすらメインストーリー関連ミッションに挑み,にっちもさっちもいかなくなってサイドミッションに挑戦するという事態に陥るのはいささかしんどそうである。高難度でプレイするなら,サイドミッションがほぼ必須になってしまうかもしれない。

 

 市民をいつでも攻撃できるという要素にしても,それによって得られるのが爽快感だけで,そういった行動がゲームの世界になんら影響がないというのも少し寂しい。欲張って言えば,やはりもう少し付加価値がほしい。このあたりがクライムアクションの雄であるGTA(Grand Theft Auto)シリーズが持つ,いわゆる自由度に一歩及ばず,西部劇GTAとは胸を張って言い切れない部分だ。言い切る必要があるのかどうかはさておき,コアゲーマーにはちょっと物足りなさを感じさせる部分だろう。

 

この時代といえば,やはり金。いくらゴールドラッシュに沸いた時期とはいえ,本当あちこちに金山がある 賭けポーカーで小銭稼ぎ。これで一攫千金も? とドキドキしたが,残念ながら報酬は一定。チッ 馬を使って,牛や馬を囲いまで追い込む牧歌的なミッション。面白いけど,俺様を誰だと思っているんだ

 

うーむ,やはり個人的な本作最大の見どころは「馬!」としか言いようがない。人を踏むと「Trample Kill」 美女が3人も襲ってくるではないか! なんだか撃つのはもったいない気もしつつ,眉間を狙ってズドン ショップアイテム。弾切れのタイミングは少ないので,予備弾薬の装備スロット拡張はいらないかも

 

 

どこまで浸れるかがカギ
自由度を逆手にとって遊び方を考えてみる

 

大自然の夕日に涙しつつ,荒野をあちこち駆けずり回ってもらいたい。馬の乗り心地もいいし(しつこい)

 「自由度」はともかく,ネイティブアメリカンの問題を内包した当時のアメリカの雰囲気のなか,どんどん深みにはまっていくColtonの冒険にグイグイ没入できるストーリーは,秀逸の一言。当たり前のように実装されているリアルタイムレンダリングのムービーも,キャラクターのちょっとしたしぐさや言い回しで,個性がキチンと伝わってくる。テキスト量が多めなので,自分が英語に堪能ならもっともっと面白いのになぁと思いながら,それでもなんやかんやと楽しめてしまう。

 

 そもそも本作では,サイドミッションよりもメインストーリーに関連するミッションのほうがバリエーション豊富で,馬車の護衛,列車の爆破,汽船への砲撃,音のしない弓矢を使ったスニークと,実に多くの要素が盛り込まれている。しかも,そういったものは時間制限があったり,仲間を守りながらのハンデキャップマッチであったりと,スピード感があってスリリングなものが多い。

 

 そういう意味では,やはり本作はストーリー重視の作品として遊んだほうが素直に楽しめそうである。武器そのものの種類はメインストーリーを進めるにしたがってどんどん追加されていくし,下手にサイドミッションで間延びさせるよりは,徐々に明らかになっていく謎を追ったほうがより楽しめそうだ。

 

 となると,遊び方としては,Normalぐらいの難度で,サイドミッションのことはあまり考えずにひたすらストーリーを追う,そしていったんクリアしてしまってから,サイドミッションをコンプリートしたり,Coltonの各種行動データを充実させたりしよう……と,完全に割り切ってしまうといいかもしれない。そのほうが,ストレスフリーにあれよあれよと進んでいく本作のテンポよい魅力を引き出せるだろう。

 

 「そもそも西部開拓時代とはなんぞや?」という人などは,コロンブスがヨーロッパから大西洋を横断して北アメリカに到達,「インドに着いた! ワーイ」と言ったか言わずか,そこをインドと思ってしまった彼が,コロンブスの卵的発想で原住民をインディアンと名付けてしまった,などの裏事情をしこしこ調べながら遊んでみるといい。アクションはさておき,西部開拓時代の街並みや北アメリカの壮大な自然,出来たばかりの鉄道を現地の人がどう扱っていたかなど,当時の様子がディテール豊かに再現されているのも本作の大きな魅力なのだ。

 

 ちなみに,本作の日本公式サイトにあるPLAY DIARYで,代理店であるラッセルのスタッフによる,簡単なチュートリアルと,序盤のムービーの和訳が用意されている。このムービーの和訳部分が増えていけば,英語が苦手な人でもいくらかストーリーを理解できるはずなので,今後のWebサイトアップデートに期待しよう。……と,ラッセルの人に無言でもないプレッシャーをかけてみました。では。

 

膨大なテキストは,やはり英語の苦手な人(例えば筆者)にはつらい。ラッセルの人,頑張ってください 物語の中盤からは,ネイティブアメリカンと深く関わるColton。弓も彼らからもらったようなもの 途中で手に入れたサーベルで,街の人を切り刻んでみた。しばらくすると,保安要員に取り囲まれた

 

このように武器が徐々にグレードアップしていく。常に最新の武器を装備するので,古いものは使えない GTAライクなマップはそれほど広くなく,数分で1周できる。制限のある場所が少ないので,観光し放題だ この画面で達成度をチェック。「INNOCENTS KILLED」が甘いことから,筆者の善人ぶりがうかがえる

 

 

タイトル ガン 日本語マニュアル付英語版
開発元 Neversoft Entertainment 発売元 ラッセル
発売日 2005/12/02 価格 オープンプライス
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/1.80GHzあるいはAthlon XP 1800+以上,メインメモリ:256MB以上,グラフィックスチップ:Radeon 8500またはGeForce 3/Ti以上,グラフィックスメモリ:32MB以上,HDD空き容量:2.8GB以上

2005 Activision Publishing, Inc. Activision is a registered trademark and GUN is a trademark of Activision Publishing, Inc. All rights reserved.Developed by Beenox, Dolby and the double-D symbol are trademarks of Dolby Laboratories. The ratings icon is a registered trademark of theEntertainment Software Association. PC DVD-ROM logo TM & cIEMA. All othertrademarks and trade names are the properties of their respectiveowners.32971.209.US Marketed and distributed in JAPAN by Russell.

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