― レビュー ―
ロジクール初のワイヤードレーザーマウス
G5 Laser Mouse
Text by Crize
2005年9月9日

 

■ゲーマー待望のロジクール最新モデル

 

 MXシリーズで,一般のPCユーザーだけではなく,ゲーマーからも高い支持を受けているLogitech。その日本法人であるロジクールから,ゲーマーをターゲットにした「ゲーミング・グレード」のマウスが登場した。20年以上にわたってマウスを販売してきている老舗がノウハウを結集して開発したと思われる,ゲーマー向けマウスの性能は果たしてどれほどのものなのか。今回は,2005年10月28日に発売が予定されている「G5 Laser Mouse」(以下G5)を採り上げて,ゲーマーの期待にどれだけ応えてくれるのか見ていくことにしたい。
 なお,G5は発売前のサンプルだが,ハードウェアは製品版と同じという公式情報を得ているので,プレビューではなく,レビューとして評価を行っていく。

 

 

■ゲーマーにも安心なハイスペック仕様

 

7080fps化の恩恵として,光沢やペイント,木目などの上でも問題なくマウスを利用できるそうだ。もっとも,専用のマウスパッドを持っていることの多いヘビーゲーマーにとっては,あまり関係ないかもしれないが

 G5は,ロジクール製のワイヤードマウスで初めてレーザーセンサーを搭載した製品だ。レーザーセンサーを搭載した同社製マウスとしては「MX1000 Laser Cordless Mouse」(以下MX1000)がよく知られているが,これはワイヤレスタイプであり,「ワイヤードタイプと比べてワイヤレスタイプの信頼性は低い」と判断する傾向にあるゲーマーからの受けは今ひとつ。その意味で,ロジクール初のワイヤードレーザーマウスには価値がある。
 スペックは,解像度2000dpi,フレームレート7080fps(設置面積情報処理能力換算では6.4Mpixel/s)。従来の最上位モデルだったMX1000は最高解像度1600dpi,フレームレート6400fpsだったので,順に400dpi,680fps上回っている。解像度は「マウスの精度」のことで,解像度が高いほど,細かなマウスの動きが正確に反映されることになる。また,フレームレートは「センサーが1秒間で読み取れる回数」を示す。要するにG5なら7080分の1秒内の動きも正確に読み取れるわけだ。

 

ケーブルには網のようなものが巻かれており,絡まってしまうのを防いでいる。この処理のためか,ケーブル全体はやや硬め

 このスペックは,「こちら」で紹介した「Razer Copperhead」と同じ。2005年9月現在,市場には最高解像度2400dpiを誇るマウス「Raptor-Gaming M2」があるので,最高スペックではないが,既存の製品の中では明らかに最上位クラスのスペックなので,ゲームをプレイする上ではまったく問題のないレベルだろう。

 なお,G5ではこのハイスペックに対応するため,USB 1.1の「Full Speed」モード(転送速度12Mbps)を採用している。これを「フルスピードUSB機構」と呼んでいるロジクールによれば,転送速度1.5MbpsのUSB 1.1「Low Speedモード」を採用する一般的なマウスと比べて,G5は4〜8倍の情報をPCに送信可能であり,結果としてポインタの移動に遅延がなくなったとのことである。情報は「レポート」と呼ばれており,一般的なマウスが63あるいは125レポートなのに対して,G5では500レポートが可能なのだとか。もっとも,これはスペック上の話なので,まあそういうものらしい,という理解でOKだ。
 OSはWindows 98/Me/2000/XPに対応。ただし,Windows 98/Meでは,Full Speedモードを利用できない。Low Speedモードでの利用となるので,Windows 98/Meのユーザーは,これを機にOSのアップグレードというのもアリだろう。

 

 

■チルトホイールの採用で使いやすさが大幅に向上

 

この写真では最も手前に当たる部分,ホイールの下に従来はボタンがあったが,これが廃された

 さて,「こちら」の記事で紹介したように,G5にはさまざまな付加機能がある。では,筆者がどこに最も引きつけられたかというと,実はチルトホイールだ。
 G5が発表されるまでロジクールのワイヤード最上位モデルとして君臨していた「MX510 Performance Optical Mouse」(以下MX510)は,マウスボタンの数が多かったのは良かったものの,ホイールの周囲に,ホイールを挟み込むような格好で小さなボタンが配置されていたため,あまり押しやすいとはいえなかった。そこでG5では,押しづらい位置のボタンがなくなり,代わりにチルトホイールが採用されている。

 

:MX510(右)とサイズ,ボタン配置を比較。大きさはほぼ同じなので,MX510に慣れているなら問題ない一方,手が小さいと使いづらいMX510の特徴は引き継いでしまっている。ボタンの配置はずいぶん変わっている印象で,サイドボタンもMX510の2個から1個になっているが,チルトを入れるとボタンの数は8個で変わらない
:真横から見たところ。サイドボタンはMX510で2個ボタンがあった部分の中央部辺りに置かれている。1個なので押し間違いの心配から解放された

 

 ホイールの周囲やマウスの側面に配置されるボタンを押そうとすると,指を大きく動かす(あるいはずらす)必要がある。すると,ボタンを押し間違えてしまったり,ほかのボタンに乗せている指に不要な力が加わって,誤動作を引き起こしてしまったりということが多くなる。その点,チルトホイールなら指の位置を大きく動かす必要がないから,激しいボタン操作を行う場合でも誤動作してしまう危険が少なく,ゲームプレイに集中できるというわけだ。

 チルトホイールに馴染みのない人や,他社製マウスのチルトホイールを利用して,使い勝手に難を感じた人などは,「ホイールボタンを押し込んだときにチルトに設定した操作が誤作動してしまうのではないか?」といった不安があるだろう。この点,G5のチルトホイールは左右に傾けたときやホイールボタンを押し込んだときの手応えも,ボタンの返りもしっかりとしているので,ホイールボタンを多用するタイプの人なら相当使いやすいと思う。ホイールを回すと,一目盛りごとに「カチッカチッ」と反応してくれるのもいい。

 とはいえ,チルトホイールには「ホイールを操作する指によって使いやすさに差が生じるのを避けられない」という問題もある。筆者のように,人差し指でホイールを操作するタイプなら,ホイールを左右に動かすという動作に違和感を持つ人は少ないはずだ。しかし,左右のクリックボタンに人差し指と薬指を乗せた状態で,中指を使ってホイールを操作するタイプだと,指を動かす範囲が狭いため,少々使いづらい印象を受けるかもしれない。慣れないうちは使用率の低い操作をバインドするなど,自分に合った調整を行うといいだろう。使いやすく感じたなら,使用率の高い操作をバインドし,積極的に利用することをお勧めする。

 

 

■「ウェイトカートリッジ」の効用には疑問

 

大×2,小×1のソールがポリテトラフルオロエチレン製。あえて製品名を使って説明すると,要するにソールは「テフロン」加工済みである

 おそらく,ロジクールがG5の目玉機能として考えているギミックが,マウスの重量を好みで調整できる「ウェイトカートリッジ」だ。これはその名のとおり,マウスの底面に挿入して利用するカートリッジ。4.5g×8個,1.7g×8個の錘(おもり)から好きな重さを最大8個選択してはめ込んでG5へ挿入することで,G5の重さも,重さのバランスもユーザーの好みのままに調整できる。マウス底面には「ポリテトラフルオロエチレン」という素材のソールが3か所に取り付けられているのだが,このソールによって従来製品よりも滑りやすくなっているマウスを,錘(おもり)で制御しようというわけである。

 

:付属のウェイトカートリッジ
中央:専用のケースに4.5gと1.7gの錘(おもり)がそれぞれ8個ずつ入っている
:ウェイトカートリッジに錘(おもり)をはめ込んで,G5へ挿入するイメージ

 

 だが,結論からいうと,筆者はこのウェイトカートリッジに魅力を感じなかった。マウスの重量にこだわるゲーマーを意識した,画期的な機能であることに疑いの余地はないのだが,そもそもゲーマーの間で「重いマウスを使いたい」という需要はあまり高くない。しかも,G5の重量は120g(実測値,ケーブル除く)と,ゲーマー向けマウスとして軽い部類ではないのだ。ウェイトカートリッジが5gだから,取り外しても115g。G5がもっと軽ければ,マウスパッドとの組み合わせを考慮しつつ重量を変更するといった使い方もできたと思うが,現実的には,調整の幅はあまり広くない。相当滑りのいいマウスパッドを利用していて,マウスの重さでバランスを取りたい場合や,(むしろゲーマー以外に多い印象があるが)重いマウスが好きな場合は,試してみるのも悪くない,といったところである。

 

 

■ドライバはMX1000と共通の「SetPoint」を利用

 

 ドライバは,専用のドライバソフト「SetPoint」を利用する。今回は,MX1000用にロジクールのWebサイトで公開されているのと同じ,SetPoint 2.40を利用した。G5の発売までには,バージョンの下2桁めがいくつか上がる可能性はあるようだが,基本的な機能は変わらないと見ていい。
 ドライバをインストールすると,タスクバーにアイコンが表示される。これをダブルクリックすればドライバのコントロールパネルへアクセス可能だ。

 

SetPointのコントロールパネル。基本的なボタンバインドはここで行えるが,左下のプログラムの管理ボタンを押すと,詳細設定が可能になる

 SetPointでは,アプリケーションごとにボタンをバインド(=割り当て)できる。ドライバのコントロールパネルから「プログラムの管理」ボタンを押すとプログラムの管理ウインドウが開くが,ここにアプリケーションを登録していけば,例えばサイドボタンが,Webブラウザ使用時は「戻るボタン」,画像編集時は「元に戻す」,ゲームプレイ時は「ボイスチャット機能のオン」として機能するよう,自動的に切り替わってくれる。ゲーマー向けマウスでありながら,ゲーム以外でも各種ボタンを最大限に利用できるのである。もちろん,あるゲームではボイスチャット機能のオンに使って,別のゲームでは異なる機能を割り当てるといったことも可能だ。
 実際に使ってみると分かるが,ゲーム専用PCを持っていない人にとって,これは相当便利である。「Ctrl+V」「Alt+F4」などといったキーの同時押しや,ダブルクリック,ウインドウの最小化/最大化といった特殊操作の割り当ても可能なので,使い勝手は非常にいい。

 

:プログラムの管理ウインドウを開いたところ。「追加」ボタンを押すと,関連付けたいアプリケーションを選択できる
中央:「Unreal Tournament 2004」に関連づけたい場合は,Unreal Tournament 2004の実行ファイル(UT2004.exe)を選択
:コントロールパネルに戻ったら,「2.ボタンを選択」で変更したいボタンを選ぶ。特殊なコマンドを関連付けたい場合は,「3.タスクを選択」から「キーストロークの割当」を選択し,続けて「3a.キーストロークの指定」から(一つもしくは複数の)任意のキーを実際に押せばOK。このとき「1a.プログラムの選択」にある実行ファイルに,この設定が関連付けられる

 

 なお,「Unreal Tournament 2004」「Counter-Strike」「バトルフィールド2」といったFPSでボタンバインドを変更してプレイしてみたところ,Windows XP環境下では快適に利用できたものの,Windows 2000とSetPoint 2.40の組み合わせにおいて,Unreal Tournament 2004でボタンを押したときに反応の遅延が発生するという問題があった。筆者の環境だけで生じたのかもしれないが,Windows 2000環境下では特定のゲームタイトルで同様の問題が発生しないとも言い切れない。まだWindows 2000を使っている人も多いと思うので,念のため付記しておく。

 

 マウスの感度設定項目も充実している。SetPointからチェスの駒のようなアイコンが描かれたタブをクリックすると「マウスのゲーム設定」を設定可能だ。さらに,このタブの右下にある「詳細ゲーム設定」をクリックすると,ずいぶんと印象の異なった,マウス感度の設定専用ウインドウが立ち上がる。
 ここでは,マウスの解像度を400〜2000dpiまで50dpi単位で最大五つプリセットしておける。X軸とY軸の値を個別に設定することもできるので,上下の視点移動をあまり伴わないタイプのFPSをプレイするときには,Y軸の値をX軸より高めに設定しておけば,どの方向に対してもスムーズな視点移動を行えるようになる。あまりいないとは思うが,前述したボタンバインド設定で割り当てておけば,ゲーム中であろうと変更可能だ。

 

 

■万人向けではないが,それでもお勧めと断言できる

 

 マウスとしての基礎的な部分に大きな不満はない。左右のメインボタンは押しやすく,反応も上々。目に見えるボタン数が減っているのは,チルトとその使い勝手のよさで相殺している。ウェイトカートリッジは微妙だが,使わなければいいだけの話だ。
 完全に右手用に設計されているため,左利きの人は使いづらく,その意味で万人向けではない。しかし,それを割り引いても,よく考えられているマウスなのは確か。筆者が2005年9月までに試してきたマウスの中では最も優れているというのが正直な感想である。「自分専用のフルオーダーメイドマウス」を100点と仮定した場合,G5には85点を与えたい。

 ロジクール直販価格は6980円になると発表されているので,少々高価な部類に入るものの,コストパフォーマンスは決して悪くない。多くのショートカット操作を要求されるRTSや,複数の乗り物を乗りこなすのにキー設定を多用するようなFPSをプレイするには,とくにお勧め。とにかく,試してみる価値はある製品だ。

 

 

2005年10月24日追記

 その後の検証で,G5にマウスパッドとの相性問題があることが分かったので,お知らせしたい。
 姉妹製品「G7 Laser Cordless Mouse」(以下G7)の検証中に,G7が,マウスパッドの一部製品と,相性問題を起こすことが分かったのだ。マウスの解像度を低めに設定した状態で,「マウスをゆっくり20cmほど移動させると、デスクトップの右端から左端までポインタが移動する」ように設定した。その後,この約20cmの距離を一瞬で移動させてみたのだが,このときG7だと,デスクトップの中央くらいまでしかマウスポインタが移動しないのである。

 同じテストをG5のレビュー時に行ったときは問題がないように感じられたのだが,改めて検証すると,G5でもG7と同じ問題に直面した。今回問題が生じたのは,現時点では入手しづらくなっている布製マウスパッド「Fatal1ty Pad」(FatPad)との組み合わせで,しかも,問題が発生するのは,(G5のテスト時には筆者でも気づかなかったほど)マウスを相当高速に動作させたときに限られる。このため,多くのユーザーにとっては,体感できるものではないと思うが,不具合であることに変わりはない。
 G5のレビュー記事を発表した後に見つかったため,後付けする形になってしまうが,重要な情報であり,また,国内正規版の発売直前でもあるので,付記しておきたいと思う。合わせて,総合の点数評価を80点に改めさせていただきたい。筆者と同様,布製のマウスパッドを愛用しているユーザーは,頭に入れておいたほうがいいだろう。

 

タイトル Gシリーズ
開発元 Logitech 発売元 ロジクール
発売日 2005/10/28 価格 製品による
 
動作環境 N/A

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