― レビュー ―
日本ファルコムローカライズの台湾製武侠RPG第二弾
幻想三国誌II
Text by キーオ林
2006年10月11日

 

前作の10年前が舞台となる「三国志の時代」のRPG

 

ゲーム画面自体はエフェクトなどの進化はあるものの,基本的には前作とあまり変わらない印象。仲間に加わるキャラクターの女性比率が高いというのも前作を引き継いでる感が……華やかで良いとは思いますが

 台湾のUserJoy Technology(宇峻科技)が開発したシングル専用タクティカルRPGを,日本ファルコムがローカライズしたのが「幻想三国誌II」である。タイトルから察せられるように,2004年に発売された「幻想三国誌」の続編で,前作の約10年前の物語となる。しかし,決して前作のプレイが必須というわけではなく(主人公も前作とは異なる),このシリーズを初めて遊ぶというプレイヤーでもすんなりと物語に入っていけるだろう。

 

 「三国志」の世界が舞台となっているのも前作と同じで,曹操,袁紹,呂布,孫策といった英雄達がゲーム内に登場し,三国志ファンにお馴染みの場面なども演じられる。しかし,実際の三国志の登場人物達はあくまでもNPC扱いで,プレイヤーが操作するのは主人公の楚歌,及びそのパーティのメンバーに限定されている。張飛や呂布などのキャラクターがパーティに加わることもあるが,そういった特別なキャラクターについては,戦闘中もコマンド選択ができない。あくまでも独自の判断で,主人公達の戦闘を支援する役割となっているのだ。

 

 物語には前作と同じく,“武侠”のエッセンスがふんだんに盛り込まれている。武侠とは簡単に説明すると,義理を重んじる人々が武術によって戦い,展開されていく群像劇といったところ(いささか乱暴な説明だが)で,勧善懲悪ものが多い。幻想三国誌IIも,主人公の楚歌はやたらと金に執着する,一見いい加減そうな人物であるが,そういった性格になるに至る理由がきちんと作中で語られており,感情移入しやすく設定されている。
 辺境の村で世界一の金持ちになる夢を見ていた楚歌が,やがて大きな戦いに身を投じ,運命に翻弄されつつも前に突き進んでいく様子をダイナミックに展開していく本作のストーリーは,多くのプレイヤーが素直に楽しんでいけるはずだ。

 

タイトルはダテではなく,三国志の登場人物が,味方,あるいは敵として次々と登場する。しかしあくまでも彼らは脇役で,「武将システム」によってパーティに加えることは可能だが,プレイヤーには操作できない

 

ゲーム中のムービーなども,デフォルメされたキャラクターがそのまま登場。シリアスな場面などは若干違和感が? 感情表現は豊かで分かりやすい。ギャグっぽい演出も多々あり,キャラクターに親しみを感じやすい ストーリーだけ追うとシビアな展開が多々あるのだが,コミカルな場面が多く,陰鬱な印象はあまりない

 

 

前作のシステムを継承しつつもあれこれ進化

 

武学は最初は単体攻撃だったものが,修業でパワーアップさせることによって範囲攻撃になることもある。攻撃力が上がっても敵の体力が高めで,一撃で倒せることはほぼないのだが……

 ゲームのシステムは,前作をほぼ継承している。「大地図」と称されるフィールドマップ上では,敵はエンカウント方式で出現し,突如として戦いとなる。一方,ダンジョン内では敵が視認でき,うまく移動すれば,あまり戦わずに進んでいくことも可能だ。
 戦闘は「ハーフリアルタイムバトル」システムによって進行していく。敵味方ともキャラクター行動後,次の行動を起こせるようになるまでの時間が設定されており,うまくパーティ内で連携して,連続で敵に攻撃を当てればダメージアップする仕組みとなっている。
 「慌ただしいのは苦手,じっくり戦闘を楽しみたい」という人は,ハーフリアルタイム制より一般的なターン制への変更も可能だが,ターン制のバトルでは連携は発動しない。

 

 「陣形」を組むことで,攻撃力や防御力が上がるなどのシステムも健在である。前作より陣形の数も増し,戦略性は高くなっている。陣形は状況に応じて戦闘中の変更も可能だ。

 

 各キャラクターはそれぞれ「武学」という技を修得していく。要は一般のRPGにおけるスキルや魔法のようなものだが,陣形もこの武学に含まれており,特定のキャラクターがパーティ内にいない状況だと,使用できない陣形も出てくる。武学はそれぞれポイントを割り振って,より強力なものにしていけるが,いろんな状況を想定しておかないと,後にむごい目に遭う可能性も出てくるということだ。

 

 武学はエフェクトが派手なものが多く,見ていてかなり爽快である。しかし攻撃系の武学には視覚的なエフェクトのほかは,効果にさして差を感じないものが若干あるのも事実。よくある手段であるが,せめてボス級の敵については属性を設けて武学との相性を設定し,効果的な攻撃を模索するようなシステムにすれば,より武学のシステムが映えたのではないかとも思えてしまう。
 敵はボスクラスのものはもちろんのこと,普通のフィールドに登場するザコクラスのものでも,総じてHPが高く,「硬い」印象がある。一方で主人公達のパーティもそのときの状況に見合った防具をつけていれば,さほど敵からのダメージを気にせずに戦っていける。
 こうした事情から,戦闘はそのたびにコマンドを打ち込んで指示していくと,それなりに時間を要してしまうのは若干のマイナス点であろう。先の展開が気になるストーリーだけに,このザコとの戦闘をちょっと煩わしく思ってしまうプレイヤーがいても不思議ではない。
 だが,そのために自動戦闘をワンクリックで作動できるようになっている。自動戦闘ではプレイヤーキャラのパーティは防御も武学も使わず,ひたすら敵を攻撃するだけになるが,戦闘を素早く終えて先に進めるので,筆者はかなり多用した。崩れそうなバランスを強引にシステムで処理した感も拭えないが,戦闘が多めなこのゲームで,こうしたシステムが組み込まれているのはプレイヤーとしてたいへんありがたく思う。

 

次に何を行えばいいのかをガイドしてくれる機能も健在。しばらく間を置いてからプレイ再開したときなどに重宝する 戦闘で得た精元値を割り振ることで武学をレベルアップさせる。特定の武学を集中してパワーアップすることも可能 ボス級の敵の中には,敗れてもゲームオーバーにならず物語が進行する者もいる。倒したほうが得ではあるが

 

陣形は当然,組んだほうが格段に戦闘が楽になる。こういった効果は,難度設定を高くすれば,より実感できるだろう 最初は少人数のパーティで行う戦闘も,物語が進行すると団体で戦うようになる。戦闘システム自体は同じだ 関係ない人を巻き込んだ戦闘も起こる。敵だけに攻撃を当てたいので,範囲攻撃は使用しずらい

 

 

粗も目立つが魅力的な要素も多い

 

召喚獣を得るときなど,ところどころにミニゲームが登場する。プレイヤーを飽きさせないために単調な戦闘の繰り返しになることを避ける意図と思われるが,ミニゲームの内容自体は微妙な感も……

 前作で登場した召喚獣は本作で種類を増し,パワーアップしている。召喚獣はストーリーを進行させれば仲間になる。最初に仲間に加えた段階では召喚獣の基本となる「源形」の状態で,育成を続けるとより強力なスキルが使える「最終形」へと進化していく。
 育成はスキルにポイントを割り振っていく形となっているが,どのスキルにポイントを割り振っていくかによって,召喚獣は攻撃系のスキルに優れた「魔系」か,回復・補助系のスキルに優れた「仙系」のどちらかに進化する。召喚獣は戦闘中に役に立ってくれるのはもちろん,フィールド上やダンジョン内で特定の場所に移動するのにも役に立つ,必要不可欠な存在だ。

 

 「晶塊」のシステムも前作から引き継がれている。装備品にはそれぞれスロットが設定されており,それに晶塊という結晶を組み込むことによってステータスアップなど,さまざまな効果を得られる。効果の高い晶塊は必要となる空きスロットも大きく,強力な装備品にしか組み込めない。

 

 前作には登場しない新要素として「帝苑システム」がある。帝苑は通常のフィールド移動中ならいつでも行ける場所で,新たなアイテムの生成,装備品の強化,キャラクターの能力強化などが行える。店では買えないアイテムなどを入手できる便利な場所ではあるが,なまじいつでも行けるため,ストーリーを追うのに夢中になると,存在を忘れてしまいがちなシステムではある。
 個人的には,フィールド内に設置したほうが,多少の制限はかかるものの,より存在感と有り難みが増すように思えたのだが……。

 

 以上,紹介してきたシステムからも分かる通り,「幻想三国誌II」はキャラステータスに関しては,プレイヤーの任意でどの部分を強化していくか,選択できる幅が大きい。しかしゲームの難度を低めに設定すると,さして苦労せず先に進めてしまうため,これらのシステムをより楽しむためにも,難度を高く設定したほうがよさそうに思える。ストーリーを楽しみたいプレイヤーは難度を低めに,バトルなどでの戦略を楽しみたいプレイヤーは難度を高めに設定するなどで工夫するといいだろう。

 

 本作はビジュアル面では戦闘のエフェクトやデフォルメキャラの演技など,楽しめる要素も多いが,やはり最新のコンシューマ機のRPGなどと比較しても,どこか古いというか,垢抜けない感がある。また,フルスクリーンでしか動作せず,全体の動作ももっさりしていて,軽いとは言い難い。イベントの中途に現れる選択肢によってエンディングが変わる要素があるが,ストーリー自体は一本道で,プレイ時間の長さなどを考えると,エンディングを複数見るために何周も遊ぶのはちょっと骨が折れる印象だ。
 弱点を述べていくのはたやすいが,しかしボリュームはかなりあり,またキャラクターの性格付けや物語の展開は,日本や欧米製のRPGでは味わえない独特の魅力がある。現在,シリーズ第3作が開発中とのことだが,ぜひ細かな粗を改善し,グレードアップした「幻想三国誌」を楽しませてほしい。続編が楽しみになるくらいのポテンシャルは軽く有しているゲームである。

 

召喚獣の能力がないと先に進めないマップも。召喚獣自体,取り逃す可能性は低いので手詰まりにはならないが 召喚獣は育成の仕方によって,能力が大きく変わる。仙系に育てるか,魔系に育てるかはプレイヤー次第 晶塊でキャラクターの長所を伸ばすか短所を補うか……スロットの形や大きさも考えて当てはめる必要がある

 

楚歌が眠ることによって行けるようになる帝苑。いろいろと役に立つのだが,つい存在を忘れがちに 地名の覚えにくさもあり,ダンジョンは迷いやすい。別マップに移動するたびに敵が再配置されるので時間がかかる 魅力的なキャラクター達が繰り広げる愛憎劇こそが,本作の一番の特徴だろう。物語の先を見たくさせる力がある

 

タイトル 幻想三国誌II
開発元 UserJoy Technology 発売元 日本ファルコム
発売日 2006/09/29 価格 7140円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 98SE/Me/2000/XP(+DirectX 8.1以上),CPU:Pentium III/800MHz以上[Pentium 4/1.30GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上(2000/XPは384MB以上),グラフィックスチップ:DirectX 8.1以上対応[チップセットの場合はIntel845G以上推奨],グラフィックスメモリ:32MB以上

(C)2006 Nihon Falcom Corporation.
(C)2004 UserJoy Technology Co., Ltd. 

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http://www.4gamer.net/review/gensou2/gensou2.shtml