― レビュー ―
唯一のFIFA公認,2006年W杯サッカーゲーム。その出来映えは?
2006 FIFA ワールドカップ ドイツ大会
Text by キーオ林
2006年5月19日

 

127か国,3000人もの選手のデータがこの1本に

 

開催国として出場した前大会では,ベスト16に進出した日本代表。果たして今大会では,前大会を上回る成績を挙げられるのだろうか? 当然,勝負はふたを開けてみるまで分からないが,ゲームで事前に結果を占うことは可能なのだ

 今年の6月,いよいよ2006年FIFAワールドカップが開催される。説明するまでもなく,サッカー世界一の国を決める,4年に一度の大会である。
 今回のドイツ大会では,世界の一流プレイヤー達による,どんな熱い戦いを,パフォーマンスを見られるのか? そして,グループステージで前大会の優勝国であるブラジルと,同じグループFに所属することとなった日本代表は,はたして決勝トーナメントへと駒を進められるのか? 約1か月後には,いよいよ本番が始まるわけだが,気の早いファンはすでにゲームによって,そうした戦況をいち早く占ってしまっている人もいるのではなかろうか。
 そう,スポーツゲームの大家ともいえるEA SPORTSが,去る4月27日にサッカーゲーム「2006 FIFA ワールドカップ ドイツ大会」(以下,FIFA 06)を発売しているのである。

 FIFA 06は,FIFAのワールドライセンシーをゲームとして取得している,唯一のソフトである。今回のワールドカップを本格的にゲームで楽しみたいと思ったら,選択肢はこのタイトルのみということになる。
 そのため(というわけでもないのかもしれないが),当ゲームはPC版のほかに,プレイステーション2,PSP,Xbox 360といったコンシューマ機版もそれぞれ発売になっており,多くのゲームファンが,各々の環境に合わせてゲームを楽しめる。
 なお,それぞれのプラットフォームによって若干の差違はあるのかもしれないが,当記事はPC版のレビューということで。

 FIFAの公認を得ているだけあって,大会に使用されるすべてのスタジアムと,本大会に出場する32チームだけでなく,各地区予選で涙を飲んだチームを含む127か国のチーム,約3000名の選手ほとんどが実名で登場する。さらに主要選手に関しては顔や体の動きまで細かく再現されている。似てる似てないの感覚は個人によって違うだろうから断言はしないが,それでも有名選手の顔などは,多くのサッカーファンが見てニヤリとさせられるくらいには上手く作られているように思える。
 もちろん現実のシミュレートだけでなく,出場国を入れ替えての「地区予選で敗退したあの国が本大会に出場していたらどうなっていたか?」といったシミュレートも簡単に行える。選手の能力やスタメン,フォーメーション,キッカーの変更も細かく設定でき,さらにはオリジナル選手の作成も手軽に行えるので,今回のワールドカップ ドイツ大会を,プレイヤーは好みの状況に置き換えて遊べるわけだ。

 

世界的に有名なあの選手やこの選手,約100名は,名前だけでなく,顔や体の動きまでもが忠実に再現されている。名前の表示がなくてもサッカーファンなら一目で分かってしまうくらいには似てると思うのだが,どうだろう。これらの有名選手のパフォーマンスを最大限に引き出せるかどうかはプレイヤーの腕次第だ
発売時期の関係で正式な出場選手とゲーム内のメンバーで若干の差異はあるが,エディット機能でどうにかなる オリジナル選手を作成して試合に参加させられる。自分自身をサッカー選手にすれば,感情移入の度合いも増すかも ロード時には世界各国の妙な豆知識が紹介されたりもして,ちょっとした待ち時間のストレスを軽減してくれる

 

 

多彩に用意されたテクニックを使いこなせるか?

 

サイドから駆け上がり,クロスボールを上げる。ゴール前で待ち構えている選手がうまく頭で合わせるなり,ボレーシュートなりしてくれれば……比較的操作が簡単で,最初のうちは得点を挙げるための黄金パターンとして頻出するであろうプレイだ

 では,実際にプレイしてみての操作感覚などを紹介していくことにしよう。
 ゲームの基本操作は「オフェンス」と「ディフェンス」,そして「キーパー」の3種類に分かれており,同じキーでも,状況によって選手の取る動きが変わってくる。
 基本的にプレイヤーは,常に自チームの選手のうち誰か一人を操作する。オフェンス時はボールを持った選手を,ディフェンス時はボールの近くにいる選手を操作することとなるわけだが,ディフェンス時にはボタン一つで操作する選手を切り替えられる。このあたりの感覚は若干慣れを要する部分もあるかもしれないが,基本的にサッカー系のアクションゲームをプレイしたことがある人なら,そんなに戸惑うことはないだろう。

 とはいえ,選手の動きに対応するキーの多さには,最初のうち苦労させられることと思う。例えばオフェンス時には選手をカーソルキー(パッドの場合は十字ボタン)で動かしながら,ほかのキーを押すことでアクションを起こすわけだが,周囲の選手への戦術指示を含めると,基本操作だけでも10以上のキーに対応したアクションが出てくる。これに加え,さらに複数のキーの組み合わせなどで特殊なテクニックが発動する機能もあり,全部を完璧にマスターして使いこなすには,かなり慣れが必要だ。
 例えばオフェンス時のパスの種類をざっと挙げるだけでも,グラウンダーパス,ロングパス,スルーパス,ワンツー,ワンツー(ロブ),パスフェイント,ループ・スルーパス,ワンタッチプレイ,スルーと,全部で9種類もある。これらを状況によって瞬時に選択し,使い分ける必要があるわけだ。スキルを最初から全部,華麗に使いこなすのはさすがに無理だろう。
 もっとも,最初から全部の操作を完璧に覚える必要はない。シュートにグラウンダーのパスにクロス,スプリントといった,いくつかの操作を覚えただけでも,ゲームの難度を下げれば充分に試合に勝てる。そうやってプレイしながら,徐々に操作できるテクニックを増やし,ゲームの難度を少しずつ上げていくのがよいのではなかろうか。

 プレイし始めの頃は,選手を思いどおりに動かせずイライラする場面も出てくるかもしれないが,逆にようやく思いどおりに動かせて,それでゴールを決めた瞬間などは,かなり興奮させられる。操作の複雑さは,すなわち「ゲームの奥深さ」につながっているわけだ。

 先ほども少しだけ触れたが,ほかの多くのEA SPORTSのゲームと同様,「FIFA 06」もキーボードとゲームパッドの両方に対応している。4方向のカーソルキーで選手を動かすキーボード操作よりも,より細かく選手を動かせるパッドでの操作のほうが,このゲームには向いているように思えるのだが,なぜかマニュアルにはキーボードでの操作方法しか掲載されていない。
 無論,キーの割り当てはコンフィグ画面で変更できるし,キーボード上のどのキーがパッドでのどのボタンに当たるかメモしておけば,さほど大きな問題はないとは思うが,この点は若干,不便に感じられた。

 

選手名の下のバーは,その選手のスタミナを表す。プレイ中に表示される選手のステータスはこれのみ。シンプルだ 同じパスコースでも,ボールを浮かせるか,転がすかで戦局は大きく変わる。それぞれ対応するキーも変わるが…… うまくフォーメーション指示を行えば,敵をオフサイドトラップにかけるなどの高度な戦術も実現可能になる

 

フリーキックやコーナーキックなどのセットプレイからは,やはりゴールが生まれやすいが,ゴールとの距離や角度を読みつつ,キックの強さを調整するには慣れが必要だ。プラクティスモードでとことん練習するといいだろう ペナルティキックを止められる確率はやはり低い。PK戦になったら,とにかく自分のキックをミスらないことが重要

 

 

ポイントを獲得してFWCストアでロックを解除

 

「FWCストア」でポイントを使って,往年の名選手を現代のチームに復活させる,なんてこともできる。ジーコも日本代表の監督としてではなく,ブラジル代表の「黄金の中盤」としてゲームに登場させられるのだ

 「FIFA 06」には,いくつかのゲームモードが搭載されている。
 メインとなるのが,試合を勝ち抜いて大会の優勝を目指す「2006 FIFA World Cup」モードだ。本大会から始めるモードのほかに,地区予選からのプレイも選択できる。当然,地区予選から始めた場合は,各地区の予選突破の条件を満たさないと本大会に出場できなくなるので要注意だ。ここで敢えて弱小のチームを選んで,地区予選から這い上がり,世界一を目指すというのもロマンだろう。

 ほかにも,各国の代表チームから自チームと対戦チームを任意に選んで,1試合のみ行う「プレイナウ」モードや,PK戦のみのモード,最大8人で対戦やリーグ戦を行う「パーティモード」,さまざまなシチュエーションの試合で,設定された目標のクリアを目指す「グローバルチャレンジ」などがある。国の代表同士で短期で争うワールドカップに特化したゲームなだけあって,新たな選手を獲得,育成してチームを運営していくといった,EA SPORTSのほかのゲームによく見られる,経営シミュレーション的な要素は本作には存在しない。

 その代わりといってはなんだが,各モードで一定の条件を満たすと「ポイント」が得られ,このポイントを「FWCストア」で費やすことによって,クラシックプレイヤーやスパイク,ボールなどのロックを解除してゲーム内での使用を可能とする機能が搭載されている。
 ポイントを得る条件は1試合で上げた点数や,倒した相手などさまざまで,この条件はマニュアルも含めて,ゲーム内のどこにも明かされていない。つまりポイントが欲しければ,いろいろな国と対戦し,いろいろな形で勝利して,自分で条件を探していくしかないわけだ。

 この「条件探し」と「ポイントの獲得」がかなり熱く,さまざまな国の代表チームを自チームに選んでプレイしようというモチベーションに,うまくつながっている。例えばポイントゲットの条件には「○○地区予選を勝ち抜く」といったものがあり,この条件を満たすには,当然ながらその地区のチームを選んでプレイするしか方法がない。
 例えば日本代表チームを選んでヨーロッパ予選を勝ち抜くというのはゲームの仕様上,不可能なわけだ。自分がよく知らない国の代表チームなどを操作しているうちに,そのチームや選手への愛着や知識が深まってきたりもする。このゲームは1か月後のワールドカップの予習用としても,有用なのである。

 「FIFA 06」のゲームモードは必ずしも多いわけではなく,最近のスポーツゲームとしては,比較的シンプルな作りをしている部類といってよいだろう。
 しかし,それが飽きやすさ,物足りなさにつながっているとは筆者は思わない。むしろ余計な贅肉を削り,試合部分に注力した結果,アクションゲームとしてかなり歯ごたえがある仕上がりになっているように思う。

 こうしたスポーツゲームは,選手やチームのデータが古いものになってしまいやすく,基本的には「時期物」である。例えばこのゲームも,ワールドカップが終わってしまえば,「すでに旬が過ぎたもの」として,多くのゲーマーにそっぽを向かれてしまう可能性も高い。だが,短時間でも手軽にできるスポーツアクションゲームとして,PCに長期常駐させておくのも悪くないように筆者は思う。
 さらに4年後の2010年まで取っておいて,その頃に出る新たなワールドカップのゲームと比べてみて感慨に浸ってみるとか……まぁそこまでするプレイヤーってのは滅多にいないだろうけれども。

 

ゲーム内でポイントを獲得できる条件は,本当にさまざまだ。基本的には初対戦の相手に勝利すれば,それだけでポイントを稼げるので,とにかく積極的にいろんな国の代表チームと戦っていくようにしたい。強豪チーム相手だと,得られるポイント数が2倍になることも

 

ボールやスパイク,ユニフォームなど,FWCストアでロックをガンガン解いて,ゲーム中で使用できるようにしたい 往年の名試合をプレイできる「グローバルチャレンジ」は,このゲームに収録されたモードの中では少し異質な印象 日本代表だけでなく,いろんな国の代表チームでプレイすれば,それだけポイントを得るチャンスも増えていくのだ

 

タイトル 2006 FIFA ワールドカップ ドイツ大会
開発元 EA Canada 発売元 エレクトロニック・アーツ
発売日 2006/04/27 価格 オープン価格
 
動作環境 OS:Windows XP/2000(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium4/1.30GHz以上[Pentium4/1.80GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスメモリ:32MB以上,HDD空き容量:3.1GB以上

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